第117話 アリストス共和帝国での出来事
次話を読んでいただきありがとうございます。
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あらすじです。
アリストス共和帝国で、ディオス達はゼウスリオンの一斉点検をする。予想以上のゼウスリオンの変異に、ディオス達は、性能を落とさずグレードダウンする巨大化の決断をする。
そして、アリストスにいる子供達と、アインデウス皇帝の世界樹城で楽しい時間を過ごした後、子供達が寝静まった夜に、災いの使者が来た。
アルスートリ大陸、ナイトレイド連合帝国の皇女、ククルクが…
ディオスはアリストスにいた。
正確には、北アンメリカ大陸の北西部にある軍事工場の大きなテストグランドにいる。
そこには、沢山のゼウスリオン達が並んでいた。
ここに並ぶのは、今まで製造されたゼウスリオン達だ。
ロマリアの七機。
バルストランの二機。
レギレルの一機。
フランドイルの二機。
アーリシア内で上記の国以外の九機。
合わせて、二十一機が並ぶ。
その全てに端子が接続されて、その内部状態を調査している。
その内部の状態を示す画面があるテント、ゼウスリオンが並ぶ脇にあるそこで、ディオスとゼウスリオンに関係した全ての技術者がいた。
全員がゼウスリオンの内部のゼウスインゴットの構造を示した画面に渋い顔をする。
ディオスは頭を掻いて「はぁ…」と重いため息を吐く。
隣にいるアインシュが
「これ程とは…」
アーリシアのエルダー級魔導士達も悩み。
ゼウスリオンの操縦者の浸食を防ぐ為に、様々なリミッターを装備しているので、前回より金属結晶の構造変化が少ないと思っていたが。
反応が少ない分、その少ない力でも存分に発揮するように変化していた。
ケンブリッジが
「どうします? これは…やはり…グレードダウンさせますかな…」
アルサドーラが
「となると…この元のゼウスリオンを使いますから…全長が四十メータの巨大なゴーレムになりますなぁ…」
ディオスが
「仕方ないでしょう。操縦者を守る為です。暴走する兵器なんて使い何処がないですから」
サンドラが
「四十メータですか…。小型巡洋艦クラスの戦艦飛空艇に匹敵しますな」
そこへ、ヴェルオルムとアルミリアスが来て。
ヴェルオルムが不安な顔で
「グレンテル様…どうでしょう?」
ディオスは肩を落として
「その…変化が凄まじく早いので、守る処置として、この機体を元に四十メータサイズまで巨大化させてグレードをダウンさせます」
アルミリアスが
「それによって性能は?」
ディオスはフッと笑み
「大丈夫です。まあ…巨大になって置く場所に不便になるくらいです」
アルミリアスは性能が落ちない事にホッとして
「そうですか…」
そこへ、アリストスのエルギア技術者が来て
「グレンテル様…。バルストランのゼウスリオンですが…。許容範囲なので問題ないかと…」
「あ…そうですか…」
やっぱり、エルギアを元に進化させた技術だから、エルギアのように基幹部分だけがゼウスインゴットの方が、上手く行くのかなぁ…。
そう思うディオスであった。
その後、バルストランのゼウスリオン以外のゼウスリオンは、変化に対応する為に、巨大化のグレードダウン作業に入った。
そしてディオスは、一刀に授けたゼウスインゴットが使われている装備大剣、ヴァルハトリアの検査をしている。
ヴァルハトリアは巨大なリングが浮かぶ検査装置内で浮かび、その脇にディオスが検査した情報を開示する画面を見つめる。
その左に一刀もいる。
「どうですかディオスさん?」
