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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
ティリオの許嫁と、アフーリア大陸での
134/1107

第133話 施設へ潜入

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでください。

あらすじです。


アンジェロからの情報でとある施設に目星をつけたディオス達、その施設への潜入を同じく調査しているシューティア教暗部サルダレスのユリシーグの協力を得て潜入するが。


 アンジェロからとある施設の話を聞く。

「街の外れの平原にあるここ…」

 ディオス達がいる宿場の部屋で地図を広げ、指さす場所。

「ここは、自国や、周辺国で裁かれて死刑判決をくらったヤツが、死刑にされる。いわば、国々の死刑代行施設なんだよ」


 地図にある六角形の建物を見つめるディオス。

「この施設が…怪しいのか?」


 アンジェロは複雑な顔をして

「この施設で死刑になったヤツは、遺体が焼かれて骨になって帰って来る。だが、とある偶々の事例で、死刑になった遺体を燃やされないで引き取りたいってヤツがいて…。その引き取り手が、遺体とご対面した時に、その遺体がカラカラのミイラのようになっていたらしい」


 ディオスはピント来る。

 たしか、エビルの外法で、命をアクワ・ウェーターにした場合…ミイラのような遺体になるはず…。


 アンジェロが

「それでさあ、妙な事なんだが…。この死刑代行施設で死刑があった次の日に、例の魔法を増幅する宝石が、多く出回るんだよ」


 そばにいるケンジロウが渋い顔をして

「おい、ディオス…確か…その宝石を作る材料は、人の命だったよなぁ…」


 ディオスは顎を擦りながら

「関連がないとは…思えないなぁ…」


 ディオスは隣にいるカルラに

「カルラ、この施設に関する情報を…」


 アンジェロが懐から小型の魔導端末を取り出し

「この施設に関する事は、分かる範囲で、ウチが調べておいたぜ」


 ディオスはそれを受け取り、アンジェロを見ると


 アンジェロは

「大丈夫ですよ。普通の端末ですから」


 ディオスは、通常の端末のように魔力を込めると、片手サイズの魔導端末から立体画面が出る。

 本当に普通の魔導端末だ。

 ディオスは情報を見ながら

「はぁ…政府の仕事を民間に下ろす。経費をピンハネする天下りの会社がやっているのか…」

 まあ、こういう会社は何処の国にもある。

「主に、政府関係の施設の警備と運営を民間に下ろして…」

 そして、例の施設の関係になる。

「ああ…その天下りの会社から、死刑代行施設の運営を任されているのが…マルスク会社?」


 その会社名に、カルラが反応して

「マルクス…かつて、ゾルトリアとの間持ちをしていた裏の会社の一つです」


 ディオスは鋭い顔をする。

 間違いなく黒が見える状況だ。


 ケンジロウが葉巻を咥えて

「おい。どうする? 黒が濃厚だぜ」


 ディオスは額を小突きながら

「潜入して調べてみたいが…」


 アンジェロが渋い顔をして

「それは…ちょっとムリに近いぜ。街の外れの平原のど真ん中にあるんだから」


 カルラが

「ウチ組織で色々と調べましょうか?」


 ディオスはう…と唸り

「そうだなぁ…」

と、そうするしかない状況に、部屋の玄関がノックされる。


「ディオス、オレだ」

 ユリシーグの声だ。

 シューティア教、暗部サルダレスもこれに関わっていた。


 ディオスが玄関を開けてユリシーグを入れると

「全く何て所に泊まっているんだ…。奥さん達が知ったら嘆くぞ」


「ああ…うむ」

と、ディオスはそれに納得する。


 ユリシーグを皆の話の場に連れてくる。

 ユリシーグが地図を広げて話し合っている様子に

「なんだ? 何か、進展でもあったのか?」


「実は…」

と、ディオスが、この死刑代行施設が怪しいという話をすると、ユリシーグが

「潜入か…あ、ちょっと待ってくれ…」

 ユリシーグは小型魔導通信機で本部と会話すると

「あ、はい、はい…ああ、はい、そうですか。分かりました」

 ユリシーグが通信機をしまって

「潜入できるルートがあるぞ」


 そして、二日後、ディオス達はその行動を起こす。

 まず、どうやってディオス達を監視しているか、シャリカランで調べて貰うと、ディオス達の宿とする売春宿場の傍にあるビルの上に、姿を不可視にしたあのヘリ擬きが居座ってディオス達を監視していたのだ。

 ディオスとケンジロウは、変装という女装をしてそこから出る。

 シャリカランの者達が、ヘリ擬きの動きを確認、動いていない事を確認して、ディオス達の女装という変装の成功を伝える。

 ディオスは慣れないヒールに気持ち悪さを感じていた。

 

