第145話 ロマリア皇家のもてなし
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでください。
あらすじです。
ディオス達家族はロマリアへ向かい、ロマリア皇家のおもてなしを受ける。暖かな家庭のもてなしに喜ぶディオス、そしてとある相談が始まる。
ディオスは、クリシュナ、クレティア、ゼリティア、アイカ、ティリオ、リリーシャ、ゼティア、護衛という名の子供達の面倒を一緒に見て貰うにフランギル達守護の、大所帯でロマリアの皇帝城へ来ていた。
表向きの活動は、最近開発したゲーティアの鍵の説明と、家族とのロマリア観光、ロマリア皇家との交流である。
ディオスは皇帝城で、出会った頃から大きくなったラハトアと会う。
「大きくなったなぁ…」
身長が百七十近くになって幼い少年から青年へ向かっているラハトアに微笑む。
十五になったラハトアは笑み
「お久しぶりですディオスさん」
子供の成長とは、本当に早い。
十二歳の子が、もう…大人への階段を昇り始めている。
ちょっとシミジミするディオスに、ライドルが近寄り
「ようこそ、さあ…一杯やろうではないか…」
今回の事も、ソフィアからの了承を受けている。
相談される内容次第では、手伝えと、許可も取ってある。
皇帝城にある皇族の居住区、後宮に入ると、そこは暖かな壁紙に包まれたアットホームな入口である。
そこに五人の婦人が並んでいる。
金髪で人族のアルミリアスと似た央方、アルミアス。
魔族で青髪の西方、シャリア。
ラハトアの母親にして北方、シャルボア。
黒髪にして凜とした南方、ユリシア。
魔族で赤髪の東方、ターニャ。
五人とも、もの凄い美人だ。
「ようこそ…アーリシアの大英雄の皆様」
と、五人が歓迎してくれる。
「ああ…どうも…」
と、ディオスは頭を下げた。
早速、大きなダイニングキッチンへ来る。
大きな庭先と直結の巨大ダイニングで料理が出てくる。
その料理を作り出しているのが…五人の奥方達だ。
それにディオスは
え? 女中さんとかが…やるんじゃあないの?
自分の中にある王族のイメージとは随分違う。
ディオス達は大きなテーブルに着席して、奥方達が料理を持って来てくれると、ピンポーンとインターフォンが鳴った。
東方が玄関行き
「あら! お父様、お爺様…それにお母様達も!」
玄関から、イルドラと、その息子で人族、前皇帝にしてライドルをそのまま老けさせたようなライドルの父ライハドも来た。
イルドラとライハドは、両手にサーモン二匹を持っていた。
イルドラが
「今日、釣ってきたんじゃ。美味そうじゃろう。油が乗ったケイジとかいうヤツじゃぞ」
奥方達は「まあああああ」と嬉しそうに喜び、早速料理する。
ライハドは、ディオスを見つけると、直ぐに駆け付け
「おお! お主がアーリシアの大英雄か…会いたかったぞ!」
と、ラスボスのような野太い声で喜び、ディオスの肩を抱いて叩いた。
「ああ…ははは」
と、ディオスは苦笑いをした。
超賑やかなロマリア皇族との夕食。イルドラとライハドが釣ってきた特別な鮭は美味で、子供達が大喜びである。
ディオスと似たティリオをライハドが抱き抱え
「いやーーーー 父親と同じ良い目付きをしておるのぉ…」
ディオスを見て、ティリオを抱えながら
「どうじゃ? 我が皇家一族の一人と許嫁にしないか?」
ディオスは微妙な顔で
「その…もう…ヴォルドル家との許嫁が」
「何!」
と、ライハドがチィと舌打ちして
「先を越されたか…」
それに、はははははーーと笑い声が響き、更にインターフォンで
「こんばんは…」
ヴェルオルムとアルミリアスの次期皇帝夫婦が加わった。
ディオスは思う。
もっと、皇家というのだから、格式高くて肩が凝りそうな感じと思ったが…蓋を開けてみれば、沢山の家族で賑わう暖かな家庭がそこにあった。
実は、ロマリアに出張した時、ライドルがとある仕事があるとして、同行したのだ。
それが、モルドスの生活が苦しい夫婦から子供を預かるというのだ。
夫婦は反対していて、難航している所へライドルが行き、夫婦の前で土下座した。
「頼む! ワシにお前達、夫婦と子供を守る事をさせてくれ!」
ライドルは熱く説得する。
今は、夫婦二人の生活を安定させる事を、中心にしてくれ。
子供は離ればなれになる訳ではない。
二人の生活が安定したら、必ず返す。
お主達二人も、子供もワシの大事な民という子供だ! 守らせてくれ!
