第118話 王子と皇女の 前編
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あらすじです。
何時もの日々に戻ったディオス、ゼリティアの付き添いでウルシアル大公の妻の誕生日パーティーに参加、そこでフランドイル王国王子ヴェルオルムから大切な女性に送りたいとする、ディオスの技術で作られた人工の魔導宝石を依頼した。
ディオスは快く受け、それを作ったが…それが問題の始まりだった。
それは、ゼリティアと共にウルシアル財団の本家である貴族ウルシアル大公の妻の誕生パーティーに来ていた時だ。
「はぁ? あの光のローブの人工の魔導宝石を作って欲しいと…」
ディオスの前に、ヴェルオルムがいた。
「頼む…グレンテル様…。必要な経費なら出しますので」
ヴェルオルムはディオスにお願いをしていた。
ディオスは、自然の魔導石の生成の研究する過程で、とある宝石のような魔導石…魔導宝石を生み出す事が出来た。
それをクレティアやクリシュナにプレゼントしても二人は
「アタシは、新しい攻撃用のエンチャン魔導石が欲しいなぁ…」
クレティアが
「わたしも同じね」
クリシュナが
超武闘派の二人には、武器に使えるモノを欲するので、無意味だった。
ゼリティアにプレゼントすると
「いいのか? すまんのぉ…」
喜んでくれる。
なので、手の込んだ仕掛けをその魔導宝石に仕込んだ。
魔導宝石のペンダントにして首に掛けると、本人から微量に漏れる魔力を受けて、それを増幅、自身の肩からオーラのような光のコートが被さって広がる演出だ。
ゼリティアは、色んなパーティーの場でコレを身につけ、オーロラのようなコートの演出に、パーティーの婦人達が集まり、ゼリティアを質問攻めにして、
ゼリティアが「コレは、夫が自分の為に作ってくれた特集の魔導宝石だ…」と。
その噂が一気に広まって、今日、この誕生パーティーで、ウルシアル大公が妻の為に、ゼリティアに頼んでディオスに作らせ、妻にプレゼントした。
ウルシアル大公の妻は、大喜びして夫からそのペンダントを付けて貰うと、ウルシアル大公の紋章の色である青と白と緑の光のコートが掛かった。
それを見たヴェルオルムは、ディオスに大事な人の為の誕生が近いので、そのプレゼントに作って欲しいと…。
ディオスはニヤリと笑み
「ヴェルオルム様…その大事な人とは? どのような関係なのです…」
ヴェルオルムは微妙な顔をして
「その…まあ…もし…望めるなら傍に居て欲しいという女性だ」
「ほぉ…」
ディオスは、フフ…と笑み。
なかなか、すみにおけないですなぁ…。
「分かりました。良いでしょう。経費ですが…少し普通の魔導宝石より値が張りますが…」
ディオスの言葉にヴェルオルムが不安そうな顔で
「おいくらになるんだ?」
「ざっと、金貨二百枚になってしまいます」
二百万の宝石なんて相当なモノだ。
ヴェルオルムはホッとして
「それなら、出せれる。お願いしても…」
「ええ…分かりました」
ディオスは頷く。
ヴェルオルムはディオスに顔を寄せ小声で
「この事は、内密に…」
「分かってます」
ディオスは当然として了承した。
二週間後、屋敷の部屋でディオスは頼まれたオーロラの魔導宝石を作り、小箱に詰めた。
コンコンとノックされ「レベッカです」と声があって
「失礼します旦那様…。フランドイルのヴェルオルム様が…」
「ああ…分かった」
ディオスはレベッカと共に、玄関にいると、ヴェルオルムが護衛の部下と共にいた。
「お待たせしました王子様」
ディオスはヴェルオルムに宝石の入った小包を渡す。
ヴェルオルムはホッとして
「ありがとうございます。これはその…」
と、小切手の白い封筒を渡す。
ディオスは受け取り微笑み
「良いですよ。思いが通じるといいですね…」
「はい…」
と、ヴェルオルムは頷いて屋敷を後にした。
その四日後、ロマリアの皇女にして次期皇帝のアルミリアスの誕生日パーティーにソフィアと共に出席した。
ソフィア、ナトゥムラ、スーギィ、レディアン、ゼリティア、ディオス、カメリアにバルストランの関係者と大所帯で訪れ、ロマリアの皇帝城全体を使ったパーティーに参加する。
ソフィアを先頭にディオス達は続いて、主役である奥の席にいるアルミリアスに挨拶をする。
ソフィアが定番の、今日はお日柄もよく、めでたい事で…と言葉を贈っていると、ディオスは不意に、アルミリアスの胸部にあるネックレスの青い宝石に視線がいった。
す…あれ? この宝石…。
もの凄く見覚えがあった。
ディオスは首を傾げながらも、気のせいだよね…似たような宝石は星の数ほどあるだろうし…と、その判断を仕舞った。
昼からあったパーティーは夜まで続き、ディオスは不意に皇帝城の美術品達を見たくて、廊下を散策していると、人気が無い場所に来てしまって
あ…やべ…
と、人がいる場所へ戻ろうとしたが、奥の方で二人して歩いていく影を見た。
「なんだ?」
ディオスは静かに追うと、その二人はヴェルオルムとアルミリアスだった。
ヴェルオルムの左腕にアルミリアスが体を預けて二人して廊下を歩いている。
え!とディオスは角に隠れて二人を見つめると、二人は人が誰もいない所に来ると、お互いに向き合い。
アルミリアスが胸のネックレスの宝石に触れると、宝石からアルミリアスを包む魔力のオーロラが掛かり肩に被さる。
えええええええええ! ディオスは声にならない驚愕を上げる。
そう、ヴェルオルムに頼まれたオーロラ魔導宝石の仕様そのモノだったからだ。
ヴェルオルムの大切な女性ってアルミリアスだったのね!
