幽玄の王 第53話 ランクの再審査
次話を読んでいただきありがとうございます。
ランクの再審査を受けに来たレイだが…
レイは、ランクの審査会場に来た。
そこには多くのソルジャー達が集まっていた。
レイは受け取った通知を片手に、審査登録する受付へ向かっていると
「お、レイじゃん」
と、シロッコの声がした。
「え?」
と、レイは声がした方を振り向くと、シロッコとランの二人がいた。
「あれ? シロッコさんもランクの再審査を受けるんですか?」
と、シロッコとランに近づく
シロッコが笑み
「違う。ランがランクの審査を受けるんだよ」
ランは胸を張って
「アタシ、Sランクになるから…よろしくね!」
と、ウィンクをした。
シロッコが肯き
「やっとオレから独立してくれるぜ」
ランがシロッコの左腕に抱き付いて
「アタシがSランクになってシロッコを引っ張って行くから!」
シロッコの身長は190で、ランの身長は160だ。
身長差が大きい二人だが、何処となく対等な感じだ。
シロッコは溜息を漏らして
「まだ、介護される年齢じゃあねぇ」
ランはフンと笑み、レイに
「アンタは、Sランクになるの?」
レイは頬をかいて
「ああ…まあ、Bランクくらいになれば…」
ランは驚きの顔で
「ええ…だって、シロッコから武器を貰って使い熟しているんでしょう? だったらSランクじゃあないの?」
レイは無限収納ボックスからシロッコから貰ったエネルギー剣アラクモの両手剣を取り出して
「ええ…これを使い熟しているからSランクっておかしいでしょう?」
ランが手を伸ばして「ちょっといい」とレイの両手にあるアラクモの両手剣を握り
「えええ…だってこれを使い熟せるのはSランクじゃあいとムリよ」
「えええ?」とレイは疑問で首を傾げる。
もの凄く便利な剣を貰った程度なのに、そんなに凄いの?と…
ランが
「シロッコが造る武器は、Sランクしか使えないように出来ているわ。だから…」
レイが困惑して
「どういう事ですか?」
と、疑問を聞こうとした時に
「キミが、レイ・フィリックス・神崎さんかね」
と、別の男性が声をかける。
シロッコがその男を見ると睨み
「テメェか、ゴミが!」
と、口調が荒く物騒になる。
レイは、シロッコと男性を見る。
男性は五十代くらいで、キッチリとしたスーツを纏っている。
いかにも上役という感じに見える。
男性は感情を殺して無表情で
「久しいな…」
シロッコが苛立ち顔で
「オレ等の仲間や友人達を皆殺しにしたクソが…話を聞くだけでも、空気が腐る」
それにランは辛そうにしている。
レイは、イマイチ状況が分からず見つめるしかない。
シロッコが男に背を向けて、レイの肩に手を置いて
「コイツを絶対に信用するじゃあねぞ。レイ…コイツは、自分の欲望の為に人をコマにしてゴミのように捨てる。上司は悪魔って言葉通りのクソだからよ」
と、その場から離れて行った。
ランはお辞儀してシロッコに続いて行く。
レイは呆然としていると、男性が
「初めまして、私は…ダイアード・ハリス…ギルド・エクスのギルドマスターだ」
レイは驚きを向ける。
「ギルド・エクスのギルドマスターですか…」
ギルド・エクス…数万人近いソルジャー達を束ねる多国籍の巨大ギルドだ。
ダイアードがレイに
「シロッコの言う通りだ。私を信用しないで、自分が使える何かに使えれば…利用すればいい」
と、告げる言葉に…悲哀が。
そして、ダイアードはレイを連れて受付ではなく、とある仮設の建物に導く。
そこには、多くのソルジャー達が並び、そのソルジャー達が囲んでいる四人の女王達がいた。
四人の女王。
ルリ・ソン・ルーナ
テイア・リー・アース
サラ・アメリス・カイゼル
アルラ・カイゼル・白皇
四人の女王の隣には、その女王に従うSランクのソルジャー達が付いている。
「え?」とレイは、どうしてこの場に呼ばれたのか…分からなかった。
だから
「あ、失礼しました」
と、帰ろうとする。
場違い、いや、自分がいる世界ではないと…察して。
王座のような豪勢なイスに座るサラが
「勝手に帰ろうとするな」
レイの前をSランクのソルジャー達が止める。
えええ…とレイの困惑は強くなる。
レイを案内したダイアードがアルラの隣に来て、プラチナブロンドのアルラが
「お父様、ありがとうございます」
ダイアードが
「やはり…シロッコが付いたが、シロッコから剥がすには、シロッコから拒絶されている私が適任だからな」
レイは、どうすればいいのか分からず、困惑で周囲を見ていると、サラが立ち上がってレイに近づく。
180センチのレイと同じ身長のサラが
「こっちへ来い」
と、レイの右手を握って引っ張る。
レイは、何かが入った感触がしてサラの手を振りほどく。
その反応に、サラ、ルリ、アルラ、テイアが視線を交差させる。
サラが瞳を細めて
「なるほど、そこまでの深度に達しているとは…」
レイは困惑が更に進み黙ってしまう。
アルラが近づき
「レイ・フィリックス・神崎さん。アナタを…我々の元へ入って頂ける為の交渉を」
ドンと入って来た入口を叩くシロッコと、隣にジンが並んでいる。
シロッコとジンは凄まじい顔だ。
サラがシロッコとジンを見つめて
「シロッコ、ジン、彼は…」
ドンとシロッコが地面を踏みしめると見えない威圧が全体を包む。
それにレイとシロッコにジン以外の全てが圧されて下がる。
二人の後ろからゴウ会長が姿を見せて
「このような勝手、見過ごせませんなぁ…法を守らないというなら…こちらも相応の…」
全体が沈黙すると、シロッコがレイに近づいて
「行くぞ。受付は、こっちだ」
レイは、シロッコに連れられる。
あ、面倒事に巻き込まれるのを…シロッコとジンが…
それだけは分かった。
二人に連れられて、レイは無事に受付を行う事が出来た。
受付を終えたレイが、シロッコとジンに
「あの…ありがとうございました」
シロッコは笑み、ジンが
「まあ、ああ…いう面倒な事はある。しかし、シロッコ」
と、シロッコを見つめて
シロッコが
「すまん。苛立ってな」
ジンが溜息を漏らして
「とにかく、無事にランクの再審査が終わるまで、オレ達が付いてやる。ランクの再審査に集中すればいい」
レイは肯き
「はい」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、驚きの審査官