 そして、シューティア教の教会に入り、そこでサルダレスのユリシーグと合流する。

 ユリシーグは女装するディオスとケンジロウを見て、ぷ!と吹いた。

 チョット、ディオスは額に青筋が浮かぶ。


 普通の戦闘服に着替えると、その上から牧師のローブの衣装を纏う。

 ここまで付き添いで運んでくれたアニアとジャニアにディオスは

「色々とすまなかった。怖い思いもさせてしまった」


 ジャニアは微笑み

「いいのよ。それよりも気をつけてね」


 アニアは投げキッスをして

「終わったら、タップリサービスして癒やしてあげるから」


 それにディオスは渋い顔をして

「普通の料理とかの方で」


 ケンジロウが

「お前は…堅いんだよ!」



 牧師姿のユリシーグとケンジロウ、ディオスの三人は、魔導車に乗って例の死刑代行施設へ向かった。

 この施設では、死刑が行われた際にシューティア教の祈りの鎮魂が行われる。

 施設が周に一回に行う死刑執行は、国々から集められて十数名にも及ぶ。

 その週に一回が今日で、施設から要請されて、教会の関係者が向かう。

 それに紛れて潜入する。

 移動の最中、ディオスはカルラから渡された施設に関する資料を見つめる。

 施設に勤めている人物はいない。

 どうやって死刑が実施されているのか、誰も知らない。

 まあ、知りたくもないだろうけど…。

 

