第116話 どうして? 料理対決に?
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでいってください。
あらすじです。
アイカの発表会のランチを巡って、ディオスと、妻達のクレティアとクリシュナにゼリティアの三人と料理で戦う事になる。
どうせ、四人で協力して作れば良いのにを無視して四人は、勝負する。
翌日、バウワッハはディオスの屋敷にいた。
ディオスの屋敷のダイニングルームで渋い顔をする。
「なぜ、ワシがここに呼ばれておるのだ?」
隣にいるセバスが
「大旦那様、申し訳ありません。公正なジャッジの為に、料理の知識が豊富な大旦那様が良いと、ゼリティア様が…」
バウワッハは額を抱えた後
「ああ…うむ…」
微妙な感じにしか言えない。
そして、バウワッハの隣にはアイカがいた。
アイカは目を輝かせ、待ちきれないのか…両手にフォークとナイフを握っていた。
こうなった原因は、ディオスと妻達がアイカの発表会のランチをどちらかが作るのか?という、なんとも…くだらない理由で始まった。
バウワッハはポツリ
「そんなの四人して協力してやれば良いのに…」
セバスが
「ごもっともです」
ディオスはキッチンにいた。
屋敷のキッチンは大きかったので、ディオスが料理している後ろで、ゼリティアとクレティアにクリシュナの三人が同時に料理している。
ディオスはチラチラと後ろの妻達を見ながら、料理をする。
一体、どんな料理を出すのだろうか?
そう、伺いながら、ディオスは衣にする袋の食品を砕く。
フフ…だが、無駄だ! オレはアイカの好みを全て把握している。
これがアイカの大好物! サクサク衣の唐揚げだ!
ただの唐揚げではない。
魔法の力を使って揚げる前に浸透圧を上げて味を染み込ませた絶品胸肉。
それに、アイカの大好きなポテトチップスを砕いた衣で揚げる。
外はサクサク、中はジュワーッと味が広がる。
創造しただけでアイカが喜ぶ顔が目に浮かぶ。
更に、唐揚げは高温で揚げるので、菌の増殖も少なく衛生的だ。
弁当の定番として申し分なし!
三本勝負のスタートダッシュは頂いた!
ディオスは確信する。
そのディオスの後ろで、妻達、クレティアとクリシュナにゼリティアは、ディオスが作ろうとする料理を察知する。
アイカの大好物、胸肉の唐揚げなのは間違いない。
だが…こちらとて負けてはいない。
三人の知恵を合わせてとあるスペシャル料理を作る。
見てなさい!
ダーリン。
アナタ。
夫殿!
……………言っておくが、これは決して料理を題材とした異世界ファンタジーではない。
だが、現在、料理をメインに進んでいるのをご容赦していただきたい。
『出来た!』
ディオス、クレティア、クリシュナ、ゼリティア
四人は同時に掛け声をする。
速効で四人は隣のダイニングルームへ料理を持っていく。
迫り来る四人にバウワッハは頭を抱え
「ちと、落ち着け…」
と、冷静にさせようとしても無駄だった。
ドンドンとバウワッハとアイカの前にディオスと妻達の料理が並んだ。
一つは、唐揚げである。
もう一つは、インドのナンのようなパンで包んだパイ包みである。
バウワッハはどっちを先に食べるか?と戸惑っている。
もの凄い形相で、ディオスと妻達が見ているので、選びにくい。
セバスが
「では、どちらを先に食べるか、これで…」
金貨を取り出す。
バウワッハが
「表がディオスで、裏がゼリティア達でいいな」
ディオス達は渋い顔だが頷いた。
セバスがコイントスして、コインがバウワッハの前にあるテーブルに落ちる。
表、ディオスが先行だ。
「では…」
バウワッハは、ディオスの唐揚げを食べる。
アイカも頬張る。
バウワッハは目がカッと開く。
「これは…なんとジューシーな。うま味が溢れ出てくる。このカリカリとした衣、そして…溢れんばかりの唐揚げのうま味、全てが申し分ない」
グッとディオスはガッツポーズをした。
クレティア、クリシュナ、ゼリティアは渋い顔をする。
アイカが、一気に唐揚げを平らげ
「おかわり!」
と、ディオスにねだる。
ディオスはアイカの右に来て
「ああ…一杯、作ってやるぞーーーーーー」
アイカを抱き締めた。
ゼリティアが
「お爺様、妾達の料理を!」
「あ、ああ…」
バウワッハは、パイの包みをフォークに刺して食べようとしたが
「ああ…そのまま、手で持っても大丈夫ですから」
と、クリシュナが告げる。
「うむ…」
バウワッハは手にして包みを口にする。
「うむ!」
バウワッハの口の中で、うま味を凝縮したトマトのミートソースに、ピリッとした辛めのソーセージの味が加わる。
「これは止まらん」
バウワッハは一気に食べきった。
これ本当に? 魔法の戦いと夢に渋い現実が混じるファンタジーか?
