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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
ディオスの仲間達
136/1107

第135話 エニグマになる前、ゴルド

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


これは、エニグマ、ゴルドの前の話である。


 彼には記憶がない。

 年齢として十四だ。

 どこで産まれ、どう育てられたか? その全ての記憶が抹消された。

 ここでは必要ないからだ。

 彼のいた施設は、遺伝子を操作して強靱で知性が高い戦士を作り出す場所だった。

 無論、彼は産んだ母親や父親がいる筈だ。

 だが、それは必要ない。


 獅子は子を千尋の谷に落とし、這い上がった子を育てる。

 やがて育った子は、父親をくびり殺し、母親と姉、妹をレイプして、父親と同じように、レイプした女性から産まれた子を千尋の谷に落とし、父親と同じように殺される。

 まさに、獅子となるには、そのような呪いじみた破滅のループの非人道的な行いでしか生み出せない。


 まさに、意味の無い事である。


 そんな無駄をするより、最初からそれ相応の、強靱な因子を持った子供を作り、強靱に戦士として育てる方が効率的で、精神を痛まないし、トラウマもないので、冷静で知性が高い人物が出来上がる。


 彼はその中でも飛び抜けて優秀だった。

 彼と同じ子供達は、同じ施設に多くいた。

 その規格に外れれば淘汰される事は無い。

 その戦士となる子供の得意分野を伸ばし、それ相応の場所へ子供達を導く。

 

 無駄な精神論。

 努力すれば、報われるなんて、意味の無い事をしない。

 鉄は熱いうちに叩けなんて、人は鉄ではない。愚かな考えだ。

 人は才能の存在、可能性の獣、己の適正にあった、適正な戦士になるだけ、何故なら、その子達は、始めから優秀な因子を持っているからだ。


 そして、その子達が必要とされる戦争もあった。

 そこでその子達は圧倒的な力を発揮する。

 全てが順調だった。

 そんな子供達の彼、ゴールド、ゴルドも素晴らしい栄誉を上げる。

 

 二十歳になり、戦争の終わりが見えた。

 勝利目前で、戦況は盤上が引っ繰り返る事態になった。

 全てが超絶に圧倒する力に一蹴され、ゴルド達は敗北した。

 

 栄誉も、名声も、戦う意味さえ没収されたゴルド達だが、最後まで戦い、僅かしか生き残らなかった。

 その後、ゴルド達を待っていたのは、社会不適合者としての烙印だった。

 勇士と謂われ、褒め称えられたゴルド達は、ただの犯罪者一歩手前の存在に成り下がった。


 ゴルド達は散り散りにされ、社会公正という名の監視という飼い殺しが始まった。


 ゴルドはとある女性の元へ保護観察という、監視下に入る。

 女性は二十歳のゴルドより二つ上のブロンド髪で、仕事は裁判に関する長官の仕事をしていた。

 その女性の下で日々を過ごす。

 日常の常識、生活の仕方、掃除、家事と、一般社会としての当たり前の生活。

 いわば、女性の世話をするヒモ男のような日々だ。


 女性はゴルドを保護した目的があった。

 ゴルドには、知性も体力も、とにかく優れた因子を持つ遺伝を保有していた。

 女性の望みは、自分の子供を作る事。

 だが、ただの子供では満足出来ない、自分より優秀な因子を持つ子供。

 そんな幻想に囚われていた。

 

