幽玄の王 第48話 交渉達
次話を読んでいただきありがとうございます。
レイに提示される内容に、レイは…そして、ジャバラスの事は?
レイは、ひしめく居間で、ギルド協会の会長とソルジャーのトップ達の冷たいやり取りの間にいるしかない。
ジェインは、聞いた事が無い国家予算に近い報酬を提示する。
鵜飼担当官は、道理や法、倫理、無論…ギルド協会に所属する事の特典を提示する。
その全ては、レイを引き抜く為に提示されている。
今までに聞いた事も見た事もない条件に、レイ自身の事とは思えず無反応でしかない。
レイが
「自分は、何の変哲もない。Eランクなのですが…」
ジェインが立体映像の端末を取り出して、惑星級の超機神、サルヴァード・セロのゼノギアラスの映像を出して
「あのような事をして、Eランクとは…どういう言い訳なのでしょうか? もう、レイ様は、Eランクではなく、特別な存在というランクであるEX級では?」
「ええ? ええ…」
と、レイに自覚はない。
精々、自分には、ちょっと面白い装置が手に入った程度の感覚でしかない。
無欲、野心も野望もない。それはレイの良い所だ。
それ故に、横暴や暴威に走る事はない。あくまでも自分は、何処にでもいる誰か…という感覚を持っているが故に、強大な力を手にしても、それで世の中を変える事も、良くする事もない。
それは別の力であって、自分の力はソルジャーとして楽が出来る。
それしか思っていない。
レイは提示される超好条件を前にして、何も現実味がなく、受ける気もない。
ただ…
「あの、もし…これを叶えて頂けるなら…どこでも構いません」
ジェインとオウガは、レイに身を乗り出して
「それは!!!!!!!!!! どんな条件ですか!」
「是非、それを聞かせてくれ!!!!!!!!!!」
ジェインとオウガの鼻息が荒い。
レイは引き気味に
「ジャバラスと…戦える方法を知りたいです」
レイに関して全て調べている全員が察した。
ルリが
「それは…つまり、レイ様のお母様を助ける為に…」
レイは肯き「はい」と…
全員が黙ってしまう。
鵜飼担当官が
「ジャバラスは別格だ。貴方でも勝てないでしょう」
レイは、暫し視線を落とした次に真っ直ぐとした光を宿した瞳で
「それでも、ぼくは…自分は戦いたい。無謀と言われようとも、無茶だと罵られようとも…」
レイの瞳の真っ直ぐさに決意が固いのを知る全員。
ここで、騙して引き入れる事もできる。だが…それはいずれウソだった時に恐ろしい危険性に変わる。
ゴウ会長が正直に
「残念ですが。ここにいる全員には、出来ない事です」
レイは、辛そうに瞳を閉じて
「そうですか…今日は、ありがとうございました」
と、頭を下げる。
レイを引き入れる交渉は終わってしまった。
レイは一人、お茶を片付けていると
「やっぱり、翼のグルファクシさんに相談するしか…」
色んな偉い人達が来たのに、それを叶えてくれる方法は誰も持っていなかった。
翼のグルファクシの所へ相談した…としても…
気分が重くなるレイだが、それでも望みがないよりはマシとして、翼のグルファクシへ、エンジェルリンクス社の本社がある惑星の軌道エレベーターへ向かった。
◇◇◇◇◇
レイは、エンジェルリンクス社の軌道エレベーターに来ると、直ぐに会長室へ通された。
連絡もアポもしてないのに、当然のように通してくれた。
会長室に来ると、翼のグルファクシことエンジェルリンクス社の会長オーズが客用のソファーにいて、お茶まで用意して待っていた。
「やあ、ようこそ! レイくん」
レイはお辞儀して
「すいません。急な訪問を受け入れて貰って感謝しています」
グルファクシは肩をすくめて
「いいって事さ。こちらも用事が終わったばかりでね。タイミングが良かった」
レイは少し難しい顔で
「実は、相談がありまして…」
グルファクシは肯き
「どんな相談なんだい?」
レイは、グルファクシにジャバラスを倒したいという相談をした。
