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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
ディオスと挑戦者達
113/1107

第112話 純也ショッキング

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


あの三人娘達のとんでもない事がバレてショックを受ける純也は、塞ぎ込んだ。

三人娘達の父親達は、純也への贖罪を行いとするが…事態は思うように行かなかった。


 純也は一人、ディオスの屋敷で沈んでいた。

 部屋の隅に膝を抱えて座り、壁に向かって虚空を見ていた。

 その目は、完全に死んでいた。


 それを心配げにディオスを見つめる。

「なぁ…」

と、呼び掛ける肩をクレティアが握り

「ダーリン、ちょっと…」

 ディオスを広間に連れて行く。


 広間の来客テーブルには、純也を診察した心療内科医がいた。


 獣人の男性医師は、難しい顔をして

「その…一時的なうつ状態になっていると思われます」


 ディオスはその説明を聞く。

「どうすれば…」


 医師は難しい顔で

「当分の間…気持ちの整理がつくまで、静かにさせるしかありません。相当なショックを受けているので…そのストレスに精神が負けて、一時的な精神鈍感になっています。過眠や倦怠感といった症状が出るかもしれません」


 ディオスは頭を抱える。

 マジか…それ程までに…。


 それ程までに純也にはショックだった。

 そこまで、あのバカな三人娘達に信頼があったのだ。

 裏切られたというショックが大き過ぎて、心が落ち込んでいるのだ。


 ディオスは眉間を押さえながら

「バルストランでの社会保障は…受けられませんかねぇ?」


 バルストランの社会保障システムはきめ細やかだ。

 食料、医療、住居、生活必需、教育

 この五つの柱で成り立ち、その個人に必要な社会保障を受けられる。

 食料と、住居が不足しているなら、それに必要な食費と、住居費または住居の提供。

 医療が必要なら医療費の援助。

 まあ、基本、バルストランでは、所得に応じて医療費の割合が決まっている。日本で言うなら年間所得四百万以下での医療負担は無料だ。

 それ以上になると、二割、三割と増え、上限は三割だ。

 生活必需とは、衣服、情報機器、日用品といったそういう経費の援助だ。

 教育は無論だが、勉強、学習、修学に関する補助だ。バルストランの、アーリシアの教育については後々だが…。

 とにかく、教育は格安で受けられる。年間二十万を越える教育費は、無料になる。

 産学一体も進んでいて、殆どの企業が大学で技術の開発を行っている。


 だが、大きな欠点がある。

 そう、国民として認識されているならだ。


 バルストランの国に、国民としてチャンと国民登録されていないと、一切受ける事は出来ない。

 無論、他国から来た者は、他国民という事で保障は受ける制度が…この五つの社会保障とは、天と地も差がある保障である。


 純也の場合は、このバルストランに国籍がない。

 他国民という事で、最低限の食料と生活必需に医療の三つの保障しかされない。

 バルストランの国籍を取れば、同等に受けられるが…以外や審査は厳しい。

 一番早い手は、バルストランの国民の誰かと結婚して、そっちに入れば自動的にバルストランの国民になれるが…。

 離婚した場合…。まあ、この世界でのアーリシアでの離婚率は、5%だから滅多にないが、離婚したら…国民から外される。子供は…大人になった時にどちらかを選ぶが…。

 それまでは、バルストランとその他国の二重国籍となる。

 このチャンとしたきめ細やかな社会保障のシステムのお陰で、無駄な社会保障の経費は削減され、効率良く欲しい人に届けられている。

 


