第125話 決戦前夜
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あらすじです。
完成したゼウスリオン、ヴォルガへ向かうククルク、多くの者達の敬礼の花道を進み、ヴォルガの操縦席に来ると、そこにはディオスがいた。
決戦の朝、ディオスは王城の食堂で、鳥の腿肉のサラダセットと蜂蜜タップリのパンを食べ、十分な栄養と水分を取って、その上で金貨二枚もするお高い、栄養ドリンクを一本飲み干す。
同じく食事を共にしていたクレティアとクリシュナは、ディオスのやる気満々の食べっぷりに苦笑するしかない。
朝の七時、ククルクは深紅の髪を束ね、簡素な鎧に身を包んでいる。
これから、人生で最後の戦いになるであろう装備を整える。
そこへ、ティリオが顔を見せ
「ククルクお姉ちゃん…」
と、ククルクに抱き付き。
「おお…ティリオ…」
ククルクはティリオを抱える。
ティリオが
「どこかへ行くの?」
ククルクはティリオに頬すりして
「ああ…大事な用事がある。大きな仕事じゃ。これが終われば、お主の父上達と一緒にアーリシアに行くだろう」
ティリオはニッコリと笑い
「じゃあ、お家で、一緒に遊ぼう」
ククルクは悲しげな笑みをして
「ああ…約束じゃ」
そう、叶わない約束をした。
ククルクは、王城の廊下を進みヴォルガのある研究機関の格納庫へ向かう。
その途中を多くの者達が敬礼で花道を作る。
ククルクはそれに応えて、敬礼でその花道を進む。
そして、漆黒の四十メータの巨神機、ゼウスリオン、ヴォルガの前に立つ。
両脇には、ヴォルガを補佐する二機の小型ゼウスリオンが跪いている。
ククルクが、ヴォルガのコクピットに繋がるエレベータに来ると、そこへ、同じ簡易鎧の装備をしたアンダルとランダルの姉妹が立つ。
アンダルが
「全ての準備が整いました」
ランダルが
「何時でも発進可能です」
ククルクが
「お主達、一緒に戦う必要は無い。二機の補助機は、こちらの主機で操作できるぞ」
アンダルとランダルは同時に敬礼しアンダルが
「わたくし達は、最後まで…ククルク様と共におります。ククルク様は、わたくし達にとって家族です。助け合うのが家族です」
ククルクは頭を振って呆れ
「はぁ…分かった。好きにするがいい」
ランダルが
「もとよりです」
ククルクはヴァルガの操縦席に来ると、その入口のタラップにいる整備士が
「ククルク様…全ての調整は終わっています」
「うむ! 大義であるぞ! 皆に伝えよ。この身命をなげうつってでも、必ず、やり遂げると!」
整備士は、敬礼をして「は!」と受領した。
ククルクが、操縦席に座り首にヴァルガと繋げるコンタクトの首輪が填まる。
その後ろ
「遅かったな」
男の声がしてククルクは振り向くと
「お主!」
そう、ディオスがいた。
一人席の後ろの場所に簡易骨組みの補助席を作って、操縦席に様々な端子を繋いでいる魔導端末画面を前にするディオスに、ククルクは驚いた。
「どういうつもりだ!」
その問いにディオスが
「初めてのシステムが多いこのゼウスリオンは、色々と不具合が起こるかもしれない。戦いながら調節する人物が必要だ」
ククルクが心配げな顔で
「関わればどうなるか!」
ディオスは懐から一本の瓶を取り出す。
それは、殺菌食毒程度のアルコールが0.3%しか入っていない。子供が大人のような気分を味わう為のジュースだ。
子供用、大人のお酒、ビールジュースくん。
それをディオスは開けて飲み干し
「これで、オレは酔っ払っているから、酔った勢いでバカな事をしている。そうだな…」
と、飲み終わった瓶を入口にいる整備士に投げる。
整備士は戸惑う。
ディオスは
「君、オレは…酔っ払っているよなぁ…」
と、整備士に向けてニヤリと確信じみた笑みをする。
整備士は察した。
ディオスが酔ったフリをしてククルクを助けてくれると…
「はい! 確かに、酔っ払っています!」
整備士はワザとディオスに同意した。
その意図と心を読む力で察したククルクは、ふ…と呆れて笑み
「全く…」
と、操縦席に座った。
「では、行くぞ!」
整備士が下がり、操縦席のドアが閉まり、全方位の映像が操縦席に全方向投影される。
ディオスは、自分の正面にあるヴァルガの状態を示す魔導端末を見つめて、全てが順調に動いているのを確認する。
ククルクが球型の操縦桿に手を置いて、キュリオロスの力を発動させると、それが操縦桿を通じて、アニマシステムに伝達、増幅と活性化を経て、ヴァルガの目に光が灯る。
ゴクンと、ヴァルガが起動し、両脇にある補助機の小型ゼウスリオン達、ヴァーゴとヴァードにも動力が伝達され、起動した。
格納庫の天井が開いて、青空が広がる。
ククルクは息を吐き
「では、参る!」
操縦桿を押して、ゼウスリオンを発進させた。
ヴァルガとヴァーゴとヴァードの三機は、轟音を放ち空へ高々と飛翔、目指すべき敵、ディスリーラに向かって飛翔して行った。
同時刻、南西のボルフ国の王城の王座にて、ナイトレイド連合帝国の皇帝である壮年の王の前に、ディウゴスがいた。
ナイトレイド連合帝国の皇帝、ガルザルはディウゴスから渡された書類を見ていた。
「これが…例の条約の…」
ディウゴスは肯き
「はい…ですが。まだ、署名をするのはお待ちください。今日、あるであろう…その事態になった場合に…」
ガルザルは肯き
「分かっている。全く、とんでもない作戦を…」
ディウゴスは怪しく笑み
「ええ…全くです。アーリシアの大英雄には何時も、驚かせられます」
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