幽玄の王 第62話 シロッコの依頼
次話を読んでいただきありがとうございます。
シロッコの依頼を受けたレイは…
レイは次の仕事を探していると、シロッコから連絡が来た。
「レイ、オレの仕事を手伝ってくれないか?」
レイが通信端末で受けて
「どんな仕事なんですか?」
通信機の画面にいるシロッコが
「武器の製造を頼まれてな。その材料をダンジョンに取りに行かないといけないんだよ。そのダンジョンは、ドラゴンズネストってダンジョンなんだが…」
レイが
「ドラゴンズネスト! ですか…」
ドラゴンズネスト、ドラゴン型の強力なモンスターが跋扈するSランク以上でなければ…入る事が許されないダンジョン。
シロッコが
「今回は、作る武器が多くて、その材料の探索と運び出しにレイの力を借りたいんだが…ダメか?」
レイは首を横に振り
「いいえ、大丈夫ですよ。これと言って予定もありませんし…」
シロッコがホッと息を漏らして
「助かる。ジンは別の仕事が入っていて、ランも別件でいなくて、レイしか…当てがなかった状態だった」
こうして、レイはシロッコと共にドラゴンズネストへ材料探索をする事になった。
◇◇◇◇◇
レイは、シロッコの依頼である作成武器の素材獲得のダンジョン探索を請け負い、シロッコ共に、とある店に来た。
もの凄く大きなビルに入り、シロッコを先頭にレイは続き
「シロッコさん」
と、シロッコの背中に呼びかける。
シロッコが振り向き
「なんだ?」
レイが
「ここで依頼を受ける手続きをするんですよね?」
シロッコが肯き
「ああ…この先にある。ソルジャー専用の武器店の依頼だ。武器の製造の依頼だから、その店舗の許可みたいなモンが必要なんだよ」
と、レイを連れてとある店舗の前に来る。
レイは「ええ…」と戸惑う。
その店舗は、ソルジャーの中でもAランク以上のソルジャーが御用達にしている高級店だ。
そのドアをシロッコと共にレイはくぐり
「いらっしゃいませ」
と、老紳士…お店の人が受け付ける。
老紳士がシロッコを見て
「おお、シロッコ様…今日はどのようなご用件で?」
シロッコが後ろにいるレイを指さし
「そちらの依頼で作成する武器の素材を獲得するに、助っ人を頼んだから…登録をお願いしようと…ね」
老紳士の店員は、レイを見つめるとハッとして
「畏まりました。では…シロッコ様、店の奥の方で書類のサインがありますので、そちらを…。お連れの方は…一応、ランクの証明をしますので…」
シロッコは肯き
「構わない」
「では…」と老紳士の店員がシロッコを店の奥へ入れて、レイの方に近づくと
「レイ・フィリックス・神崎 様…でしょうか?」
レイは名乗っていないのに名前を当てられて驚き
「あ、はい…そうです」
老紳士の店員が懐から端末を取り出して
「貴方様には不必要でしょうが…一応、規則ですので…ランクの検索を」
老紳士の店員が持っているのは、ソルジャーランクを調べる生体認証だ。
レイは「分かりました」と端末に触れると、レイのデータが投影される。
EXランク、ソルジャー、レイ・フィリックス・神崎
「ありがとうございます」
と、老紳士の店員が頭を下げて、レイも頭を下げる。
老紳士の店員がレイを見つめて
「レイ様とシロッコ様は、親しいようで…」
レイは頭を掻きながら
「色々とお世話になったし、色々と…本当に…助けられた事も」
老紳士の店員が
「シロッコ様があのように他人に気づかいを示すのは、レイ様の他に、ジン様やラン様にご自身のご家族以外しか…」
「へぇ…」とレイは少し困惑する。
自分の時は、最初から気楽な感じで接するので、全員に対してそうだと思っていたからだ。
老紳士の店員がレイに
「レイ様…お願いをお聞きいただけると…ありがたいのですが…」
レイが首を傾げて
「お願い?」
老紳士の店員が
「実は、当店のオーナーのご令嬢の方が…シロッコ様を気を持っているらしく、その後押しを…。無論、協力して頂いたのなら、それ相応の謝礼は…そればかりではありません。当店舗達の」
「それ以上は、ウルサいぞ」
と、シロッコが帰って来た。
レイの隣に並ぶシロッコが
「レイ、書類のサインは終わったんだ。明日には出る。準備を始めるぞ」
レイは「ああ…うん」と告げて、シロッコと共に店舗を出た。
老紳士の店員が
「どうか、今後ともご贔屓に…」
◇◇◇◇◇
レイと共に外に出たシロッコ。
レイがシロッコに
「シロッコさん。さっきの店員さんの話」
シロッコが面倒くさそうな顔で
「どういう理由かは、知らないが…。あの店のオーナーの娘が…こんな四十代後半のオジさんとお付き合いしたいって言っているらしい。アホらしい…年齢は、レイと同年配か…少し下の小娘だぞ」
「えええ」とレイは唸ってしまった。
シロッコは四十代後半、レイの少し下という事は22か23か、完全に親子の年齢差だ。
シロッコが
「親子の年齢差で、付き合いたいなんて、社会的にロリコンって言われて死ぬわ。オレは…ロリコンじゃあねぇ…」
苛立った雰囲気をシロッコが出している。
レイはそれで察する。
おそらく、何度か説得されているのが見えた。
レイは考える。
自分で言うなら、赤子が付き合ってと言っているようなモノだ。
流石に…嫌かなぁ…。
何となく、シロッコの感覚が理解できる。
世の中には、親子の年齢差でも結婚するカップルもいるが、それは特例中の特例であり、過去、地球時代で原始時代に近い中世の世界では、そういう年齢差の付き合いは普通だったらしいが、その時代から遙か遠くの宇宙時代だ。
過去の当たり前は、未来では非常識になる。
レイ達の生きている世界は、宇宙時代だ。
そんな過去の普通は遙か昔に終わったのだ。
レイの意識が遠くへ集中する。
「そう、所詮は…全ては自由と言っても、結局は…その立ち位置で染まる」
自分の意識の深い深い部分が語りかける。
今のレイの人生と…カケルだった人生の…
パチンとシロッコがレイの目の前で指を鳴らした。
「ハ!」とレイがレイに戻った。
「大丈夫か?」
と、シロッコが呼びかける。
レイは呆然と歩いていたのだ。
レイは、視線を泳がせて
「ああ…ごめん。ありがとう…ハク兄」
と、カケルの意識が出る。
「え?」
と、レイは口を押さえた。
何を言っているんだ?
困惑するレイにシロッコが
「ああ…まあ、シロ兄でも良いぞ」
と、許す。
レイが戸惑いつつも
「いや、その…あの…」
シロッコさんという言葉がとっさに出てこない。
「ありがとう。シロ兄」
と、いう言葉しか言えなくなった。
「おう」とシロッコは微笑む。
シロッコは、レイに合わせてくれた。
レイは、なぜ…そうなったのか?を分からず一時だけ困惑するも、シロッコをシロ兄と呼ぶ事だけは、違和感なく言えるので、その流れに身を任せた。
レイは、困惑する。
自分の人生にはない、誰かの過去の何かがレイに…その違和感ではなく、当然のように自分に浸透し始めている。
それに恐怖を感じていない。
レイは、おそらく…ジャバラスから超座を受け取った影響だろう…と片付けた。
そうして、レイはシロッコと共にドラゴンズネストのダンジョン探索へ向かった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、ドラゴンズネスト