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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
ゼウスリオンの騒乱
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第124話 ゼウスリオン、ヴァルガ

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオスは、ゼウスリオンの製造を開始する。様々な新しい技術を使ってのゼウスリオンに、協力している技術者達は強い確信を感じていた。


 ディオスは、研究機関の開発場で、ゼウスインゴットのプレートを特別なハンマーで叩いていた。

 そのハンマーの叩く部分の上には魔法陣が展開され、ディオスが魔力と力を込めて叩くゼウスインゴットの中へ魔法陣が叩き組み込まれる。


 その様子を技術者達は固唾を呑み込んで見つめていた。

 ディオスが、己が魂を打ち込む姿には鬼迫と、神々しさが際立っている。


 ディオスは、ある程度、己の魔力と魔法陣を込めたゼウスインゴットを、魔導触媒に賢者の石が溶け込んだ溶液につけると、煙を放って溶けていた賢者の石がコーティングされる。

 そして、再び自身の高純度で強大な魔力と魔法陣を特別なハンマーに乗せて、ゼウスインゴットへ叩き込む。


 ディオスが編み出した技術とは、叩き組み込み式魔導演算システムである。


 通常、魔法の演算を行うシステムは、パソコンと同じメモリーとCPU、それを発現させる装置から成り立っている。

 その最たるモノが魔導書である。


 ゼウスリオンも例外ではない。

 だが、ゼウスインゴットは分子サイズでのメモリーとCPUに発現、そして回路の組み替え、構築、という優れた機構が合体した分子サイズのシステムの集合体である。

 素材そのモノが、演算システムであり駆動システム、故に、通常で作るより高性能で小型に出来るが、欠点もある。

 魔法陣の組み合わせを行う場合は、やはり、魔導書と同じ演算速度しか出ない。

 それでも高速な部類ではある。


 その原因はシンプルである。

 メモリーの中に魔法陣のデータが仕舞ってあるので、それを取り出し演算するという普通の事をして動かす。

 当たり前といえば当たり前だ。


 その当たり前をディオスは変えた。

 なんと、始めから発動可能な魔法陣を超小型にして刻み込み、それを全て連結させる。

 そんな事をすればデタラメに魔法陣が発動して、マトモに動く筈がない。


 だが、ディオスは、打ち込んだ魔法陣を二次元ではなく三次元で組み合わせ、必要な魔法陣の組み合わせを直線に繋いで発動させる。経路選択型の魔導回路にして作った。

 これによって本来なら三メータ前後になる魔法陣の演算記憶システムを、十分一の大きさ、三十センチ前後までダウンサイジングさせた。

 膨大な数の必要な魔法陣を、経路を選ぶだけで瞬時に発動可能にさせ、さらにゼウスインゴットの特性である浸食も組み合わせて、浸食によって必要な直線回路の構築まで行わせる。