 この話は後にして…純也の受けられる社会保障についてディオスは悩む。

「なんとか…保障の費用とかを…」

と、ディオスが告げながら

 最悪、自分が負担しても…


 その肩にクリシュナが手を置き

「アナタ…それは、あの子達の親にさせた方がいいんじゃない?」


 ディオスは広間の端にいるダラス、ウルア、メディナにその父親達の一団を見る。


 ダラスの父親が来て

「その…彼は…どうでしょうか?」


 ディオスは厳しい顔をして

「ちょっとショックを受けすぎて…問題が…」


 ダラスの父親は項垂れ

「娘の愚かな事で、本当に申し訳ない。彼の…純也くんのバルストランにいる間の費用は我々で面倒を見ます」


 純也を見た心療内科医が

「まあ…それなら、多少は…生活出来るかと…」


 それで決着した所で玄関が開き、ゼリティアがセバスとゼリティアの仕事の秘書の魔族の女性の二名を連れてディオスの傍に来る。


 ディオスが

「どうだ? 純也くんの持ち物であった温泉の方は?」

 そう、無かった借金のカタに取られた純也くんの温泉について聞く。


 ゼリティアは渋い顔をして

「その…マズイ事になった」


 ゼリティアの左にいる秘書の女性が、鞄から書類を取り出しテーブルに置いた。

「これを…」


 ディオス達がジーと書類を見る。

 今現在の温泉の所有者が、なんと、曙光国政府だった。


 ディオスが

「どういう事だ?」


 その問いにゼリティアが

「あの三バカ娘共が利用した違法金融は、純也殿の温泉施設の権利をマフィアに売り渡した。もし、マフィアの転売に使われているなら、取り戻せたが…。途中から、正式な契約に切り替わって、曙光国政府がそれを買い取った。政府の資産に組み込まれたんじゃ」


「じゃあ…取り返す事は…」

と、ディオスが驚きを向ける。


 ゼリティアは頭を振り

「ほぼ…不可能じゃ…」


 ディオスはガクッとしたが、もっとショックを受けている人がいる。


 そばにいたダラスの父親だ。

「なんという事だ…」


 そう、三人娘の父親達は、純也が娘の所為で転売した実家の温泉施設を買い戻して純也に返すつもりでいた。


 ディオスは頭を抱える。

  もう…打つ手無し!

 どうする? 曙光国に帰せば…その国の社会保障に任せて…。

 でも、出来るか?

 他国で精神を病みました。治療で帰しますとか…そんなムリ通るか?

 

 色々と考えるディオスに、ゼリティアが

「夫殿…考え中、悪いが。打開策はない。このまま、バルストランで何とか…生活して貰うしかあるまいて…」


 ディオスは目元を押さえる。


 ゼリティアの言う通りしかなかった。



 その後、あのとんでもない三人娘達は、父親達に散々叩かれ、ディオスが玄関で見送ると、父親達は娘の頭を鷲掴みして何度も何度も謝った。

 娘達の行いに対する贖罪は…純也が良くなったからにして…。

 一応、警察隊沙汰にはしなかった。

 

 そして、純也は…フラフラと歩き出し、住まいがある王都東のブルードラゴンの城砦町へ帰ろうとしたが、ディオスが止めて当分の間、屋敷で預かる事にした。

 

