幽玄の王 第79話 エリザスとカケル
次話を読んでいただきありがとうございます。
エリザスという代行の結論に…
カケルは跪く。
空のような天井、大理石の柱が等間隔に並ぶ広場、その中心には王座がある。
天の目を象徴するレリーフが王座の上に存在している。
それは、とある人物専用の王座である。
我こそは、覇遵と同等であると示す、威厳の王座に座るのは、エリザスだ。
武全覇王のエリザスが王座に座り、跪くカケルを見下ろして
「次の勅命を授ける」
と、指を回してデータを生成してカケルに投げる。
カケルは、そのデータを受け取り広げると
「あ、これは…」
驚くべき内容が書かれていた。
エリザスが
「実行せよ」
カケルが
「宇宙を、そこにいる者達を徹底的に滅ぼせ…とは、凶行では?」
エリザスが淡々と
「話し合いはした。だが…戦わずに降伏は出来ないと…な」
カケルが
「どんな交渉をしたのですか?」
エリザスが肘置きに左肘を置いて気だるそうにアゴを左手に乗せて
「十分な程の利益と、未来の展望も示した。統治も…現地の民意に任せるとしてもだ」
カケルが
「それでも戦う…と」
エリザスが
「負けずして譲れないそうだ。愚かな事だ」
カケルは黙る。
エリザスが
「行け、そして…勅命を果たしてこい」
跪くカケルが頭を下げ
「は…」
と、内心では逆らいたい気持ちを抑えて従う。
◇◇◇◇◇
カケルは廊下を歩きながら考える。
この超座の力を得たのは、自分達の時空が争いで滅びそうな時だった。
絶え間ない争いの結果、疲弊して、限界を迎えて、それでも争いを続けていた。
そんな時に、覇遵が…カレイドが自分の時空を…。
共食いのような争いを続けていたから、立ち向かう力さえ無かった。
そして、覇遵のカレイド時空帝国は、当たり前のように普通の統治をした。
特別な事はしていない。
人々を保護して、産業やシステムを整備して、生活を行いやすいようにした。
活力が戻っていた。
そうなると、過去の愚かな争いの種が再熱した。
それに対処する為に、ハク、シン、カケルの三人が超座に選ばれた。
争いを再燃する者達と戦うカケル達、争いを再燃させた者達に味方する者達は…いなかった。
皆が…もう、あの時に戻ろうとは思わなかった。
過去の愚かな争いの種が消えて、ハクやシンにカケルの三人は、覇遵の元へ。
カレイド時空帝国を守る力として…
今は…外時空への戦略兵器のような扱いだ。
それに、カケルは疑問を感じている。
だが、命令、勅命だ。
覇遵の聖隷として…。
カケルが勅命を受けた時空へ来る。
カケルだけを乗せた単騎の時空戦艦。
その目の前には膨大な数の時空戦艦の艦隊がいた。
数千億は下らないだろう。
この時空で抵抗する者達の艦隊
「我々は、断固として戦う!」
と、宣言している。
カケルは時空戦艦の先端に立つ。
「最後通告です。我々の条件を受け入れてください」
それも虚しく時空艦隊から膨大な攻撃の光が走る。
光の全てがカケルのいる時空戦艦へ降り注ぎ、太陽のようになる。
攻撃のエネルギーが集中して太陽のようになった場所から、巨大な…全長三十万光年サイズが噴出する。
白光と輝く躯体、光輪を背負う人型、絶神鎧…サルヴァードが突き立つ。
そのコアにカケルが浮かび
「最後通告はしたよ」
と、カケルのサルヴァード・レイゼノスの一撃が時空戦艦へ放たれた。
拳だけでも数万光年サイズのサルヴァードの突きから、数千億の機影を伴った時空艦隊を包み混む程の光の柱が突き立ち、その光に呑み込まれた。
一撃、たった一回で、この時空を支える艦隊の全てが消滅した。
そして、この時空は…カレイド時空帝国へ統合された。
何度も何度も、圧倒的すぎる戦いを経て、時空を取り込む。
何度見た光景か…。
取り込まれた時空は、カレイド時空帝国からのエネルギー提供を受けて統治が始まる。
これも何時もの光景だ。
時空の中から代表を選び、カレイド時空帝国の評議会へ組み込む。
巨大化するカレイド時空帝国
その統治方法は連邦議会制度だ。
そして、カレイド時空帝国は大きくなっていく。
カケルは、その先に何があるのか…
それを考えると虚しくなってくる。
このまま、永遠に自分が死んで、自分の次に、この超座を継承した者も同じように…繰り返して…。
ずっと戦いの螺旋の中にいるような冷たさと虚しさを感じていた。
そして、カケルは勅命をした覇遵に報告をする。
「覇遵様、報告に来ました」
空中宮殿の巨大な樹の下で瞑想する覇遵が、額と双眸の三眼を開くと
「カケル、報告は聞いている。今回の事でお前が感じた事を話してくれ」
跪くカケルは沈黙していると、覇遵が立ち上がりカケルの所へ来て座り
「苦しいか? その心の内を話して欲しい」
カケルは泣きそうになる顔を上げて正座をして、覇遵に自分の心の内を語る。
それを覇遵は、肯き聞き続けるのであった。
戦いの報告ではない。
カケルの気持ちをジッと覇遵は聞いてくれた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、記憶の意味




