幽玄の王 第45話 杖のガルガンチュア 終わり
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杖のガルガンチュアとの衝突、レイはついに…
信じられないエネルギーの奔流に呑み込まれたレイ。
「う、ぐああ」
と、全身が引き裂かれるような衝撃が襲いかかる。
ガルガンチュアは、全力を持って本気の殺意でレイを殺そうとした。
レイは願う
「ここで、終わる訳には、いかないんだぁぁぁぁぁぁ!」
レイのセイントグリッドにあるメビウス・リアクターから…これを超えるエネルギーを取り出そうとしても、間に合わない。
このまま…あの時…王の力を授かった瞬間を思い出す。
死に抵抗していた時、もう…手はないのか?
「いいや。ここで諦める訳にはいかないんだ!」
人生には何度も諦めないと行けない瞬間は多い。
だが、生きる事に諦めてはいけない。
どんなに醜くとも、どんなに無様でも、生きる事に諦める事はない。
レイには願いがある。望みがある。命をかけても叶えるべき願い。
「絶対に家族を、母さんを取り戻す!」
機神ゼクティオンを生じさせた聖帝ディオスの仕掛け、レイのマキナに仕組んだゾディファール・セフィールが超高次元とレイを繋げる。
そして、レイの肩を叩き
”いきなさい”
「うああああああああ!」
レイは覚醒する。
全てを完全消滅させる閃光の中から、それをトリガーに発動する存在が現れる。
「な、何だと…」
と、ガルガンチュアの惑星級の超龍は驚愕する。
宇宙を半壊させる程のエネルギーを掌握する存在。
閃光の中から蒼く光輝く鎧の躯体を出現させ、燃えるような蒼い外套をなびかせ、大地のような翼の脚部を伸ばす。
ガルガンチュアがその正体を告げる
「サルヴァード・セロ…だと」
ガルガンチュアの惑星級の超龍より、少し大きい全長二万キロの蒼い鎧の躯体の機神、レイのサルヴァード・セロ…ゼノギアラス。
レイは、王と同じ入口に至った。ハイパーグレートの入り口に来た。
ゼノギアラスのコアにいるレイが叫ぶ
「うあああああああ!」
ゼノギアラスの右手に膨大なエネルギーの光が集まり、それをガルガンチュアの惑星級の超龍へ放った。
惑星級の超龍さえも呑み込む光は、コーレル時空の端まで突き抜けた。
それによって、ガルガンチュアの惑星級の超龍は消失する。
超龍の身体が消えてコアがむき出しになる。
それをゼノギアラスは引き寄せて、巨大すぎる大地のような右手に乗せる。
そこにコアが砕けてガルガンチュアが落ちて跪く。
レイも飛び出してガルガンチュアの前に立つと、ガルガンチュアが
「殺せ。お前に負けた。仕えるつもりはない。殺せ」
俯き跪くガルガンチュアにレイは
「ぼくに従う必要なんてありませんよ」
ガルガンチュアが顔を上げて
「敗北した。それに従え、それが王の遺言だ」
レイが首を傾げて
「その遺言を拒否します。ぼくは、ドミネーターの皆さんを解放します」
「待ってくれ」と剣のグラファラスが、槍のオルフェウスと共に来て
「レイくん、お母さんを助ける為に、私達の力が必要でしょう?」
レイが自分の手を、サルヴァード・セロのゼノギアラスを見上げて
「いいえ、ぼくは、ぼくの力でやってみようと思います。だから…皆さんを解放します」
ガルガンチュアがフッと笑み
「うぬぼれか…」
レイが困った顔で
「困った時は助けてください。それに…」
と、レイは跪きガルガンチュアと視線を合わせて
「アナタが大切に思っている人の代わりには成れない。ぼくは、ぼくだ。アナタの思いは大切にするべきだ」
ガルガンチュアが涙して
「なんて、甘いヤツだ…クソ…」
と、ボロボロと涙を零す。
レイは右手を挙げて
「ドミネーターの皆さん、剣のグラファラス、槍のオルフェウス、翼のグルファクシ、盾のイージス、杖のガルガンチュア、五人は己が成すべき事を成せ! ここに解放する!」
ドミネーター達との連結が切れた。
そこへ急いで最速の宇宙戦艦に乗ってきた翼のグルファクシと盾のイージスが現れて
「ガルガンチュア!」
と、翼のグルファクシが叫び、その後ろに盾のイージスも一緒に走ってきた。
ガルガンチュアが立ち上がる。
「皆、久しぶりだな」
と、ドミネーター達の五人がそろう。
翼のグルファクシが
「そうだな。で、ガル…どうするつもりだ?」
ガルガンチュアを四人が見つめる。
ガルガンチュアが穏やかな顔で
「どうするも何も…オレ達は、オレ達が成すべき事を成す」
剣のグラファラスが
「それは…つまり」
ガルガンチュアが右手を伸ばして
「エルダーサインの復活だ」
それを四人が聞いて微笑み、盾のイージスが
「再び、一緒にできるのね」
と、ガルガンチュアと同じく右手を伸ばして合わせる。
翼のグルファクシが
「そうか…その決断、良し」
槍のオルフェウスが
「ええ…また、よろしくね」
ドミネーター達の五人は、お互いに右手を伸ばして五芒星のように形を作り光で繋げる。
二百年前に失われた。この世界を守り維持する力が復活した。
別れバラバラになったドミネーター達が戻り、世界の平安の為に…。
それをレイは見届けた。
そして、レイは、サルヴァード・セロのゼノギアラスを見上げて
「これ…どうしよう…」
出現させたまでは良いけど…しまえない。
◇◇◇◇◇
ガルガンチュアの件が終わり、レイが出現させたサルヴァード・セロのゼノギアラスは、ドミネーター達が作ってくれた特殊な超空間ネットワークに保管される。
レイが必要な時に何時でも取り出せるが…全長二万キロの存在を使う場所なんて…
ドミネーター達は、レイから解放されて…翼のグルファクシは何時ものように大企業エンジェルリンクス社の会長をしつつ、レイの手助けをする事に。
ガルガンチュアは、イージスと共にひっそりとアイテムを作り売る店を一緒にする事になった。
イージスとガルガンチュアは、グラファラスとオルフェウスと同じ関係だった。
グラファラスとオルフェウスの二人は…
「お隣さん、よろしくね!」
とオルフェウス達がレイ達のいるマンションの隣の部屋に引っ越して来た。
グラファラスとオルフェウスの夫婦は、レイのお隣さんになった。
妹のスイも姉のアスカも、二人とは気が合うし、お世話にもなっていた。
早速、レイの家でお隣さん歓迎のパーティーが行われた。
そして、世界は…エルダーサインの復活という快挙で騒がしかった。
エルダーサインの復活によって、エネルギーの問題や、防衛の問題、コーレル時空の全てを繋ぐ超空間ネットワークが向上した。
二百年前に失われたシステムの復活は、更なる発展をもたらすだろう。
そして、その根幹にアクセスできる者は三名。
その一人にレイがいて、シロッコとジンも。
だが、その根幹アクセス権に関しては、秘匿にされた。
何かの配慮によって、根幹アクセス権の話は、世間に出てこなかった。
そして、レイは本来の目的を
「後は母さんを…」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アナタに幸せが訪れますように…
次回、次回より新章が始まります。