幽玄の王 第69話 襲撃者は
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突如、起こる事態、それは…
レイは、ディオスと話ながら通路を進んでいた。
その時だ。
「え?」
レイは強い衝撃が伝わった感じを受ける。
ディオスは鋭い顔になり
「この震動…何かがぶつかった感じだ」
レイは困惑気味に
「何かがぶつかったって?」
レイが乗る時空戦艦は、まだ時空間を移動する超空間ネットワークのトンネル内にいる。
そんな中で衝突…ありえない事だ。
超空間ネットワークのトンネル内を移動する際は、入口と出口が固定されて、一隻しか船が通れないはずだ。
その通る筈のない超空間ネットワークのトンネル内に別の時空戦艦が入ってくる。
それは…つまり…
◇◇◇◇◇
シロッコは、オージンとティリオを連れてジンの元へ来る。
ジンは、どうやら他のハンター達と訓練していたらしく、大きなドーム型の訓練ホールにいた。
「よう」とシロッコがジンに挨拶して、ジンがオージンに気付き
「あ、オージン様、お久しぶりです」
オージンが微笑み
「久しいな」
と、告げた瞬間、衝撃が伝わる。
四人は直ぐに視線が鋭くなる。
ティリオが
「この震動、何かが衝突したモノと…」
シロッコがジンと視線を交差させて、シロッコが
「オレは、オージン様達の安全を守る」
ジンが
「自分は、レイと合流して姫様達の…」
四人の超越存在としての超知覚が急速に侵入する者達を捉える。
ティリオが
「早い、無人機か?」
ジンは
「にしては…動きが生物的だ。生体兵器の可能性がある」
オージンが
「ワシは、ティリオに守って貰う。お主達は姫様達を守った方が…」
シロッコとジンが渋い顔をして
「了解です。その通りにさせて貰います」
と、シロッコが告げる。
ジンも
「すいません。オージン様」
オージンが「はよ、行ってやれ」
シロッコとジンが姫達の元へ駆け出す。
◇◇◇◇◇
侵入した存在は、七つに分かれる。
その内の四つは、護衛の姫達四人へ向かうが…囮だ。
本命は三つ、それが向かう先は…
レイは、超越存在の超知覚を使って侵入者を察知して
「姫様達に向かっているのが四つ、そして」
ディオスも超越存在の超知覚、額のサードアイで
「こっちに三つ…向かってくるな」
レイがディオスを見て
「まさか、ディオスさんが狙い?」
ディオスが荒い溜息で
「まあ、狙われない理由は…ないかな…」
レイは、ギアのセイントグリッドを展開して
「ディオスさんの護衛は自分がやります」
ディオスが
「私は自分で身を守れる。キミは、護衛対象の姫達四人」
目の前の通路の奥が爆発した。
レイが
「その余裕は無くなりました」
噴煙が上がる向こうから、顔を金属のフルフェイスに隠した者達が出現する。
顔は全部が金属のフルフェイス、両手からは何かの砲身が伸びていて、足は人型だが…何処か鳥類的な形だ。
完全に生体兵器の何かであるソレに、レイの警戒は最大値だ。
生体兵器のそれは、壁を縦横無尽に駆けて、レイへ襲いかかる。
レイがセイントグリッドの両手にアラクモの剣を握る。
生体兵器は腕の砲身から弾丸を発射し、レイに迫る。
レイは、その弾丸を弾くと生体兵器に刃を向けて、襲いかかる生体兵器を両断する。
アラクモの両手剣の切れ味は凄まじい。簡単に一刀両断されるが、生体兵器の体液がアラクモの両手剣のエネルギー刃に触れた瞬間、粘着剤のように絡みつき、エネルギーの刃を固める。
「え?」とレイは困惑した隙に、煙の向こうから伸びた鎧の尻尾が腹部を襲う。
セイントグリッドのレイが後ろに飛ぶ。
そこへ向かって、煙の向こうから来た者が瞬足で迫る。
ディオスを無視して…
それとディオスの視線が交差する。
鎧武者のような兜を纏った、全身が深紅の鎧兵器人がレイに攻撃を加えようと迫る。
レイは、直ぐに格闘戦用のギア・ヴェイルになるが、深紅の鎧兵器人が迫ると凄まじい速度の手刀を繰り出す。
ギア・ヴェイルの拳を放ち手刀達をさばくが、腹部に蹴りが入る。
それで、レイは察した。
圧倒的に格闘の経験値が上の相手が目の前にいる。
レイが深紅の鎧兵器人を見ると、その目が光っている。明らかに明確な意思がある。
兵器ではない。
そして、殺気がレイを狙っている。
まさか、ぼくを狙って?
と、レイが考えた隙を見逃さない。
襲撃者の深紅の鎧兵器人は腕部の加速装置を開いて、ギア・ヴェイルのレイを連打する。
そのダメージがレイに刻まれる。
レイは床に叩き付けられて動かなくなる。
そこへ深紅の鎧兵器人が背中から、とある装置を出す。
それは、何かの拘束具のような形をした機械のクモだ。
それをレイにつけようとした。
レイは、マズい…と直感で思う。
だが、付けようとした深紅の鎧兵器人の両腕を掴む者達がいた。
その者達が深紅の鎧兵器人を投げ飛ばす。
レイは上半身を起こして
「アナタ達は…」
レイを守ったのは、ミカボシとスクナの二人だった。
ミカボシとスクナは、深紅の鎧兵器人が投げられた向こうを見ると、ディオスがいた。
ディオスは鋭い顔でミカボシとスクナを見ていた。
ミカボシとスクナも鋭い顔を返した。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、誘拐と救出