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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
ゼウスリオンの騒乱
122/1108

第121話 ナイトレイド連合帝国

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオスはナイトレイド連合帝国のククルクに息子ティリオを盾にされて、ゼウスリオンの製造をさせられる。その頃、アーリシアでは誘拐されたディオスとティリオを取り戻そうと…


 ナイトレイド連合帝国。

 オーストラリアそっくりの大陸で、四つの国に別れ、それが集まってナイトレイド連合帝国となっている。

 北西にフォルフ家、北東にリシャル家、南西にボルフ家、南東にシャルリル家。

 ディオスは、北東のリシャル家、ククルクの国に運ばれた。

 

 リシャルの空港に到着したディオスは、飛空艇から降りながら空を見上げる。

 日差しが強かった。


 その背に

「こっちだ」

と、ククルクは呼び掛け、部下達と共に先を進む。

 無論、その両腕には人質としてのティリオもいた。


 ディオスは、ククルク達の後に続いて、滑走路を歩いていると、同じく着地した戦艦飛空艇の底部貨物ハッチから、鋼鉄の箱が運ばれるのを見る。

 それはロマリア行きのゼウスインゴットが収まった格納庫である。

 

 その数は八つ。

 ゼウスリオン一機が出来る程のゼウスインゴットが一緒に運ばれる。


 ククルクと共に、リシャルの王城へ入る。

 尖った屋根が特徴的なリシャルの王城の中は、豪華な大理石の廊下と、美術品が置かれ、さながら美術館のようだ。

 その王城の中心、王の間へ来たディオスは、王座に腰を掛けるククルクを前にする。

 ククルクの両脇には臣下のアンダルとランダルがいる。

 ククルクは相変わらず、ティリオを抱えて離さない。

 ティリオは、ククルクに抱かれたまま静かにしている。

 

