幽玄の王 第24話 盾のイージス 中編 捜索
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盾のイージスの捜索中にディオス達と出会ったレイ達、そしてお互いに…
レイ、ジン、シロッコ、ディオスにナトゥムラとティリオの六人が並ぶ前には、エネルギーのロープで拘束された四人が転がっていた。
蓑虫のようにエネルギーロープで巻かれる四人は、ロアデウスの一団だ。
そのロアデウスの装備は、ディオスが持って来た対ロアデウス専用の封印槍にて使用不可能にされた。
蓑虫のようになっている四人を前にジンが
「さて…どう、話を聞き出そうか?」
シロッコが
「じゃあ、オレが使うダークプリズンを使おうぜ」
レイが
「なんです? そのダークプリズンって?」
シロッコがポケットから黒い球体を取り出して
「この中に四人を入れるんだよ。こいつは…時間と空間が無限に圧縮された領域で、その中に放ると…」
と、レイを見るとレイが分からないような視線だったので、説明を省く事にする。
「要するに、もの凄く時間の経過が遅くなる空間で、一秒が百年に感じるくらいに長くなる領域なんだよ」
レイが考えて
「そんな、一秒が百年になる場所に放り込むと死んでしまうのでは?」
シロッコが
「大丈夫だよ。法則性をいじっているから…飢え死にもしないし、病死もしない、老いもしない」
レイが首を傾げて
「そんな所に放り込んでも自白するとは思えませんよ」
シロッコが
「拷問ってのは非効率だし、拷問された恨みでウソの情報を口にする可能性が高いんだよ。実際、古い時代の戦争じゃあ拷問によって得られた情報がウソばかりで、大損害を受けたって事例は多くある。そこで、これなのよ」
と、シロッコがダークプリズンのアイテム球を掲げ
「この中に入ると、死なない老いもしない、もの凄い時間の経過が起こって、ずっと孤独な地獄が続く。そうなると…人間はどうなると思う?」
レイが首を傾げて
「分かりません」
シロッコが得意げな笑みで
「べらべらと聞きたくもない自分の全てを喋り出すのよ。孤独で頭がおかしくなって判別も分別も出来なくなって、全てを言ってしまう」
レイは「えええ…」と本当に?という疑問の顔だ。
ジンが
「効果は織り込み済みだ。実際、自分も見た事がある」
シロッコが
「傷つけない尋問、拷問もしない。まさに人道的ってヤツだ」
ディオスはシロッコが持っているダークプリズンのアイテムを凝視していた。
隣に並んでいる息子のティリオが
「父さん、欲しいの?」
ディオスが顎を摩って
「ああ…是非とも…」
聖帝ディオスは、珍しいアイテムを取得して研究するのが楽しみなので、目がない。
シロッコが四人に近づき
「じゃあ、やってみますか…」
と、四人をダークプリズンへ入れた。
掃除機がゴミを吸うように四人が片手サイズのアイテム球に入った。
シロッコは、アイテム球をジャグリングで回しながら
「さて、三秒後に…どうなるかなぁ…」
と、三秒が過ぎて、アイテム球から四人の男達が現れる。
「あああああああああ」
「らっさがわがわがあ」
「っsがわがわががg」
「っっっっっっっsて」
錯乱した四人が出て来た。
シロッコが四人に近づき
「よう。憶えているか?」
四人がシロッコに視線を合わせてしがみつき、本当に全てを喋った。
その後、四人は警察へ逮捕されたが、素直に全てを話しているらしい、大泣きしながら…
◇◇◇◇◇
レイ達六人は、お店の広いテーブルを囲んで話し合っていた。
お店の料理が運ばれてテーブルに置かれる。
レイが
「まさか…ディオスさん達も絡んでくるなんて…」
ディオスが微笑み
「ああ…そうだ。こっちの紹介は、まだ、だったね」
と、ティリオを示し
「息子のティリオだ」
ティリオが頭を下げ
「初めまして」
と、顔を上げた次にレイを見る。
レイがティリオと視線が合わさった瞬間、何か…静かな風が通り抜けるような感覚を受けた。
「え?」
と、レイは思わず声にしてしまう。
それにティリオは、僅かに顔を変えた次に微笑み
「父さんと似ていて、よく間違われるんですよ」
レイが
「ああ…そうですね。そっくりですね」
その誤魔化しにレイは乗った。
運ばれた食事を口にしてシロッコが
「しかし、聖帝ディオス様とその跡取り、聖帝の後継ティリオ様が来るとは…」
ジンが咳払いして
「んんん、あまり大声で言うな…シロッコ」
シロッコが笑み「悪い」と口を閉じるように料理を食べる。
聖帝ディオスが
「我々は…ロアデウスを追っている」
ナトゥムラが