 技術者達は、ディオスの圧倒的技術力をその目に焼き付ける為に、ディオスの一挙手一投足を凝視する。

 ディオスは、魔法陣を打ち込んでいるゼウスインゴットを挟んでいるハサミからの魔法力の変化によって、打ち込む魔法陣とその位置を決めて、ゼウスインゴットに叩き込む。

 やっているレベルは、神業級である。

 そんな技術を惜しげもなく投入するゼウスリオンは、きっとその名が歴史に刻まれるだろうと、技術者達は確信していた。


 こうして、ゼウスリオンに組み込む新型魔法演算システムは完成して、ディオスは次の指示を出す。

 本体の製造だ。

 ゼウスインゴットを使い、魔導人工筋肉の触媒と、装甲の設計、駆動システム、と次々とその材料の設計と精製に関する技術の提供。


 三日目にしてゼウスリオンのコアになる。二十メータの中核ゴーレム機体が完成する。

 それにククルクを乗せて、ククルク専用に仕上げる。

 コクピットに乗るククルクは、脇で魔導端末に魔法陣の打ち込み装置と格闘するディオスを見る。

 自身の力の全てを使って作ってくるディオスにククルクが


「のぉ…どうして、そんなに力を尽くしてくれるのだ?」


 ディオスは機器を操作しながら

「成り行きだ…」


 ククルクの心を読み力で、ディオスの思いを見た。

 ディオスの脳裏には、ククルクを庇って出てきた者達の姿がある。

 あんなに必死な連中を見たら、見捨てては置けないだろうが…。


 ディオスの心の声にククルクは、嬉しげに微笑む。



 四日目にして、コアのゼウスリオンが完成する。

 通常使う、ゼウスインゴットの半分の量で、ゼウスリオンが完成した。

 そして、余った半分のゼウスインゴットで、別の二機の製造を始める。

 その二機は、コア部分以外がゼウスインゴットでない、半ゴーレムのゼウスリオンである。


 五日目、コアの赤いゼウスリオンに大きな躯体が装着される。

 四十メータの巨大さになる本機の製造に取りかかる。

 赤いゼウスリオンは吊され、上部に胸部のパーツ、下部に下半身のパーツが組み合わさり、それにゴーレムで使用されるピストンのアクチュエーターではない、魔導人工筋肉のアクチュエーターが装着される。

 魔導人工筋肉は、主に魔導騎士装甲や、魔導操車、魔導鎧の補助駆動システムとして使われる。

 瞬発力があるので、人の力の補助としては最適で、人と同じ大きさなら有益に力を発揮するが、それ以上のゴーレムサイズになると、人工筋肉の繊維が持たないし、駆動に大きな魔力を必要とする。

