幽玄の王 第64話 入口での事件
次話を読んでいただきありがとうございます。
ドラゴンズネストで探索するシロッコとレイ、だが…その…終わりに…
山の如き多頭龍のドラゴン、マウント・ヒュドラを前にするレイとシロッコ。
マウント・ヒュドラは、無数に生えている龍の顎門から業火を放つ。
それをギアを装備するレイとシロッコは回避しつつ攻撃を加える。
シロッコのタイガードは、拳に力を乗せてマウント・ヒュドラを攻撃する。
レイは、セイントグリッドからラーオロスに変えて、光線を発射する。
マウント・ヒュドラは、シロッコの大地さえ震わせるタイガードの一撃にも耐え、レイのラーオロスが放った光線も弾き返した。
レイが
「え。強い…」
シロッコが
「ヤツは、地中深くに根を張って地下のマグマをエネルギー源にしている。膨大な熱エネルギーと、その熱エネルギーを利用した物質生成と高密度化による躯体の強化…このドラゴンズネストの中でも最強の一角を担っている」
レイが
「じゃあ、どう倒せば…?」
その疑問にシロッコは
「倒す必要は無い」
と、マウント・ヒュドラの無数に生える多頭龍達へ疾走して、その付け根を殴る。
一撃で頭部と首が離れて転がる。
拳撃によって切断された首から、マグマのような超高温の体液が噴出すると、そこから新しい首が生えて攻撃を始める。
「レイ、必要なのは頭部だけだ。十二個だ…材料に必要な頭数だけ切断して、回収すればいい」
レイは「了解」とギアを紅きレッドミカエルに変えると、超音速の刃となってマウント・ヒュドラの頭部を首から切断する。
シロッコも拳撃で頭部から首を切断、十二個ほど頭部を獲得すると
「レイ、回収だ!」
と、シロッコが落ちた頭部を拾って、レイに向けて投げると…レイはそれを無限収納ボックスに入れて回収する。
目的の数の頭部を獲得した次に、シロッコとレイは一目散にマウント・ヒュドラから離れて逃げた。
必要な材料さえ揃えれば、倒す必要はないのだ。
こうして、目的の素材を手に入れたシロッコとレイは、マウント・ヒュドラから遠くに離れて、入って来た巨大な門へ戻る。
◇◇◇◇◇
シロッコとレイは、入口の巨大な門を押してドラゴンズネストから帰って来ると…五名のソルジャー達が待ち構えていた。
「よう」とレイに近い若いソルジャーの男がシロッコに近づく、明らかに威圧を放っている。
シロッコが
「何か用か?」
若いソルジャーの男が
「オレ達をコケにして…どういうつもりだ?」
シロッコが首を傾げて
「コケ? その当たりに生えているヤツがなんだ?」
若いソルジャーの男が苛立った顔をして
「オレ達をバカにして、どう…落とし前をつけるんだよ!」
と、声を荒げる。
シロッコは冷静に
「落とし前って、今時の犯罪者だって使わないぞ…」
若いソルジャーの男が
「そうやってバカにしているのも今の内だぜ、オイ!」
と、後ろの仲間達に声をかけると、シロッコとレイの周囲に槍のような装置が現れて、シロッコとレイと紫電のリングに閉じ込める。
若いソルジャーの男が
「アンタ達の力を封じる装置だぜ」
シロッコが若いソルジャーの男を凝視して
「どういう事だ?」
若いソルジャーの男が
「お前等をボコボコにして、お前等の力を奪ってやるぜ。これからは…オレ達が最強のソルジャーならぬ、最強の存在になるって事さ」
レイは驚きを向ける。
若いソルジャーの男は、シロッコに助っ人を頼んだ男と共にいた連中だ。
おそらくだが…シロッコがドラゴンズネストに来る事を察知して、シロッコと共にドラゴンズネストに入り…ドラゴンズネストを探索した、という泊を得る為に…
それをシロッコが断った事で潰れたのだ。
シロッコが
「全く、お前達のような身の程をわきまえない連中が、ドラゴンズネストに入らなくって良かったよ。行方不明となって…後々、大変だったろう」
「うるせぇ!」
と、若いソルジャーの男が両腕をギアの鎧に替えて
「テメェの伝説もここで終わりだぜ」
若いソルジャーの男の仲間達もギアを展開する。
片腕をギアの鎧に変化させる。
ギアはエネルギーの塊だ。それを物質化して鎧にできるという事は、Bランク以上Aランク未満の実力がある。
相手は、力を封印する装置によってシロッコとレイに勝てると勘違いしている。
そして、最悪なのは…ここの巨大な門には監視装置が設置されて、この状況を記録されている。
シロッコが
「一つ、聞く…この場所は監視されているのだが…」
レイは、ゲートキーパーがいる部屋を見ると、鮮血が見えた。
「まさか!」
と、急いでゲートキーパーがいる部屋に向かうと、重症のゲートキーパーがいた。
レイは、急いで回復アイテムを無限収納ボックスから取り出して、ありったけを投入する。
若いソルジャーの男が
「お前等さえ、倒して力さえ奪えば! 幾らでももみ消してくれんだよ! 親父が!!!!!!!!!!」
シロッコが鬼のような顔をして
「親父? 誰が?」
若いソルジャーの男が
「オレの親父は、コーレル時空の評議会の議員なんだよ! 何度か、もし消してくれたし…今回も同じなんだよ」
シロッコが冷たい目になる。
「お前の顔…もしかして、評議会議員の…アリアケか…」
