幽玄の王 第77話 始まり
次話を読んでいただきありがとうございます。
レイの記憶の旅…
レイは、ジンの元へ来ていた。
「ジン兄」
と、見つめる顔を何かを尋ねているようだ。
ジンは、ソルジャー協会からの依頼でソルジャーの訓練を手伝っていた。
シロッコにも依頼が来ていたが…別の武器を作る依頼を優先して断っていた。
その訓練場で、レイがジンに
「ジン兄は、超座の前の持ち主の記憶を夢に見たりする?」
その問いにジンは
「ああ…見るぞ。と言っても…大方、見終わってしまって、あまり見ないが…」
レイが溜息交じりで
「そうか…やっぱり…」
ジンが
「見るのか?」
それにレイは肯き
「前の持ち主だった…ジャバラスとは違う人物なんだけどね」
ジンはアゴに手を置いて考えて
「もしかしたら…ジャバラスは…二つの超座を持っていたのかもしれないぞ」
レイがジンを見つめて
「どうして、そう思うの?」
ジンが
「オレとシロッコが封印した時には、アッサリと封印されたが…レイと戦った時には、明らかにそれ以上の力を振るっていた。それを考えると…本当の力を隠していて」
レイが自分を指さして
「オレと戦う時に全力を出した…どうして?」
ジンは
「それは、消えたジャバラスに聞かないと分からないが…おそらく、推測だが…自分の力、もしくは…受け取った力、自分の超座ともう一つの超座の二つを持っていて、そのもう一つを受け渡す相手を探していたのかもしれない」
レイは
「それに、オレが選ばれたって事なの?」
ジンは肯き
「多分な…」
レイが
「そんな事をして…ジャバラスにとって何の意味があったんだ?」
ジンは首を傾げて
「それは分からないが…オレが見た前の持ち主の記憶には、ジャバラスは…最近、レイが出会った冷現叡王ウルの友人だったらしい。それ以上は…分からない」
レイが腕組みをして
「もしかして、オレが継承した超座の記憶を読み解けば…色んな事が」
ジンは
「確かに分かるだろうが。あくまでも、レイが継承した超座の持ち主の主観の記憶だ。全てが分かるとは限らない。オレの超座とシロッコの超座の主は、同じ時に死んでいるから…それ以上は…分からない」
レイが驚きで
「え? 同時期に死んでいるって…どういう事?」
ジンが難しい顔で
「口で説明するより、レイがその記憶を見れば…早いかもしれないぞ」
レイが不安な顔で黙る。
ジンが
「どうした? 不安そうにして」
レイが
「それを見たら…自分の何かが変わってしまうとか…」
ジンが上を見上げて
「どうだろう…変わらないのではないか。そもそも超座を継承するには、その超座の適性にあった性質、性格もあるらしいからな。前の持ち主もレイと似た感じだったのではないか?」
レイが一抹の不安を感じる。
ジンが
「まあ、シロッコ曰く、豪勢な映画作品を見ているようなモノだと…言っていた。気にする必要はないし、レイの好きにすればいいと思うぞ」
◇◇◇◇◇
レイは自宅に帰り、ベッドに横になって天井を見上げる。
その気になれば…多分、自由に続きを夢で、いや…意識を集中して超座にアクセスすれば…。
見て良いのだろうか…と思うも、知る事は必要だ。
レイは考えて悩み決断する。
「よし、見よう」
と、レイはベッドから上半身を起こして、胸に手を当てる。
そして、自身の超座にアクセスする。
超座に残された記憶を…
◇◇◇◇◇
レイの意識は、超座の記憶、前の持ち主へ走る。
過去へ、その時代へ…。
そして、辿り着いた。
レイはカケルとなり、そこには白磁器の大理石の空中神殿と宮殿達が空に浮かんでいた。
五百年前に栄華を極めたカレイド時空帝国。
そのカレイドで、超座の一つ、人路皇王のカケルだ。
カケルは、とある場所に向かっている。
空に浮かぶ宮殿や神殿達の中でも桜が咲き乱れる、桜の空中庭園へ。
そこへカケルが来ると、桜の花が咲き乱れる巨木の下に座る人物がいた。
金と黒が混じる特別な髪、額にサードアイが開き、服装は仏のような人物。
このカレイド時空帝国と超座を造った主、覇遵だ。
覇遵が桜の樹の下で瞑想していると、額のサードアイが動き
「カケル…か」
カケルが近づき
「覇遵様…報告に来ました」
覇遵は瞳を開いて額も合わせた三眼でカケルを捉えて
「ああ…聞かせてくれ」
覇遵は、額のサードアイで遙か遠くまで知覚、観測が出来る。
覇遵の感じる力は時空単位であり、自分達が統治する時空達の出来事を第三の目で見つめている。
カケルは、覇遵の前に跪き
「はい、では…」
覇遵はフンと笑み
「聞かせてくれ、お前の口から」
カケルが戦って終えた報告を、覇遵は聞いていた。
数多を観測できる覇遵にとっては、報告は意味ないが、それでもカケルからは報告を聞くようにしている。
カケルの言葉を聞く覇遵は、何処となく優しい感じだ。
存在そのものが別次元である覇遵は、カケルに人らしい感傷を向けていた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、ユノとウル




