幽玄の王 第70話 誘拐と救出
次話を読んでいただきありがとうございます。
思いも寄らぬ者達の救援、それにレイは…
ミカボシとスクナに助けられたレイは困惑していると、スクナが
「ここから逃げるぞ」
と、レイに呼びかける。
レイが困惑気味に
「え? どうして…ですか?」
ミカボシが
「ヤツの狙いは、キミらしい」
レイが自分を指さして
「え、自分ですか?」
レイが困惑していると深紅の鎧兵器人が飛翔して再びレイへ
ミカボシがレイの左腕を掴み上げ
「スクナ!」
スクナは両手を合わせて
「分かった」
レイ達三人を中心に空間が歪んで小さくなる。
歪んだ空間は、レイ達を包んで消える。
その閉じたエネルギーの余波を深紅の鎧兵器人は受けるも、それでもレイ達がいた場所へ向かって掴もうとするが空を切った。
レイは、ミカボシとスクナの二人に連れられて消えた。
深紅の鎧兵器人は、それを確認すると…後ろにいるディオスを横見した後、どこかへ走って消えた。
その場に残されたディオスは、懐から小さな端末を取り出して、反応を見る。
「良い方法とは…言えないな…」
と、呟いた。
◇◇◇◇◇
レイは気付くと、どこかの空間にいた。
大理石のような壁に囲まれた空間、そこに
「いや…間に合って良かった」
と、ロードの王…冷現叡王のウルがいた。
レイは驚きをウルに向けていると、ウルが近づき
「キミが狙われている…という情報を掴んでね。急いで依頼したんだよ」
レイが自分を指さして
「自分が狙われている…ですか?」
ウルは肯き
「キミのような力を持つ者を…動力炉として改造して獲得したい輩は多いからね」
レイは、先程…深紅の鎧兵器人がレイに向けようとしたクモ型の装置を思い返す。
アレが…もしかして…
ウルが考えているレイに
「もしかして、そうなる寸前だった…とか?」
レイはウルを見て
「どうして、ボクを…いえ、自分を助けようと…」
ウルが微笑み
「理由か、どう思うかは…キミの解釈に委ねるが…キミが受け取ったロードの王の力は、私の友人だった彼の超座だったからね。それが、道具にようになるのは…嫌だからね」
ジャバラスから受け取った超座の事だとレイは分かり
「ジャバラスとは…」
ウルが遠くを見るように
「長い付き合いの友人だったさ」
レイは複雑な気持ちになる。
自分の母親をクリスタル症にした赦せない存在だが、戦った時に…どこか悲しげな感じを受けた。
憎いけど、悲しいという相反する感情をレイは持っている。
ウルがレイに
「だから、動力炉のようにされて、道具にされるのは…ね。嫌だったのさ」
ミカボシが
「気をつけろ、お前のような超越存在の若造を上手く利用して、自分の利益の奴隷にさせたいヤツは、ゴマンといる」
スクナが
「そうなって、悲しい結果ばかりとなった超越存在の者達も我々は知っている。そうなりたくないなら、気を引き締める事だな」
レイは助けて貰った事を理解して
「あの、ありがとうございます」
と、お礼を告げる。
ウルが
「当分の間、我々と一緒にいて貰うよ。キミを狙う者達の所在が分かるまではね…」
◇◇◇◇◇
レイが誘拐された後
「どういう事だよ」
と、今までにない程の殺気を放つシロッコがいた。
聖帝ディオスが
「私を守ってレイくんが…」
ジンが鋭い顔で
「だれが誘拐したんだ?」
ディオスは苦しそうな顔で
「我々が最も警戒しているミカボシとスクナという人物達で」
シロッコが
「どうして、レイが狙われたんだ?」
苛立つシロッコにディオスが
「おそらくだが…レイくんを自分達の道具にしたい者達が…レイくんを襲って…動力炉の源か、装置にしようとして…」
ジンが
「つまり、コーレル時空の姫達四人が目的ではなく、レイが目的と…」
ディオスが肯き
「その他は陽動、本命は…そうだったいう事だ」
シロッコが歩き出す。
その背中にサラが
「どこに行くつもりなの? 護衛の任務は終わってないわよ」
シロッコが止まり
「どうにでもしろ。依頼料も要らんし、他のSランクと聖帝ディオス達がいれば出来るだろうが」
ジンも続き
「同意だ。オレも行く」
去ろうとする二人にアルラが
「どうして、そんなに拘るの? レイとは他人でしょう」
「あああ!」
と、鋭い殺気の圧を向けるシロッコ
強烈な圧にアルラが下がると、ルリが
「待ってください」
ジンが
「止めてもムダだ」
ルリが
「いいえ、目的を変更します。私達が超座を得るよりも、レイ・フィリックス・神崎を救出する事に専念しましょう」
テイアが
「いいの? 私達が力を…超座を得ないと…」
ルリが
「それも大事です。ですが…レイ・フィリックス・神崎が誘拐されたのが大きな問題です。誘拐した相手が…聖帝ディオス様達が危険と判断している者達なら、どんな事になるか…もし、失う事になった場合…」
サラが溜息を漏らして
「そうだな。その損失の方が大きい。ならば、目標の変更と…それが終わった後に、シロッコ達には、護衛に専念してもらう」
シロッコが
「お前達に頼るつもりは…」
サラが近づき
「頼る、頼らない問題ではない。レイという超越存在を失いのはコーレル時空にとって大損害という事だ。それに…二人にもレイにも恩を売って置くのも悪くない」
シロッコとジンが渋い顔をしているが、聖帝ディオスが
「私も協力する。その方が早いだろう」
その提案にシロッコとジンは頷いた。
こうして、レイを探す計画に変更となった。
聖帝ディオスが
「探すとして…どうやって手がかりを得れば…」
シロッコが自分を指さして
「オレとジンにレイの三人は、同じ超座というシステムを持っている。その超座の共鳴反応を辿れば、レイのいる場所に行ける」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、レイと超座、その壱