作者は混乱するしかない。
バウワッハは、料理を食べ終えて
「いや…ゼリティア達の料理、美味だった」
アイカも包みを食べてしまい。
「これもおかわり!」
おかわりをねだる。
クレティア、クリシュナ、ゼリティアの三人は満面の笑みだ。
バウワッハが
「トマトの完熟したミートソースに、少し辛めのソーセージが合い。幾らでも腹に入りそうじゃわい」
ディオスは、ぐぐ…と顔を渋くする。
セバスが「判定の程は…?」
バウワッハが
「ディオスの唐揚げも美味かった。だが…ゼリティア達のような搦め手で幾らでも入る料理の方が発表会には相応しいじゃろう」
アイカは
「ママ達の料理が食べたい」
ディオスは
「くそーーーーー」
敗北を噛み締める。
「よーーーし」
と、クレティアはガッツポーズ。
クリシュナとゼリティアは勝利者の余裕の笑みをする。
ディオスが
「次は負けん!」
二品目に突入。
お題はサラダである。
ディオスは、様々な野菜を切る。トマトやキャベツ、キュウリ、セロリ
アイカの食べやすい一口サイズにした次に、とある魔法の調味料を、細かくしたサラダにかけて和える。
それは、特製のクラッシュゼリードレッシングだ。
どんな野菜でも食べて欲しいと、ディオスはあえて、アイカが苦手なセロリを入れた。
だが、このセロリ、タダのセロリではない。
強い匂いを消して、シャキシャキを演出した。
そう、セロリに匂いが出ないコーティングをしたのだ。
ええ…言っておきます。この話はあくまでも、魔法ファンタジーです。
F○Ⅶのような世界観に近い、ファンタジーです。
料理の魔法ファンタジーではありませんので。
ゼリティアとクリシュナにクレティアの三人は、野菜をスティックにする。
それに二種類の粘度の高いドレッシングを容器にいれて置く。
そう、自分で手にしてドレッシングをつけて食べるタイプにした。
食育を考えての母親らしい、愛情の教育も込められている。
流石、ママである。
料理がバウワッハとアイカのテーブルに運ばれる。
バウワッハは、ディオスと妻達のサラダを比べる。
アイカは、待てずにディオスの小さなサイズに刻まれたサラダを食べる。
「美味しい!」
バウワッハはゼリティア達の方から食べる。
「うむ、刻み方、そして…切るときに金属でない。瀬戸物の包丁を使って、生臭さを抑えた。ドレッシングも二種類あり、あきがない」
ゼリティアとクレティアにクリシュナは互いに手を叩き合わせて勝利を確信する。
ディオスはぐぐ…と食いしばる。
バウワッハが
「だが…これはディオスの勝利だ」
ゼリティアとクレティアにクリシュナは驚きを向け
「どういう事じゃ、お爺様…」
と、ゼリティアが
バウワッハがディオスの皿を三人へ向けて
「食べてみよ」
妻達はディオスのサラダを食べると、ハッとした。
そう、アイカの嫌いなセロリを食べれるようにしていた。
子供が野菜を嫌いな理由は、その強すぎる青臭さである。
アイカも例外ではない。
セロリの匂いを抑えるうま味のついた片栗粉のコーティングで、セロリの匂いを消して、シャキシャキの食感とコーティングのうま味が加わって美味しい。
アイカの嫌いなセロリを食べて貰う為に、工夫したディオスの方が上だった。
ディオス、グッと拳を握り掲げる。
両者引き分けに、ディオスと、クレティアにクリシュナとゼリティアは睨み合う。
「今の所、引き分けねダーリン」
クレティアが
「ああ…次で…」
と、ディオスは鋭い顔をする。
勝負は、ラスト。デザートで決まる。
ディオスは、とあるデザートを作る。
それは日本ではありふれた文化的デザートだ。
シンプル イズ ザ ベスト
それだけである。
こしあんのお団子である。
団子は、お米のもち粉とデンプン粉のぷるるんで、餡はディオスの十八番である黒砂糖と蜂蜜、三温糖の組み合わせである。
ただ、アイカに喜んで欲しいとして、シンプルにいった。
妻達は、同じく団子であるが…タダの団子ではない。
揚げ団子だ。油で揚げない揚げ団子、オーブンで焼き揚げる揚げ団子だ。
こちらもシンプルに攻める。
そして、チョットしたミルクティーも付ける。
この組み合わせは鉄板だ。
王道こそ、真実。
邪道なんていらない。シンプルこそ、己の思いを込められる。
だが、タダの揚げ団子ではない。
三色、黒糖、蜂蜜、三温糖の三色団子だ。
妻達も、ディオスと同じ思いである。
アイカに喜んで欲しい。それだけだ。
ディオスと、妻達の最後の勝負の品がバウワッハとアイカのテーブルに並べられる。
「ほぅ…」
バウワッハはディオス達の意図を察した。
余分な色気は捨てて、シンプルに勝負してきた。
「では…」
と、バウワッハはディオスのこしあん団子を。
「ゼリティア達のを」
と三色揚げ団子を食べる。
「はぁぁぁぁぁぁ」
と、バウワッハは唸り
「ムリじゃ。これは甲乙付けがたい。なら…」
全員の視線がアイカに向けられる。
アイカはディオスと妻達のデザートを平らげ
「おかわり!」
ディオスが
「どっちが良かった?」
アイカは首を傾げた後、ディオス達四人のそばに来て、四人の手を全部抱き締めて
「パパやママ達、全部のお弁当が食べたい!」
バウワッハがフッと笑み
「決まりじゃな。お主達、四人、それぞれの弁当を作る。これでよしとしようではないか」
ディオス、クレティア、クリシュナ、ゼリティアの四人は互いに視線を交わして、フッと照れくさそうに微笑む。
そう、なんでこんな事でムキになったんだろう?
