第140話 ダークネス・ティアラ
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あらすじです。
ゴルド達と戦闘するディオス達、ゴルドの攻撃にディオスは…
ガイバード・ギガンティスのゴルドと、神格巨神化したディオスが対峙する。
空で睨み合う両者。
ゴルドは怒りだ。
ディオスは愉悦の笑みで見下す。
「ちぃちぃ」
と、ディオスが挑発する。
ゴルドは、ガイバードギガンティスを超音速で加速させる。
それに、信長の漆黒のガイバードギガンティスが続くが、青き巨狼が信長のガイバードギガンティスに襲い掛かる。
ナトゥムラだ。
神格巨神化して、ディオスと同じ鎧部分しかない甲冑を、その神格フェンリルと一体化させている。
巨狼神フェンリルは、超音速で信長のガイバードギガンティスに食らいつき、ゴルドから引き剥がした。
玲奈の組み込まれた葉巻型戦艦が二つに割れて不気味な花弁の如き金属の触手を大量に伸ばす。
それに白銀の神格巨神が立ち塞がる。
ユリシーグを核とした同じく、甲冑を纏う神格オーディンである。
ゴルドのガイバードギガンティスは、ディオスのマハーカーラ巨神へ拳を繰り出す。
音速を超えた三十メータの巨人の拳は衝撃波を纏っている。
それより、僅かに小さい二十メータのディオスの巨神。
体格差から、圧倒的にゴルドのガイバードギガンティスが勝てる筈が、連打する拳に、ディオスの巨神が拳の連打を合わせ、弾いた次に、ガイバードギガンティスの腹部へ蹴りを放ち、ガイバードギガンティスが吹き飛んだ。
「クソがーーーー」
ゴルドは叫ぶ。
ゴルドのガイバードギガンティスが氷の大地を転がり、そこへ容赦なくディオスのマハーカーラの巨神が拳と蹴りの連打を浴びせる。
ディオスの巨神は空中に浮いて連打しているのだ。普通の物理法則から考えるに、自身の放つ力に負けて大して威力を発揮出来ないのが通じない。
ディオスは、自在に重力の足場を作り出して、存分に威力を乗せているのだ。
ゴルドは必死に防御しながら
ふざけるな、普通なら重力場発生カウンターウェイト背負ってないとムリなんだぞ。
巨大な装置を背負わないと適わない所業を、軽々とディオスは笑いながらやってのける
「はははははは」
ディオスは嘲笑う。
その間に、ディスティニーアークに収容されていた兵器達が出現する。
人を装置として組み込んだ巨人の軍団。
エイのような空飛ぶ兵器群。
無数の空中戦艦達。
ゴルドはその全てをディオスに照準を合わせる。
ディオスは、自分へ向かって来る兵器達を見て
「はは…」
残酷で渇いた笑みをして
「マーキングは終わっているな」
と、何処かへ通信する。
同時にゴルドのガイバードギガンティスを掴み、寝技で押さえる。
片腕絡み十字固めで、押さえながらディオスは
「連結している全兵員に告げる。総攻撃開始」
アーリシア十二国、ロマリア帝国、トルキア共和国とその周辺国、ユグラシア中央とアーリシア大陸全域にいる膨大な数の軍隊が、ディオスの指示によってマーキングされた北極のディスティニーアークへ照準を合わせ、一斉魔導砲撃を開始した。
アーリシア大陸、ロマリア、ユグラシア中央の全てから観測不能な程の魔導砲撃の流星がディスティニーアークへ走る。
ゴルドは絶望した。
蒼穹さえ塗り替える程の膨大な魔導砲撃群に。
まるで、太鼓の上で暴れる米粒達のように、荒れ狂う魔導砲撃の暴雨がディスティニーアークを包み込んだ。
全長五キロの巨大さを支える程の防御シールドが消失、六百メータもの幅がある巨大な金属体が激しく上下する。
そして、そこから出現した兵器群達は、世界の総力を合わせた魔導砲撃群に呆気なく消滅した。
浮かんでいたディスティニーアークは氷の大地へ落ちた。
ゴルドは、恐怖してディオスを見つめる。
ディオスは
「ははは…あはははははは! 全て想定通りだ!」
そう、始めから勝負は決まっていた。
完全にディオスの想定通りの全てが進み、ディオスの手の上で踊っていた。
残酷に楽しげに笑うディオスに、ゴルドは畏怖する。
この纏っているガイバードギガンティスでさえ、強力な兵器だ。
音速を超える打撃を繰り出せる。数十万トンもの質量さえ持ち上げられる。
それなのに、今、全く、ディオスを核としているマハーカーラの巨神から逃れられない。
圧倒的にディオスの神格巨神が上だ。
そして、そこへ…
「終わったぞ」
巨狼神フェンリルであるナトゥムラが両手足をもぎ取って破壊した信長のガイバードギガンティスの残骸を傍へ転がす。
「こっちもだ」
白銀の万能神オーディンであるユリシーグが、オーディンの右手に玲奈の収まるコアを持って現れる。その後ろには、残骸化した戦艦があった。
ディオスは、マハーカーラからゴルドのガイバードギガンティスを離す。
よろよろと、ゴルドのガイバードギガンティスが数歩前に出て、マハーカーラにいるディオスを凝視する。
マカーカーラの核にいるディオスが両手を広げ
「さあ、もっと見せて見ろ! 次は、何をするんだ? あああ! ほら、ほら、ほらぁぁぁ」
ディオスは残酷に笑っている。
ディスティニーアークで行われていた外道の所業にブチ切れて、圧倒的絶望を与えないと気が済まない。
ゴルドは、唖然とする。
この感覚、この圧倒さ、そう…オレが負けた戦争と同じだ…。
ゴルドは、嘗て自分の生き甲斐を奪った男、メルディオルのような絶対的圧倒をディオスからヒシヒシと感じる。
マッドハッターが言っていた事の意味が今、理解出来た。
コイツはここで殺すべき男だ!