 四十メータの機体には使われない魔導人工筋肉のアクチュエーターが、このゼウスリオン、ヴァルガの駆動系統だ。

 だが、この魔導人工筋肉は通常のモノとは訳が違う。

 その素材として、ゼウスインゴットが少量混ぜられ、さらにディオスが提唱した新たな繊維の人工筋肉なのだ。

 この人工筋肉は、もの凄く魔力を消費するが、その力と強度、瞬発力は折り紙付きだ。

 駆動の為の強力な魔力は、コアである紅いゼウスリオンが供給するので問題はない。


 絶えず、人工筋肉が装着され接続されると、コアのゼウスリオンに乗っているククルクが操縦システムである魔導接続装置を使って、その適合性を合わせる。

 操縦席は全面が総画面の最新式で、握る操縦桿とチョットした魔導端末が正面にあるだけの簡素である。

 その操縦システムである魔導接続装置は、ククルクのうなじに密着すると、魔法の力を使ってククルクの思考と機体をダイレクトに接続する。


 ククルクの感覚では、背中から巨大な何かが生えた感覚である。


 その脇にはディオスがいた。魔導端末と睨めっこして、ククルクのキュリオロスを受け止めて動力とするアニマシステムの最適化に勤しんでいた。


 六日目、四十メータの機体は、むき出しの人工筋肉の状態のまま完成する。

 後は、それに強度を維持する装甲を接続、更に、今回の特徴である背中に背負う大きなバックパックの完成を待つだけ。

 そして、別の二機、二十メータのこの機体を補助するゴーレム型の機体は完成していた。


 その夜、ククルクはティリオの相手をしていた。

 ククルクの自室には二歳のティリオが遊ぶ玩具が溢れている。

「なぁ…ティリオ…」

 ククルクは正面で一緒に遊んでいるティリオに呼び掛ける。

「すまんの…お主の父上を借りてしまって。会いたいじゃろう…」


 ティリオは首を傾げ

「さっきいたから、いい」


 ククルクはキョトンとする。

 どうやら、ディオスは、ティリオがククルクといない時間にティリオと一緒にいるようだ。

 ゼウスリオンの開発に忙しいのに、そんな合間がよくあるのぉ…。

 と、ククルクは笑ってしまう。

 ククルクはティリオを抱いて

「さあ、もう…遅いから寝ようなぁ…」


 ティリオはククルクに抱き付き

「うん」

と肯き、ククルクと一緒にベッドで眠る。


 同じ時、ディオスは研究室の魔導通信端末を触っていた。

 今回製造しているゼウスリオンのデータを、アリストスとロマリア、レギレル、バルストラン、フランドイルにエルダー級魔導士四人へ送っていた。

 大方、転送が終わると傍の机の上にある四つの包みを見て

「んん…これをどう…届けようか…」

 送りたい場所への方法を考えていると、研究室のドアが開いた。


 研究室には自分以外、誰もいない筈なのに…とディオスはドアに近付くと、ドアの隙間からディオスの右手を握る左手、その左手には憶えがあった。


 結婚した証であるブレスレットが填まったクレティアの左手である。

 左手だけが、そこにあって後の姿がない。

 幽霊のようだが、それは間違いなく姿を消す魔法に包まれているクレティアだ。

「ダーリン、こっち」

 そのクレティアがディオスの手を引いていく。


「ちょっと待ってくれ」

 ディオスは中へ戻り、四つの包みととある書類を抱える。

 そして、クレティアの左手に右手を合わせて、引っ張られて誘導される。


 連れて行かれた場所は、研究機関の裏手にある人がいない場所だ。

 そこに、一気に姿を消す魔法を解除した面々が現れる。

 クリシュナ、クレティア、ナトゥムラ、スーギィの妻と仲間達がいた。


 ディオスは安心した顔を見せ

「みんな…」


 クリシュナとクレティアが呆れ顔で腕を組み

「ダーリン。なんで、作っちゃっているのよ」

「そうよ、アナタ。どれだけ心配をかけるのよ!」


 ナトゥムラがディオスの額を小突き

「帰るぞ!」


 スーギィが頷いて

「そうだぞ。ティリオくんも奪い返して、直ぐにでも帰還だ!」


 ディオスが渋い顔をして

「その…事態が終わるまで待ってはくれないか?」


 クリシュナとクレティアが顔を見合わせて

「アナタ…見届けたいのね」

「まあ…ダーリンのそんな甘ちゃんな所は、アタシも好きだから…別にね」


 ナトゥムラが額を抱え

「息子と自分を攫って連れてきた連中に感情移入なんて、どんだけだよ」


 スーギィは鋭い顔で

「この国の事情は、我々も知っている。だが…これ以上の干渉は、問題が大事になるぞ」


 ディオスが持って来た書類をスーギィに向け

「そうなった時の保険だ。この書面をアインデウス皇帝と、ロマリア皇帝、そしてアーリシア十二国王達に渡してくれ」


 スーギィは渋い顔をして「これは…」と読むと…

「おい! ディオス! どういう事だ」


 ディオスはフッと笑み

「そうなる可能性がある。その為のもしもの時の布石だ」


 スーギィはフーと鼻息を荒げ

「全く…お前の考える事は、何時も並大抵ではない。ちょっとは自重して欲しいものだ」


 ディオスはもう一つ、四つの包みも渡して

「これも、フランドイル王国のエルダー級魔導士、アインシュ様に渡してくれ」


 クレティアが

「アタシ達もダーリンが事を終えるまで、傍にいるから、ね。良いでしょう? 妹君様、許嫁の王子様」

と、ディオスの後ろにある置いてある素材に呼び掛けると、その脇に隠れていたククルクの妹クリルアと、ククルクの許嫁にして同年輩のシャルリル国の王子ハルシャルが姿を見せる。