それを聞いたグルファクシが難しい顔で腕を組む。
それにレイは
「やはり、できない事なんですか?」
グルファクシが「んん…」と唸り
「封印については、何とかなるだろうし…レイくんが入って倒せるなら倒せば良いが…その後が問題だ」
レイは真剣な瞳で
「その後…とは?」
グルファクシが
「封印されているジャバラスは、ロードの九天君主の一人であるのは知っているかね?」
レイは「はい」と頷く
グルファクシが
「おそらくだが…ジャバラスを倒すと膨大なエネルギーが放出される。それは…このコーレル時空を吹き飛ばす程のね」
「え!」とレイは驚く。
グルファクシが
「九天君主…ロード達については、知っているのは…私が話した。私達を作った王の…」
レイが
「はい、その王から前の王が作ったと…」
グルファクシが背もたれにのしかかり
「そう。五百年前だ。その頃、コーレル時空は、とある強大な存在というか組織の支配下にあった。カレイド…と言われているが。実際は、その強大な存在、覇遵とされる絶大な超越存在をトップとした。数多の時空連合の一つにコーレル時空はいた」
グルファクシがロードの九天君主に関する簡単な話をしてくれる。
覇遵とされる超絶な超越存在が、同じように超越存在を作るシステム、超座を造り、それによって九つの強大な存在、九天君主という者達を造り、それによってカレイドという時空連合を支えていた。
だが、ある日、覇遵が消えた。
原因は詳しくは伝えられていないが、とにかく、覇遵が消えて…カレイドは大混乱となり内戦が勃発、時空連合はバラバラとなり、九天君主…ロード達も大半が死に、その超座というシステムも何処かへ消えた。
ロードの死に際は、体内にある莫大なエネルギーの放出によって、宇宙が一つ消し飛ぶという大惨事も残した。
グルファクシが
「だから、現れたロードのジャバラスを破壊ではなく、封印する事で活用する事にしたのだよ」
レイが驚きの瞳で
「活用?」
グルファクシが肯き
「ジャバラスが封印されている六重ブラックホールの大封印は、超空間ネットワークの奥深くに保管されて、その保管されている隔絶空間へエネルギーを注ぎ込むと、封印されたジャバラスが数十倍のエネルギーに変換して放出する。一種のエネルギー増殖炉として今も活用されている」
レイは驚きで
「そんな事に…知らなかった」
グルファクシが溜息の後に
「公開されていない情報だ。知らなくて当然」
レイは顔を押さえて焦る気持ちを抑えつつ
「じゃあ、もし…ジャバラスを倒したら…」
グルファクシが難しい顔で
「そのエネルギー増殖炉の力が消えて、コーレル時空は大混乱となるだろうなぁ…」
レイは額を抱える
そんな事になっていた何て…じゃあ、ギルド協会の会長も、あの時に来た人達も方法がない訳じゃあ無くて、このエネルギー増殖炉を失うのが…
「どのくらいの割合なんですか? そのエネルギー増殖炉がこの時空を支えているのは?」
グルファクシが「んん…」と唸り
「数字的には三割だが、実質は四割に近い」
「えええ…」とレイは驚くばかり
実質、このコーレル時空を支えているに近い。
自分の母親を助ける為に、ジャバラスを倒しても…その後のエネルギー問題が…
考え込んでいるレイ。
それにグルファクシが
「すまんの。ワシには、ここまでしか出来ない。ワシよりシロッコとジンに相談した方が、道筋が現れるかもしれんぞ」
レイが顔を上げて
「何故ですか?」
グルファクシが
「ジャバラスを封印する六重ブラックホールの大封印とエネルギー増殖炉としての活用を造ったのはシロッコとジンだからな」
「えええええ!」とレイは驚くのであった。
そして、レイはシロッコとジンに相談する為に、先にシロッコの所へ行った。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、シロッコへの相談