オレの命程度で、済むなら安い!
ナトゥムラは残酷になっているディオスに背筋が冷たくなる。
味方だと、凄まじい加護と超術をもたらしてくれる必勝神だ。
だが、敵になったら…考えただけでも怖くなり、それ以上、思うのを止めた。
ユリシーグは
もう…完全に終わった…
そう、痛感した。自分が相手だったら、投降するしかない。
一度、戦った事があるが…良く生きていたなぁ…と思った。
ゴルドは、自分の胸部にあるガイバードのコントロールメタルに触れ
「いや、全く恐ろしい。畏怖、畏敬さえ感じるよ」
「はぁ?」
ディオスは眉間を寄せる。
ゴルドは笑みながら
「自爆でもこんな手段は使いたくなかった。屈辱の極みだからなぁ…まあいい、お前なら惜しくない。生命滅尽魔法、ダークネス・ティアラ」
そのスイッチをゴルドは押した。
ディスティニーアークにある、魔法陣展開装置が起動する。
大地に巨大な魔法陣をエンチャンさせる。
その全長は北極を越えて、ロマリア、アンメリカ、アーリシアの大陸に到達する数千キロ規模だ。
魔法陣で光輝く大地を一望するディオス
「何をした!」
ゴルドは
「キサマを殺す為に、この大陸規模の魔法陣の中にある幼い子達を生け贄にする」
ディオスの瞳が怒りで開き
「はぁ?」
ゴルドは笑いながら
「つまりだ、キサマを殺す魔法の力を放つ為に、赤子や幼い子供達が生け贄にされ、強力な魔法攻撃を発射させるのだ。多くの罪のない子供達が死ぬ。キサマもオレも死ぬ。オレを追い詰めた罰だ」
ナトゥムラが
「ふざけるなーーーー」
怒声を荒げる。
「はははははははははーーーーー」
ゴルドは勝ち誇った笑いを上げる。
ディオスの中で何かが脈動する。
コレヺ許セルノカ?
否
許セルか?
否、断じて否
許ス、アタワズ。
ディオスの中で何かが切れた。
「あああ!」
アーリシアのディオスの屋敷の子供部屋で、子供達と一緒にいるクレティア、クリシュナ、ゼリティアが悶える。
「何じゃ…これは」
ゼリティアがディオスから流れてくる魔力の強さに体が悶える。
クレティアが
「まさか…」
クリシュナが
「いけない。アナタ…」
一緒にいたティリオ、リリーシャ、ゼティアが立ち上がってディオスのいる北を見る。
子供達は呆然と立ち、ディオスのいる方向へ
「パパが…くる…」
と、三人して呟いた。
北極、ディオスを核としてマハーカーラが消え、ディオスから空へ昇る光線が伸びる。
それが空に巨大な門を作る。
「おおおおおおおおおおおおーーー」
ディオスが吼える。
空の巨門から
ゴオオオオオオオオオオオオ
世界を震撼させる咆吼が轟く。
空の巨門に鋭い鉤爪が入り、その巨門が開く。
そこから出現したのは、全長がディスティニーアークと同じ五キロの漆黒の巨体を持つ恐龍だった。
大地を喰らい尽くすような足、全てを引き千切るような鉤爪を備える手、ティラノサウルスのような凶暴な肉食の顎、その背には漆黒の結晶で出来た翼を生やしていた。
大地震を起こして、それが氷の大地に着地した。
ゴオオオオオオオオオオオ
その場景をアリストスの世界樹城で見ていたアインデウス達は、オオオオオ!と驚愕を放つ。
王座にいるアインデウスは鋭い顔をして
「ついに…ここまで来たか、ディオスよ!」
隣にいる白姫アルディニアが
「彼は…ドッラークレス(超龍)を現化させたのですね」
「ああ…」
と、アインデウスは深く頷いた。
北極の激変する事態、ディオスが現下した漆黒の超弩級存在、アインデウス達の告げるドッラークレスが、ディオスを胸中前に、ディオスに共鳴して動く。
ゴオオオオオオオオオオ
世界を震撼させる雄叫び。
ドッラークレスより膨大な量の魔力が噴出する。
暴風の如き魔力から身を守ろうと、防壁を展開するナトゥムラとユリシーグ。
その正面にある防壁に魔力の奔流がぶつかった瞬間、魔導石化して、防壁型の魔導石が出来た。
