第120話 ククルクの襲撃
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あらすじです。
ディオスは何時もの様に午後の魔法設計をしていると、突然の嬉しい訪問があった。なんと、アリストスにいる子供達が来たのだ。喜ぶディオスだが…これが罠の始まりだった。
その日、ディオスは何時ものように屋敷の一階広間で魔法の設計をしていた。
時間として午後の四時、んんんーとディオスは背伸びすると、ココナが屋敷の中を隠れて徘徊する。
「ココナ…」
と、ディオスはその背に呼び掛けると、
ココナが背中を震わせ
「シーです旦那様…。今、ティリオちゃんとリリーシャちゃんで、かくれんぼしているんですから…」
「ああ…」
と、ディオスは察して黙ってココナを見つめる。
二階の廊下から二歳のティリオとリリーシャが姿を見せる。
トコトコと二人は一階に降りると、ディオスの前に来て
リリーシャが
「パパ…ココナ、いない?」
ディオスはココナが隠れる階段下を見る。
ココナは指を立てシーと隠れさせてくださいと…。
ディオスは、ジーとティリオとリリーシャを見つめ
「この広間にいるかもしれないぞ」
ココナは驚き背中をビクつかせ、階段下の隅に身を隠す。
リリーシャと、ティリオは必死に広間を探すと、階段下に隠れるココナを発見して
「ココナ、見つけたーー」
リリーシャは指さす。
ココナはそこから出て
「見つかっちゃいましたね」
ココナはリリーシャとティリオの手を取って
「さあ、旦那様の仕事の邪魔をしないように、お部屋にいきましょうね…」
ティリオがディオスに
「パパ、バイバイ」
と、手を振る。
「はいはい」とディオスは手を振って見送る。
「さて…」
ディオスは、魔法のアシスト魔法設計を続行する。
その中には、あのロマリアが全額出した、ゼウスリオンに関する魔法の設計もあった。
一時間して、五時になった時に仕事が終わって、片付けをしたら、ピンポーンっとインターフォンが鳴った。
「なんだ?」
と、ディオスは、広間にある魔導ホームセキュリティの龍鎧ファニファールを見ると、外を映す立体画面があった。
そこには多数の人物達が映っていた。
ディオスはジーと見た瞬間
「まさか!」
直ぐ玄関に行って開くと、ディオスの顔が綻んだ。
「お前達…」
『パパ…』
と、六人のアリストスにいる子供達がいた。その後ろにはアリストスでの親達も…。
ディオスは、屈んで
「どうして…?」
娘のフェルが一枚の飛空艇のチケットを見せる。
「これ、アインデウス様から貰ったんだ。パパを驚かせようって」
ディオスはくーーーと顔を喜びに渋め
粋な事をするなぁーーーー あの方は!
娘のリティアが
「本当は、アインデウス様と来る予定だったけど…。アインデウス様が、急用で来れないから、先に行っていって、部下の人から連絡が来たの…」
「そうか…」
と、ディオスは子供達の頭を撫でながら
「さあ、みんな入りな」
アリストスの微笑む親達を見て
「皆さん、長旅でお疲れでしょう。さあ…」
そこへ、レベッカが来て
「旦那様…これは?」
ディオスが微笑み
「アインデウス皇帝の粋な計らいで、皆が帰ってきたんだ!」
フッとレベッカの固い顔に柔らかい笑みが出て
「そうですか…では、皆様…」
レベッカが皆を屋敷の休める部屋に案内する。
ディオスは魔導通信機に向かう。
アインデウスにお礼を告げる為に…。
「本当にあの人は…」
ディオスは浮き足だった。
その同じ時、ティリオとリリーシャにココナがいる部屋では、ココナが二人の相手をしていると、リリーシャが
「ココナ、お水飲みたい」
「ああ…」
ココナはリリーシャを抱え
「ティリオちゃん。ちょっと台所にいくから…」
ティリオは頷いて、積み木の玩具と戯れる。
部屋のノブは子供が開けないような仕様で、勝手に出る事は出来ない。
