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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
ゼウスリオンの騒乱
128/1107

第127話 ククルクの判決

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ククルクのゼウスリオン無断製造に関する裁判が始まった。ククルクの運命は?


 ククルクは、アーリシアのバルストラン共和王国の法廷の前にいた。

 王族という身分故に、手錠ではなく、シルクで作られた布の手枷が填まっている。

 一応は、名誉ある身分というのを保障はされているが…。


 法廷の裁判長がククルクを見つめ

「では、これより、ククルク・リシャル・ナイトレイドの裁判を始める」

 ククルクは静かに裁判長を見つめる。


 前代未聞の、ナイトレイド連合帝国の次期皇帝たる皇女の裁判を見ようと傍聴席のチケットは応募が数万倍も集中するチケットになった。


 裁判長が罪状を読み上げる。

「被告人の罪状を読み上げる。

 一、ロマリアで製造される筈のゼウスリオンの材料であるゼウスインゴットの強奪

 二、ゼウスリオンの違法製造

 三、ディオス・グレンテル氏の子息及び、本人の誘拐

 これに、相違ないか?」


 ククルクは肯き

「はい、相違ありません」


 検察側の論調

 今回の事件に際して、綿密な計画が練られており、その証拠も多数上がっています。

 この計画犯罪について…

 と、ククルクの罪の説明をする。


 ククルクを弁護する弁護士は

 今回の事は、緊急に値する。

 そもそも、ゼウスリオンやそれに関する製造は、国家の機密犯罪に当たる。

 国家間の争いになります。それに対する罪状は国家間では問わないというルールがあります。

 従って彼女、ククルク氏の罪は問われないと…。

 何より、ククルク氏の国に対する現状を考えれば、致し方ないという事も分かります。

 そして、ククルク氏の犯した罪に対する保障もナイトレイド連合帝国よりされております。

 ククルクを弁明する。


 交互に検察と弁護人の意見が交わされる。


 その裏では、ナイトレイド連合帝国の有力者達が、各国を回る。

 

 ククルクを助けようとシャードルが、バルストラン王ソフィアの前で土下座する。

 ソフィアはシャードルに近づき、面を上げさせようとするも、シャードルは拒否して土下座を続ける。


 アリストス共和帝国の世界樹城ではアインデウスを前に、ガルザルが頭を下げる。

 イチ帝国の皇帝が、ククルクの許しを得る為に、必死である。


 ナイトレイド連合帝国の皆が全て分かっていた。

 ククルクに全ての解決を委ねて、何も出来なかった自分達を恥じていた。

 

 とにかく、ナイトレイド連合帝国の王族、貴族達は、頼れるだけの伝手を頼って、アーリシア、ロマリア、アリストスの権力者達の元へ向かい、頭を下げる。



 裁判が三日目、ククルクに対しての判決が言い渡される日だ。

 

 裁判長は、淡々と告げる。

「被告、ククルク・リシャル・ナイトレイド。汝の犯した罪は確かに罪であるが…。汝の国を思う気持ちとそれを背負う覚悟を裁ける程、私は高慢ではありません。よって、汝に対する裁きをとある人物に委ねたいと思います」


