幽玄の王 第17話 見られた事
次話を読んでいただきありがとうございます。
戦いが終わった後…ミンに見られてしまった。それにレイは?
レイは帰って来た。
そして、近場の喫茶店にいる。
目の前にはミンが座っている。
レイとミンは向き合って座っている。
ミンが
「レイくん…私、怒らないから教えて欲しい」
レイは俯き視線を合わせられない。
剣のグラファラスとの戦いが終わって帰還したら、目の前にミンがいた。
そして、現在に至る。
ミンは姉のアスカと同級生で友人、姉のアスカの店にも顔を出している。
レイはアスカの弟としてミンもかわいがっている。
ミンはレイが心配なのだ。
ここ最近、レイは変わってしまった。
体格、身長もそうだが…ソルジャーとしての能力も高くなっている。
レイはE級だった。
だが、今のソルジャーとしての能力はE級を超えている。
ソルジャーの中には、違法な身体改造を受けて能力を向上させる者もいる。
無論、違法な理由はある。
違法な身体改造を受けると身体が潰れるのだ。
それは明白な事実であり、別の違法改造として違法な薬物で能力を上げて、薬物漬けにして依存させて…犯罪の手先にする。そんな非道もある。
色んな不安にミンが怯えていた。
レイがもし…危険な事で…
レイは見つめ続けるミンに困っていた。
本当の事を話しても怒らないはウソだ。
女の人の怒らないは、怒らないから話して、ではない。
正直に話して、怒るけど…の隠語だ。
この手の話し方で、レイは散々…姉のアスカに怒られ続けた。
姉のアスカどころか、妹のスイも同じだ。
じゃあ、話したくない…って拒否して帰ると、もの凄く執着される。
絶対に話をするまで許さないし、話した所で絶対に許してくれない。
姉と妹という姉妹に挟まれた弟は、知っているのだ。
こういう場合は…誰かを頼るしかない。
レイは静かに携帯を取り出して、姉のアスカに連絡のメッセージを送る。
それをミンは見ていて
「そんなに私って信用ないのかなぁ…」
と、涙する。
レイは視線を泳がせて
「いや、その…」
喫茶店の他の客から見れば、カップルが別れ話をして彼女を泣かしているようにしか見えない。
でも、実際はレイの方が攻められている。
女の人は罪悪感を刺激して男を攻撃する。
苦痛な時間が流れて、喫茶店に姉のアスカが現れた。
「ごめん。ミン…」
と、姉のアスカが加わる。
姉のアスカが細かくミンに説明する。
ミンは姉のアスカの話を聞いて、何度もアスカとレイを交互に見つめた後
「分かった」
レイはホッと安心するが、ミンから
「だったら、一回、私と一緒にダンジョンに潜って見極めたい」
「え?」とレイは戸惑い青ざめる。
姉のアスカがレイを見つめて
「レイ…」
アイコンタクトで、そこを妥協点として…と
レイは項垂れて
「一回だけですから…危険だと思ったら直ぐに撤退してくださいね」
ミンは無言で頷いた。
◇◇◇◇◇
家の帰って来たレイは、ベッドにダイブした。
「疲れた…」
ドミネーターの剣のグラファラスと戦った時よりも疲労感がある。
ベッドに倒れているレイの身体から、小型化した剣のグラファラスがマスコットのような形になって出現し
「大変だったね」
レイがマスコットの剣のグラファラスに
「オレは、どうすればいいんだ? あんな約束して…」
マスコットの剣のグラファラスが
「次のドミネーターとの戦いは、私がアシストするから、彼女の身の回りは私が守るから安心して、専念して欲しい」
レイが溜息を漏らして
「ありがとう。助かるよ」
マスコットの剣のグラファラスが
「しかし、モテる男は辛いねぇ…」
レイが仰向けになって
「ミンさんとは…そんなんじゃあないって」
マスコットの剣のグラファラスが笑み
「そうかい…」
◇◇◇◇◇
ミンは、小宮に連絡していた。
「小宮さん、知っていたんですか? レイくんの事を…」
と、通信機越しに小宮に尋ねる。
小宮が無言が続いた後
「何をレイから聞いたんだ?」
と、優しく返す。
ミンが少し無言の後…
「レイくんが…特別な力を得て…それで…小宮さん。私は、レイ君が心配です」
小宮が
「そうか…オレから言えるのは、レイを信じてやれって事だけさ」
ミンはそれで察した。
小宮は気付いていた。気付いていたが…レイを信じて見守る事にしたのだ。
でも、ミンは
「私は、レイくんが危険な事になる前に止めたいです」
小宮が
「それは、本当にレイの為なのか? その前に…レイは子供じゃあないぞ。大人だ。自分で考えて自分で歩む力はあるはずだぞ」
ミンはドキッとする。
レイの事を…まだ、手の掛かる子供くらいだと思っていたのが見抜かれた気がした。
小宮だってバカじゃあない。
ミンがレイに対して特別な感情を持っているのを知っている。
口にはしないが…その気持ちはミンが自分で解決するべき気持ちだ。
ミンは
「小宮さん、話を聞いてもらってありがとうございます」
小宮がフッと笑み
「いいさ、何時でも相談には乗るぜ」
ミンは、小宮との通信を終えて
「そうだよね。レイくんは…子供じゃあないのよね」
それは分かっていた。でも、そうであって欲しいと思っていた気持ちの裏には…気付いてしまった。
「ホント、どうしよもないわ…わたし…」
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次回、槍のオルフェウス 前編