 ディオスはフッと笑む。

 この研究機関とリシャル国の王城の周囲は、ゼウスリオンの製造がバレないように厳重な警備が敷かれている。

 その警備の穴場まで分かり、ここまで妻や仲間を誘導が出来るのは相当な内部の人物しかない。正に、その二人だ。


 クリルアが

「早めに帰って欲しかったです」


 クリシュナが

「ティリオが帰りたいって言えば、この人は直ぐに考えを変えるかも」


 ククルクの寝室、ククルクはティリオを横に共にベッドで眠っていると、ドアがノックされた。

「ん…誰じゃ…」

 ベッドから起き上がってドアを開けると、妹のクリルアと許嫁のハルシャルがいた。


 ククルクはハルシャルの姿に驚き

「ハル…どうしてここに?」


 ハルシャルは苦笑して

「ちょっとね…君が心配で来たんだよ」


 そして、その脇からクレティアとクリシュナが姿を見せる。

「はぁ…い」

と、クレティア。


 そこに「ククルクお姉ちゃん…」とティリオが起きた。

 ティリオはクレティアとクリシュナを見つけ

「あ、クレティアママ、クリシュナママ」

と、二人に抱き付き、


 クレティアはティリオを抱え

「ティリオ、ごめんね。来るのが遅くなって…。淋しかった?」


 ティリオは首を横に振って

「うんん、ククルクお姉ちゃんがいっぱい遊んでくれるから、楽しい」


 クリシュナがクレティアからティリオを受け取り抱き締め

「ティリオ、ママ達だけでお家に帰るけど、いく?」


 ティリオは首を横にして

「もうちょっと、ククルクお姉ちゃんと遊びたいし、パパの大事なお仕事が終わるまで待ってる」


 クレティアは肩を竦め「だって…」とクリルアを見る。


 クリルアは残念そうな顔をして「分かりました」と了承する。

 アーリシアで、アーリシアの大英雄ディオスと息子のティリオを返せという声の高まりを鎮めたい為に、帰って欲しかったが、どうやら…上手く行かなかったようだ。




 ナトゥムラとスーギィは、オルディナイトが作り出したマハーカーラ運輸財団の高速飛空艇に乗って、アリストスの世界樹城へ行き、ディオスの書類をアインデウスに渡した後、直ぐにアーリシアに帰り、ディオスの四つの包みをアインシュに渡し、ロマリアの皇帝ライドルと、アーリシア十二国王達に、アインデウスに渡したのと同じ書類を届ける。


 アリストスの世界樹城の執務室でアインデウスは、ディオスの書類を読んでいると

「ふ…全く、あの男は…」


 傍にいるディウゴスが

「如何致しましょう…」


 アインデウスは笑み

「やるしかあるまい。ロマリアやアーリシアの方へは…」


「はい、もう、届いているそうです」


「フン、全く根回しが上手いヤツだ…」


 アーリシアのフランドイル王国のアインシュの魔法研究所では、ディオスから渡された四つの包みを開ける。

 アインシュは「ふ…」と溜息を漏らし

「よもや、アルスートリ大陸からグレンテル殿宛てで、今回の問題となっているゼウスリオンのデータが送られて来た理由は、これか…」


 傍にいる助手の魔導士が

「国が百年も食える技術を開発してのゼウスリオンのデータが…多くの場所に送られているという事は…これをやれという…」


「だろうな…」

と、アインシュは頷いた。



 一週間と二日経った今日、ゼウスリオン、ヴァルガの特別装甲とそのバックパックが完成して届き、人工筋肉の状態のゼウスリオン、ヴァルガに装甲が装着される。

 寸分の違いもない精巧な装甲と背中に大きなバックパックが装着されて、ヴァルガは完成した。


 おおおおおおおおおお!

 技術者達は、完成に雄叫びを上げた。


 ディオスは漆黒の四十メータのヴァルガを見上げて満足に笑む。

 ディオスと共に、開発をした技術者達は、確信していた。

 絶対にディスリーラを破壊出来ると…。


 同じく、ヴァルガの下にククルクもいた。

 力強い巨神機のヴァルガを見上げ、これで願いを果たせると…。

 覚悟を決めた。

 決戦は明日である。


 その夕方、ディオスは妻達にティリオと四人で王城の食堂で、食事をしていた。

 そのメニューは、アルスートリ大陸で験を担ぐ為に、勝利を喰らうという勝負飯のステーキセットだった。

 ディオスはそれにタップリのニンニクをトッピングさせて、精力を付ける。

 肉を食っているディオスにククルクが来て

「アーリシアの大英雄よ。この度の事は、大義である」


 ディオスはフッと項垂れ

「オレにはディオス・グレンテルっていう名前があるんだ。ディオスと呼べ」


「分かった。ディオス、ありがとう。これで妾の悲願が達成出来る。全てが終わったら…」


 ディオスは手を振って

「後は野となれ山となれだ」



 その後、ディオスは十時に就寝する。

 そう、全ては明日の為に…。


 同時刻、ディスリーラにいるゴルドが、アグラルへ何かを話す。

 アグラルは、楽しげに笑み

「そうか! 早いではないか! 後一週間は先だったのでは?」


 ゴルドは笑み

「早い方が色々とお得ですからなぁ…」

 その笑みの裏では、

 ゼウスリオンが完成したと情報が入った。

 上手く行けば、動く前に…。

 まあ、もし、起動して…。

 ゴルドはアグラルを見つめる。


 アグラルが

「どうした? ゴルド殿」


「いいえ、何でもありません」

 ゴルドは笑みで企みを隠した。

 いざとなったら、コイツを犠牲にするアレを発動させるだけだ…。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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