若いソルジャーの男が目を輝かせ
「その通りだぜ、親父は、シゲル・アラン・アリアケさ! 評議会議員でも、相当に偉いからよ…なんでも、無かった事にしてくれるぜ」
シロッコが冷たい目で
「お前も親父と同じ、権力の犬なんだなぁ」
若いソルジャーの男が怒りに目を輝かせ
「うるせぇ!」
と、シロッコにギアで斬りかかる。
シロッコはギアを展開していない。
若いソルジャーの男のギアの刃が、シロッコに触れた瞬間、消し飛んだ。
「え?」と若いソルジャーの男が青ざめた。
シロッコが拳を構えて
「所詮、お前も…親父と同じクソだった」
と、轟音を響かせて若いソルジャーの男の胸部を殴った。
若いソルジャーの男の肋骨が何本も折れてヒビが入り、若いソルジャーの男が吹き飛んだ。
ギアを装備しているが、そのギアのエネルギーの防壁を突破して大ダメージが刻まれる。
若いソルジャーの男の仲間が驚く合間に、シロッコが消えた。
音速で仲間達に迫り、その胸部に轟拳をぶち込む。
若いソルジャーの男と同じく肋骨の何本かにヒビが入る程の大ダメージが入り、全員がその場に吹き飛び転がった。
五人が一瞬で倒されて、レイは急いで救援の連絡を入れると、救急隊が駆けつけてくれた。
確かに、その装置はシロッコとレイのギアの力を封印はしたが…超越存在としての力は封印されていない。
二人を襲撃した者達は、ギアさえ押さえれば勝てると勘違いしていたのだ。
◇◇◇◇◇
その後、救援隊がレイに変わってゲートキーパーを緊急搬送して、ゲートキーパーは一命を取り留めた。
全ての事が記録として残っていて、倒された五人は、シロッコとレイが攻撃してきたというウソも言い続ける。
そして、五人の中にいる若いソルジャーの男、評議会議員の息子が父親に連絡、シロッコとレイの二人と対峙した。
病院で、若いソルジャーの男の目の前に評議会議員の父親がいて、若いソルジャーの男は父親が権力をかざして何とかすると思っていたが…
「申し訳ありません!」
と、父親がシロッコとレイに土下座した。
若いソルジャーの男が青ざめる。
治療中の肋骨を摩り、無様に土下座する父親に…事態の重さを…
シロッコが冷徹に
「アンタの息子、他にも…同等の犯罪を犯しているようだな。全部…記録に残っているぞ」
若いソルジャーの男の父親が
「賠償金は、幾らでも、もし…お望みの物がありましたら…」
シロッコが冷たく
「お前の欲しいモノがオレ達の欲しいモノじゃあね。被害届けを出させて貰う」
と、告げた次に、土下座する父親の襟首を掴み立たせて
「今後、お前等、全員に二度と…関与しない。オレも、レイも、ジンもな」
シロッコの後ろにいたレイも頷く。
こんな愚かな者達に一生、関わりたくない。
父親が青ざめて
「どうか…お幾らでも払います。このような事は二度と、起こさせませんので!」
シロッコが淡々と
「信用できないし、今後とも永遠にそちらを信用する事はないだろう。これは…解決できなかった問題だ。永遠にな…」
と、告げるとレイを見て
「行くぞ」
と、歩き出した。
それにレイも続いた。
「うあああああああ」と若いソルジャーの男の父親は頭を抱えて叫ぶ。
そして、息子である若いソルジャーの男に
「お前のせいで! 何もかも失ったぞ! 何て大それた事をしてくれたんだ!」
と、息子である若いソルジャーの男を殴った。
若いソルジャーの男は、今後…余罪の全てを調べられて…そして、それをもみ消していた父親の余罪も出てくるだろう。
権力を手にした者達は、必ず横暴を繰り返す。
それがバレないのは運が良いだけで、運の終わりは必ず訪れる。
運が良いだけ…それが権力の犬の本質である。
運が終わった権力の犬の末路は、悲惨であると…歴史は証明している。
◇◇◇◇◇
その連絡をエンジェルリンクス社の会長が受け取っていた。
翼のグルファクシは机に座って通信機に
「そうです。ええ…彼ら、評議会議員の一派で、シロッコやジンにレイくんを取り込もうとした連中が…瓦解しましたか…」
と、笑む。
翼のグルファクシが通信を繋げているのは、ルリだ。
「彼は、非合法であるソルジャーのギアの発動を阻害する装置を持っていた…と。どこから得たのか、分かりませんでした」
翼のグルファクシが遠くを見て
「いやはや、そういう裏取引を防ぐのは難しいですな」
通信機越しにルリが翼のグルファクシを見つめて
「オーズ会長は、何か、ご存じで?」
翼のグルファクシが肩をすくめて
「いいえ、全く、今回の事は初耳ですよ」
通信機越しのルリが溜息を漏らした次に
「とにかく、そういう事がありましたので、では…」
と、通信が終わる。
翼のグルファクシが深く背もたれに横になると、後ろから杖のガルガンチュアが現れて
「グルファクシ、お前の言う通り…権力の犬のガキに…オモチャを持たせて…」
翼のグルファクシが「ふふ…」と笑み
「何時の世も、他人の力に依存する権力の犬は、甘い蜜に群がる害虫だ。早めに駆除するに限る」
杖のガルガンチュアは肯き
「同感だ」
思惑が動いている。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、大きな依頼