幽玄の王 第19話 槍のオルフェウス 後編
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槍のオルフェウスと戦うレイだが…その本心は…
無限のような数の槍のモンスター達が出現する。
地上は槍を持つ鎧人の騎馬モンスター達
空は槍を備える竜のモンスター達
そして、幾つもの槍を備える空中戦艦のモンスター達が現れた。
それを指揮するのは槍のオルフェウス、女性型の鎧人のモンスター。
「いけーーーーー」
と、槍のオルフェウスが叫び、無限のような数の槍のモンスター達が突進していく。
それを迎え撃つのは、セイントグリッドのレイと剣のグラファラスによって召喚された剣のモンスター達。
剣を持つ騎馬隊のモンスター達
剣を持つ鎧巨人モンスター達
剣の形をした剣の空中戦艦のモンスター達
その数、槍のオルフェウスの軍勢と同等。
槍と剣のモンスターの軍勢が、槍のオルフェウスの世界で果てしなくぶつかる。
その中をセイントグリッドのレイが駆け抜ける。
前を邪魔する槍の竜達を粉砕して進むセイントグリッドのレイ。
レイが目指すのは槍のオルフェウスだが…多くの槍のモンスター達に邪魔されてたどり着く事が出来ない。
一緒に付いてきたミンは、剣のグラファラスとその護衛の剣のモンスター達に囲まれて守られるが、そこへは槍のモンスター達が襲ってくる事はない。完全に相手にしていない。
ミンは、あまりにも常識離れした戦場に黙って固まるしかない。
剣のグラファラスは
「いずれは…彼女に…オルフェウスに届くか…」
セイントグリッドのレイは、槍のモンスター達に邪魔されつつも着実に槍のオルフェウスへ近づいていた。
雪崩のように迫る槍のモンスター達をセイントグリッドのレイは突き破って、槍のオルフェウスの前に来ると
「ほう…腕は立つか…」
と、告げると同時に光の流星の如き一撃がセイントグリッドのレイに迫る。
セイントグリッドのレイは、それを両手にある剣を盾にして防ぐが、軽々と剣が砕けて槍がセイントグリッドの胸部と打ち付ける。
強烈な衝撃がセイントグリッドの内部にいるレイを襲うも、レイは無意識に後ろにバック飛びして、衝撃を相殺させる。
槍のオルフェウスは目を細めて
「ほう…勢いを殺す術を持っているとは…」
後退したセイントグリッドのレイは、ギアをレッドミカエルに変える。
赤い天使のギアになったレッドミカエルのレイは、周辺に剣達を周回させて置き、超音速で槍のオルフェウスに迫る。
槍のオルフェウスは、槍を構えて
「では、演武を始めるとしよう」
レッドミカエルのレイは、自分の周囲へ衛星のように回す剣を握り、槍のオルフェウスへ攻撃する。
超音速の一撃だが、それに槍のオルフェウスは一閃を浴びせて弾く。
レッドミカエルは、超音速で槍のオルフェウスの周囲を飛び、無数に自身を中心に回る剣達を握って攻撃する。
斬りつけ、投擲、剣の流星群を放つレッドミカエルのレイ。
それに槍のオルフェウスが槍を無数に召喚してぶつけて全て弾いた後、レッドミカエルの動きを先読みして、そこへ槍の突貫をぶつけた。
「ぐ!」とレッドミカエルのレイは後退して、地面を握り滑り止まる。
槍のオルフェウスがそれを見つめて
「私は、負けん。絶対にお前のようなヤツには負けん!」
レッドミカエルのレイは厳しい顔をする。
ドミネーター、槍のオルフェウスは強い。
それを離れて見ているミンとマスコットの剣のグラファラス。
剣のグラファラスが
「やれやれ、彼女ならそうか…」
元夫である剣のグラファラスは、元妻である槍のオルフェウスの真っ直ぐ過ぎる性格を知っている。ある意味、頑固で頑なという事だ。
槍のオルフェウスの殺気が膨れ上がり
「キサマのような、女を連れて! かっこいい所を見せたいなんて、愚か者! 断じて認めん!」
『ふぁ?』とレイ、ミン、剣のグラファラスの三人は戸惑いと驚きの声を漏らす。
レッドミカエルのレイが
「あのちょっといいですか? もしかして…ミンさんの事を、ボクの…恋人か何かだと勘違いしているんですか?」
槍のオルフェウスが声を張って
「そうだろうが!!!!!!!!!!」
レイと剣のグラファラスが
「………」
と、黙り。
ミンは気恥ずかしそうにホホをかく。
レイは冷静に
「あの…彼女は、ミンさんは…ボクがやっている事が心配なので、監視に来ただけの人です」
それをミンが聞いて少し悲しそうな顔をする。
ミンの肩に乗っている剣のグラファラスが微妙な顔をする。
槍のオルフェウスが
「ウソだ!!!!!!!!!!」
レイは内心で、えええええ…と困惑する。
槍のオルフェウスが力強く槍を構えて
「キサマも、他の軟弱な男共と同じように…叩き潰して、女の前で恥をかかせてやる!」