 やがて、ゴルドの社会適合の評価が認められ、ゴルドの遺伝子の中で優秀な因子の生殖細胞を取り出し、自分の遺伝と混ぜて、子供を作り妊娠した。


 女性にとっては、ゴルドはただの利用できるだけのモノ。

 それだけ、出産後は、世話の出来るゴルドに任せればいい。

 自分は悠々自適に、エリートのステップと母親という信用を得て、更なる飛躍が出来ると…この時は思っていた。

 だから、ゴルドにこんな事を言った。


 愛情なんてバーチャルの体験で十分よ。


 それを聞いたゴルドには、何の変化もなかった。

 いや、心の乱れさえない。

 そう、ゴルドは戦士としての人生こそ、生き甲斐なのだ。

 このような日常など、生きている感触がしなかった。

 だから…チャンスを狙っていた。


 子供が生まれた、ゴルドの金髪を持った愛らしい女の子だった。

 女性は赤ん坊を得た事で、考えが変わり始める。

 今までエリートを生きるのが人生だと思っていた。

 だが、赤ん坊がそれを変えた。

 赤ん坊にとって両親は絶対に必要なのだ。

 両親こそ、一番なのだ。


 赤ん坊を通して、今まで出会えなかった事が起こり、多くの代えがたい幸せを手にした。

 ゴルドも、赤ん坊の面倒をよく見てくれる。

 赤ん坊にとって。とても良い父親だった。


 女性は思う。このまま、この幸せが続いて欲しい。

 だが、ゴルドだけは、毎日をカウントしていた。

 後、四年。


 女性は、ゴルドに今、幸せ?と。

 だが、ゴルドは、女性が前にいった言葉をそのまま吐いた。


 愛なんてヴァーチャルで十分だろう。


 女性は恐怖した。

 自分がやってきた事へのしっぺ返しが襲ってきたのだ。


 何とか、この日常を守ろうと、奔走する。

 だが、変わらない。

 変えられない。時間が全く足りない。

 

 ゴルドの保護観察が終わるまで後、三年。


 ゴルドは待っているのだ自分が解放される日を…。


 女性は、必死に家族の時間を作って大事にする。

 沢山の思い出を娘とゴルド共に作る。

 それで、ゴルドは考え直してくれると…。


 後二年。


 ゴルドは、良い父親だった。

 子供を大切にしていた。

 愛情があった。だが、ゴルドにとってそれは生き甲斐ではないのだ。

 女性は、幸せな思い出だけを沢山作り。

 ゴルドは、ただ…解放される日を待つ。


 女性は焦る。


 このままでは、ゴルドは確実に何処かへ消える。

 なんとかして止めねば。

 ゴルドを診察している医師に、ゴルドは異常だと伝える。

 

 医師は頭を横に振る。

 そんな事はありません。彼はいたって正常です。むしろ、強靱な方だ。

 そう、ゴルドの保護観察は、いわば、政治的な所為で行われていたのを医師は分かっている。

 始めから、異常者ではない。

 戦士として鍛えられ、強靱な人物であるという、分かっているのだ。

 だから、医師は逆に女性に対して精神を安定させる処方をした。


 後、一年


 女性は、ゴルドに提案する。

 もう一人、子供を作ろう。

 今度は、人工授精ではない。ちゃんと夫婦として作ろうと…。


 だが…愛なんてヴァーチャルで十分だろう。


 ゴルドの変わらない言葉、昔、自分が傲り高ぶり、間違った所業のツケだった。

 女性は、ゴルドに縋った。

 止める為、この日々を守る為に。

 自分が間違いだったと


 その日は来た。


 何時ものようにゴルドは娘を保育園に預け、女性は仕事へ向かった。

 仕事場に来た女性は、時間をチェックする。

 もう、ゴルドが子供を預けて家にいる時間だ。

 家に連絡を入れる。

 誰も出ない。

 女性は仕事を放りだして、家に帰る。


 そこは、ゴルドの荷物だけが消えた場所だった。


 ゴルドは荷物を抱えて街中を進む。

 自分の行く先なんて幾らでもある。

 世界には戦場が、生き甲斐が満ちている。


 そこへ、とある男が呼び掛ける。

 黒の長髪、碧の瞳の優男、その笑みはまるで残虐な道化師のようだ。

 ゴルドは直ぐに男が誰だか分かった。

 かつて、自分達を敗北させた人物だ。

 優男はゴルドに語る。

 君の死に場所たる修羅の戦場があるのだがねぇ…。


 ゴルドは笑う。

 それこそ、待ち望んでいたからだ。


 女性は、必死にゴルドを探す。

 警察にも届けて、とにかく、全てを忘れてゴルドを探す。

 全く見つからない。

 焦燥して、娘を迎えに行くしかなくなり、娘と帰る道がら

「ねぇ…良い子じゃなかったから、パパは、いなくなったの?」

 娘の言葉に女性は涙して、娘を抱き締めるしかなかった。


 女性の全ての幸せが崩壊した。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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