本気の説得に、夫婦は納得して子供を預け、生活の基盤をチャンとさせる為に、色々な就職職学を学ぶ事になった。
前々から、知っていたが…ライドルは、自国の民を真剣に守ろうとしている。
自分のいた地球のクソな統治者や政治家に、ライドルの爪の垢でも飲ませたいくらいだ!と思った。
しかも、また凄いのが、人をもてなす時は手間やお金を掛けるが、それ以外の普通の場合は合理的な、判断で一般的な日用品を使う。
ディオスが
「皇帝なのですから、使うモノも一級品が多い筈では?」
ライドルが不快な顔で
「はぁ? そんな無駄な事をして意味があるのか? そんな見栄を張るなら、多くでもその予算を民の為に役立てた方が良いではないか」
それを聞いて
はへぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
と、ディオスは頭が下がる思いだった。
やっぱり、五千年の続く帝国の皇帝は、考えさえも凄い。
五千年も帝国が続く理由が痛い程に分かった。
本当に家庭的な暖かいもてなしを受けるディオス達、ライドルの奥方達がアルバムの魔導端末から、ライドルの写真を引っ張り出す。
それを見てディオスは
「はぁ…ラハトアくんと似ているなぁ…」
そう、ラハトアくんは中性な感じの美形少年だ。
アルミリアスの母、央方が
「でしょう。でもよーく見てくださいな」
ディオスはよーく見ると「ん?」と気付く、ちょっと生傷が多い感じがする。
「その…傷跡が…」
北方が
「この写真、十七くらいなんだけど、この当時のあだ名が瞬間湯沸かし器だったの」
「はぁ?」
ディオスは首を傾げる。
南方が渋い顔をして
「この人ね。もの凄く情に厚くて、家族や友達、仲間が酷い目にあっていると、何も考えずに相手に飛び掛かったのよ」
ライドルが俯き顔を隠す。図星らしい。
イルドラとライハドは笑んでいるが、西方が
「あら…お父様もお爺様も、お母様達から聞いた所によると、似たような感じだったらしいと…聞きましたが…」
イルドラとライハドも、ライドルと同じく俯き顔を隠す。図星だった。
「へ、へぇぇ…」
と、ディオスは微笑する。
クレティアが
「じゃあ、ご婦人方達は、ライドル皇帝の…」
南方が微笑み
「ええ…許嫁だったわ。五人共ね」
ディオスは驚きの顔をする。
五人も許嫁なんて、やっぱり人口九億の帝国の皇帝は違うなぁ…と。
東方が
「本当に夫は、小さい頃から暴走列車で、五人してよく、止めたものよ」
『ねぇーーー』と五人が顔を向け合って微笑む。
ライドルは、沈痛な笑みを浮かべる。
央方が
「ディオス様と奥方達の出会いは?」
クレティアとクリシュナは顔を見合わせ、ゼリティアが
「まあ、色々と…勢いというか…」
クレティアが
「その、ダーリンに強引にゲットされて、ある日、突然に結婚する事になってねぇ。クリシュナ」
クリシュナが
「ええ…勢いね」
北方が
「あら、私達と似たようなモノね。私達も勢いかなぁ…」
西方が
「お互いに二十歳くらいになって、どうするかって話し合った時に、この人がねぇ…」
と、ライドルを指さし
南方が
「好きにするといい。破談になってもオレは、止めない。なんて、言ったわ」
東方が
「アナタはどうなの?って聞いたら…」
央方が
「ボロボロと泣き出して、そばに居て欲しい。五人の内、誰かを選べなんてムリだ。全員が欲しい。でも、それはオレのワガママだ…。そう言って大泣きして。もう…ほっとけないとみんなで思ってね」
