幽玄の王 第30話 若葉
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別の話で…
レイが何時も相談相手になって貰っている小宮さんこと、アルス・ラード・小宮には娘がいる。
レイの妹スイと同級生で、同じ学校に通う友人だ。
名を若葉・ラード・小宮で、上に兄が二人いる三兄妹だ。
若葉は…
「アタシもダンジョンに行くから!」
マルスは兄アルスと一緒に帰って来て早々に、家族の問題に巻き込まれていた。
若葉の上の兄の二人はソルジャーだ。
ランクは父親のアルスと同じB級で、父親とは違うギルドに所属している。
「いい加減にしろ! 若葉、お前には戦いのセンスはねぇ!」
と、父親アルスは告げる。
マルスも
「若葉ちゃん…止めて置いたがいいよ」
と、巨漢で厳つい筈なのに、もの凄く小さくなってしまう。
若葉は叫ぶ
「私は! ソルジャーになるの! そして! お母さんを助けるくらい強くなるの!」
若葉の母親は、ダンジョン・マスターだ。
戦闘や資源を採掘するダンジョンではない。
神社やお寺、教会といった、宗教アミューズメントを運営するダンジョンのマスターで、代々、人と交わって代を重ねてきた。
若葉の適性は、母親と同じダンジョン維持や形成であって、ソルジャー向きではない。
それだからといって、戦闘に対して弱いという訳ではないが…不利、有利というモノがある。
高校生になって若葉は、自分の道を自分で決めて歩む覚悟が芽生えてきた。
それは、十分に喜ばしい事だが…若さ故の浅い考えで暴走してしまう。
「若葉!」と父アルスが声を張り
「お父さんは!」と若葉も声を張る。
弟マルスは額を抱えて、端末を手に何処かへ連絡する。
「ああ…リーナ…どうすればいい?」
と、嫁に相談する。
若葉の母親は、五年前のZ級ダンジョンの大災厄、ジャバラスの時にクリスタル症でも軽症な、クリスタル症の汚染型を受けてしまった。
身体の一部がクリスタル症になり、今でもその後遺症で上手く身体が動かせないが、暮らせてはいる。
無論、長期にわたる治療は受けているが…未だに解消されていない。
そんな母親を若葉は、助けたいとして…ソルジャーとして戦う道を選ぼうとしているが…。
若葉には、ムリがある。
そもそも、Z級のジャバラスを倒せる者は…現れていない。
ジャバラスは、とある場所に厳重封印されている。
杖のガルガンチュアと同じく、封印処置されているが…もっと重い。
杖のガルガンチュアは、超空間の中に隔離されている。
ジャバラスは、六重にも展開されたブラックホール達の中心に封印されている。
それは、完全に世界からも時間からも、あらゆる全ての事象から完全に隔離されて封印されている。
全ての事象、存在から封印される六重ブラックホール封印。
それ程までにジャバラスは絶大なのだ。
ジャバラスは、普通のダンジョンではない。
ダンジョン達が生まれる前の時代、最悪にして最凶の皇から生まれたロードという存在だ。
ロードの力は単騎で、宇宙一つを壊滅できる程だ。
レイが生まれたコーレイ時空は、五百年前に他時空と戦争をしていた。
その時に生まれた時空破壊兵器システム、それがロードで、九つも存在し、それが九天君主と呼ばれている。
その五百年前から二百年後、今から三百年前に、今のダンジョン達やソルジャーのシステムを作った祖の王が生まれて、そして…今のレイ達の時代に続いている。
ロード達は姿を消している。
だが、確実に存在し…そして、それの一つが五年前に突如として現れて…クリスタル症や大損害を与えて、封印された。
目的も動機も、何かも分からず。
そんな理不尽と戦いと思う若葉の気持ちは分からないでもない。
だが、無謀と挑戦は別だ。
父アルスは、娘である若葉の無謀に頭を悩ませ
アルスの弟にして、叔父さんのマルスも頭を悩ませる。
そんな時、提案したのは、マルスの嫁のリーナが端末の通信越しに、若葉に提案した。
「じゃあ、お試しでソルジャーをやってみるのは、どう?」
若葉は、その提案に乗った。
ソルジャーが、どんなモノか?を知る機会になる。
マルスの嫁リーナは、ソルジャーがどれ程に大変かを知れば…考えが変わるかもしれない…という思惑がある。
そこが妥協点として、叔父マルスが付きそうという形で、若葉のソルジャーのお試しが始まった。
兄アルスは
「すまん。マルス…」
マルスは呆れた顔で
「いいよ。兄貴…」
ソルジャーとして有能な人材を輩出するアルス。
他国のS級ソルジャーとして超有能なマルス。
そんな二人も、娘で姪っ子のワガママには勝てなかった。
「はぁ…」とアルスとマルスは溜息を漏らした。
その後ろには、超ノリ気の若葉がいた。
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次回、杖のガルガンチュア その2