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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
ディオスと挑戦者達
108/1107

第107話 曙光国の少年

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオスの日課の一つであるフェニックス町の人達と共の訓練に曙光国から少年が来た。

名は暁 一刀。少年はディオスとの勝負を望み、尋ねて来た。

ディオスを倒して名を上げようとする闇討ち卑怯者達とは違い、正々堂々と来た一刀にディオスは感激したが、一刀には…


 ディオスはその日、屋敷の傍にあるフェニックス町の人達と共に武術の訓練をしていた。

 ディオスの妻、クリシュナやクレティアは武術の達人である。

 クレティアは剣聖、クリシュナは様々な武術に精通。

 フェニックス町の人達はそれを頼って習いに来ている。

 主にメンバーは、魔物を狩るハンター達ギルド関係者で、月に二・三度ほど、このような集会をディオスの屋敷でやっている。

 町の人達と共に、訓練していると、それを見ていたティリオやリリーシャも加わってくる。


 ティリオは

「パパ! これ! うんうん」

と、一歳で喋るようになり、棒きれを振って剣の真似事をする。


 リリーシャは

「わーーーい」

と、町の人達と一緒に追いかけっこだ。

 あんまり、剣に興味はなく、クリシュナの教える柔術の混じった合気道の技を習いたがる。

 まあ、投げるに力が要らないからね。

 町の人と遊びながら、合気道や柔術の手首を押さえる技をしたりする。

 偶に、本当に決まるから困るが…。


 そんな感じで、ティリオとリリーシャは武術になじんでいる。

 まあ、産んだ妻達が超武闘派だから、その血が入っているので当然だろう。


 そんな町の人達との、お喋り会がのんびり過ぎていると、そこへ、一人の少年が近付く。

「ディオス・グレンテル様…」

と、ディオス達に町の人達がいる一団に少年が来る。


「んん?」

 ディオスは少年を見つめて

「どちら様でしょうか?」


 十代後半の少年はお辞儀して

「はじめまして、曙光国より来ました。暁 一刀と申します」


 一刀の身なりをディオスは足下から頭の上まで確認する。

 黒髪の人族の少年で、黒目の落ち着いた服装、腰には一本の刀が帯刀されている。

 まあ…銃刀法違反というは、バルストランにはない。

 兵器規制法という、兵器に通じる武器は、個人では持てないとする法律はある。

 刀はどちらかというと…装飾品に近い位置にある。

 なんせ、魔法シールドが当たり前の世界だ。

 切りつけるだけの前時代的兵器は、意味をなさない。

 まあ、ハンターとか国が認定した騎士とかなら、ある程度の武器、魔導銃系統のモノは持てるけど…それも威力が限られている。

 

 一刀は、ディオスを見つめて

「大変、過分なお願いですが…自分と勝負してください!」


 ディオスはキョトンとする。


 両脇にいるクレティアとクリシュナは手を合わせて

「珍しいーーーー ダーリンに堂々と挑むなんて!」

「ええ…素晴らしい心構えだわ」

 二人は感心する。


 フェニックス町の人達も

「すげーーーー 堂々と挑んでやがるぜ。根性がある!」

「見上げた根性だぜ」


 一刀は戸惑いを見せ

「え…その…こんなお願いをするのですから…。迷惑ではないかと…」


 クレティアが一刀の脇に来て肩に手を置いて

「あのね…偶にダーリンに不意打ちで勝とうとするバカな輩がいたりするのよ」


 クリシュナが

「ええ…勝てばいいなんて思っているふざけた連中が前に、子供達を攫って夫に勝とうと考えて実行したけど…。卑怯な手を使う愚か者なんだから、ボコボコにして、警察隊へ引き渡したわ」


 ヒロキが

「オレ等の大英雄に手を出したんだ。当然さ」


 町の人が

「勝負を挑みたいなら。アンタみたいに堂々とお願いすればいいんだよ。そんな根性があるヤツがいなくてねぇ」


 一刀は戸惑いながらも「はぁ…」と頷いた。


 フェニックス町の人達が一刀を囲み

「この勇気ある挑戦者の少年を胴上げしてやろうじゃあないか!」


「ええええ!」

と、一刀は戸惑いながらも、フェニックス町の人達は一刀を胴上げした。


 わっしょい わっしょい!