レイは、上を見上げた。
槍のオルフェウスがいるダンジョンは、ソルジャー殺しのダンジョンと呼ばれている。
レイは、最初…その理由はダンジョン内にソルジャーを殺す強いモンスターが出ると思っていたが…調べると、ここに人型の強いモンスターが現れてCランク以上のソルジャーに精神的な痛手を負わせて、ソルジャーとして引退させる…ソルジャーを引退させるソルジャー殺しのダンジョンと言われているらしい。
槍のオルフェウスと対峙して全てを察したレイ
つまりだ。
槍のオルフェウスは、女性を連れて来たソルジャーの男性だけを徹底的にマークして、叩き潰している。殺してはいないが、事実上、ソルジャーを引退させる事をやっている。
引導を渡すソルジャー殺し…だと。
レイが槍のオルフェウスに問う
「あの…オルフェウスさん。なぜ、そんな事を?」
オルフェウスが声を荒げて
「女を連れて、ダンジョン攻略するなんて! ボク、強いです!ってかっこいい所を見せて女心をゲットなんて、下心でダンジョンや、我らを倒そうなんて魂胆が大嫌いなんだ! そんなだらしない男に! 存在する価値はない! 徹底的に潰してやる! アタシが! アタシが! そう、不幸になったのも、そんな腑抜けた男が原因なんだ!」
その言動で、色々と察したレイとミンは、ミンの肩にいるマスコットの剣のグラファラスを二人して見つめる。
ミンの肩にいるマスコットの剣のグラファラスは、静かに下を向く。
気付けば…周囲の無限に広がる剣のモンスターの軍勢と槍のモンスターの軍勢の戦いが止まっている。
軍勢達も色んな意味でお察しなので、止まっている。
レイは額を抱えて、色々と整理して考える。
最初は、元夫であった剣のグラファラスを切ってでも、王への義理を通していると思ってた。
でも、色々と違う。
つまりだ。自分は王への義理を通そうとした結果、元夫である剣のグラファラスが離れてしまい、それがイヤイヤで仕方ないけど、今更、頭を下げても嫌な槍のオルフェウスが、なんかカップルに見えるソルジャー達、男を襲って引導を渡す事で気分を晴らしていたのだ。
レイが提案する。
「あの…オルフェウスさん。オルフェウスにボクが勝てば…ボクに付いてきているグラファラスと一緒にいられますよ」
「え!」と槍のオルフェウスの気持ちがぐらつくのが見える。
あまりにも分かりやすい態度に、レイとミンは唖然として、マスコットの剣のグラファラスは終始うなだれる。
槍のオルフェウスが
「でも、まあ、ドミネーターとしての建前があるし…」
レイはギアを変化させる。
ギアを黒のヴェイルにして、それに剣のグラファラスの剣の権能を付与する。
漆黒のギアの周囲に剣の翼が現れて、それを背負い装備するヴェイル・グラファラスにして
「最後の一撃で、決めましょう。それで決着という事で」
槍のオルフェウスを構えて、背中に無数の槍を背負い
「分かりました。良いでしょう」
最後の決着を始める。
ヴェイル・グラファラスのレイと、槍のオルフェウスは同時に踏み出す。
ヴェイル・グラファラスのレイは背中に背負う無数の剣を取り出して握り剣舞で圧す。
槍のオルフェウスを背中に背負う無数の槍を握り槍の武闘で圧す。
無数の剣と槍がぶつかって砕ける。
剣のグラファラスと槍のオルフェウスは双対だ。二人が揃って一つ、夫婦と言われる由縁だ。
レイは、剣のグラファラスの権能を発揮すればするほど、槍のオルフェウスが追いついてくる。
それは互角、対等という事だ。
だが、レイは違う。
剣のグラファラスと槍のオルフェウスが相殺している合間にレイは突き抜けて、一閃の拳を槍のオルフェウスへ入れた。
それが胸部に決まった槍のオルフェウス。
槍のオルフェウスが
「まあ、こうなるのは仕方ないでしょう。だって…」
と、マスコットの剣のグラファラスを見る。
マスコットの剣のグラファラスは呆れた溜息を漏らす。
槍のオルフェウスが砕けて、槍の先のような頭部と翼を持つ数千メートルの超龍が出現する。
槍のオルフェウスの超龍だ。
それにレイは、自分の超龍を発動する前に、槍のオルフェウスの超龍が砕けてレイに降り注ぐ。
槍のオルフェウスをレイは手に入れた。
同時に、ミンの右肩にいるマスコットの剣のグラファラスの隣にマスコットとなった槍のオルフェウスが並ぶ。
オルフェウスが
「という事で」
グラファラスが
「その、すまん。色々と…その…すまん」
オルフェウスが
「またよろしくね、アナタ」
双対である剣と槍が元サヤに戻った。
レイは二柱目のドミネーターを手に入れた。
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次回、翼のグルファクシ 前編