幽玄の王 第67話 依頼の道中
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移動する時空戦艦内、そこには…
レイは宇宙戦艦に乗っていた。
それは…大きな宇宙戦艦だ。全長が千メートルという巨大な宇宙戦艦だ。
ただ、一つ違うのは時空間を移動できる能力があるという事だ。
時空間を移動できる宇宙戦艦、時空戦艦の甲板でレイは、外の風景を見ていた。
別の時空へ移動する為に、時空同士を繋ぐ超空間ネットワークのトンネル内の七色の風景だ。
レイは、シロッコとジンと共に依頼を受けた。
その依頼とは、サラ、ルリ、テイア、アルラの四姫をレイ達と同じ超座の超越存在にするという内容だ。
その超座は、かつて五百年前に覇遵とされる最強の存在が作った九つの存在で、それが九天君主と呼ばれ、数多の時空達を支配した超大国の時空国家カレイドを造った。
その九天君主の超座は、覇遵が消えたと同時に、何処かへ喪失して、今はレイとシロッコとジンの三人が九つあった三つを持っている。
残り六つは、未だに行方知れずだが、その一つの所在が分かったらしい。
そこへ、時空戦艦を向けて…その護衛としてレイ、シロッコ、ジンの三人が雇われて
「レイくん」
と、後ろからディオスが呼びかける。
レイが振り向き
「ああ…ディオスさん」
聖帝ディオスが特別参加の顧問として同席した。
ディオスがレイの隣に来て
「他の時空へ行くのは、始めてかい?」
レイは肯き
「はい。人生で始めてです」
ディオスが
「まあ、色んな人達がいるし…色んなモノがある。それを見て置いても損はないさ」
レイが少し悲しげに
「でも、そうやって気軽に他時空へ行けるのは…相当な資産を持つ人達しか…。ボク達のような一般人には縁遠い世界ですから」
ディオスが微笑み
「いずれ、コーレル時空が発展すれば、旅行みたいに行けるさ」
レイは肩をすくめて
「そうなれば、いいですね」
レイは他の時空へ行った事がない。
初めてを経験する依頼でもある。
◇◇◇◇◇
サラはシロッコがいる部屋で、堂々とシロッコの部屋のイスに座って
「シロッコ、帰って来い」
「え?」
と、シロッコは戸惑う。
サラは威厳を放ちながら
「そろそろ、責任から逃げるのは止めて欲しい」
シロッコが首を傾げて
「責任って、何?」
サラがシロッコを見つめて
「その力を持つ者としての責任だ」
シロッコは考えて
「いや…そんな責任を持った記憶がございませんが…」
サラが苛立ち気味に
「お前の造炎轟王という超越存在には、時空を支える責任がある。それは、その超座が誕生した五百年前からの運命だ」
シロッコは首を傾げて
「そんな運命、あったかなぁ…?」
サラが真剣に
「超座を造った覇遵という存在は、九つの超座、九天君主を造ったのも…時空達の管理や支配を行う為だ。その為に…生まれて、その為に存在してきた。巨大な力、世界を動かし破壊する程の力には責任と義務が伴う。それが道理だ」
シロッコは呆れたような溜息を漏らして
「多分、その覇遵ってヤツは、そんな事を考えて造った訳では無いぞ」
サラが少し苛立ち
「では、お前が根拠とする証拠は?」
シロッコが
「衆生皆同…全ては、神という天部も、人も、悪鬼という悪魔も、地獄も、全ては同じ衆生。それに上下を付けるのは愚かな人のサガ…ってね」
サラが
「では、何故! 五百年前に…覇遵は多くの時空を支配したんだ!!!!!!!!!!」と、声を荒げる。
シロッコが冷たい目で
「お前の母側の遺伝子になったヤツの願望だったんだろう」
サラはイスから立ち上がってシロッコを凝視する。
「それは、違う。間違いだ!」
シロッコが溜息を漏らして
「どう否定しようと…それが真実だよ。アイツは…覇遵は…崇光な理想も、大きな野心や野望もない。ただ、それを求められたからやっただけ。自分の意思さえもない。だから…崩壊した。それだけさ」
サラがシロッコに迫り
「まるで、見てきたような…言い草だな! その時代に生まれている訳でもないのに…」
シロッコが面倒な顔で
「超座を得ると、その前の主の記憶までも残っているからな」
サラがシロッコに密着して
「それは、その前の主の主観が混じった記憶だ。正確ではない」
シロッコが胸と胸が接近する距離にいるサラを見下ろし
「その言い草、その雰囲気と…考え方、覇遵の隣にいた殲滅の女王と同じだな。ソイツも覇遵の為と言って、多くの時空を征服して行った。自分の願望を覇遵が原因として…な」
サラの顔が鋭くなり
「それも、前の記憶の主の間違った主観だ」
シロッコがサラから離れて
「そう思いたいなら思えばいいさ。そうやって、自分の願いを他人の責任にし続けるなら、それは他人を裏切っているのと同じだからな」
と、部屋から出て行った。
その肩をサラが掴み
「逃げるな! お前は、こっち側なんだよ」
その手をシロッコは払って
「悪いな、オレはそっち側じゃあない」
と、部屋を出て行った。
部屋を出ると、ドンと壁が蹴られた音が聞こえて、それを背にシロッコは歩き出す。
そして、その途中で…聖帝ディオスの息子ティリオとオージンの二人に出会う。
シロッコがオージンを見て
「オージン様、お久しぶりです」
今回の事にオージンも付いてきた。
オージンの隣にいるティリオは、シロッコがオージンに挨拶した言葉を聞いて、やっぱり…と確信する。
老王オージンはシロッコに
「久しいな、二十年ぶりか…」
シロッコが自分の胸に手を当てて
「アナタから受け取った力、役立っています」
オージンは微笑み
「ワシのモノではない。預かっていただけ…それを返したまで…」
シロッコとオージンは微笑みを交わして、ティリオは…預かっていた、返したまで…の言葉に疑問と驚きを持つ。
オージンは
「もう一人、ジンだったかな…」
シロッコが
「ああ…船内の何処かにいるんでしょう。会ってきますか?」
オージンは肯き
「そうじゃな、顔を見たい」
シロッコが端末を取り出して
「なら、検索して一緒に居る場所へ行きましょうか」
オージンは「頼む」と頷く。
◇◇◇◇◇
時空戦艦は順調に航行していた。
だが…その後ろからステルスに身を隠して近づく時空戦艦が…
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、襲撃者とは…