一刀の問いにディオスは
「ああ…問題ない。堅実な進化をしているよ。このまま様子見をしよう」
そう、驚異的な構造変化をしていない。
むしろ、一刀の扱い易いように強化や魔法循環を良くするように進化している。
きっと、一刀くんのように真面目な人物は、それがゼウスインゴットにも伝染して、そうなるんだなぁ…
と、ディオスは思った。
検査装置を停止させ、ディオスはヴァルハトリアを手にして
「はい、終わりだぞ」
「ありがとうございます」
一刀はディオスから愛刀を受け取る。
ディオスが微笑み
「じゃあ…さっそく、行くか!」
「はい!」
一刀は大きく頷いた。
ディオスと一刀が向かった場所、北アンメリカの西海岸にあるアインデウス皇帝の世界樹城へ来る。
そこの内部庭園に行くと…
「みんなーーー」
ディオスが嬉しげに声を上げると、そこへ、そう…アリストスに渡った六人が駆け付ける。
八歳の女の子フェルにリティア、アイカと同じ六歳女の子のアル。
七歳の男の子のダンロ、アイカと同じ六歳の男の子のティダ、シャル。
ディオスは抱えきれない程の、六人の娘達、息子達を抱き締めた。
「会いたかったよーーーーー」
子供達に頬スリするディオス。
その後ろに一刀もいる。
一刀はディオスが子供を愛おしむ姿に笑みがこぼれる。
アイカが来て一刀の手を握って
「みんな、一刀お兄ちゃんだよ」
それに、六人も集まって一刀を囲んで庭園の真ん中へ誘う。
一刀は、アイカ達七人と遊ぶ。
アイカから、一刀の事を聞いている六人は、直ぐに一刀と馴染んだ。
なんとも和やかな様子を見つめるディオスの肩をクレティアが握り
「ダーリン、料理」
「あ…うん」
ディオスはクレティアと一緒に世界樹城内の大きなキッチンへ向かう。
そこには料理をするクリシュナとゼリティアの姿があった。
料理をしながらゼリティアが
「ディオス、早くしないと、子供達が待っておるぞ」
「ああ…」
ディオスは腕を回してキッチンへ向かう。
この大きなキッチンにはどんな食材も道具も揃っているので、直ぐに色んな料理が出来た。
そう、アイカが言っていた。ディオス達のお重をアリストスにいる兄妹達に振る舞って欲しいを叶える為にディオスは奔走する。
世界樹城の内部庭園で、大きなランチマットを引いて、そこに六人を子供とした父母や祖父母達もいる。
ディオス達四人は、沢山のお重を持ってそこに現れ、全員の真ん中へ並べた。
『うああああああああ』
子供達が豪華絢爛な色取り取りのおかずが並ぶディオス達のお重達に目を輝かせる。
「さあ…」
ディオスが子供達に
「みんなで食べよう!」
『うん』と子供達は頷いた次に、食事のお祈りをして、一斉にお重へ飛びかかる。
「これ美味い!」
「おいしい!」
「ああ…取らないでよ」
子供達は無我夢中で食べる。
ディオスが、飲み物を子供達に配りながら
「沢山あるんだから、慌てなくていいぞ」
ダンロがおにぎりを両手にして、ディオスの膝の上に座ると
「ずるい! わたしも」
アルが
「ぼくも!」
シャルも
二人が乗って三人のすし詰め状態で、ダンロが追い出されると、ダンロを息子にした伯父が
「こっちへおいで」
と、ダンロを自分の膝の上に置いた。
「ありがとうパパ…」
ダンロは微笑む。
伯父は微笑み、ディオスと視線を交わす。
実は、ダンロの手紙から、伯父の事をパパと呼びそうになってどうすればいいか?とディオスに聞いた。
伯父の方も、ダンロが自分を父として受け入れるの戸惑っていると…。伯父としては嬉しい限りだが…ディオスもダンロの父だ。どうすれば…?
