幽玄の王 第15話 剣のグラファラス 中編
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剣のグラファラスの世界で戦うレイ、そこには…
ヴォオオオオオオ
万軍の雄叫びが響き渡る。
レイは、剣のモンスター達の軍団を前に、セイントグリッドのギアを装備して立ち向かう。
剣を持った人型モンスター達が一斉に飛び、雨の如くレイのセイントグリッドへ降り注ぐ。
それをレイは「面倒な」とセイントグリッドを回転させて飛翔し、螺旋を描いて突き抜ける。
剣のモンスター達の雨を突き抜けると、今度は翼を持ったモンスターに乗った騎士の剣のモンスター達が待ち構えていた。
騎士の剣のモンスター達は、剣を抜いて縦横無尽にレイのセイントグリッドへ斬りかかる。
それを回避するレイのセイントグリッドだが、竜巻の中のような騎士の剣のモンスターの動きにもてあそばれる。
セイントグリッドのレイは、無限エネルギーを乗せた一撃必殺の拳で騎士の剣のモンスターを叩き潰すも、その数は無限のように湧き出して勢いが止まらない。
「なら…」とレイは、セイントグリッドからレッドミカエルへ変形する。
光の翼を広げる赤き鎧天使のレッドミカエル。
レッドミカエルのレイは、超音速で飛翔しながら両手から光の誘導弾を無数に飛ばして騎士の剣のモンスターを倒す。
レッドミカエルのレイが騎士の剣のモンスターを押し始めると、今度は地の果てから剣の切っ先を持った宇宙戦艦のような剣のモンスターの大艦隊が出現する。
宇宙戦艦のような剣のモンスター達は、レッドミカエルのレイに向かって剣先のような先端から巨大な光線を発射する。
それが幾つもレイのいる場所に向かって放たれて巨大な爆発を幾度も起こす。
その爆発の場から上空に逃れたレッドミカエルのレイは
「大質量で押してくるなら」
と、レッドミカエルからラーオロスへ変形すると、ラーオロスの背中にある翼のフィンがエネルギーを収束させて、ラーオロスの両手に伝えると
「いけーーーーー」
と、レイはラーオロスの両手から巨大な光線を発射する。
大地を貫くような巨大な光線が宇宙戦艦のような剣のモンスター達へ届き粉砕する。
「よし…これで…」
と、レイは勝利を確信したが…甘かった。
何と、今度は地の果てから千メートル越えの山脈並の巨大な剣のモンスター達が出現する。
大地の巨神兵の如き剣のモンスター達がレイへ向かってくる。
その両手には、あの宇宙戦艦のような剣のモンスターが握られている。
そればかりではない。
剣のモンスター達や、飛行するモンスターに乗る騎士の剣のモンスター達、宇宙戦艦のような剣のモンスター達も再び現れて、大地の巨神兵の如き剣のモンスター達の足下からレイに向かってくる。
レイは驚愕する。
「そんな、何時まで続くんだよ」
レイは、ラーオロスやレッドミカエルにセイントグリッドのモードを切り替えながら戦いを続ける。
何時終わるとも分からない剣の軍勢との戦い。
それを別の視点、全体を俯瞰するように見つめている者がいる。
この世界の主、ドミネーターの剣のグラファラスだ。
グラファラスはレイが奮闘する姿を見つめて
「ほう…耐えるな。幾ら無限の力を持とうとも…無限に現れる軍勢を前に、心は折れ易い。永劫に続く戦いを人は続けられない。無限というのは地獄なのだよ」
グラファラスの思惑通りだ。
レイの力にエネルギー切れという事はない。
だが、レイは無限に戦い続ける事ができない。
終わらない苛烈な戦い。体力より精神力を削られる。
倒せば倒すほど、現れる軍勢。
剣のモンスター達
飛行乗馬する騎士の剣のモンスター達
宇宙戦艦のような剣のモンスター達
巨神兵の如き剣のモンスター達
終わらない、終わりが見えない。
そんな悲壮感が、レイの精神力を更に削る。
終着点が見えない。何処までも続く戦い。
人は、永劫、同じ事を繰り返す事はできない。
変化し絶えず入れ替わる。
それが人の性質だ。
見えない疲労がレイを包む。
ゴールも終わりも見えない。
戦い続ける現実。
このまま…永遠に終わらないのか?