「ロアデウスの技術は、我々の時空が発祥だ。いわば…拡散してしまった悪い技術だ。それを…」
ジンが
「それを回収する為に動いている…と」
ディオスが
「理解が早くて助かる。協力を共にしてくれるなら…こちらとしても報酬を」
シロッコが料理を呑み込み
「いい、むしろ…アンタ達みたいな強力な助っ人が加わってくれるなら、こっちが報酬を払う側だ。そうだ! これが欲しいって言ってたよな」
と、ダークプリズンのアイテム球を取り出して
「これを報酬って事で…」
と、ダークプリズンをディオスへ投げると、ティリオに行ってしまいティリオがキャッチする。
ディオスが
「良いのか? 貴重なアイテムなのだろう?」
シロッコが
「いいって、素材を集めて、また造ればいいさ」
ティリオが受け取ったダークプリズンを両手にすると、ダークプリズンを凝視している。
この…力の反応…
ディオスがティリオの変化に
「どうかしたのか?」
ティリオがハッとして
「ああ…こんな急に渡されて…驚いただけだから、父さん」
ディオスが肯き
「そうか…」
ナトゥムラが
「じゃあ、協力関係の契約は成されたって事で」
シロッコが親指を立てて
「オッケー。オレ達は囚われた盾のイージスの救出、アンタ達はロアデウスの回収。それを成すために協力するって契約で」
レイが
「ディオスさん。色々と何時もありがとうございます」
ディオスが微笑み
「いいさ。こういう事も面白い」
◇◇◇◇◇
休息のホテルの部屋で、ディオスが息子のティリオに
「ティリオ、レイくんは…」
ティリオがソファーに座って
「後少し、多分、自力で…」
ディオスが溜息を漏らして
「そうか…ティリオや私の力添えは必要ない…と」
ティリオが
「父さん、シロッコさんから貰ったアイテムなんだけど…」
ディオスが近づき
「どうしたんだ?」
ティリオが難しい顔で
「僅かにオージン様の力を感じた」
ディオスが瞬きして
「オージンの関係者なのか? 彼は…」
◇◇◇◇◇
レイは、シロッコとジンの三人で同室だ。
シロッコがソファーに座ってボリボリとお菓子を食べている、ジンはベッドで横になり静かに端末で読み物をしている。
非常に二人はリラックスしている。
多分、何度か一緒に仕事をしているのだろう。
ロアデウスの一団を押さえた時に見せた圧倒的な戦闘力は、明らかに自分より上だと…
レイが
「あの…お二人のソルジャーのランクは?」
シロッコが
「ああ? オレ? D級」
ジンが
「私もD級だが…周りからはデス級のDと言われている」
シロッコが不満そうに
「ケンカを売ったらS級でも殺されるだろうから、デスのD級って言われていて、不満だわ。オレ達は戦闘兵器じゃあねぇ」
ジンが笑み
「私とシロッコはS級越えしそうだったらしいが、とある事件での命令違反を起こして、降格された」
レイが
「とある事件って?」
シロッコが
「バカなトップがムチャクチャな命令を実行しようとして、反対して参加する作戦から逃げたんだよ」
ジンが
「ソルジャーなら、ガルガンチュア攻略作戦というのを聞いた事があるだろう」
レイが
「あの二年前の…自分の地域ではないですけど…封印された危険ダンジョン攻略の作戦で、大失敗して…多大な犠牲者が出たっていう、あの作戦ですか?」
シロッコが皮肉な笑みで
「バカな指揮官がムチャクチャな作戦と計画を立案して、オレとジンはそれを拒否して参加しないつもりだったのに、ムリヤリに加わっていて、知るかボケって逃げた」
ソルジャー達の中でも、ムチャクチャな作戦で失敗した…と有名な事件だ。
レイが
「S級のランクを捨てるほど…ですか?」
二人の実力なら参加していたとしても生き残れた筈だ。
ジンが笑み
「ある意味、ランクというモノに嫌気も差していたし…ちょうど良かったさ」
シロッコが笑み
「そうそう。ランク落ちした事で好き勝手に好きなダンジョンを攻略できるからな、万事塞翁が馬ってヤツさ」
ジンが溜息を漏らして
「そのつもりだったのに、厄介なヤツがねぇ…」
シロッコが
「シンラ国のXX級、テイアだろう。お前に惚れているんじゃあねぇ?」
ジンが
「お前こそ、彼女…ランの事は?」
シロッコが笑み
「アレは、弟子であり妹みたいなもんさ」
ジンは
「オレの場合は、面倒な監視者だ」
レイは色々と察する。
それと同時に、二人の実力は本来は…XX級の…
でも、二人から偉そうな感じもしないし、親しみやすい感じがした。
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次回、盾のイージス 潜入