幽玄の王 第92話 ダンジョンの意味
次話を読んでいただきありがとうございます。
ディオスの言葉、そして…コーレル時空に隠されたダンジョンの意味とは?
レイ達は、ディオスの超時空戦艦エルディオンに乗って移動していた。
エルディオンの広い中心の艦橋でレイは頭を抱えて震えていた。
「何だよ。約束とか、なんでだよ。どうして…」
何が何だから分からずレイは震え怒り怯えていた。
同じく乗っていたジェインとオウガにルリとその部下達も困惑していた。
ディオスと息子のティリオがルリ達に近づき、ディオスが
「ダンジョンには、ダンジョンを維持管理しているダンジョン・マスターなる存在がいますよね?」
ルリはジェインとオウガに視線を向けると、二人は肯き、ルリが
「はい。います」
ディオスが難しい顔で
「そのダンジョン・マスターの中で、最もルミスでしたか? 二百年前のコーレル時空に最も王に近く、人と対話できる方に話を聞きたいのですが…」
ルリがジェインを見るとジェインが
「近くに最も人に近くて、話が出来そうな方がいます」
ディオスが冷静に
「その方は、どちらに…」
ジェインが
「小宮さんの奥さんです」
レイが近づき
「ディオスさん。何が起こっているんですか? なんで、シロ兄やジン兄は、ウルやあの四人と…」
ディオスが冷静に
「まずは、話を聞く事だ」
機神型時空要塞戦艦エルディオンは、レイの家がある惑星へ、小宮の元へ向かった。
◇◇◇◇◇
小宮の家は、大きな神社仏閣と合体した建物で、小宮達がいる住宅の区画へ行く。
レイ、ディオス、ティリオ、ルリ、ジェインにオウガと六人で来る。
小宮はインターフォンが鳴る前に玄関を開けて
「おう、待っていたぜ」
ルリから急ぎの連絡が入っていたので…待ってくれていた。
玄関から入るレイ達に、若葉が
「あれ? レイくん…」
レイが悲しげな笑みで
「ごめん、ちょっと…お邪魔するよ」
「う、うん」と若葉は頷く。
小宮はレイ達を妻の花奈がいるリビングに向かい入れる。
「ようこそ」と妻の花奈がお辞儀するリビング
ディオスが頭を下げて
「初めまして、ディオス・グレンテルと申します」
隣にいるティリオが
「息子のティリオです」
小宮が妻の花奈の隣に座って
「花奈、話があるそうなんだが…」
ディオスが正面に座って
「ダンジョンについて…です」
花奈がルリ達を見て
「ルリ様達の方が詳しいと思いますが…」
ディオスが静かな目線で
「正確には、ダンジョンの成り立ち、ダンジョンというシステムに宿った高次元の存在、神格について…です」
花奈が驚きを向けて、夫の小宮を見る。
どうして?という顔だ。
小宮が溜息を漏らして
「聖帝様には…その正体がバレバレって事ですか…」
ディオスが正座して
「ダンジョンというシステムは、高次元の存在を…私達の時空に固着、または…宿らせる為のシステムであり、その目的は…いや、そうしなければならない使命があった。高次元の存在、神格が我々の次元に直接干渉しなければならない程の…事態…」
ダンジョン・マスターである花奈は肯き
「聖帝ディオス様のおっしゃる通りです。このコーレル時空に繋がる神格達は、とある目的の為に…二百年前の人路皇王ルミス様のお力を借りて、ダンジョンという形で降臨しました」
それをレイが聞いて驚愕するしかない。
自分が教えられた事実とは違う事が存在して、それが…
小宮が
「さっき、アンタ達の映像がコーレル時空の全てのメディアネットワークの拡散した。それも…切っ掛けなのか?」
レイは更に驚く、ルリ達が渋い顔をしてジェインが
「ええ…本当に落ち度でした」
オウガが
「ああ…」
小宮が
「くそ…二百年前と同じかよ。相手に好き勝手されて…悔しいぜ」
◇◇◇◇◇
花奈は語る。
「二百年前…コーレル時空に現れた人路皇王ルミスは…このコーレル時空に
とある呪いがかかっているのを知りました」
ディオスが
「呪いとは…?」
花奈は真剣な目で
「このコーレル時空の高次元に…魂を回収する何かが存在しています」
ティリオが青ざめた顔で
「魂を回収する何か?…ですか」
花奈は肯き
「はい。その魂を回収する何かは、コーレル時空全体から特定の魂を回収していました」
ルリが
「その特定の魂とは?」
花奈が
「この世界に絶望し、失望し、失意の内に死んだ魂達を回収しています」
ティリオが顔を引きつらせて
「そんな…それって」
と、父ディオスを見ると、ディオスが
「ティリオ、今は…」
と、ティリオは意図を察して頷いて黙る。
花奈は
「カレイド時空連邦が崩壊から五百年の間に…膨大な、何億、何兆、いえ…それを超える程の…絶望した魂を回収していました」
