第148話 ルクセリア王宮調査
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ゆっくりと楽しんでください。
あらすじです。
ディオス達は監視されていた。これでは、ルクセリア王宮の調査を出来ない。そこでとある一計を案じた。
ディオス達は、ルクセリアの剣の館へ来ると、ロータスが待っていた。
「ようこそ、皆様…」
ロータスがお辞儀して出迎える。
ディオスがお辞儀して
「どうも…お招きいただき、ありがとうございます」
歓迎してくれるロータスと、ルクセリアの剣の館の人達だが、ディオス達に向けられる殺気に気付いて、直ぐに屋敷の中へディオス達を入れた。
屋敷の外と、隔絶した部屋でロータスが
「はぁ…もう、監視が…」
ナトゥムラが腕を組み
「どうする? 予定では、オレ達がルクセリアの王宮に入って、俺以外の三人が極秘に、王宮内を調査するって寸法だったが…」
ユリシーグは額を抱え
「こう、監視されては、やりにくい…。ここは我々が囮となって、サルダレスの誰かに探らせるか?」
ロータスは難しい顔をして
「その、王宮は修練場以外は、魔法の発動を防ぐ魔導石が大量に置かれていまして…。姿を隠す魔法を使うには難しいかと…」
ディオスが、ゲーティアの鍵が入っているアタッシュケースを見て
「この神格が入ったゲーティアの鍵も、結局は魔法を使って動いているし、そうなると…」
と、ディオスは信長を見る。
信長は項垂れ
「ああ…そうっすね。オレしか…」
そう、物理的に様々な事が起こせるエニグマのガイバードという鎧を持っている信長しか、行動が出来ない。
という事で、信長の全身を魔導3Dスキャンして、そっくりな立体魔導映像を作り出し、それをデコイとして使える、魔導ドローンに組み込み囮完成、囮の信長に注視している間、本物の信長だけ王宮内部を調べる仕事をしてもらう。
魔導立体映像ドローンの状態を確認するディオス。
「んん…これなら大丈夫だろう」
擬似的に信長の魔力波紋を放つ仕組みも組み込んでいる。
探査魔法を使っても信長がいるように擬態もしている。
素晴らしい囮のシステムに、ナトゥムラが
「なぁ…これ、後でオレにもくれないか?」
ディオスはピンとした。
要するに、お姉ちゃん達の店に行くときに、嫁さんの監視を誤魔化す為に使うつもりだ。
「ダメですからね。これは仕事用ですから」
キッパリとディオスは断った。
「ケチ!」
と、ナトゥムラは悪態を吐いた。
そんな事を知らず、ディオス達を剣の館の傍の建物の物陰から監視する人物、アーヴィングは、静かにディオス達の行動を見ていた。
その視線には鋭さがある。
それは、ディオスの力の恐ろしさを知っているからだ。
翌日、ディオス達はロータスの案内で、ルクセリアの王宮内にある修練場へ入る。
王宮に入った途端、全身を漆黒の鎧に包んでいる不気味な連中を沢山見る。
ナトゥムラを先頭に、ディオスの後ろにいるユリシーグが
「なぁ…おかしくないか? 黒い連中…」
ディオスは肯き
「ああ…魔力は、感じる。だが…その魔力が…」
ユリシーグが
「まるで、ゴーレムの動力源に使われている魔力と良く似た波長だ」
ディオスは、嫌な予感しかしない。
王宮に入り、修練場に来ると、多くの騎士達が木刀を手に剣の訓練や、魔法の練習をしている。
手筈通り、バルストランから剣の指導として、来た次期剣聖候補のナトゥムラの説明が始まり、その付き添いとして赤髪に変装したディオスとユリシーグに信長の説明もされる。
その後、ナトゥムラが訓練する騎士達と共に剣の訓練を始め、ディオス達三人は、それを見つめる。
頃合いを見て、信長がトイレと離れ、トイレの個室に入ると
「装殖」
と、信長の周囲の空間が開いて漆黒のガイバードの鎧が、信長に装着されると、トイレの蓋の上に置いた、疑似魔導ドローンのスイッチを押した。
そこに、デコイの信長が現れ、ガイバードとなった信長は、ガイバードの機能である透過迷彩を展開、ガイバードの表面が、透明になって姿が消えた。
カメレオンとはチョット違うも、とにかく物理的に透明になった信長は、個室のドアを開け、デコイの信長が出て、ディオス達の方へ向かった。
透明ガイバードの信長は、外に出ると、壁に足を付け、そのまま壁に垂直に張り付いて左に天井、足下に壁と重力を無視した動きで通路を進む。
透明になっているので、普通に廊下を歩くと、見えてない人の当たりそうになる。
それでは時間のロスなので、壁に貼り付ける力で、重力を無視した動きで行った方が楽なのだ。
調査を開始した信長の向かう先は…そう、始めにカイドの妹姫ユリアの安否だ。