 ククルクが大人しいティリオの頭を撫で

「おお…良い子じゃのぉ。何じゃ…もしかして、妾の事が好きになったのか?」


 アンダルが

「ククルク様の抱擁は極上です。その心地よさに安心しているのでしょう」


 ディオスは、静かに獲物を狙うように、機会を窺う。

 ククルクからティリオを奪還、その後、逃走。

 単純な計画だが、それが一番である。


 ククルクはティリオの頬を撫でながら

「そうか…お前も案外、普通じゃな。アーリシアの大英雄。息子が大事か…」


 ディオスの眉間が寄る。

 そう、ククルクはナイトレイド王家に伝わる秘技、霊神技キュリオロスを持っていた。

 恐らく、その力の一端に心を読むのがあるのだろう。

 ディオスは静かにして、思考を巡らす。

 魔法陣の設計や様々な事を考える。

 そして、僅かな思考の隙間にティリオを奪還する事を考えると…


「ほぅ…お前の頭は騒がしいなぁ…。じゃが、人の心は恐ろしい程に本音の部分の声が大きい。丸聞こえじゃぞ」


 ディオスは頭を振って「はぁ…!」と呆れた溜息をして

「分かった。本音でいこうじゃないか…。オレは、ティリオと一緒に屋敷に帰りたい。とっと…帰してくれ!」


 ククルクは怪しく笑みながら

「直ぐにでも帰してやる。だが…それは、ゼウスリオンを完成させてからだ。お前なら出来るのだろう…」


 フッとディオスは顔を背け

「ハッキリ言う、ムリだ! オレには加工する技術がない!」


 ククルクは首を傾げ

「だが…その方法は知っている…」


 ディオスは自分の頭を小突いて

「だったら、その心を読む力で、オレの頭から、その方法を盗み取ればいいだろうが!」


 ククルクは眉間を寄せ

「妾の声は、人の本心を読むだけで、人の知識までは理解出来ない。便利なようで不便である。アーリシアの大英雄、今一度、告げる。ゼウスリオンを建造しろ!」


 ディオスは苛立った顔をして

「拒否しても従わせるんだろう?」


 ククルクは怪しげな笑みで肯き

「分かっているなら早くするといい。もしかして、妾の気が変わったらお前の息子は」


 ディオスの殺気が膨れあがり、魔獣も怯ませる殺気をぶつける。

「やってみろ! それがキサマの最後だ!」


 信じられない程の尋常でない殺気に、アンダルとランダルは手を剣に置いてしまう。


 ククルクは、ジーとディオスを見つめる。


 ククルクの腕にいるティリオが

「う、ああああああああ!」

 ディオスの殺気に驚き泣き出した。


 ディオスは、ハッとして殺気をしまい

「ティリオ…」

 王座に駆け付けるが、その先をアンダルとランダルが剣を抜いて塞ぎ、ティリオに泣かれたククルクが

「おお…お前の父上は怖いのぅ…よしよし」

 ティリオを抱き締めてあやして落ち着けようとする。


 ククルクは泣いているティリオを抱えて、アンダルとランダルが押さえるディオスの前に来て

「ほれ…触ってみよ」


 ディオルは剣の首を挟まれたまま、ティリオの頬を撫でると、ティリオは泣き止んだ。

「ティリオ…」

と、ディオスは愛おしげに名を告げる。


「パパ…」とティリオは呟く。


 ククルクが

「さあ、早く子供と平穏な暮らしに戻りたいなら、ゼウスリオンを完成させよ」


 ディオスは「ク…」と項垂れ

「加工する機械が欲しい」


 ククルクはニヤリと笑み

「我が国で、腕利きの技術者達をお主に与えよう。だが…怪しい動きをするなら」


 ディオスの心臓がキュリオロスの力で掴まれる。

「ぐ…う…」

 ディオスは膝を崩す。


「パパ」

 ティリオは手を伸ばすと、ククルクは膝を付いてティリオを抱えたまま、ディオスに向け

「息子を心配させたくないだろう…」


 ディオスは怒りに震えるも、ティリオを安心させようとして

「大丈夫だよ。ティリオ…」

と、ティリオに微笑むのであった。



 こうして、ゼウスリオンを製造する為に、リシャルにある各大学や技術機関より、技術者が王城に集められた。

 ディオスはその一団と対面する。


 その一団の年齢の高い老年の技術学者がディオスに近付き

「申し訳ありません。このような事に…」

と、ディオスに頭を下げた。


「何をしている!」

 監視の騎士が声を上げる。


 技術者の一人が

「挨拶も出来なのか!」


 監視の騎士が

「キサマ等の目的は、なれ合いではない! ゼウスリオンを作る事だ。それ以外、必要ない!」


 技術者達は、監視の騎士達を睨む。

 アーリシアとロマリア、アンメリカで多大な影響を与えた、魔法研究者であるディオスに、誰しもが敬意を持っていた。

 そして、何時か一緒に仕事をしたいと思っていたが、ディオスが誘拐されての入国に、技術者の誰しもが納得していなかった。


 監視の騎士達の一人が

「なんだ! その反抗的な態度は!」

と、剣を抜いて近付く。

 軽くケガをさせての威嚇をしようとしたが。


「待ちなさい!」

 止める声がした。

 全体が見下ろせる高台の所に純白の髪をした少女が立っていた。


 監視の騎士達が敬礼して

「クリルア様…どうしてここに?」


 クリルア、ククルクの双子の妹で、高慢なククルクと違い大人しい感じである。

 クリルアが、高台から降りて

「騎士諸君、ゼウスリオンの完成には、円滑な会話が必要です。ある程度の日常的な会話は許してあげなさい」


 騎士が

「しかし、ククルク様の…」


 クリルアが

「貴方達にそれで責任を取る事は無い。わたしが命令したのですから」


 騎士達は顔を見合わせて

「はぁ…分かりました」


 騎士達が下がると、クリルアがディオスの前に来る。

 純白の髪にまつげ、強い姉のククルクと似ているも雰囲気が違うクリルアが

「申し訳ありません。アーリシアの大英雄よ。こんな事に…」

 クリルアが謝る。


 ディオスは伏せ目がちで

「仕方ありません。息子が…」


 クリルアが

「ご子息様の事ですが…」



 ディオスはクリルアに連れられ、とある部屋に来る。

 そのドアを開けると、ティリオの相手をしているアンダルとランダルがいた。

 アンダルとランダルは楽しそうにティリオと遊んでいると、ドアが開いたそこをティリオが見て

「パパ!」

と、ディオスに向かって駆けていく。


 アンダルとランダルは素早く反応してティリオを抱え、ディオスとクリルアの二人を凝視して

「どういう事でしょう? クリルア様…」

 アンダルが尋ねる。


 ランダルはティリオを抱えて、ディオスの元へ行かさないようにする。

「パパ、パパ、パパーー」

 ティリオは手を伸ばす。


 クリルアが二人に近付き

「少々、ご子息様を返してあげてください」


 アンダルとランダルは、顔を見合わせアンダルが

「姉上のククルク様の命令がありますので、ムリです」


 クリルア

「命令です。アンダル、ランダル。ご子息を父親の元へ」


 アンダルが

「はぁ…分かりました。ですが、何かされない様に、わたくし達も傍に…」

 

 アンダルと、ティリオを抱えるランダルがディオスに近付く。


 アンダルが

「我々には、ククルク様より眷属の権限が与えられている。キサマがおかしな動きをしたらカースト(支配階層)の力で、キサマを押さえる」


 ククルクがディオスを押さえた支配の力を使えるという事だ。

 