 翌日の午前中、屋敷の庭先であるディオス達の訓練に純也の姿があった。

 クレティアの案で、一応、ちゃんとした生活をさせた方が、心傷の治りは早いからと…軽く汗を流す運動をさせ、その後はティリオとリリーシャと共に遊んで貰う。

 まあ、純也くんに二人の面倒を見て貰っているが…。


 そこにヒロキもいた。

 ディオスから事情を聞いて心配になって純也を見に来た。


「全く…とんでもない事になって」

 ヒロキは渋い顔をする。


 ディオスとヒロキの前には、屋敷の庭でティリオとリリーシャと遊ぶ純也の姿があった。

 その見かけでは元気そうだが…偶にフッと悲しそうな顔をする。


「何とかなればいいんだけどな」

 ディオスは呟く。


 ヒロキが

「案外、心が傷ついた時は、小さな子供達と遊んでそれを忘れる事が、一番の薬になるかもしれませんよ」


「だと…いいな」

と、ディオスは願った。




 家に戻されたダラスは、騎士の格好ではなく、貴族の令嬢のドレスを纏っていた。

 その脇には何時も、執事か女中がいる。

 ダラスが逃げ出さないように、面倒を起こさないようにする為の見張りだ。

 そして、ダラスのドレスの下に右足には…金色の魔導回路が刻まれた輪が填まっている。

 もし、上手く逃走した時に居場所を知らせる用の魔導発信器だ。

 ダラス…ラティーナは、父親と母親がいる居室に来た。

 ソファーに座る父親と、ラティーナと同じ金髪でオーガ族の母親。

 父親は項垂れ、母親は泣いていた。


 ラティーナは苛立ち

「そんなに、面汚しをした娘が恥じなのですね」


 父親は立ち上がってラティーナの前に来て、ラティーナの頬を叩いた。


 ラティーナは頬を赤くしても父を睨む。

 負けるか!と…。


 父親は、顔を情けなさに染めて

「ワシは、お前がバカをして、家がバカにされて何の問題はない。お前は、やってはいけない事をした! 自分の為に他人を犠牲にして踏みにじった。それが情けなく情けなく…」


 ラティーナは口を強め

「何かをするには、何かを犠牲にしないといけない。それは強い権限を持つ貴族なら当然、ぶつかる問題でしょう!」


 父親は、再びラティーナを叩いて

「そうだな。確かにそういう事はある。だが! それが当たり前だとする道理が何処にある! 何かを犠牲にして当たり前、そうやって犠牲になる者達を見捨てる者なぞ! 貴族でも人でもない!」


 ラティーナは手を固く握り閉め

「私は、自由が欲しかった。狭い貴族の世界なんて…苦しかった。だから…」


 父親はラティーナの肩を持ち

「お前の言い分は確かに分かる。貴族の世界は窮屈だ。だが…自分の欲を叶える為に、犠牲にした彼には…何か思う事はないかの? お前の自由の為に、彼の…純也くんの自由が潰されたんだぞ! それに、何か思うことはなかったのか?」


 ラティーナは父親の手を振りほどいて、部屋から出ていった。


 


 その夜、ディオスは居室で純也と話していた。

「すまないな純也くん、息子や娘達の面倒をみて貰って」

 ディオスが微笑む。


 純也は首を振って

「いいんですよ。楽しいですから…」

 少しは明るくなっている純也にディオスはホッとする。


 ディオスは純也に紅茶を寄越し

「気持ちが落ち着くまで、ここにいればいいから」


「ありがとうございます」

 純也は頭を下げ、不意に窓の外にある満月を見て

「思い出すなぁ…アイツ等と…魔物退治に行った時に、夜になってキャンプをしたんです。賞金の魔物を絶対に見つけて倒すぞ! なんて…息巻いて、そうしていたら、キャンプしていた火にその魔物が寄せられて、てんやわんやで倒して…本当に…」

 純也の目から涙が零れて

「でも…全部、ウソだったんですね」


 その肩にディオスは手を置いて

「なぁ…落ち着こう…」

 そう慰めるしかない。


 同時刻、ダラスことラティーナは隠してあった魔導通信機でウルアとメディナと会話していた。

「そっちはどうだ?」

とダラス。


『ダメよ。足に居場所を知らせる魔導具をつけられているわ』

 ウルア。


『わたしもです』

 メディナ。


「そうか…」

と、ダラスは俯き窓から満月を見上げる。

「思い出すなぁ…この満月、あの大騒ぎの魔物退治のキャンプを」


 メディナが

『もう…あの日々は戻らないんですね』


 …………と三人は沈黙して、ウルアが

『ほんと、アタシ達バカだったよね。もっと早くから…正直に全部、言っていたら…』


 メディナが

『そうしたら…純也は許してくれて…ズッと…』


 ウルアが

『でもさあ…もし、本当の事を言ったら…お別れかなぁ…って恐怖があったじゃん。だから…』


 ダラスが

「二人とも、まだ…私は諦めるつもりはない」




 数日後、ゼリティアの屋敷に来る日、ディオスはティリオとリリーシャを連れてゼリティアの城邸に来た。

 アイカは、学校があるので後で合流として、大きな城邸の庭でティリオとリリーシャにゼティアがセバスと一緒に遊んでいるのを、ディオスとゼリティアはテラス喫茶で見つめながら