ティリオは、積み木に夢中で遊んでいると、窓がコンコンとノックする音が…。
ティリオは気になって窓を見ると、一人の深紅の髪の少女が窓で手招きしている。
それは、ククルクだった。
ククルクは獲物を狙うような笑みで、ティリオを呼ぶ。
ティリオはそれに気づける年齢ではない。
窓の方へ行くと、高い窓の方へ手を伸ばし、壁と密着する。
窓が破壊され、そこからククルクが入り、ティリオを抱える。
「みーつけた…」
屋敷全体から警報が鳴り響く。
その警報が鳴り響く前、ディオスはアインデウスに連絡する。
出たのは、受付の女性で
『はい、直ぐにアインデウス様に…』
繋いでくれた。
『おお、ディオスか?』
アインデウスが出て
「ああ…アインデウス様、ありがとうございます」
『はぁ?』
「子供達の事ですよ」
『何の事だ?』
「自分を驚かせる為に、バルストランの屋敷へ寄越す飛空艇のチケットを渡してくれたのでしょう…」
『はぁ?』
アインデウスの城、世界樹城の執務室でアインデウスは受けていた。
アインデウスはディオスの話している事の意味が分からなかった。
その時、執務室のドアが激しくノックされ
「アインデウス様、ディウゴスです」
アインデウスは、ディオスと繋ぐ魔導通信機に
「ちょっと待ってくれ」
と、置いてドアの向こうにいるディウゴスに
「入れ」
ディウゴスは入って
「アインデウス様、大変な事態が起こりました! ロマリアへのゼウスインゴットが、搬送する秘密の航路を行く、輸送飛空艇が襲撃され盗まれました!」
ディオスがアインデウスに連絡する数十分前。
北アンメリカ大陸のアーリシア側の空港で、秘密裏にロマリアへゼウスインゴットを乗せた飛空艇が飛び立った瞬間、姿を透明にする大規模魔法で姿を隠していた戦艦飛空艇の艦隊が現れ、その輸送飛空艇を強襲、ゼウスインゴットを強奪した。
その襲撃した艦隊を指揮していたのは、ククルクの部下の一人、獣人族でアンダルの妹、ランダルだった。
ランダルは、旗艦でゼウスインゴットを強奪した知らせを受け、それをバルストランのディオスの屋敷の周囲に隠れている姉のアンダルに伝える。
「姉様…ゼウスインゴットを手中にしました」
アインデウスの思考がフル回転する。
ディオスの知らない御礼、子供達をディオスの屋敷へ?
何故? そんな事はしていないぞ…。
ゼウスインゴットの強奪?
まさかーーーー
「ディオス! 罠だーーーー」
ディオスは通信越しにアインデウスの、罠だーーーという言葉を聞いた次に、屋敷の警報が鳴り響く。
ディオスは戸惑い周囲を見回した次に、アインデウスの罠という言葉を思い返し
「まさかーーーー」
魔導通信機を投げ捨てて、走り出した。
向かう先は、ティリオとリリーシャがいるであろう部屋だ。
途中で、リリーシャを抱えたココナに遭遇する。
「ココナーーーー」
「旦那様! この警報は?」
ココナはリリーシャを抱えてディオスの傍に来る。
「ティリオは?」
ココナは戸惑いつつ
「お部屋に…」
今日は、妻達クレティアとクリシュナは、近く発生した大量の魔物を狩るために、フェニックス町の人達と出ている。
完全に屋敷の警備は手薄だ。
「クソ!」
と、ディオスはティリオのいる部屋に向かおうとした先の廊下から、数名の顔を隠した魔導鎧の一団が姿を見せる。
ココナは、リリーシャを守るように抱え、ディオスはその前に立つ。
不明の一団から、ククルクがティリオを抱えて姿を見せ
「久しぶりだなぁ…アーリシアの大英雄…」
ディオスは「く…」と顔を鋭くする。
ティリオは訳が分からず、戸惑ってディオスとククルクを見回す。
ククルクが犬歯のある口を開いて
「アーリシアの大英雄よ。この子が一生、妾の奴隷となるのを防ぎたいなら…妾と共に来て貰うぞ」
ディオスは思考を巡らせる。
どうする?
魔法で対処するか?
