幽玄の王 第90話 急変する全て
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ジンの方は…
ジンの方は、大荒れだった。
テイア達が訓練している場所にジンが向かい、テイアへ超座の絶技閃王の継承させる。
テイアは、ジンから手を握られて唐突な超座の継承に困惑する。
ジンが
「今までありがとう。楽しかったよ」
と、アッサリ告げて去ろうとした時に、全ての事情を知らせる職員がテイア達の元へ来て
「待ちなさいよ!」
と、テイアがジンを止めようとするが、ジンは止まらない。
ならば…とテイアは、去ろうとするジンの前に来て止める。
「どういう事?」
と、テイアは絶望の顔を向ける。
ジンは真っ直ぐとした顔で
「シロッコと同じだ。もう…終わる。天命と言うヤツだ」
テイアがジンの襟を掴み
「簡単に諦めるな!」
テイアと共に訓練していた若手のソルジャーが
「アンタは悔しくないのかよ! アンタの時代の事は聞いている。アンタを苦しめた連中だけがノウノウと生き残って…肥えていって…オレなら悔しい」
ジンがその若手のソルジャーに
「それが人生だ。無情、無惨、残酷。そういうモノさ」
テイアが
「私は諦めない。今からでも治療を…」
ジンが
「ムリだ。分かっているだろう」
テイアがジンを睨む
「XX級のソルジャーのトップして命じる。私に従え!」
ジンはハッキリと
「ムリだ」
多くの訓練に参加していた若手のソルジャー達がジンを囲む。
若手のソルジャーが
「従わねぇなら…ムリヤリでも」
と、ギアを展開した。
全員が全身をエネルギー鎧化するSランクだ。
ジンはフンと鼻息を荒げて
「最後の授業だ」
訓練会場だったドームに激震が連続して、その玄関から余裕でジンが出て行った。
訓練会場だったドームの内部には、ジンにやられて倒れているソルジャー達が転がった。
シロッコとジンは、ソルジャー病の危険レベル4によってソルジャー権限の行使を止められた。
◇◇◇◇◇
レイは自宅でランから、シロッコとジンの最悪な容態を聞かされて絶望の顔で青ざめていた。
同じく聞いていた母アカネと姉のアスカに妹のスイも驚愕しかない。
ランが泣きながら
「お願い、アタシ達じゃあ…二人を…止められない。治療を…継続させて…。アナタじゃあないと…」
レイは驚きと困惑で視線が泳いでいると、ドンドンともの凄い音で玄関が叩かれた後、ドンと玄関が破壊されて人が入ってきた。
入って来たのは、息を荒げるジェインとオウガだ。
玄関を破壊したのはオウガだった。
オウガとジェインが土足で入り込み、レイを探す
「レイ・フィリックス・神崎さん! どこですか!」
と、ジェインが叫ぶ
オウガが
「レイ・フィリックス・神崎!」
と、怒声を張る。
「何ですか?」
と、レイが顔を見せると、オウガとジェインが急いで駆けつけて、オウガがレイの腕を掴み
「こっちへ来い!」
と、レイを引っ張る。
「うえ? どうして? なんで、玄関を破壊して! ええええ!」
と、レイは戸惑う。
ジェインが青ざめて叫ぶ
「いいから! 今から直ぐに体の精密検査を受けてください!」
レイが「えええ…」と困惑する。
ルリも来て
「すいません。破壊した玄関は…弁償します」
「何をしている!」とグラファラスが、オルフェウスと共に玄関から現れる。
ルリが二人に頭を下げながら
「申し訳ありません。ですが…今すぐにレイ・フィリックス・神崎さんの検査が必要なんです。ご理解ください」
更に、ディオスがティリオと共に現れて
「レイくん」とディオスが呼びかける。
レイが困惑で
「でぃ、ディオスさん。何が? ええ…」
ディオスがレイに近づき
「キミの継承した超座には…一時的にソルジャー病という病気を蓄積して防ぐ機能があるようだ。だが、それは一時的であって蓄積は必ず現れる。そして…」
ティリオも来て
「超座には、エネルギー増殖炉としての機能がある。それが…もし残留しているソルジャー病の蓄積を増殖するかもしれない…としたら?」
レイは「ええ? ええ…」と困惑する。
レイは詳しい検査が行われる事になった。
◇◇◇◇◇
レイは、ディオスの時空戦艦にいた。
全長が千メートルの巨大な時空戦艦、エルディオンの検査室。
そこには、レイが見た事もないような装置が並んでいる。
それがディオスが使う魔方陣を展開して、ベッドで横になるレイを調べる。
幾つもの魔方陣がレイを通過する。
無論、レイはコーレル時空の検査も受けているが、レイが持つ超座はディオスでなければ検査できない。
コーレル時空の検査、ソルジャー病の検査では、レイは異常がない。
それは、シロッコやジンも今までそうだった。
だが、唐突に二人の症状が加速して悪化していた。
そんな事例は、今までに無い。
だからこそ、別時空のディオス達の力を頼った。
レイが検査される場所には、ルリとジェインにオウガの三人もいて、レイが検査される周囲の装置達には、ディオスと息子のティリオがいた。
レイの検査が終わり、レイが横になるベッドに腰掛けるとディオスが
「驚くべき事が分かった」
それにジェインが駆けつけて
「何が! 分かったんですか!」
ディオスが立体画面のデータを幾つも投影させて
「レイくんの継承した超座には、確かにダンジョン探索におけるエネルギーを蓄積する機能があった」
ディオスの隣にいるティリオが
「正確には、何かのエネルギーだと思われますが…それを貯めるコンデンサーのような機能が複数ありました」
ディオスが
「私は、前にレイくん達、シロッコやジンのデータを使って、超座の複製のようなモノを作った。それは判明している出力を再現した。だが…この超座には、出力以外にも様々な機能があるようだ」
ティリオが
「何の機能なのかは…分かりませんが。とにかく多くの活動していない機能達があり、その一つに…ダンジョン探索で生じるエネルギーを貯める機能があり、おそらくそれが原因で他の二人は…でも、本当にエネルギーを貯めるシステムなのか?は疑問ですが…」
ディオスが
「ティリオ、言いたい事は分かる。これは貯めるというより…何かにアクセスしているような…」
オウガとルリが来て、オウガは
「結論を言って欲しい、レイくんは…シロッコやジンのように危険レベル4に…」
ディオスが
「それは、なっていない。レベル1くらいの初期値だ。レイくん自身の汚染度も低い、それが通常まで下がるくらいになるまで、休養すれば問題はない」
ルリがそれを聞いて安堵した溜息を漏らして
「そうですか。良かった」
ジェインが
「今後は、そういう部分も考えて、レイくんのダンジョン探索を計画しなければ、いけませんね」
レイが不安げに
「ダンジョン探索が出来なくなるのですか?」
ディオスが
「そういう訳ではない。ただ、注意すべき項目が増えた…そういう事だ。心配しなくていい」
レイは
「でも…シロ兄やジン兄は…」
ディオスが難しい顔で
「そうだな。二人もこちらで検査してみたい。もしかしたら…助かる手段が見つかるかもしれない」
レイは、二人を思い返して
「二人を探さないと…」
と、超座の共鳴反応を使ってシロッコとジンを探す。
ランの話から二人は失踪しているのを聞いている。
そして、見つけた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、巡る者達