「ええ? えええええ!」

 一刀は困惑する。

 

 町の人達に胴上げされる一刀を見つめながらディオスは

「んん…」

 何か見た事があるような気がしていた。


「どうしたのダーリン?」

 クレティアが呼び掛け


「いいや…何処かで、見たようなぁ…」


「後で、色々と聞いたら」



 ディオスは、屋敷の中へ一刀を通すと、広間で

「君は、曙光国の出身だったね? 両親はどんな事をしているんだい?」


 一刀はソファーに座らされ、ディオスの質問に

「その…政府関係の…そう、警察隊に勤めています」

 歯切れが悪い。


 そこへ、レベッカが来て

「お客様…腰にある剣を預かりますので…」


「ああ…はい」

 一刀はレベッカに渡すと、その隣にクレティアが来て、一刀の刀を見つめる。


「これってもしかして…」

 クレティアは一刀の刀を手にして

「鬼一刀じゃあない?」


 ディオスが

「どんな業物か分かるのか?」


 クレティアは刀を抜いて、前に掲げ刃を上にして横から見つめ

「間違いない。鬼一刀よ。刃の先から細かい段の層が見える。この刀は刃こぼれしても層になった段から新たに刃が出てくる、鮫の歯のような構造をしているの。鬼っていう伝説の生き物も歯が取れても生えてくる謂われを貰って鬼一刀っていう超高級業物よ」


 ディオスは一刀を鋭く見つめ

「クレティア…その刀…幾らくらいだ?」


「ダーリン、金貨三千枚は堅いわ」

と、クレティアは告げた。


 一刀が俯き額から汗を垂らす。


 ディオスは鋭く一刀を見つめ

「金貨三千枚『日本円で三千万円』の高級業物を、一介の警察隊の両親が君にあげられるとは思えない…。本当の事を言ってくれ」


 一刀は黙ってしまい俯く。


 更に、そこへソフィア達が来て

「遊びにきたわよーーーーー」

 広間のソファーで誰かと対応しているディオスに気付き

「誰? お客さん?」

と、そこへ近付く。


 ディオスが

「ああ…勝負をして欲しいって正面切って現れてくれた少年なんだ。名は暁 一刀…一刀くんだ」

 ソフィアはその名前を聞いて眉間を寄せて、俯く一刀の顔を見つめる。


 一刀はそれから逃れるように顔を逸らせる。


 ジーとソフィアは一刀を見つめ…。

「ねぇ…この子って曙光国の出身?」


「ああ…」

と、ディオスは頷く。


 ソフィアはゆっくりと顔を離して、厳しい顔をする。

 同伴したナトゥムラとスーギィにマフィーリアも一刀を見つめて、鋭い顔をして


 ナトゥムラが

「おい、ソフィア…もしかして…」


 ソフィアが

「実はね…。曙光国の皇族には四つの系統があるの。暁家、月光家、黄昏家、真昼家の四つがね。その四つの家から、曙光国の帝になる人物が輩出されるのよ…。それでね。その暁家の子の一人が行方不明って連絡を受けたのよ。なんでも、その子が乗った飛空艇がアーリシア行きの便だったらしく。アーリシアの何処かにいないか?って捜索の協力を受けたのよねぇ…」


 一刀は黙り、ただ…顔を隠して俯いていた。

 その反応、正にビンゴだ。


 ディオスは額を抱え

「その…もしかして、行方不明の理由って…オレと勝負をする為に…」

 一刀が縋る様な顔を見せる。


 オウゥ。オフ…。ズバリ、そうなのね…。


 ディオスは、頭を傾け苦しそうな顔で

「一応、家の方には連絡するよ」


 一刀は震え

「その…自分は…オレは…」


 ディオスが肩に手を置いて

「追い出したりはしないから…。大丈夫だよ」

 ディオスはカズキヨを通じて曙光国の皇族の暁家へ連絡してもらった。


『悪いな。迷惑を掛ける』


「いいよ。何か似たような事態を体験した事があるから…」

 そう、アウグストス王子の事だ。


 連絡を終えたディオスは、一刀がいる子供部屋へ来た。

 一刀はアイカと共に、ティリオにリリーシャの遊び相手をしてくれていた。

「悪いね」とディオスは一刀の隣に来る。


 一刀は微笑み

「いいですよ。自分にも弟や妹がいますから…」


「そうか…」

 ディオスはアイカに手を伸ばし

「おいで、アイカ…」


「うん」とアイカはディオスに抱き付く。


 アイカを抱き締める様子に、一刀は微笑み

「その…苛烈な方だと…聞いていましたが…」


 ディオスは眉間を寄せて

「止めてくれよ。そんな狂犬みたいな人間じゃあないんだから…」


「その…数ヶ月前に、バルストラン王都の御苑で六百名を血祭りに上げたとか」


「いやいや! 犯罪者を捕まえる為に制圧しただけだから!」


「和豪の社長からは、凄まじくエグいやり方をして勝利すると…」


「いやいやいや! 根回し! 根回しね! 大人の仕事の仕方をしただけだから」

 ディオスは眉間を寄せて

 本当に勘弁してくれよ。オレはただ、真面目にやっただけだから!