だが…それではティリオも…。
ククルクが、ティリオの首に犬歯の口を寄せ
「柔らかそうな肌じゃ。もしかしたら、勢い余って噛み殺してしまうかもしれんぞ…」
ディオスは苛立ちに顔を染め
「分かった。行こう…。正し、ティリオは…」
「ああ…良いとも」
ククルクは微笑み。
ディオスはククルクに近付く。
ククルクは部下にティリオを預けると、近付くディオスに走り、ディオスの首に噛み付いた。
「ぐ、アアアア!」
痛みでディオスは悶える。
そして、何かが注がれた感じを受けた。
ククルクが噛み付いた首から離れ
「これで、お前は妾に逆らえない、逆らえば…」
ククルクがディオスに右手の平を向けた瞬間。
ディオスの心臓がグッと掴まれたような感覚に襲われ、意識が揺らいでその場に伏せた。
ディオスは悔しげな顔でククルクを見上げる。
ククルクは嬉しそうな顔で
「その顔じゃ…ゾクゾクして堪らん…」
S気タップリの顔をするククルクにディオスは、恐怖を感じた。
ククルクの配下がククルクに耳打ちする。
ククルクはチィと舌打ちして
「もう…来たか…」
下がろうとするとそのまま預けたティリオを抱えた。
ディオスがその足を掴み
「約束が…違うぞ…」
ククルクは残酷な笑みで
「気が変わった。この可愛い坊やにも来て貰おう」
ディオスの沸点が一気に到達して
「お前ーーーーー」
と、叫んで立ち上がったが、ククルクの赤い眼が光った瞬間、ディオスの心臓が掴まれる支配の衝撃に襲われ、ディオスは気絶した。
そのディオスをククルクの配下達が抱えて持ち去る。
ココナが
「旦那様ーーーーー」
と、叫ぶもどうしようもない。
リリーシャを抱えているのだ。リリーシャを守るしかない。
こうして、ディオスとティリオはククルクの襲撃によって攫われた。
その二分後、ディオスの屋敷の警報に戦闘の出来る部下達を連れて来たゼリティアが駆け付けるも、後の祭りだった。
ゼリティアは、素早く事情をココナから聞いて、ソフィアに連絡、ディオスとティリオが誘拐されたとして、国中に厳戒態勢をひいて捜索したが、全くその尻尾を掴めなかった。
二時間後、アーリシア中に、アーリシアの大英雄であるディオスが息子を盾にされて、誘拐された情報が広まり、アーリシア全体がその捜索に奔走する。
だが…ディオスはもう、ユグラシア中央の下にあるインドル洋を飛行する飛空艇の中にいた。
ディオスは目を覚ますと、そこは豪華な天蓋が見えた。
そう、王族や貴族、大富豪の企業家が利用するVIPの部屋にいた。
ディオスが寝ているベッドから体を起こすと、右でティリオをあやすククルクと、部下で人族と獣人の騎士で姉妹のアンダルとランダルが、ククルクを守る様に挟んでいる。
「おお…目が覚めたか…」
と、ククルクはティリオを膝に乗せてディオスに呼び掛ける。
ディオスが鋭い視線で
「何のつもりだ?」
ククルクは微笑み
「お主にやって欲しい事があっての…」
ディオスはベッドをイスにしてククルクと対面して
「もう、ティリオは関係ないだろう」
と、ディオスはククルクが噛み付き従僕にした左の首筋を触る。
ククルクは微笑み
「この子は保険じゃ。お主がちゃんと仕事をしてくれるようにのぉ」
ディオスは頭を振って
「目的はなんだ?」
ククルクは怪しい笑みをして
「簡単じゃ。ゼウスリオンを作って欲しい」
ディオスはフッと笑み
「ムリだ! ゼウスリオンを作るには、アリストス共和帝国で作られるゼウスインゴットが必要だ。それがない…」
ディオスはハッとして「まさか…」と口を押さえる。
ククルクはニヤニヤと笑み
「ゼウスインゴットならあるぞ」
ディオスは鬼のような顔で
「ロマリアが用意したゼウスインゴットを…」
ククルクは惚けた顔をして
「さぁなぁ…」
このディオスが乗っている飛空艇の周囲を、戦艦飛空艇の艦隊が包んでいる。
ゼウスインゴットを盗んだ艦隊だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。