 ドンドンと裁判長がハンマーを叩くと、法廷の奥にあるドアが開いて一人の男が現れる。

 それはディオスだった。


 ククルクは驚きの顔をディオスに向ける。


 ディオスは粛々と裁判長の前に来て

「今回の事件に対しての裁きをアナタに委ねます。アーリシアの大英雄よ」


 裁判長の言葉にディオスは右手を挙げ

「裁判長のご指示通りに…従います」



 ディオスはククルクを連れてバルストラン王都にある最高裁判所を出る。

 その背にククルクが

「ディオス…どうするつもりじゃ?」


 ディオスは肩を竦め

「来れば分かる」

と、言い脇にある銅像を見つめ

「隠れているのは分かっているぞ!」


 銅像の影からアンダルとランダルが姿を見せる。 

 二人は腰にある剣に手を置いている。

 そう、ククルクを取り戻す為に荒事をしてもいい覚悟だった。


 ディオスは二人に

「お前等も付いてこい」


 ディオスは三人を魔導車に乗せて王都を後にする。


 そして、来た場所は、ディオスの屋敷だった。

「なぜ、ここに?」

 ククルクが首を傾げると、玄関が開いてティリオが顔を見せる。


「あ、ククルクお姉ちゃん!」

 ティリオがククルクに抱き付く。


 そして、玄関に隠れてリリーシャとゼティアも顔を見せる。


 ククルクは混乱していると、ディオスが

「お前が、壊した屋敷の窓と、汚したカーペットの代金、子供達のシッターを一ヶ月して払え!」


 ククルクはキョトンとする。


 アンダルが

「その一ヶ月が過ぎた後は…?」


 ディオスはフンと息を荒げ

「知らん、好きにしろ」


 こうして、ククルクの罪は、一ヶ月のシッターという程度で済まされる事になった。


 この日から、ティリオはちょうご満悦だった。

 日中、ククルクとアンダル達が、ティリオとリリーシャにゼティアの相手をして、遊び。

 夜は、一緒にお風呂に入って、三人の子供達が一緒に眠る大きなベッドへ、ククルクも一緒に入って眠る。


 二十四時間、ククルクが相手をしてくれる現状に、ティリオは楽しげである。

 リリーシャとゼティアは、始めは戸惑っていたが、馴染んでしまい。

 よく、ククルクに抱っこをねだるようになった。


 四日経った夜、ディオスはフェニックス町の自治会、会合に出ていた。

 ギルド兼食堂のそこで、自治会の話を聞いて、その後は一杯となり、ディオスが軽く引っかけていると、周囲がニヤニヤと微笑んでいる。


 ディオスがそれに気付き

「どうしたんですか?」


 隣にいるヒロキが

「いや…ディオスさんの器はデカいなぁ…とねぇ」


 ディオスは首を傾げ

「はぁ?」

と、意味が分からなかった。


 周りが微笑みながら

「普通、自分や子供を攫った相手を許して、寛大な処置を周りに頼んでいたんでしょう」


 ディオスはそれがククルクの事だと分かり

「ああ…。まあ…事情を知ると、致し方ない部分もあったかなぁ…って」


「それでもねぇ…」

と、町の人達は顔を見合わせる。


 ディオスはフッと笑み

「いいんじゃない。全て丸く収まったから」


 町の人達は、まあ…こういう人だからなぁ…と楽しげに微笑み合った。



 ククルクが来て一週間後、ディオスはロマリアへの出張である。

 本来は、ロマリアが建造するであろうゼウスリオンを、ククルクが材料を奪って作ってしまい、リセットされてしまった。

 その再スタートが始まり、ディオスがゼウスリオン、ヴァルガを作った技術を使っての新たなゼウスリオンの建造をロマリアで行うのだ。

 