ディオスの答えは…
なら、両方とも父さんでいい。ダンロは得だと…父親が二人もいるんだ。
アーリシアでのパパ、アリストスのパパ。
二人いてダブルで得なんだ…と。
それにより、伯父をパパとしたダンロは、ディオスと新しい伯父のパパの二人に甘えられて嬉しかった。
ダンロの贅沢、それは…ディオスと、伯父のパパを二人並べて
「パパーーーー」
と、二人に抱き付く事だ。
二人のパパに存分に甘えるダンロに、ディオスと伯父だったパパは嬉しそうに微笑む。
同時に伯父は、ディオスの懐の深さに感嘆した。
そこへアインデウス皇帝が来る。
「どうだね? 今日のパーティーは…」
見る限り、賑わっていた。
アインデウスはアイカの隣に来て
「アイカ…どうだね? 向こうでの生活は?」
アイカが自分の発表会のランチを巡ってディオスと、妻達クレティアにクリシュナとゼリティアが料理対決をして嬉しかった事を話した。
アインデウスは「ふ…」と笑ってしまう。
「そうか…良かったな…」
「うん」とアイカが喜ぶ顔が見れてアインデウスは満足だった。
その夜、世界樹城の巨大浴場で子供達と汗を流したディオスは、子供達と一緒に大きなベッドで眠り、子供達がが寝静まった後、ベッドから抜けて世界樹城内を歩いていると…。
「何かお探しでも?」
ディウゴスが後ろから声を掛ける。
「ああ…喉が渇いたので」
ディオスが告げると
ディウゴスは肯き
「こちらです…」
案内したそこは、大きな扉だった。
扉が開き
「どうぞ…」
と、ディウゴスが誘い、ディオスが入ると、アインデウスが遠方の夜景をが見える部屋で一杯やっていた。
「こっちへこいディオス」
と、アインデウスが呼ぶ。
アインデウスが座る隣にディオスが座り、アインデウスがグラスに一杯を注いでディオスに渡し
「どうだ? 子供達に会えて」
ディオスは一杯を飲みながら
「ええ…最高ですよ。その…思い出すんです。仕事で疲れて帰って来た父親が、疲れているにも関わらず。子供だった自分達の相手をしてくれいたんです。なんか…どうしてそうするのが分かる気がします」
「そうか…」
「色々とありがとうございます。アインデウス皇帝陛下」
「気にするな。子供の華やかな声は、何時聞いても、いいモノだ。安らぐ…」
そこへノックがして
「アインデウス様…」
妻の白姫の声だ。
「どうした?」
白姫が
「アルスートリ大陸の、ナイトレイド連合帝国の皇女様ククルク様が緊急の訪問を…」
「なんだと…」
アインデウスは渋い顔をする。
ディオスが首を傾げる。
こんな時間に?
部屋の時刻を見ると夜中の11時だ。
アインデウスが
「分かった。すまんディオス」
扉が勝手に開く。
白姫が
「お待ちを…」
「よい!」
と、告げたのは深紅の髪に黒いドレスを纏った身長が140程の人族少女だ。
だが、妙に人間離れした鋭さを持っている。
南極に近いオース○ラ○アのような大陸にある連合帝国、ナイトレイドの皇女ククルクが鋭い眼光をディオスに向ける。
ディオスは気圧されるもお辞儀して
「初めまして、アーリシアのバルストラン共和帝国の王ソフィアの臣下、ディオス・グレンテルと申します」
ククルクは肉食獣の如く口角を上げて
「知っている。アーリシアの大英雄なのだろう」
「はぁ…過分な名称でございます」
ディオスは頭を再び下げる。
ククルクは、アインデウスとディオスの両方を見て
「ちょうど良い。アインデウス皇帝。今日は頼みがあって来た」
アインデウスが平静に
「今日は遅い時間であるぞククルク殿…明日の朝に」
「はぁ? 妾に指図するつもりか?」
ククルクは苛立ちを見せる。
ディオスは渋い顔をして
おい、こんな時間に来る方が失礼じゃあないのか?
ククルクがディオスに獣眼のような深紅の視線を向け
「キサマ…妾に対して不敬だぞ! 妾に合わせられないのが悪い」
ディオスはハッとする。
コイツ…心を読むのか?
