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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
時の記憶

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幽玄の王 第82話 覇遵(ハジュン)

次話を読んでいただきありがとうございます。

カケル達夫婦の新たな門出、だが…


 覇遵の空中宮殿、覇遵が座禅で座る大木、その空は夜空だった。

 その周囲を空中に浮かぶ外灯が照らし、覇遵が座禅する大木の周囲の木々が花を咲かせる。

 それは、覇遵の力によって何度も花を付ける木々達の光景だ。

 その中を一人の…ユノが近づく。

  

 覇遵は瞑想したまま

「ユノか…」


 ユノは覇遵の前で座り

「ああ…ここは、相変わらず…キレイだな」


 覇遵が瞑想のまま目を閉じているが、額のサードアイだけは開いている。

「季節感がない。何時でも美しいままだ」


 ユノが

「美も永遠なら醜悪か…」


 フンと覇遵が鼻で笑い

「確かに、永遠の美ほど、くだらないモノはない。限られた火花であるからこそ、美しい」


 ユノが覇遵を見つめて

「お前の永遠なのか? 覇遵? いや…ハルガ…」


 かつての懐かしい名を告げられて覇遵が両目を開けて

「いや、我も天命が尽きる頃、命が終わるだろう」


 ユノが

「お前は転生を繰り返しているのだろう? それは永遠だろう」


 覇遵は首を横に振り

「永遠なぞない。全ては変わり色が混じって染まる。過去は振り返るモノであって、未来は染まるモノだ。未来がどう動くか…で全てが変わる。明日ほど、今、この一時ほど…予測不可能な事は無い」


 ユノが

「では、お前の次は、どうする?」


 覇遵が笑み

「我の次など考えてはいない。いや、いないだろう。同じ存在なぞ、誰一人、全ての者達に同一の者は存在しない」


 ユノが

「そういう事ではない。お前の次世代の話だ。どうするつもりだ?」


 覇遵が

「我は、我の次世代を望まない」


 ユノが

「だが、次世代を望む声は、者達はいる。その者達の期待はどう思う? そして、お前の妻達となった多くの彼女達は、どうする?」


 覇遵が鼻で笑い

「自らの権力の生け贄と差し出した者達なぞ、興味ない。外見だけがキレイな生ゴミの袋だろう。我は、その生け贄の妻達に一切の興味は無い。我が消えた後、勝手にやれ…だ」


 ユノが額を摩り困り顔で

「相変わらずだな。エリザスがかわいそうになる」


 覇遵は

「我は元から、エリザスの補機として生まれた。だから、我が終わった後は、エリザスに任せればいい。それだけ」


 ユノが

「そうやって、かつて…お前を蔑ろにした連中は破滅した。エリザスを奉って、それが…お前という更に強大な存在を生み出した。エリザスが光なら、お前は…それを呑み込む程の巨大な闇、光が強ければ強いほど闇は深く、その闇が光を呑み込んだ。エリザスが星なら、お前は宇宙という無限だ」


 覇遵は微笑み

「久しぶりに押し問答に来たのか? ユノ」


 ユノも微笑み

「それも面白い、だが…もし…だ。エリザスの後、お前を再び望む者達がいたと…して、その者達にとって、継承の光となる者が必要だ」


 覇遵が

「ならば、我の生体情報を使って複製の繁殖データを生み出し、どこぞの誰かの女の腹から産ませれば良いだろう。そういう血族というブランドの創造を言っているのだろう」


 ユノが「違う」と否定して自分の胸をさすり

「お前の心、魂の鱗片を継承している者を継承者にすべきだと言う事だ」


 覇遵が

「血のブランド家畜ではなく、魂を受け継ぐ者とは…豪勢な…」


 ユノが

「お前の魂を継ぐ者はいないのか?」


 覇遵が暫し考えて

「いると言えばいる。だが…エリザスが、エリーが許さんだろう」


 ユノが

「エリーには教えん。教えてくれ」


 覇遵がその名を口にする。

「カケルだよ。我が最も魂を許した相手だ」

と、嬉しそうに微笑んだ。


 ユノがそれを聞いて深く頷き

「やはり…か…」


 この話は、覇遵が自身の宮殿に張った結界にして誰にも観測されず、漏れる事もないはずだった。

 だが、一人…気配を殺して聞いていた者がいた。

 緋色の髪をした女性、超座の一人…スカーレットだった。

 スカーレットは息と気配を殺して、静かにユノと覇遵の会話を聞いていた。

 僅かに悲しい顔をした後に、そこから去って行くが…

 少しの邪念、嫉妬の炎が…

 嫉妬の炎に身を任せた者の結末は、いつも悲惨だ。


 スカーレットがエリザスの宮殿へ向かう。


 スカーレットがエリザスに跪き

「エリザス様、お話があります」


 エリザスが視線を上下させて

「申せ…どうした? スカーレットよ」


 スカーレットは生け贄の妻達の中から始めて現れた超座の主だ。

 スカーレットが

「覇遵の魂を…受け継いだ者が…おります」


 エリザスの顔が見る見る険しくなった。




 