「なぁ…ゼリティア。あの三バカ娘達はどうなるんだ?」


 ゼリティアは、飲んでいた紅茶のカップを置いて

「あのような面汚しをした場合は、通常は法の裁きによって罪を償わせ、出所した後…タダの家の置物になる。未婚の場合は、家の都合によって伴侶を宛がわされ一生、屋敷から外へ出る事はない。何の権限も力も与えられないで生涯を終える」


 ディオスはフゥ…と息を吐いて

「厳しいなぁ…」


「それぐらい、貴族というのは世間から厳しく見られるという事じゃ」


 ディオスは思い返す。

 確かにこの世界では、貴族は力の基点となって社会の物事を動かす。それゆえに、大きな権限や資産、特権が与えられている。

 だから、貴族にはそれ相応の振る舞いを求められる。それが出来ないなら、その権限や資産、特権は、不相応と周囲は見て失うし、他の関係ない貴族まで被害を受ける。

 自身を罰する力こそ、自身を守るという事だ。

 

 ディオスは

「じゃあ、偶にあの三人娘みたいに、貴族というのを嫌がる者がいたりするのか?」


 ゼリティアはフッと笑み

「おる。その重みや違いに嫌気が差して、逃げたくなる者がなぁ。貴族は端からみれば、輝いていて素晴らしく見えるが…それは、外見だけで、内はそれを維持するために戒律のような厳しさに包まれておる」


「そうか…ゼリティアもそんな事を思ったりした事があるか?」


「ある」

 ゼリティアはハッキリ告げる。


 ディオスはゼリティアを見つめ

「どんな時に…」


 ゼリティアはフフ…と含み笑みで

「ディオスが前に、妾に距離を持って接すると言われた時じゃ」


 ディオスはハッとする。

 あの時かーーーーーーー

「ああ…」

と、ディオスは渋い顔をする。


 ゼリティアは妖しい笑みを向けながら

「本当にショックじゃった。その夜、やけ酒をしたくらいじゃ」


「ご、ごめん…」

 ディオスは謝るしかなった。


 ゼリティアは頭を振り

「もう…昔の事じゃ。今は…こうして、無意味な事になった。のぉ…夫殿」


「ああ…うん。ありがとう」

 ディオスは頭を下げる。


 ゼリティアは遊んでいる子供達を見ながら

「そうじゃのぉ…ムリじゃろうが。あの三バカ娘達が贖罪をするなら、いっそ、純也殿と三人が懇意になって結ばれて、妾達のようになれば、奪われた純也殿の人生を戻したとして、帳消しになるやもしれん」


 ディオスは眉間を寄せて

「それは、ちょっと厳しくない? だって、三バカ娘達は元から貴族だし、純也くんは、つまり…その貴族と見合う相応にならないと…」


「そうじゃな。だから、ムリじゃろう」


 色々と、前提がムリすぎる。

 まず、あの三バカ娘達と純也が共に気持ちがある事。

 もう、仮に三バカ娘達にはあったとしても…純也にはもう…ない。いや、起こらないだろう。

 そして、純也に何か大きな名誉的な事を与えないといけない。

 中世の世界観が主なファンタジー世界なら、ドラゴンを退治とかで、何とかなりそうだが…。

 この世界は、中世ではない。寧ろ、現代の二十一世紀バリの…寧ろチョット上のチャンとした法的を準じる世界だ。

 厳しい…。

 

 ディオスは内心で思った。

 こりゃ…ダメだなぁ…。

 全く良い案が浮かばない。


 


 事態の膠着状態の中で、別で動く者がいた。


 その人物は…飛空艇で来ずに、陸路ではるばる遠くからバルストランに入った。

 その仕込み荷物を大量に魔導トラックに乗せて、バルストランの王都へ向かう。

 運転する男は、ニヤリと笑み。

「待っていてくれよ。愛しの大英雄様」

 それは獲物を狙う顔だった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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