ククルクがニヤリと笑み。
「お主、バカではないなぁ…」
ククルクは、アインデウスに視線を向け
「アインデウス皇帝、ゼウスリオンが欲しい」
アインデウスは渋い顔をして
「そういう重要な案件はおいそれと通す事は出来ない。それに、ゼウスリオンを譲渡するなら、包括的大規模破壊魔法の制限条約に入って貰う方が先だ」
ククルクは嘲笑いを見せ
「そんな約束なんぞ、要らん。ゼウスリオンだけ寄越せ」
完全なる上からの物言いにディオスは頭が痛くなった。
なんだ? コイツ? 高慢不遜なバカガキだろう…。
ククルクがディオスの心を読んで、獣眼で睨み
「ああ…キサマ…」
ククルクの周囲に黒い影が広がって、床の大理石が壊れて黒い熊型の怪物達が出現する。
「え…」
と、ディオスが戸惑っている間に、その熊型の怪物達がディオスへ疾走。
180センチの巨体とは思えない素早さでディオスを押さえ、ディオスは反射的に超震動のエンテマイトを展開しようとしたが、押さえる熊型の怪物に魔力を吸われて発動が遅れる。
なに!!!!!
と、ディオスが戸惑っている間に、ククルクがディオスの眼前に現れ口を大きく開ける。
その口には大きく突き出た犬歯がある。
それはまるで、ドラキュラの牙のようだ。
ククルクがディオスの首に噛み付こうとした瞬間、ディオスを押さえていた熊型の怪物達が何かに弾き叩かれ砕けた。
その力はアインデウスである。
アインデウスの背後から、漆黒の何かの腕が伸びて熊型の怪物を破壊、熊型の怪物は、取り込んで形作った大理石をバラ撒く。
ククルクは反射的に避けて、元の場所に着地する。
アインデウスの目が光る。
「私の城で不敬を働くのは止めて頂こう…」
ククルクが鋭い獣眼を向ける。
”ライト・セイバー・ホロウ”
白姫が魔法を発動させて、光の檻にククルクを閉じ込める。
「悪戯が過ぎる方は、わたくしが許しません」
ククルクは殺気を仕舞って
「今日は、気持ちが萎えた。帰る」
そう告げて、ディオス達に背を向けると、鉤爪にした手に黒い影のような力が集まって、それで白姫の光の檻を破壊して部屋から出て行った。
事態が収まったそこでディオスが
「なんだなんだ?」
アインデウスがディオスの傍に来て
「どこか、噛まれていないか?」
ディオスの首を調べる。
「ええ…? 大丈夫です」
ディオスが自分の首を擦り状態を確かめた。
アインデウスは何も無い事を確認して
「良かった。ククルクが持っているキュリオロス(霊神技)には噛まれると、従僕になる力がある。治療法があるから大丈夫だが…一応はな」
「はぁ…」
ディオスは内心で、吸血鬼みたいだなぁ…。
アインデウスが「全く…」と漏らし
「あのククルクという娘は気位が高く気難しいヤツでなぁ…」
「問題児ですか…」
「ナイトレイドの皇家には、ああいうタイプの皇女が生まれやすい」
ディオスは嫌そうな顔で
「関わりたくないですね」
アインデウスは
「ああ…距離を取った方がいい相手だ。アーリシアでは関わる事は少ない筈だから、大丈夫だがなぁ…」
ククルクは世界樹城の正門から下りていくと、そこに魔導車が待っていた。
魔導車の傍には黒髪の人族の女性騎士が立っている。
女性騎士、アダンルはドアを開けて
「ククルク様…どうぞ…」
「うむ」
と、ククルクは後部座席の真ん中に座る。
アダンルがその左に座り
「首尾の方は…?」
ククルクは苛立った顔で
「話にならん」
「では…」とアダンルは鋭い顔をする。
ククルクは怪しく笑み
「欲しいなら、奪うまで…」
アダンルは一枚の魔導情報端末プレートを取り出し
「ゼウスインゴットを製造している場所は、内偵によって」
「よい仕事だ」
と、ククルクは褒めた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。