 過去の歴史


 覇遵、ハルガは…エリザスの補機として産まれた。

 カレイドの始まりである、とある宇宙王に連なる宇宙王族の一つ、それがエリザスの出自だ。

 エリザスを超越存在へ押し上げる為に、ハルガは存在した。

 王族の血族から産まれたエリザス

 どこかの市井の子供であるハルガ

 そのハルガに、改造を加えたのは…コウイチ・アムザク・皆本という博士で、それを支援したのはユーティック機関という研究所だ。


 エリザスは、ハルガと共にいる事で、超越存在として覚醒した。

 エリザスは気高い人物となり、宇宙王として相応しい人物とされた。

 だが、それは…コウイチ博士の思惑通りだった。

 そう、光が強ければ闇も濃くなる。

 無限の力を誇る闇が深くなる。

 ハルガの力も密かに強大化した。

 

 エリザスの限界は、一個の時空を支える宇宙王だ。

 ハルガである覇遵は、それを遙かに凌駕する力を得ていた。


 エリザスの周囲にいる者達の多くは、ハルガを蔑ろにした。

 ハルガは、エリザスの有り余る力を貯蓄する電池程度だと、その実質は逆だ。

 エリザスの力を増幅する為の無限だった。

 それにコウイチ博士以外は気付かない。

 エリザスの光にやられて見えなかった。


 それが決定的に判明したのは…ハルガが…サタンヴァルデット…罪喰いの大神と衝突した時だ。

 サタンヴァルデットが、エリザスの宇宙まで来て、エリザスの宇宙を破壊しようとしていたが…それをハルガは取り込み征服した。

 それ以降、ハルガは自ら覇遵と名乗り、膨大なエネルギーと権能を示した。

 ユノとウルは、その時からの付き合いだ。

 サタンヴァルデットを討伐しようとした英雄達の仲間に二人はいた。


 それから覇遵の覇道が始まった。

 

 覇遵の事を蔑ろにしていた者達は、手の平を返して追随するが、エリザスを自分の隣、名代とした事で、蔑ろにした者達とエリザス関連の繋がりが残されて上手く纏まったはずだったが。

 覇遵の恐ろしさは、そこから始まる。

 膨れ上がる覇遵の帝国、カレイド時空帝国、その権益に乗る所か…その入る隙を少しづつ削り取られて、まるで、真綿で首を絞めるように苦しくなっていった。

 反乱を起こす者も僅かにいたが…それは、覇遵が作り出した超座を継承した兄弟達、ハク、シン、カケルによって討伐されて、その関係者や子供達は、保護という監視化に置かれた。

 

 反乱者の子や親族でも許すという慈悲深さと言われたが、実質は覇遵による飼い殺しだ。

 エサを与えて寿命が終えるまで飼う家畜。

 求むモノも望むモノもない。勝手にしろ。

 覇遵に逆らっても勝てず、むしろ…飼い殺しにされた方が無難という哀れな結末。


 覇遵の統治の恐ろしさは、他者に対する無関心と、冷たすぎる距離だ。

 絶対で無限な力を持つが故に、全てが世界に蠢く無数達に見える。

 自身さえも、その蠢く無数達の一つである…という、自分が特別であるという感覚が完全に消失している。

 それは、ある意味、主観をなくした完全な客観という視点を持っているという事だ。

 裏を返せば、他者の気持ちは、個人という法則の何か…という冷たさでもある。


 それで、カレイド時空帝国は強大となり、カレイド時空連邦になった。


 そして、残酷な事に…人は人に恵みを与える存在を神と崇めつつも、自分達と同じ人であると思う性質がある。

 覇遵に人としての何かを感じようとする者達は多いが、それは全てムダな努力であり徒労だ。

 

 覇遵にとって、自分と他者が絶対的に違うからこそ価値があるのであって、同じなど…理解どこから、気持ちが悪いと嫌悪している。

 我も彼も天(神)も地獄も修羅も悪鬼も同じ、衆生皆同


 皆同じ故に、皆が違うからこそ素晴らしい 

 それが覇遵の根幹だ。


 だからこそ、女性が求める。私とアナタは、同じ…一緒に気持ちも何もかも共有したい…という根幹が受け入れない。

 理解はしている。

 男女は違う、だが、同じではない。

 違うからこそ、お互いに大事であって、同じだから大事ではない。


 それが覇遵の致命的な欠陥でもある。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

アナタに幸せが訪れますように…

次回、裂かれた絆

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