幽玄の王 第61話 母の言葉
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突如、現れたサラの…
現場は混乱していた。
レイの家に、サラ達が上がり込んでいた。
レイの隣にシロッコとジンが並び、サラが堂々と言う。
「私を結婚しなさい。それが道理というモノだ」
レイは額を抱えて、シロッコとジンは首を傾げて思う事は…
大丈夫か? コイツ…
と、三人は同時に思っていた。
レイの姉のアスカが
「あの…説明を…欲しいのですが」
冷静な姉のアスカの指摘に、サラが
「必要なのか?」
と、当然だろうと顔をする。
それに姉のアスカも額を抱えた。
ダメだ…これ…
サラの要求の意味が分からない。
そこへ妹のスイが母親がいる病院と繋げた端末を持って来て
「お母さん…実はね」
と、端末で通信と繋がる母アカネが事情の説明を受ける。
説明というか、サラが強引に押しかけて、結婚しろ!と命令している現状だ。
母アカネが通信機越しに
「こんにちは、サラさん。レイの母親のアカネ・ノリス・神崎です」
サラが胸を張り
「初めまして、サラ・アメリス・カイゼルです。早速ですが、お母様…ご子息のレイ殿との婚姻に関してお話に来ました」
サラの対面にいるシロッコが
「あの…すいません。もし、何かお困り事があるようでしたら、メンタルクリニックへ…行かれた方が、よろしいのでは?」
丁寧な口調のシロッコ。
それぐらいまでドン引きしているのだ。
サラが堂々と
「私はメンタルに問題を抱えていない」
シロッコが
「いや、そういう方ほど、メンタルに問題はないと言い張りますし…」
ジンとレイは、シロッコの後ろに隠れる。
まるで、長男に頼る次男と三男のようだ。
シロッコは、最悪…実力行使を…と考えている。
サラが
「お前達は、我々と結婚しなければならない。その方が…安全だ」
『えええ…』とシロッコとジンにレイ、姉アスカ、妹スイも驚愕の声を漏らす。
シロッコは、ジンとレイとアイコンタクトする。
”コイツ…いっちゃってるぞ!”
ジンとレイが
”シロッコに任せます”
シロッコが溜息の後に
「で、何故…安全なんですか?」
サラは静かな雰囲気をまとい冷静に
「お前達がもたらしたエネルギー炉の力は、膨大だ。それによって…このコーレル時空は、相当に発展する見込みが立った。つまり…それは、権威と結び付く…という事だ」
シロッコが考えつつ
「ええ…つまり、豊富な資源に群がる…まあ、砂糖の山に群がるアリみたいな感じですか?」
サラが肯き
「その通りだ。それは、大きな争いを生み出す。つまり、お前達を御旗にして…戦いを起こす者達が現れるという事だ」
ジンがハッとして、シロッコの肩に手を置き
「つまり、我々のサルヴァードが…新たな権力に派閥を生み出して、それによって争いが起こる予兆があるという事か!」
サラが肯き
「その通りだ。今は、水面下だが…いずれ、お前達に接触してくるだろう」
それを聞いたレイが青ざめて
えええ…なんで、そんなトラブルを…
と、気分が悪くなってきた。
シロッコが「ああ…そういう事か…」とサラが意図している内容を察して
「つまりだ。訳が分からない野心を持って暴走する連中の乱立より、立場と位置が明確な、アンタ達と繋がれば、それにオレ達は組み込まれて…争いが起こらない…と、そういう事か!」
サラが肯き
「その通りだ。私だけと結婚しろ…とは言わない。私を含めた、アルラ、ルリ、テイアの四人の内、誰かとお前達が結婚して、我々に組み込まれた事にすれば…争いは回避できる」
レイは、理解した。
歴史の教科書にあった権力維持の為の政略結婚だ。
そんな世界とは無縁な一般人だったレイにとって、この話は衝撃だった。
四人は、ソルジャーの中でも王の直系とされる姫や女王達だ。
その権力の一つとして、レイ達が入れば…新たに現れようとする野心の者達を防ぐ事ができる。
もし、レイ達が新たに現れる野心達の誰かに取り込まれれば…争いは必ず起こる。
レイが
「それを無視する事は…できませんか?」
サラが鋭い顔で
「できると思うか? 連中は、あらゆる手段を使ってくるぞ。我らもそうであったようにな…。まあ、シロッコとジンのようなド変人の強者なら可能だろう。だが、私の見立てでは…レイ・フィリックス・神崎…お前は…優しすぎる人間だ。優しい人は情につけこまれるぞ」
レイは、それを否定できない。
自分は、母親を助けたい…としてここまで来た。
だから、もし…母親や肉親と匹敵する誰かが…現れたら…
レイは黙ってしまう。
通信機越しのレイの母アカネが
「サラさんの言いたい事は分かりました」
サラが「では」と身を乗り出す。
母アカネが
「サラさんの好意には感謝します。でも、私は…レイを信じています。レイは…そのような事を嫌い、そう…ならないようにする。その未来を信じています」
サラが鋭い顔で
「それは、楽天的な考えだ! 私の言う事は長い歴史が証明している!」
母アカネが
「だからです。レイもその当たりは勉強しているし、経験もしている。レイなら…その道を選ぶ事はしないと…。それが私と夫の息子ですから」
苛立つサラだが、シロッコが
「オレも、レイのお母さんと同じ考えだ。レイなら…違う道を行くさ」
サラがシロッコを睨み
「キサマ! 自分がその責任から逃げたくせに!」
シロッコがバカにした笑みで
「逃げたんじゃあねぇ。バカらしくて、そこから離れただけさ。オレもジンもな」
シロッコとサラが睨み合っていると、ドアのインターホンが鳴って、姉アスカが行くと…
「遅くに申し訳ありません」
と、ルリ達が現れて、サラの元へ行き
「帰りますよ」
サラがルリを睨むと、ルリが耳打ちして、サラが渋い顔をした後に
「また…来る」
と、言い残してサラは去り、ルリは頭を下げた。
サラはルリ達に連れられて帰った。
レイは疲れが一気に来た。
本当に…色々と…
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、シロッコの依頼