 そう思っているとアイカが

「ねぇパパ、一刀と戦うの?」


 ディオスは眉間を寄せて

「その…まだ、どうなるかは…。まあ、正々堂々と来てくれたんだ。しっかりした場で相手をしてやりたいけどね」


 アイカは一刀に

「パパ、殴ってゴーレムを倒せるくらい強いから!」

 グッと拳を上げて目を輝かせた。


 一刀は驚きを向け

「素手でゴーレムを倒せるとは…アーリシアの大英雄、恐るべしですね」


「おい、君、変な噂を広めないないでよ」

と、ディオスは釘を刺した。



 その夜、ソファーで、ディオスは一刀とソフィアと共に、酒盛りを…まあ、一刀は十七の未成年なのでお茶を出して、一刀の話を聞く。

「自分は皇族の一族の者の中でも、皇族が受け継ぐ神器神具が弱いです。

 それが悔しくて、強くなろうと剣術を磨いていました。

 だから…試したかった。競技という限られた剣術の世界では…何とか色々と出来ました。

 でも現実の戦いは? そう、疑念を持ってしまい。

 その現実での戦いで絶大な力を持つディオス様と…勝負が…」


 ディオスは顎に手を当て

 まあぁ…分からんでもないかなぁ…。

 強さに対してこの時分は憧れがあるよねぇ。

 一刀の気持ちを察するディオス。


 ソフィアが

「あのね、一刀くん。気持ちは分からないでもないわ。君の剣術っていう分野で戦うなら、間違いなく君はコイツに勝てる」

と、ディオスを指さす。


 一刀が疑問の視線で

「本当なんですか?」


 ディオスは肯き

「うん。オレの武術としての力なんて普通くらいに毛が生えた程度だよ。一回も武術で、クレティアやクリシュナ、槍を使うゼリティアにも勝った事がない」

 正直に答える。


 一刀は目を瞬きした後

「自分は全力の、魔法を使うディオス様と戦いたいです」


 ソフィアがフッと笑み

「ねぇ、一刀くん。コイツが魔法を使っての戦法は最低最悪よ。相手の弱点は突くのは当たり前、相手を動けなくする魔法を使って、そこへ集中砲火の魔法を叩き込み、更にゴリ押しの強烈で強大な魔法を叩き込む。本当に情け容赦のない、非道な戦い方をするわ」


 ディオスは渋い顔をして

「戦術的な戦いと言ってくれ」


 ソフィアが

「一刀くんの武術に通じる美しい戦いとは、無縁の戦い方よ。帰りなさい。君の事は色々と調べたわ。剣術の力も、十代の者達の中でも指折りの実力者だって。コイツは、君にある美しさとは無縁だから!」

と、ディオスを指さすソフィア。


 ディオスは嫌な顔する。

 まあ、確かに自分の魔法を使っての戦い方は、実利的な部分が大きい。

 武術という、技法と精神を重んじる世界とは、かけ離れている。

 勝負して、彼の後々の糧になれるかなぁ…。


 一刀はそれでも

「それでも、戦いたいです」

 決意は固い。



 結局、一刀が折れることは無く。

 ディオスの元で預かる事になった。




 そして、ソフィアの外出にディオスは付き合う。それに一刀も同行している。

 ソフィアが町を歩き、店を見ている後ろを、ディオスと一刀が続き、ソフィアの脇をナトゥムラにマフィーリアが固めている。背後はスーギィだ。

 そんな五人へ、妙な視線が。

 その視線はディオスに向いている。

 ディオスはフッと笑む。どうやら、何処かで闇討ちを狙っている者がいるらしい。

 それに気付いた一刀は、直ぐに刀を握れるように右手を腰にある刀の柄に置く。


 そして、後ろから息を顰めて剣を抜いた二人が迫るも、ディオスはそれを横見した。

 そう、気付いていた。

 そこで、剣を戻して立ち去ればいいのに、その二人はあろう事か、傍にいた獣人の女性と人質に取って

「動くな! アーリシアの大英雄!」

 そう、ディオスに自制を促す。


 ディオスは見下した嘲笑いを見せ

”フェンリル二式”