メビウス・リアクターという永遠に無限にエネルギーを供給する力を持っていても、レイの心は人だ。
そんな隙がレイを襲う。
巨神兵の如き剣のモンスターの一撃がレッドミカエルだったレイを襲う。
巨大な剣の一撃にレッドミカエルのレイは叩き付けられて
「しまった!」
地面に打ち付けられてクレータを形成するレッドミカエル。
凹んだそこへ一斉に剣のモンスター達が襲いかかる。
レイはセイントグリッドに切り替えて拳の連撃を放って耐える。
その連続攻撃の最中でも剣のモンスター達は襲ってくる。
地面と剣のモンスター達の雪崩に襲われるセイントグリッドのレイ。
このままでは押し潰される。
そんな恐怖がレイを包む。
終わらない無限の攻撃、終わりが見えない攻撃達。
意識が精神が摩耗する。
このまま…終わっても…
諦めの恐怖がレイを過る。
そんな時、ワン!とレイに呼びかける鳴き声。
ロウの遠吠え。
それでレイは思い出す。
「オレは…母さんを助けるんだ!」
母親を助けたいという気持ち、家族に…姉に帰ってくると約束した。
オオオオオオ!
レイは雄叫び、セイントグリッドのまま剣のモンスター達の壁を突き抜ける。
そして、膨大な数の剣のモンスター達の大地を見渡す。
地の果てまで広がる巨神兵の如き剣のモンスターと、飛行騎乗する騎士の剣のモンスターに、大地を埋め尽くす剣のモンスター達、空には宇宙戦艦のような剣のモンスター達が、世界を覆い尽くしている。
レイは気持ちを呼び起こす
「オレは! 負ける訳には行かないんだ!!!!!!」
レイの強い意志が、ソディファール・セフィール、高次元と現世を繋ぐ光輝の書を起動させる。
この世界、剣のモンスター達が無限発生する世界の正体を見極める為に、レイはゾディファール・セフィールの光の波動で観測する。
この世界は無限に閉じられた世界で、剣のグラファラスが神となっている。
この閉じられた世界を開ければ…剣のグラファラスが現れる。
レイは思い願う。この世界を開く光を。それをレイは握った。
光はレイの後ろで爆発して巨大な存在を構築する。
白光と輝く鎧の超龍だ。全長が十キロを超える大いなる力の権化、超龍を構築したレイは
「いけーーーーー」
白光の超龍の力を放って世界を開く。
白光の超龍は背中と顎門から膨大な光の奔流を飛ばす。
それが閉じられた世界を切り裂きこじ開ける。
世界が裂けて、世界が開かれる。
閉じられた世界が広がると同時に、裂けた世界の向こうに剣を構える鎧の騎士が現れた。
剣のグラファラスだ。
グラファラスが鎧の頭部から目を輝かせ
「ほう…王の力の権化を手にしたか…」
と、大地に着地した瞬間、世界が大理石の神殿に変貌する。
剣のグラファラスが鎮座する神殿、剣の社。
大理石の地面と、等間隔に並ぶ石柱だけが広がる場所。
そこにレイがセイントグリッドで着地する。
「決着は…」
剣のグラファラスが腰にある剣を抜く。
両手に剣を構えて
「我と戦ってみせよ」
と、告げた瞬間に剣のグラファラスが消えレイの目の前に現れた。
レイは「く!」と焦り剣のグラファラスを弾いた。
危機一髪。
反応が遅ければ一瞬で切られていた。
剣のグラファラスは追撃を繰り出す。
回転する剣の乱舞。
それをレイは回避して攻撃を加える隙を狙う。
隙が出来たと思ったそこは、罠だった。
剣のグラファラスの剣舞が一瞬だけ空いたそこが隙だった。
だが、それはグラファラスのフェイントだ。
鋭い一閃がレイの左肩を貫いた。
「くそ!」と、レイは下がり負傷した肩を押さえつつ回復アイテムを取り出して飲む。
それを剣のグラファラスが見つめて待っていた。
レイは、それで察する。
剣のグラファラスは、レイの実力を理解している。
剣撃ではレイが劣っている。
剣のグラファラスが
「さて、どこまで踊ってくれるのかね?」
レイに向かって突進する。
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次回、剣のグラファラス 後編