ディオスは驚くしかない。
ヴェルオルムとアルミリアスは一言二言、話した後、お互いに額を寄せて見つめ合い、そのままキスをした。
何度もキスで触れあった後、どこかの部屋に行ってしまった。
二人だけの時間が始まったのだ。
ディオスはとんでもない事実を知ってしまい、額を抱えて人のいる場所へ戻る。
様子がおかしいディオスにゼリティアが
「どうしたのじゃ? 夫殿…」
ディオスはゼリティアをジーと見つめる。
どうせ、秘密にしたってゼリティアは感づいてバレる。
「後で、部屋で話すね」
「ああ…うむ」
同時刻、ライドルとヴィルヘルムが話をしていた。
ヴィルヘルムが
「すまん。息子が迷惑を掛けている」
ライドルは微笑み
「いいさ。娘がお世話になっている」
ヴィルヘルムが
「長男は、王位継承権がない。ゆくゆくはそちらへ…」
ライドルがお辞儀して
「色々と手配してくれて、すまん」
ヴィルヘルムは微笑み
「いいさ、もう…互いに意地の張り合いをする時代は終わった。昔のようにお互いになぁ…」
ライドルは持っているカクテルのグラスを、ヴィルヘルムのグラスへ
「ああ…両国の未来に…乾杯…」
ヴィルヘルムもグラスを交わして
「ああ…乾杯」
アルミリアスの誕生パーティーを終えてディオスは屋敷に帰って来た。
到着した時刻は、昼過ぎでちょっとした昼飯を貰おうとダイニングに行くと、新聞があった。
不意に、その新聞を手にして読むと…。
フランドイル王国、王位継承権について国内で大論争。
王の血筋であるジンの強さを重んじる懐古派と、王は選挙で選ぶべきという一新派が激突。
現王は懐古派で、王位継承権のある現王の弟は一新派である。
王家の中でも二つに割る状態である。
うあああああああ!
ディオスは真っ青になる。
そう、アルミリアスとヴェルオルムの事を知っているので、懐古派の通りなら、ヴェルオルムはロマリアに行けるので問題はない。
だが、一新派の通りになると、二人の仲は…。
詰んだ…とディオスは思った。
そして、嫌な予感がしてきた。
まさか…巻き込まれないよね…。
フランドイルの王宮では、ヴィルヘルムが声を荒げ
「今まで通り、ジンの強い者が王になるべきだ。それによって無用な争いが防がれたのだ! そういう温故の知恵は生かすべきだ!」
ヴェルトールが声を荒げる。
「いいえ。王は選ばれるべきです。ジンの強さは必要ありません。小さくても発動できれば、エンペラードや、ゼウスリオンで十分です。そんな古くからの沽券に縋るより、皆で王を選んだ方が、皆が納得して、力を尽くしてくれる筈です」
ヴィルヘルムが
「王の血筋の歴史がある。それを蔑ろには出来ん」
ヴェルトールが
「確かに、そうかもしれませんが! 今の時を未来を、先を見るのも必要です」
声を荒げる父と叔父を見つめるヴェルオルムが隣にいる弟のアウグストスに
「アウグ…お前は…どう思う?」
アウグは真っ直ぐな目で
「自分は、ヴェルトール小父様と同じです。ジンの強さではない。人を纏められる力がある者が王だと思います。それは父上や兄上を見て思います」
「そうか…」
と、ヴェルオルムは渋い顔をした。
その知らせは、ロマリアのアルミリアスにも届いていた。
アルミリアスは不安な顔をして自室にいると、ノックされ「ワシだ」と父ライドルだ。
「入るぞ」とライドルは来て、アルミリアスに近づき
「アルミリアス…心配な事は分かる。だが…不安に思うな。ヴィルヘルム殿が必ず良い方向へ治めてくれる筈だ」
「はい…」とアルミリアスは頷くが、その顔には一抹の不安があった。
それから三日後、フランドイル王国で、王位継承権の議会決議が始まった。
投票で王を選ぶか、このままジンの血の力で王を選ぶか…。
優勢なのは投票で王を選ぶ事だ。
皮肉な事に、ヴィルヘルムが優秀である事、ディオスが次々と作り出した強力な魔法の力によって、投票で選ぶ方が良いのでは…と傾いている。
それもディオスも新聞で確認する早朝…。
「どうなるんだ?」
と、呟いた後、奇妙な重音と高音が響く。
「なんだ?」
ディオスは外に出た次に空から巨大な人型が降りる。
背面に光の翼を背負う、紫と白銀の二機のゼウスリオン。
四十メータの巨体になったゼウスリオンの二機が、ディオスの屋敷の前に着陸する。
「何事なの!」
と、クレティアにクリシュナ、レベッカにユーリ、チズとココナが顔を見せた。
ディオスは真っ青になる。
そう、この二機のゼウスリオンの操縦者を知っているからだ。
二機から降りた操縦者、それはヴェルオルムとアルミリアスである。
ヴェルオルムはアルミリアスの肩を抱えて、ディオスの元へ来て
「グレンテル様! どうか! お力をお貸しください」
ヴェルオルムが懇願する。
ディオスは額を抱えた。
巻き込まれたーーーーーーーーーー
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