「ウソだろう」
と、ナトゥムラが驚愕する。
ゴルドは、魔力の奔流を浴びて、ガイバードギガンティスの巨体に魔導石が生じて固められる。
「バカな!」
ディオスのドッラークレスが、ダークネス・ティアラを展開するディスティニーアークへ近付く。
歩く度に地震が氷河の大地を震撼する。
そして、ディスティニーアークへ来て、その凶悪な鉤爪がある両手で持ち上げようとするが、大地に魔法をエンチャンして接続されるディスティニーアークは、持ち上がらない。
「アアアアアア!」
ディオスが吼える。
ゴオオオオオオオオオオオ
ドッラークレスも咆吼を上げる。
漆黒の全長五キロの超龍体が、その身に宿る、恐るべき力をディスティニーアークへ押し込める。
数千キロにも及ぶ巨大魔法陣が歪み、砕け散った。
世界規模魔法陣が消えた後、ディスティニーアークは大地の繋がりから解き放たれ、ディオスのドッラークレスが持ち上げる。
ゴオオオオオオオオオ
ドッラークレスは、強烈な力を込めて、五キロの、小さな大地クラスのそれを真っ二つにした。
ディスティニーアークは、裂けて残骸を氷河の大地にバラ撒く。
それを防壁から見ていたユリシーグは真っ青になり
「訳がわからん」
と、つぶいた。
破壊されたディスティニーアークの残骸達を前に、ディオスのドッラークレスの怒りは止まらない。
更に何かの力を放出させようと、全身から光を昇らせる。
アリストス共和帝国、世界樹城のアインデウスは、王座から急いで立ち上がり
「力に飲まれおって! バカ者がーーーー」
アインデウスは、右手を空へ伸ばすと、そこから空へ光が昇る。
ディオスのドッラークレスが、更に何かをしようとする空から、巨大な大陸クラスの漆黒の鉤爪の手が降りる。
五キロのディオスのドッラークレスさえ、軽々と手中に出来る程の超巨大な鉤爪の手は、ディオスのドッラークレスを包み込むと、その手の中に膨大な力を放って収束させ、ディオスのドッラークレスに当てると、ガクンと五キロの超龍体が項垂れ、それと共鳴していたディオスの体を揺らがせ、ゆっくりと氷河の地面へ着地する。
ディオスが着地するのと同時に、空から現れた巨大な手も、ドッラークレスも粉々に砕けて、空へ昇って消える。
ナトゥムラがフェンリルで、ディオスの下へ駆け付け
「大丈夫か!」
ディオスは呆然と立っている。
フェンリルを解除したナトゥムラは、ディオスの肩を持ち
「おい! しっかりしろーーー」
ディオスがビックと意識を、焦点を戻して
「あれ? ナトゥムラさん?」
ナトゥムラがディオスの顔を覗き
「憶えているか?」
ディオスは瞬きした後、右手で顔を押さえ
「オレは…何を…」
そう、記憶がある。
ナトゥムラは頭を振り
「とにかく、今は落ち着け。戻るぞ…」
ディオスを味方の軍勢の下へ戻そうとすると…
ガチと何かが踏まれる音がした。
ディオスとナトゥムラが音のした正面を見ると…。
巨人ではない人サイズのガイバードで、その外装が所々破壊され、素顔が露出しているゴルドがいた。
何とか魔導石の結晶に覆われる前にギガンティスの巨体から脱出していた。
ゴルドは恐怖する笑みを向け
「はぁ…お前は…ははは」
ナトゥムラが剣を手にして構え
「抵抗するか?」
ゴルドはフッと恐怖と皮肉が入った嘲笑を向け
「いいか、ディオス・グレンテル!」
ディオスは鋭い顔をして
「何が言いたい?」
ゴルドは、ディオスを指さし
「この世界はなぁーーーー」
その背にアルディルが来て
「おっと、そこまで…」
ゴルドを瞬間冷凍冬眠させる氷の魔法で、冬眠の氷の中へ閉じ込めた。
ディオスは渋い顔をして
「また、お前か…」
アルディルはフッと笑み
「ええ…そうよ」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。