 朝の早い屋敷の玄関前で

「行って来ます」

と、ディオスは告げる。

 今回は大人しく、ロマリアへ出張してくれる。

 まあ、ゼウスリオン、ヴァルガを作るに夢中になって色々と新技術を開発したのが自分なので、当然の結果として受け入れている。


 レベッカが

「いってらしゃいませ」

と、お辞儀する。


 クレティアが

「じゃあ、気をつけてね」


 クリシュナが

「まあ、程々にね」


「うむ」とディオスが頷くと、後ろの庭先へ魔導車が来た。


 そこから

「よう!」

 ナトゥムラが顔を出す。


 ディオスがナトゥムラに

「よろしく、ナトゥムラさん」


「任せろ!」

と、ナトゥムラは右腕に力こぶを作る。

 そう、出張する度に、色々と面倒に巻き込まれるので、腕が立つナトゥムラに護衛を頼んだのだ。


 クレティアがディオスの背を押して

「さあ、早く行って。子供達が目を覚まして見つかると、駄々をこねて行かせないようにするから、ね」


「ああ…」

 ディオスは、肯きナトゥムラと共にロマリアへ出発した。




 ロマリアに到着したディオスは、ロマリアとアーリシア、アリストスの技術者、科学者と共に、新たなゼウスリオンの建造を始める。

 ディオスは、魔導演算回路をダウンサイジングして作った、経路選択型回路の製造を行う。

 アルスートリ大陸で編み出した圧縮魔法陣叩き込み技術を振るう。


 ゼウスインゴットに、展開した魔法陣を打ち込む特製ハンマーを使い、その様子をディオスの腕や額に付いた端子からモニターをしている。

 このディオスの魔法陣叩き込む技術を、どうにかして系統化して多くに活用できないかと、模索する。

 モニターを見るドリトルが

「参りましたなぁ…複雑過ぎる」


 アーリシアのエルダー級魔導士のケンブリッジもいて難しい顔をして

「これは…本当に独自過ぎて、難しいですなぁ…」


 叩き込みを終えたディオスが来て

「何か、使えそうですか?」


 ドリトルが渋い顔をして

「何とも言えませんなぁ…」


 それにディオスは残念な顔をして

「そうですか…」


 ケンブリッジが

「一応は技術登録をして置きましょう」


 ディオスは魔法陣を叩き込む特製ハンマーを見つめ

「あの…こういう特許はどうです?」


 ディオスからの説明を周囲の科学者や技術者が聞いて

「おお…確かにそれなら使い所はありますなぁ…」

と、技術者達が同意する。


 ドリトルが、特製ハンマーを持ち

「確かに、それなら可能でしょう。では特許登録を…」


 ディオスは顎に手を当て考えた後

「その…この特許を、国庫特許にしませんか?」


 国庫特許とは、その特許に関しての使用料を税金で納めるというタイプの特許である。

 特許使用料=税金なので、比較的、特許使用料は安く、節税にもなる。

 さらに、国境を越えて使用できるので、技術も広まりやすいが…リターンが小さい。

 使用料として取った税金の五%が特許者に払われる。

 技術を世界に広めたい人向けの特許でもある。


 ディオスが国庫特許にしようとするモノとは、パッチしきカートリッジ魔法インプットハンマーである。

 要するに魔法の力を込められる金属を板状のカートリッジにして、自分が欲しい魔法効果の魔法陣をそのカートリッジの板に込めて、好きな場所へ打ち込むという品物だ。

 魔法の力を持つ素材を作るには、魔導回路を刻んだり、金属を魔導金属、エンチャン系に変えないといけない。

 本格的なモノは、そうしないといけないが…適当に欲しい時のチョットしたツール程度の発明品だ。

 例として、壁に金属の何かを付けたい、ならそのカートリッジハンマーで磁力の魔法陣を込めたパッチを打ち込んで、そこだけマグネットにする。

 効果としては一週間程度、効果がなくなったパッチは、剥がしてリサイクル。


 バーベキューに、フライパンを使いたい。

 なら、テーブルに熱の出る魔法陣を込めたパッチを打ち込み、そこが料理を出来る簡易コンロへ。

 自由度が高い使い方が出来る。


 その国庫特許がすぐに行われ、ディオスがゼウスリオンの製造に精を出して、一週間、新型ゼウスリオンは完成し、フランドイルへの引き渡し式となった。


 ディオスがバルストランに帰る頃、国庫特許にした魔法ハンマーの特許料が出た。

 こんな直ぐに金になるのか?

 ディオスは首を傾げるも、その自身に払われる使用料を見ると…

「ん!」

 なんと、使用料の額が、金貨一千万枚『一千億円』になっていた。

「す…」

と、ディオスは息を吸い

 何かの間違いかなぁ?

と、その魔法ハンマーが使われている国の名目を見ると、ほぼ、全世界で製造されていた。

 はぁ? そんな凄い特許のつもりじゃあ…。


 ディオスは考えた。この額が入る金貨通帳を見て…

「あ、そうだ…」

と、閃いた。



 バルストランの屋敷に帰って来ると…


「お帰りなさいませ」

 レベッカが迎える。


「ただいま…」

 ディオスが入ると、玄関の呼び鈴を聞いて二階の子供部屋からティリオとリリーシャにゼティアが顔を見せる。

「あ、パパーーーー」

と、子供達は帰って来たディオスへ、嬉しそうに駆け付け

「よーし、ただいま…」

 ディオスは、三人の子供達を一緒に抱える。


 そこへ

「おかえりダーリン」

 クレティア

「おかえりなさい」

 クリシュナが


 その隣にククルクと、シャードルがいた。


 お、丁度良い。



 ディオスはククルクとシャードルを居間に通す。

 シャードルが頭を下げ

「ディオス様、ククルク様の事、ありがとうございました」

 ククルクの減刑の為に色々と動いてくれていたのを知っていた。


「良いですよ」

 ディオスは頭を横に振り、ククルクとシャードルの二人の前に、あの魔法ハンマー特許の権利と、その使用料が入る金貨通帳を置いた。

「これを…」


 ククルクはその金貨通帳を手にして

「これは、金貨一千万の…」

 驚きを見せる。


 ディオスはフッと笑み

「アルスートリ大陸の復興に使うといい。これは、とある国庫特許の使用料が入る金貨通帳だ」


 シャードルは重ね重ね頭を下げ

「ククルク様の事と、この資金といい、何と御礼を申し上げれば…」


 ディオスは「ただし…」と付け加える。

「復興が終わったら、このお金を誰かを不幸にする事に使わないと約束してくれ」

 国庫特許はその性質上、長期に渡って権利が保障される。

 その保持期限は二百年だ。

 逆に言えば、技術を広めるのが目的なので、そう儲かる事がないから、長期の権利保障が約束されている。


 ディオスのように、大きな金額が入る国庫特許は万に一つという、極レアケースなのだ。

 

 ククルクは深く頷いて

「ああ…約束する。必ず、誰かを不幸にする事に使わないと…」


 ディオスはフッと笑み

「よし、じゃあ、通帳の所有権の部分にサインをしてくれ」



 ディオスの言葉、誰かを不幸にする事に使わないという約束の、この国庫特許の金貨通帳は、数日後には、バルストランの黒字の国家予算クラスの金貨九百億(九百兆円)のとんでもない額になった。

 それ程までに、ディオスが考案した魔法ハンマーの使い勝手が良かったのだ。

後々に、この金貨通帳を運用する財団は、グレンテル基金と呼ばれるようになった。

 


 ククルクの楽しいディオスの屋敷での日々が続く。

 ティリオやリリーシャにゼティアの子供達と過ごすこの陽だまりの日々は、強くあらねば成らぬという、皇女の教えを忘れる程、安寧としていた。

 そして、カレンダーを見て、この日々に終わりが来る事が悲しかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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