 施設に到着すると、施設指定の駐車場に魔導車を止めて、その傍にあるドアが自動で開く。入って進めという事だ。

 入ると一本道しかない。

 進み続けると、ホールに来る。

 ドアがあって何かを載せる台のコンベアーがあった。

 このドアから、骨となり骨壺に入った死刑囚の遺体が来て、そこに冥福の祈りを捧げるのだ。

 そのドアが開いて両手に抱える骨壺が流れて置かれる。


 三人は足下に何かのプレートを落とし「行きますよ」と背後から声がした。

 ラーナである。


 ラーナのスキル、スニーキング・ステップによって姿が隠れた瞬間、足下に落としたプレートから三人の立体映像が投影される。


 これで、三人はここにいるという事で警戒はされない。


 ラーナに触れていれば姿が隠れるので、四人はラーナを先頭に、ラーナに触れながら、骨壺が流れて来たドアを潜る。


 十メータ進んだ先、そこはむき出しの機械群が密集する空間だった。

「これが無人の理由か…」

と、ディオスは呟く。


 機械が規則正しく動き、装置が動く様は、自転車を自動で駐輪する地下施設のような感じだ。

 人が歩むスペースがない事、そして、監視用のカメラや装置が見えない事から、姿を見せても大丈夫と判断して、三人はラーナから手を離す。


 ユリシーグが

「さて、どう調べる?」


 ディオスが

「人のスペースは少ないだろうが…何処か、必ず人が入れるコントロールの部屋がある筈だ」


 ケンジロウが

「手間だなあ…」


「調べよう」

と、ディオスは装置の上を飛ぶ。


 簡単なロッククライミングのような内部を進む内に、天井が透明な大きなボックスが運ばれる。

 死刑囚達が入ったボックスだ。

 死刑囚達は、ドンドンと壁を叩いて何かを叫んでいるようだが、ボックスが頑丈な為にか細い。


 男達だけの死刑囚のボックスが、とある円形の広場に置かれると、その円形の広場に魔法陣が投影され、発動する。

 人をアクワ・ウェーターにする術式だ。

 死刑囚の体から赤い筋が伸びて、ボックスの上にある透明な試験管のようなケースに赤い筋が集まり固まる。

 赤い筋を放出する死刑囚達は、見る見る枯渇してミイラになって死んだ。

 ボックスの上にあった試験管のケースに両手で握れる程度のアクワ・ウェーターが浮かぶ。


 処刑を終えた装置は、遺体の入ったボックスを運び、焼却装置へ遺体を流し込んだ。

 まるで、ゴミでも燃やす無情さで、人の死が始末される。


 それを見たディオスは、何とも言えない気持ちになる。


 死刑囚の命を結晶化させたアクワ・ウェーターの入る試験管のケースは別の場所に運ばれる。

 それをディオス達は追った。


 アクワ・ウェーターが到着した場所は、ガラス管の培養槽が並ぶ場所だった。

 その培養槽には、様々なモノが浮かんでいる。

 何かの生物、金属の根を生やすメダル、歪で凶悪なバケモノ

 そこが、生体物の実験場であるのは明らかだった。

 アクワ・ウェーターがその中心である台座に接続される。

 そして、何かのエネルギーを培養槽達へ回路を通じて流す。

 ディオスは、その台座に来ると、台座の下にある培養槽に、あの魔法を増幅させる赤い宝石が貯まっているのが確認出来る。

 何かの培養をする為の副産物として、あの宝石が生産されるのだ。

 培養槽に浮かぶ何か達を見て、ケンジロウにユリシーグは複雑な顔をする。


「こんな事になっているとは…」

 ユリシーグが告げる。


 ラーナが不安な顔で

「この後、どうしますか? ここを破壊しますか?」


 ディオスが

「データを持ち帰る。施設の事をどうするかは、この施設の事の実体を明かしてからだ」

 ディオスは周囲を見渡す。

 どこかに端末は…あった。

 実験施設のような部分なら、人が触れられる端末がある。

 端末の前にディオスは来て、魔導収納からリーレシアで貰ったダイアマイト級の特注端末を取り出し接続、施設のシステムと繋げる。

 ダイアマイトの端末は直ぐに、施設のシステムのロックを解除して、施設内のデータを取り込む。

 膨大な量なのは間違いない。

 数時間は掛かるし、全部、取り切れないだろうが、証拠のデータさえ押さえれば後で、どうにでも圧力を掛けて、開示させられるだろう。

 ディオスがデータを取っている最中、ケンジロウが培養槽に浮かぶ物体達を見つめ

「胸くそ悪いぜ」

と、気分が良くない。


 ユリシーグが

「完全に魔導生体兵器禁止条約に違反している。悪魔の所行だ」

 ここにあるのは、魔物を改造した魔獣という魔導生体兵器並の禁止物ばかりだ。


 ラーナは、自然と頼れるディオスの傍に来て、ディオスの纏っている魔導士ローブの裾を掴んでいた。

 そんな事に気付かないディオスは、情報を抜いている端末を見つめていると、端末が情報が取り切れないとして、ダウンロードを停止させた。


 ディオスは、取り込んだデータの項目を確認する。

 施設が、どのように死刑を行っているか、そのアクワ・ウェーターがどのように使われているか、そして、施設の運営に関係する人物達の一覧。

 この製造されている生体物のデータが大きすぎて入らないが、施設の実体さえ分かれば良しだ。


 ディオスは、端末を外すと…コツコツと誰かが近付く足音がする。

 その音がする右を見るディオス。

 まあ、お約束としては…

「おやおや、君達を招待した憶えはないのだがねぇ…」

 キャロルが来る。


 ラーナは両手を回し、魔導収納からククリナイフを取り出し両手に握る。


 ケンジロウ、ユリシーグは身を低くして構える。


 ディオスは毅然と胸を張り

「久しぶりだな」


 キャロルはニヤリと怪しげな笑みをして

「どうだね? この施設は?」


 ディオスはフッと嘲笑い

「悪趣味にも程がある」


 キャロルは手をディオスに向け

「言って置くが…ここは私の管轄する場所だ。エニグマとの繋がりを探ろうとしても、何も出てこないぞ」


 ディオスが「ふ…ん」と鼻を鳴らし

「で、どうしろ…」


 キャロルは両手を広げ

「この施設に関する事は、このベアナハ共和国の上層部も認知している。謂わば、必要な場所だ。魔獣の生産、その他、魔導生体兵器の研究開発。どれもこの国を支えるに必要な事だ。それを壊すというのは、この国を壊すという事だ。それをアーリシアの大英雄は望むのかね?」

 この施設の必要性を説いている。

 キャロルは

「世の中とは、清廉過ぎても回らない。このような闇の部分が必要だ。分かる筈だ。お前は、国の機関に属しているんだ。お前だけじゃあない。そこにいる、お前も、お前も、お前も」

 キャロルはラーナ、ユリシーグ、ケンジロウを指さす。

「世の中に必要な悪だ。ここもそうなのだ」


 ケンジロウが顔を鋭くさせ

「自分の事を棚に上げてご託を…」


 ディオスが手をケンジロウに向けて止め

「お前の言いたい事は良く分かった」


「ほう…で?」

と、キャロルが


 ディオスは

「まあ、確かに必要悪かもしれん。死刑制度にオレは異議を唱える場所にもいない。だが…これはやり過ぎだ。必要悪にもそれなりの筋がある。ここはその筋から逸脱した場所だ。ここまでやれなんて…誰も思ってもいないぜ」


 キャロルはそれを聞き

「やれやれ、堅い男だ。それなら…」

 キャロルの殺気が膨れる。


 それに呼応してディオス達の殺気も上がる。


 一触即発の事態だ。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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