最初から四人で作れば問題なかったのに…
『あははははははははは』
と、四人は笑いあった。
セバスとバウワッハは、呆れた笑みで
最初からそうすればいいのに…
こうして、アイカの学校での発表会のランチは、ディオス達四人の四つのお重で決まり、当日、ディオス達は屋敷のキッチンでお昼のランチを作り、アイカの学校へ行った。
アイカの学校は、地球でいう小学六歳から中学十五歳までの一貫教育である。
しかも、同年輩が集まるクラス形態ではない。
一クラス四十五人の六歳から十五歳までの幅広い年齢層を一つのクラスとした学級システムだ。
ディオスは思った。
そんなんで授業が出来るのか?
だが、この世界の学習システムは地球とは大違いだ。
教科書がない。いや、正確には魔導情報端末のプレートが教科書だ。
だから、授業道具の忘れ物はない。学校がその教科書システムだから。
基本的にアイカの学校に行く荷物は、着替えとか、お弁当の日にはお弁当、そして…クラスのみんなと遊ぶ道具くらいだ。
そんな年齢も違う子供達がいるのだから、先生も大変だろうと、思ったら、先生は九人もクラスにいる。
そう、一クラスの一年齢は五人の集まりで、その五人の集まりに一人の先生が付く。
ディオスの脳裏に、の○のんび○りのバラバラな年代が集まった学校というのを思い出した。
そんな感じに、ヨーロッパや、オーストラリアなんかにあった。
先生が指導者でなく、子供をプロデュースする、そんなタイプの学育だな…と。
まあ、さて置き、ディオスはアイカの学校の発表会に来る。
スキルを使った、演目や、魔法を使った競技、運動を使った競技。その全てが保護者参加型だ。
本当に学校に来て子供と遊んでいるようなモノだ。
そして、お昼、実はこの学校、オルディナイトの子供達も多く通っている。
貴族の家系は意外や、スキル持ちが多いのと、この学校はスキル持ち以外のクラスも持っている。
イギリスみたいに、貴族の多く通う学校らしいが…。
ああ…名門とかってヤツね。
と、ディオスは皮肉に思った。
学校の傍にある喫茶店は、毎年、オルディナイトの一門が子供の保護者の為に貸し切りにする。
そして、アイカの友達である女の子サリカもオルディナイトの子だった。
そして父親は、なんと魔導石部門のアルマルだった。
ディオスは思う。世間って狭いと…。
ディオス達は、喫茶店のテーブルに用意した四つのお重を並べる。
アイカは、ディオスにクレティアとクリシュナにゼリティア、セバス、サリカやその両親アルマルさん達も交えて、四つのお重を見た。
「うわあ…」
色取り取りの輝くお重達にアイカは目を輝かせる。
「さあ、食べな」
と、ディオスは告げて
「いただきますーーー」
アイカが手を付けると、みんな手を出した。
アイカは一杯に頬張りながら
「おうふぃい(おいしい!)」
サリカもお呼ばれして
「本当、おいしい!」
アイカは、もの凄くがっつく。
ディオス達、パパやママ達がアイカの為に作ってくれたおいしい四段お重の弁当に、嬉しくて堪らない。
ちょっとおバカな争いはあったが、こうしてパパやママ達の愛情を感じる弁当を頬張りながらアイカが
「ねぇ…アリストスにいる…。フェル、リティア、アル、ダンロ、ティダ、シャルに」
ディオスは肯き
「ああ…みんなにも食べさせような」
アイカに微笑むと、アイカは嬉しそうな顔をして
「うん!」
と、強く頷いた。
こうして、なんか分からないが、アイカのお弁当を巡る戦いは終わり。
残ったのは、もっと強くなった家族の絆だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。