ジェインが
「そんな事をして…大丈夫なんですか?」
花奈は首に横に振り
「大丈夫ではないです。魂の消失は、時空の力の減退に繋がり、引いては…減少した魂の埋め合わせの為に、時空が損耗します。無論、それは…私達、神格にも多大な影響を与えています」
小宮が
「神格は、魂の…世界に満ちる生命の総量で維持されている。それが減るという事は、神格の力が…高次元の存在のエネルギーが衰えて…最悪は…」
花奈が
「消滅します」
オウガが
「それを止める為に…ダンジョン・マスター達は、いや…ダンジョンの核として貴女方が…」
花奈が肯き
「その通りです。それを止める為に、私達は…人路皇王ルミスに…ダンジョンという人に活力を与えて絶望に落とさない為に…」
レイが
「そんな。ダンジョンは…世の中が不況やマイナスになった場合に、人々に生活の糧を与える為に…一種の、失業対策として」
小宮が
「それが建前であって、本音は…魂を絶望に落とさない為に…」
花奈は
「ソルジャーというのは、このコーレル時空に生きる民なら、誰でもなる事が可能ですが…適性があります。だから、その適性が高い人達をソルジャーという形で登用しています」
小宮が
「ソルジャーの適性は…その人物の性質、元来ある性格の中で…絶望に陥りやすい人物をピックアップしている。ギルド協会や…ソルジャーのギルドが、ソルジャー判定しているシステムの根幹には、高次元からの観測が使われている。高次元から人の共通の無意識領域にアクセスして、その呪いに取り込まれやすい者達を優先的にソルジャーに…」
花奈が
「ダンジョンというシステムによって、人に活力を与えて、絶望した魂の生産を止める。それによってコーレル時空の力の減退を止める。そして…後々に…その呪いの根幹を…対処する」
小宮が
「だが、それが成されなかった…」
ジェインが…苦しそうな顔で
「我々の祖先の裏切り…ですか」
小宮が
「オレも同じだ。だからこそ…だからこそ、レイやシロッコにジンの新たな王達の…今だけは…そうならないようにって」
オウガは
「しかし、その話では、シロッコやジンの世代の時に…」
花奈が
「ソルジャーが呪いの取り込まれないようにするはずが…その世代の時に大きすぎる不況と社会不安が原因で、多くのソルジャー達が…絶望して…呪いの取り込まれました」
小宮が
「相当に…コーレル時空の…この時空の力が減退した。それを補う為に多くの神格が消失するしかなった」
花奈が
「これ以上、神格達が消失すれば…コーレル時空は大分裂の大災害を起こしてしまいます。魂達の総量で維持される時空は、その総量に見合う形まで小さく分裂する」
ディオスが鋭い目で
「時空震…時空内部で、ビッグバンが連続して幾つもの宇宙が生まれて分裂する。最悪の時空、宇宙崩壊の大震災」
花奈は肯き
「はい。今、本当にギリギリで保たれています。これ以上は…もう…」
ジェインがうつむきながら
「もし、我々の祖先が、人路皇王ルミスを裏切らず信じ続けていれば…」
オウガは厳しい顔で
「下手な情報に振り回されず…守り続けていれば…」
ルリが
「このような未来は…待っていなかったかもしれない」
パンとディオスが手を叩き
「反省会は後で出来る。分かった事は、その呪いさえ破壊すれば…コーレル時空の時空震は防げるという事だ」
ティリオが
「その呪いをいうのを、ええ…貴女達、ダンジョン・マスター達は察知か探知する事は…できたら…今にはなっていませんね」
花奈が
「はい。申し訳ないありませんが。それが分かるだけで、根幹の呪いの元の場所は分からないのです」
ディオスが冷静に
「だが、絶望するには、まだ早い。その呪いというヤツの根幹さえ分かれば…何とかなるはずだ。絶望した魂達を回収しているなら、それは装置だ。ならば、破壊できる」
ルリが
「でも…探し出せないから」
ディオスが
「外部から探せばいい。それは、我々の超越存在の連合なら可能だ」
ティリオが
「あと、内部からも探査する力も加えれば…更に詳しく分かります」
ディオスが
「外は我々が、内であるコーレル時空の超空間ネットワークを全て使って、合わせれば…」
ジェインが
「しかし、そんな力を持った装置なんて、コーレル時空には…」
レイが
「あ、あった」
「え?」とジェインとオウガにルリが視線を向ける。
ディオスがレイを見つめて
「それは?」
レイが真っ直ぐに
「エルダーサイン。ドミネーター達の連結です」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回 緊急事態 その1