ガイバードのナビを頼りに、ユリアのいる部屋へ向かった。
信長のデコイが、ディオスとユリシーグの傍に来る。
どうやら、潜入は成功したようだ。
監視する殺気、アーヴィングもディオスから逸れていない。
ディオスは腕を組みながら
これで、騙されてくれているなら…。
透明ガイバードの信長は、ユリアのいる部屋の塔の壁を、軽々と小走りで昇り、ユリアの部屋の窓を覗くと…。
「うむ…健康そのものだ」
マッドハッターが、ベッドに腰掛けるユリアの胸部に何かの装置を取り付け、端末に繋いで調べている様子だった。
隣にはカイド王子がいて
「本当だろうな!」
マッドハッターはフッと笑み
「ああ…私も、人質の価値は理解している。死なれては君を利用できない事は重々承知だ。心配するな」
マッドハッターはユリアの胸部から装置を外すと、そこには信長が受けた改造と同じようにメタルコアがあった。
ユリアは開いた胸のボタンを閉じて
「お兄様…ごめんなさい」
カイドは、ユリアの肩を持ち
「いいんだ。気にするな…」
優しく労る。
マッドハッターが
「では、これで…」
と、出て行く代わりに、監視の黒騎士が入る。
「あの…」とユリアが「人型のゴーレムとは分かっていますが…その…」
マッドハッターがフンと鼻で笑い
「成る程、プライバシーですか。良いでしょう。貴女の胸部にあるそのガイバードコアがある限り、私の手から逃げられない」
マッドハッターが監視用の黒騎士ゴーレムを連れて
「ああ…カイド王子。少し話があります」
カイドは渋い顔をして「分かった」とそこをマッドハッターと共に離れた。
一人になったユリアは、ベッドから立ち上がり傍にあるテーブルのイスに座る。
俯き何かを考えていると、唐突にベランダの窓が開いた。
「あれ?」
と、ユリアは立ち上がると、開いた窓の隣に透明を解いた漆黒のガイバード、信長が姿を見せる。
「え…」と身を引かせるユリアに信長が
「ああ…待ってくれ」
と、ガイバードを解除、そして
「おれも、アンタと同じだ」
と、胸部にあるガイバードコアを見せた。
ユリアが戸惑いつつ
「貴方は…」
信長が
「おれは、正義の味方さ」
信長は、自分がロマリア皇帝からこの国の事を調べるように頼まれた事を告げ、ユリアは俯き
「なぁ…事情を聞かせて貰えるよなぁ…」
信長の言葉にユリアは頷いた。
信長の調査が終わった夜、剣の館に戻ってきたディオス達、ディオスは姿を隠す魔法を使ってユリシーグと共に、自分達を監視する者を見つける。
剣の館を更に遠くで見られる場所の建物の上に来て、剣の館とその周囲を見渡すと、影から影へ転移して監視するアーヴィングの姿が見えた。
それを、ディオスは高性能の魔導カメラで押さえた。
アーヴィングの姿を押さえたディオスとユリシーグが戻ると、とある部屋でロータスと多くの部下達が信長からのユリアの説明を聞き終えていた。
ロータスが涙を零して顔を押さえていた。
「ああ…情けない。大切な孫の危機を分かってやれなかった自分が悔しい」
ロータスの傍にいる男女様々な魔族、人族、エルフの武人達は、古くよりルクセリア王家と共にあった武家達だ。
その全員が怒りで肩が震え、拳を固く握り怒りと、中には涙する者もいた。
一人がロータスに近付き
「ロータス様、今すぐ、王宮に向かい。王子と王女様を助け出しましょう」
そこへディオスが
「待ってください。相手はユリア王女の生死を握っていますし、前にロマリアのモルドスを襲撃した魔獣ドラゴンを大量に作ったヤツです。どんな隠し球があるか…分かりません。ここは自分が作戦の立案をさせて貰えませんか? 必ず、皆さんの満足する結果をもたらしますので」
ロータスが
「直ぐに、ロマリアのライドル様へ」
「それも待ってください」
と、ディオスが
「恐らく、敵は、国の主要機関の魔導通信システムに何かの細工をしている可能性が高い。自分達が来る事がバレているという事は、そういう事です」
ユリシーグが挙手して
「オレのサルダレスの者が、直接、ライドル皇帝にこのデータを渡す。それで…」
ロータスがディオスに跪き
「ディオス様、アーリシアの大英雄様。どうか…孫達の事を…」
ディオスも跪き
「大丈夫です。任せてください」
力強く頷いた。
その中で一人、信長が燃えていた。
そう、この時の為に…と。
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次話があります。よろしくお願いします。
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