 ランダルからティリオと渡されたディオスは、ティリオを深く抱き締め

「ティリオ…」


「パパ、遊ぼう」


「ああ、でも…もうちょっと待ってくれ。な」


「ええ…遊びたい」


 アンダルが「時間だ…」とディオスからティリオを離した。


 ランダルが

「仕事をしてこい。そうすれば自由だ」


 クリルアが

「もう少しいいでしょう!」


 訴えるも、アンダルが首を横に振り

「ダメです。これ以上は、クリルア様とて…」


 クリルアは渋い顔をして

「日に数回は、こうして合うのは出来るでしょうね!」


 ランダルが

「時と場合によりますので…」



 ディオスはティリオのいる部屋から出された。

 僅かだが、ティリオを抱えた感触を胸に、拳を固く握った。



 夜のバルストラン王宮では、王の執務室の机に座るソフィアが額を、机の上に肘が乗って両手に組んでいるそこへ当てて苦悩していた。

 傍にはナトゥムラとスーギィ、マフィーリア、カメリア、レディアン、ゼリティアがいた。

 そこへ、仕官が入ってくる。

「失礼します…」

 一枚の書面をソフィアのいる机に置き

「グレンテル様の所在ですが…。アルスートリ大陸ナイトレイド連合帝国のリシャル国の王城の傍にある研究機関にいると…裏が取れました」


 ソフィアが「なんて事なの…」と苛立ちの声を放つ。


 ゼリティアが一団から背を向ける。


 レディアンが

「どこへいくゼリティア」


 ゼリティアは鋭い顔をして

「我が、オルティナイトの総力をもって、夫殿と息子のティリオの奪還を行う」


 カメリアが

「外交問題になりますよ」


 ゼリティアが、ギュッとディオスから貰った扇子を握り閉め

「夫と息子を拉致されて外交問題とは、片腹痛いわ」


 レディアンもゼリティアの隣に来て

「では、その奪還作戦に我々、ヴォルドルも加えて貰おう」


 ソフィアが

「待ちなさい! まずは、状況の確認よ。なんでアイツとティリオが誘拐されかのか! その原因を突き止めてからよ」


 レディアンが

「そんな悠長な事を言って場合か? ディオスが誘拐されたという事は、何か強大な魔法に関する事だ。手遅れになる前に…動いた方がいい」


「それでも!」とソフィアは席を立ち「流儀は大切にするべきよ。そうでないと…とんでもない事になるわ!」


 レディアンが鋭い顔をして

「先に流儀を反したのは向こうだがなぁ…」

 

 何とか、レディアンとゼリティアの暴走を防いだソフィア。


 そして、翌日、セキュリティの高い魔導通信機でアーリシア十二国王達、ロマリア、アリストスの両皇帝との話し合いがあった。

 ソフィアは、王執務室で多数通信モードの魔導通信機を前に話を聞く。


 アインデウス皇帝が

「今回のディオスの誘拐と、ゼウスインゴットの強奪は関係性がある。ナイトレイド連合帝国のリシャル国ククルク皇女は、ゼウスリオンを欲していた。恐らく、ディオスにゼウスリオンを製造させる為に、ディオスとゼウスインゴットを強奪したのだろう」


 ソフィアは最悪な事態に頭を抱えた。


 その後の議題は、ディオスと息子ティリオの返還についてと…ゼウスインゴットについてだ。

 優先するべきは、ディオスと息子ティリオとして、ナイトレイド連合帝国に圧力を加えるとした外交と、もしもの最悪を考えての奪還部隊の編成といった事を話し合ったが…。


 ロマリアのライドル皇帝が

「そんな悠長な時間があるとは思えんがな!」


 フランドイル王ヴィルヘルムも

「同感だ…」


 ライドルとヴィルヘルムは極秘で、両国の秘匿組織を動かしていた。

 ヴェルオルムとアルミリアスの婚姻にてディオスに助けて貰った恩がある。

 他にも様々な事でディオスに助けて貰った。

 何より、素晴らしい人物を助ける為にと、思惑は一致していた。


 表向きは、ナイトレイド連合帝国に外交の圧力を掛けるとしているが、アインデウス皇帝も、アーリシア十二国王達も、裏で極秘の動きをしていた。


 事件があって三日後、それは起きた。

 アーリシア全土で、アーリシアの大英雄、ディオスと息子を助けろーーーとデモがあった。

 息子を盾にされて攫われた我らの大英雄を救えーーーーー

 卑怯者の手から、オレ達の大英雄を奪還しろーーーーー

 偉大なる大英雄と息子を助けだせーーーーーー


 アーリシアが大荒れになり、アーリシアの民が議会や王府に、ディオスとティリオを助け出すように軍を動かす事を要求した。


 その知らせをナイトレイド連合帝国のリシャル国の王城の部屋でクリルアは目にした。

 魔導通信端末のプレートには、アーリシアの荒れた様子が出ていた。


 アーリシアの大英雄が息子を盾に、息子共々誘拐される!

 アーリシアの大英雄を誘拐した目的は?

 アーリシアの民が、大英雄ディオス・グレンテルと息子の奪還をする為に軍を動かす事を要請する。


 クリルアは項垂れ両手で顔を覆う。

「ああ…何という事に…」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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