ディオスはライドルを見ると、ライドルが俯いて顔を上げていない。
ノックダウンされている。
「ああ…もう、その話は…」
と、ディオスが止めに入った。
そう、ここでも奥さんの尻に敷かれている。
仕方ないと思う、もの凄く良くしてくれる奥さん達だ。尻に敷かれた方が楽しいって。
そして、夜も更けた頃、子供達はグッスリとゲストルームの大きなベッドで眠り、奥さん達は、皆で皇帝城にある超巨大温泉へ行った。
ダイニングで、ディオス、ライドル、イルドラ、ライハド、ヴェルオルムの五人で軽く飲み会う。
ディオスが
「ホントに素晴らしい家庭です」
ヴェルオルムが
「ええ…自分も奥方達や、父上達に良くしてもらって幸せです」
ライドル、イルドラ、ライハドの三人は照れくさそうに微笑む。
ディオスが
「こんなに素晴らしい家庭の一族なら…子供の一人を、ここの許嫁にしても良いかもしれません」
ライドルが
「本当か?」
ディオスは肯き
「その、妻達の二番目の子供達からで」
ライハドがディオスの肩を抱き
「いや…その選択、正解だぞ」
イルドラが
「そうなれば、もっと、広がりが出来て、このロマリアも…いいや、世界も良くなる。本当に良い時代になった」
ライドルが
「でだ…話を変えてしまうが…本題の方だが…」
ライドルが、隣国のロマリアの兄弟とされるルクセリア王国の王宮にある不穏な影を、ディオスに告げる。
ディオスは、暫し考えた後
「その勘…当たっているかもしれません」
ディオスの言葉にライドル達は口ごもる。
ディオスが
「その不穏を調べるのを、自分にさせて頂きたい」
ライハドが
「何か、良い方法があるのか?」
ディオスが作戦を告げる。
「成る程…」とイルドラが肯き納得した。
ライハドが
「すまん、アーリシアの大英雄よ」
ディオスは首を横に振り
「いいですよ。将来の子供の許嫁の一族の手伝いを出来るんですから」
ライドルが
「では、早速、色々と手配をさせる。頼んだぞディオス」
二日後、ディオス以外、家族達はバルストランに帰り、入れ替わりにナトゥムラとユリシーグ、信長の三人が来た。
ナトゥムラが
「ソフィアから、事情は聞いている。全く…色々とお前は、頼まれるなぁ…」
ちょっと呆れている。
信長が持って来たスーツケースを
「はい、これが言われた物です」
ディオスに渡す。
「ありがとう」
ユリシーグが
「どうして、オレまで?」
ディオスが渋い顔をして
「色んな布石さ。何かさあ…もの凄く怪しい感じがするんだよ。保険みたいなもんさ」
「ふ…ん」
と、ユリシーグは鼻を鳴らす。
「じゃあ、行くぞ」
ディオスは変装のセットを使って髪を赤く染め、口ひげを付ける。
四人はルクセリア王国に向かう、ロマリアの魔導列車に乗った。
ルクセリア王国、王宮ではベッドにいるユリアの傍にカイドがイスに座って傍にいる。
「もう…大丈夫か?」
「うん」
と、ユリアはカイドが持って来てくれた朝食を食べている。
仲むつまじい兄妹の姿を見つめる一人の男、それはエニグマのマッドハッターだった。
そう、ユリアの胸部にあるのは、エニグマが人体改造に使うメタルコアだった。
兄妹を見るマッドハッターの目は鋭かった。
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