幽玄の王 第76話 レイと超座 その肆
次話を読んでいただきありがとうございます。
急変する事態、それにレイは…
レイは、ミカボシ達を捕まえる罠に利用された。
その結末は、立案者であるディオスの思惑通りだった。
だが…
ミカボシ達を閉じ込める星艦の上部、宇宙がゆがみ砂時計の片方のようになる。
そして、星艦内部の惑星達、その惑星の一つに七色の先端が届く。
そこから…惑星の空を覆い尽くす七色の歪み。
ミカボシ達を捕まえた場所、その上部が歪んで空が現れる。
七色に歪んだ空、その空から結晶の棺が出現する。
同時に、円盤の拘束具に囚われたミカボシ達四人が淡い光を空へ伸ばす。
同じ現象が他の四人と、囮にした超座の紛いモノであるマルチバースト・ジョイントからも昇る。
レイは自分の身体から昇る光に戸惑う。
レイの両脇にいるシロッコとジンが胸を押さえてその場に屈む。
「シロ兄、ジン兄!」
と、レイが二人を…
ロードの王ウルも同じく光が昇っている。
九人の身体から放たれる光が上空にある棺、聖櫃に注がれる。
ディオスが
「何が起こっている!」
と、額のサードアイを開いて見通そうとするが、強力な妨害が襲いかかり
「うあ!」
と、サードアイの額を押さえる。
それにティリオが
「父さん、大丈夫?」
ディオスが額を押さえながら
「一体、何が…」
ウルが
「紛いなりにも…ここに九天君主が揃った」
ミカボシを捕まえていたアナスタシアが
「いけない」
と、ミカボシの封印を強めようとしたが。
「こざかしい」
と、ミカボシが告げた瞬間、封印専用の円盤が砕け散った。
同時にアテルイ、スクナ、ハジュンを封印していた円盤も砕け散った。
事態に唖然とするヴァサラス大佐。
「なぜ、封印が…破られる筈がない」
アテルイが自分を指さして
「悪いな。超越存在の力だけではないのだよ」
オージンが解放された四人を見て
「まさか…お前達は…超座を」
スクナが
「聖帝が超座を複製できるなら…我らとて同じ事を可能なのは…当たり前だ」
ヴァサラス大佐が
「アシュリオ兄さん! これ以上、罪を」
と、次を言おうとする前に、ハジュンはエネルギー波動でヴァサラス大佐達を吹き飛ばした。
アナスタシアが
「オルス、帰りましょう。アナタの苦しみを理解できなかったのを皆も」
と、言おうとするが、それにミカボシが雷撃の波動を飛ばして吹き飛ばした。
ミカボシが
「我らは我らの道を行く。もう…過去には戻れないし、戻ろうとも思わない」
ディオスが空を聖櫃を見上げると、聖櫃が開く。
そこから白く輝く人型が出現する。
その白き人型の目、額のサードアイと瞳の三つがディオス達の場を見ると、ディオス達を吹き飛ばすエネルギー波動が広がる。
影響を受けないのは超座を持つ九人だけ、それ以外は強烈なエネルギー波動の力でその場から吹き飛ばされる。
残された九人、ミカボシ達四人、ウル、レイにシロッコとジン。
そこへ三眼の白き人型が降臨する。
ウルがそれに跪き
「申し訳ありません」
三眼の白き人型は、首を横に振り、次にレイ達三人を見る。
苦しそうにうずくまるシロッコとジン。
それを労るレイ。
三眼の白き人型は
「まだ、早い」
と、告げて手を伸ばすとシロッコとジンがその場に倒れる。
「シロ兄、ジン兄」
と、レイが倒れた二人を見る。
呼吸している。苦しそうではない。眠らされたという感じだ。
三眼の白き人型がマルチバースト・ジョイントを見上げ
「聖帝ディオスは、これ程の複製を作れるのか…」
ウルが立ち上がり
「おそらく、レイくんやシロッコとジンのデータを…」
三眼の白き人型が指を向けて
「だが、所詮…紛いモノ」
と、指で弾いた瞬間、マルチバースト・ジョイントに亀裂が入り砕けた。
エネルギーの塊であるマルチバースト・ジョイントは、空間に溶けるように消えていく。
三眼の白き人型が
「では、またな」
と、告げる。
ウルは頭を下げ
「は、覇遵様。いずれ、また…」
三眼の白き人型が爆発した。
それは星艦を一撃で破壊する程の威力だった。
全長六十億キロの星系サイズの星艦が爆発する。
その爆発の合間に、ミカボシ達とウルは逃亡する。
レイは、シロッコとジンを守るように機神ゼクティオンがコクピットに三人を入れる。
ディオス達は、各々の権能を使って防壁を創り身を守る。
星艦は崩壊して、膨大な破片が宇宙へ散らばる。
機神ゼクティオンのコクピットでシロッコとジンを抱えるレイが
「本当に…何が起こって…どうして…こうなったんだ?」
レイには理解不能な事が一気に起こりすぎた。
嵐の一夜のように過ぎ去った事に安堵感しかない。
◇◇◇◇◇
レイは、ディオス達に収容された。
多くの時空戦艦達、艦隊は無事だったらしい。
ミカボシ達が乗ってきた星艦も消えて、残ったのは崩壊した星艦の破片だけ。
時空戦艦の巨大な格納庫の隅で座っているレイ。
ディオス達は、今後の事についての話し合いをしている。
色々な一気にありすぎて、レイは整理をしていた。
まずは、依頼として四姫達の護衛を請け負った。
シロッコとジンと共に発見された超座を得るまでの護衛だ。
それが…
そこから何を整理して考えれば良いのか分からず。
混乱したまま、レイは帰宅した。
そして、一気に疲れが来てベッドへ入ると眠ってしまった。
眠り、夢の中でレイは…
「カケル、最近はどうだ?」
と、呼びかけるのは額のサードアイが三眼で黒と金が混ざる黒金の髪で座禅して座る存在、覇遵が呼びかける夢だ。
その中でレイは、カケルと呼ばれていて、覇遵がカケルであるレイに
「エリザスは…次は、どんな任務を押し付けたんだ?」
カケル(レイ)は、色々と話をする。
それを覇遵は微笑んで聞いていた。
カケルは気付けば任務以外の事も話していた。
それでも覇遵は、微笑んで聞いていた。
そして、覇遵との会話を終えて、部屋から出て行くと、一人の女性がいた。
四姫のサラと似たブロンドの髪の美女。
その美女は、エリザスだ。
エリザスが
「覇遵と何を話したの?」
と、尋ねる口調は鋭い。
いや、嫉妬だ。
それをエリザスが聞いて
「そう…」
と、カケル(レイ)の隣を通り過ぎながら
「なんで、お前だけが…」
と、嫉妬と怒りが混じった言葉が漏れた。
そこでレイは目覚めると夜中だった。
レイはベッドから降りて部屋から出ると、母アカネがいた。
「あら、お目覚め…疲れているようだったから、起こさなかったけど」
レイは改めて自分がレイである事を理解しつつ
「ごめん、夕飯、終わっちゃったよね」
母アカネが微笑み
「お腹が空いているなら、簡単なモノだけど…あるわよ」
レイである日常に安堵感を感じた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、新章、時の記憶 始まり




