幽玄の王 第18話 槍のオルフェウス 前編
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槍のオルフェウスへ向かったレイ達に…
レイは…ミンを連れてダンジョンに来ていた。
なぜなら、このダンジョンはソルジャーとしてC級のミンがいなかったら入れなかったB級のダンジョンだからだ。
レイはE級のソルジャー、ダンジョンは最大B級まで自由に入る事が出来るが…それでもB級に入るには、ランクがC級以上のソルジャーが必要だ。
Bランク以上になると…危険度が倍になる。
それゆえに、BランクでもEランクが入る事ができないダンジョンがある。
レイの実績は、BランクやCランクのソルジャー達のアシストだけで、実戦に関する実績は皆無と言って良い程だ。
ミンは、小宮達の元で十分な実績を持っている。
なので、このB級のダンジョンに入る事が出来た。
ミンのアシストという形でレイは、このダンジョンに入れた。
そして、このダンジョンは…別名、ソルジャー殺しの巣窟。
地下深くまで広い階層が幾つも続くダンジョンは、狭い空間と限定された階層に湧き出てくるモンスター達に襲われて命を落とすソルジャーもいる。
何より、このダンジョンを経験したソルジャー達の多くが引退もしている…それ程に危険という事だ。
レイが次のドミネーターの槍のオルフェウスを探していると、剣のグラファラスのマスコットが子狼のロウと共に教えてくれた。
「ここに、槍のオルフェウスがいるぞ」
と、ロウと共に調べたデータプレートを持って来た。
レイがそれを見て
「ここって危険度が高いダンジョンだよ」
マスコットの剣のグラファラスが
「ああ…そうだ。槍のオルフェウスは…まだ、王が殺された事を憎んでいる。だから…このダンジョンマスターと共に人を襲っている」
レイの顔が固くなり
「まさか…人を殺して…」
マスコットの剣のグラファラスが
「いいや。高ランクのソルジャーだけを、重症を負わせてソルジャーとして戦えないようにしているのさ」
それを聞いてレイは、少しだけホッと安心したが考え直して
「それって、ソルジャーの戦力を削いでいるって事だよね」
マスコットの剣のグラファラスが
「そうだな。その通りだ」
レイが複雑な顔で
「まだ、自分達を生み出してくれた王様の事を…大切に思っていて…。その上にボク達が憎いって事?」
マスコットの剣のグラファラスが首を傾げて
「そうさね。そういう事でもあるけど…まあ、内心は……とにかく、戦ってみれば分かるさ」
色々とレイは複雑な気持ちを抱えるも、ミンが付いてくる事にちょうど良さを感じて
「なんか、ミンさんに詰められて…同行せざるを得ないのに、それが…良い方向に回るなんて」
マスコットの剣のグラファラスが
「これこそ、人事万事塞翁が馬だな」
レイが
「どういう意味なの?」
マスコットの剣のグラファラスが
「悪い事が良い方向へ流れるし、良いと思った事が悪い方向へ向かうも、ちょっとした事で逆転する。人生は予測不可能って事さ」
◇◇◇◇◇
レイはミンと共に目的のダンジョンを進んでいく。
地下へ降りていくダンジョン。
普段ならミンと会話しながら進んでいくのだが…今回はお互いに言葉がない。
空気が…重い。
そんな中で、目の前にモンスター達が出現する。四足の昆虫ようなモンスター、イノセントビーストだ。
レイが前に出て
「ボクが対処します」
と、レイはギアをセイントグリッドを展開すると、セイントグリッドの高速な動きでイノセントビーストを倒していった。
それをミンは見て、Cランクの実力以上であるのを察する。
イノセントビーストはCランクのモンスターで、それが複数体もいる。
一人だったら数に押されて…
だが、レイはそれを軽々と倒す。
モンスター達を倒した後に、二人が沈黙して先を進んでいるとマスコットの剣のグラファラスが現れて
「お嬢さん」
と、ミンに呼びかける。
ミンが驚きでマスコットの剣のグラファラスを見つめる。
マスコットの剣のグラファラスが
「ここから先の事は、秘密にして欲しい。多くの人に語っても、貴女に被害が及ぶだけ。何、護衛は私がやるから」
と、ミンの肩に乗る。
そうして、先へ進み…光の入口が見える。
レイがミンに
「では、入ります。ミンさんはムリしないでください」
ミンは静かに頷く。
そうして、レイとミンは光の入口を潜ると…そこには広大な世界が広がっていた。
ミンが驚きで
「これは…」
レイが構えると、二人の目の前の遙か先から、騎馬のモンスター達の軍団が足音を鳴らして近づいてくる。
剣のグラファラスと同じ、槍を持った鎧人のモンスター達の大軍勢が近づく。
ミンが後ろに下がってしまうが、入って来た光の入口が消えていた。
ミンの肩に乗っている剣のグラファラスが
「大丈夫、私がいる」
と、告げるとミンの左右に、ミンの何倍も巨大な剣の騎士達を召喚させて護衛にする。
それを見た槍の鎧人モンスター達が左右に割れると、奥から騎馬に乗った槍の鎧人のモンスターが現れる。
その甲冑は、女性のように胸部が膨らみ、頭部の甲冑から長髪をなびかせている。
その女性型の鎧人のモンスターはレイの前に来ると
「失望したぞ。グラファラス…」
ミンの肩にいるマスコットの剣のグラファラスが
「久しぶりだね。オルフェウス」
女性型の鎧人のモンスター、オルフェウスは右手に握る槍先をグラファラスに向けて
「お前は…王を殺された事を忘れて…怠惰に落ちた。それが許せない」
グラファラスが
「そうだね。もう…相当な年月が経ってしまい。意味があるのか?と考えてしまってね」
オルフェウスがレイを槍先で示し
「あまつさえ、この小僧の軍門に降った。恥だ!」
グラファラスが笑み
「そうさ、この子に付いていく事にした。それに後悔はない」
オルフェウスが槍を突き上げて
「その選択が愚かだった事を後悔させてやる」
と、曇りだった空が割れて、空の向こうから槍を幾つも備えた竜の軍団が出現する。
地上は槍の軍勢、空は槍の竜の軍勢。
「いけーーーーー」
と、オルフェウスが掛け声を発し、大地が震える程の雄叫びと地響きがレイに向かってくる。
レイはセイントグリッドを展開して飛翔、そして剣のグラファラスの力を召喚させる。
セイントグリッドのレイの両手に剣が現れて、それを握った瞬間、セイントグリッドの後ろにある空間に無数の光の波紋が生じて、そこから剣のグラファラスの軍勢が現れる。
槍のオルフェウスの世界から生じる槍のモンスター達と、レイのセイントグリッドの後ろにある光の波紋達の出入り口から現れる剣のモンスターの軍勢がぶつかる。
剣のモンスター達は、ミンを避けて槍のモンスター達へ
レイは、セイントグリッドで空にいる槍の竜達を狩っていく。
凄まじい戦場の光景にミンは固まっていると、肩にいるマスコットの剣のグラファラスが
「ここから動かないように」
ミンが
「アナタと、そのオルフェウスさんですか? どういう関係なんですか?」
マスコットの剣のグラファラスが
「元夫婦ってヤツさ。考えが…ズレちゃってね。別れたのさ」
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次回、槍のオルフェウス 後編