と、神格を纏って瞬間移動した。

 フェンリルの何でも喰らう力は、空間までも削り、ベクトと同じ瞬間移動を起こす。


 人質にした男の前にディオスが現れ、男が「ゲ!」と驚く間にディオスは男の剣に触れてフェンリルの喰らい付くしで、剣を削った。


 刃の無くなった剣を男は見て、その首をディオスは掴むと

「ぎやあああああっがあがががががあがああああああああ」

 男は不様な悲鳴を上げて両手両足の関節が外され、その激痛で白目を剥いた。


 両手足が捻れた男を離したディオスは、仲間の男をロックオンする。


 魔獣さえ怯む威圧に、何を血迷ったのか、ソイツは、ソフィアを狙った。

「おらぁぁぁぁぁぁぁ」

 ソフィアに斬り掛かる男。


 両脇にいるナトゥムラとマフィーリアが落ち着いて対応しようとすると、その間に一刀が立つ。

 一刀は、腰を落として刀の柄に手を置く。

 賊の男が一刀に斬り掛かる。


 一刀は抜刀する。

 一刀の早すぎる抜刀は、光の波を生み出す。

 早すぎる抜刀によって残像を空に浮かべ、それが光の波を作り、そして、一瞬で賊の男の剣を切断、賊の男は刀身が切れた柄だけの剣を握る。

 金属が金属を切る事はある。

 だが、それは正確な加工が出来る事が前提。

 変な方向の力が金属同士に掛かると、お互いに潰れる。

 一刀の正確無比で美しい刀の流れによって刀身が切断されたのだ。


 賊の男が、柄を投げ捨てナイフを持って一刀に向かった。


 一刀は呼吸を整え、賊の男と交差した。

 円を見た。

 一刀の早すぎる剣筋に男が光の円を伴って吹き飛び、その場に転がった。

「峰打ちです」

 一刀が告げて、刀を仕舞う。

 その動作一つ一つに美があった。


 ディオスは惚れ惚れする。

 自分のように、ただ圧倒するだけの力ではなく。美を伴った美しい戦い、武術というのは、こういう事か…そう痛感した。


 ソフィア達が帰った翌日、ディオスは妻達の訓練を受けていると、一刀がその場にいた。

 一刀は妻達から手解きを受けている。

 クレティアもクリシュナもゼリティアも、一刀の実力を見抜いていた。

 武術達人級の三人は一刀のこれまでの努力を分かっている。

 クレティアが

「ダーリン、一刀の手を握ってみてよ」


 ディオスは一刀と握手すると、その手はとても硬い。鉄のようだ。

 その手を見ると、剣を必死に努力した証がある。

 固い鉄のような手の平に、指先には剣のタコがある。

 もの凄く努力して来たんだなぁ…。

 ディオスはシミジミ思った。


 そして、奢るわけでもなく真面目で優しい。

 アイカやティリオ、リリーシャ、ゼティアの相手を楽しそうにしてくれる。

 直ぐに子供達とも馴染んだ。


 夜、一刀の両親、祖父から魔導通信機で連絡があった。

『申し訳ありませんグレンテル様』


「いいですよ」


『直ぐに迎えを寄越しますので…』


「んんん…その…当分の間、ウチで預かってもいいですか?」


『え…でも…』


「その…本人も並大抵の覚悟では来ていませんし。帰りにくいでしょう。それに、息子や娘達とも馴染んでいます。当分は…」


『そうですか…分かりました。もし、ご迷惑がありましたら、直ぐに…』


「ええ…」



 ディオスは、クレティアとクリシュナにゼリティアの三人と一緒に居室で晩酌をしていると、ゼリティアが

「ディオス。一刀の願いを叶えたいと思っているのだろう」


「あ、バレてた」

と、ディオスは微笑む。


 クレティアが

「ダーリンの顔にそう書いてあるよ」


 クリシュナが

「良い子だものね」


 ディオスは

「何とか願いを叶えてやりたいよ」


 ゼリティアが

「ちと…武家であるレディアンと相談してみては、どうじゃ?」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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