幽玄の王 第9話 襲撃と意思
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ダンジョンの攻略を終えて作業していたレイ達だが…
倒されたダイナソータートルを様々に分解して回収する作業をレイ達は行う。
近くに宇宙船も止まり、ダイナソータートルの背中にあるエネルギークリスタルを切り分けて運び込んでいる。
その作業の近くにディオスとナトゥムラも立っていて
「ほう…こうして、資源を得ているのか…」
と、ディオスは見つめている。
その隣にレイが来て
「ディオスさん達の方でも似たような事があると聞きましたが。同じような事が…」
ディオスは
「ええ…でもこれ程に巨大なモンスターはいませんよ。しかし、この規模のモンスターを資源として使うという事は…この世界は、ダンジョンのモンスターで成り立っている部分が大きいのですね」
レイが肯き
「はい。自分達が使っている資源の大半は、ダンジョンのモンスターから取れる資源で成り立っています。凄く加工がやりやすいですし…土中や惑星内を探索する手間も要りませんから」
ディオスが
「なるほど、そうしてソルジャーという職業も成り立っている。そして、必要な武力がムダに暴走しないようにもしているのか…」
レイは嫌な部分を言われて「ええ…まあ…」と声のトーンが落ちる。
ディオスが察して
「すまなかったね。嫌な事を言ってしまって…」
レイは首を横に振り
「いいえ、そんな事はありません。でも…そういう側面はあります。ボクは、自分はE級なんで…そういう惑星間の国家の争いには出ませんけど、C級のソルジャーからは…」
ディオスが
「徴兵の制度があると…」
レイは言いにくそうに
「実際、軍にはソルジャーの部隊がありますから」
ディオスが思いをはせて空を見上げて
「では、このシステムを作った者も、そういう事を想定していたのかもなぁ…」
レイは言えなくってしまうと、ディオスが微笑み
「さて、少し周辺を見てきます。帰還する時は、連絡をください」
と、ナトゥムラと共にレイがいる場所から去って行く。
レイはディオスとナトゥムラの背中を見つめる。ディオスの背中が大きく感じる。
「本当に、ただの技術者なんだろうか?」
ディオスが身に纏う雰囲気は、まるで大きな父親、王のように思えてしまう。
だが、それも勘違いだろう…とレイは頭を振ってダイナソータートルの解体を手伝う事にした。
◇◇◇◇◇
「レイくん、そっちをお願い」
と、ミンがギアを纏ってダイナソータートルの巨大なエネルギークリスタルを切ってブロックにする。
それをギアを装備するレイが「はい」と受け取り宇宙船にいれるカーゴに乗せると、カーゴは自動で動いて宇宙船へエネルギークリスタルのブロックを運ぶ。
百メートル程のエネルギークリスタルの山にレイ達の解体は思うように進まない。
解体している小宮が
「こりゃあ、骨が折れるなぁ…」
隣で同じく解体しているソンが
「それくらい、エネルギーをタップリと蓄えているって事さ」
小宮が
「泊まりも覚悟かなぁ…」
レイが来て
「食料とか諸々は大丈夫なんで…明日まで掛かっても」
レイは無限収納を持っているので、そこに色んな装備やアイテムを無限に入れられる。
そして、その管理も出来る。
小宮が微笑み
「じゃあ、明日までかかるとして…」
唐突に小宮が仰け反る。
「う! ぶ…」と小宮が口から血を出す。
ソンとレイが青ざめる。
小宮の腹部から鋭い何かが突き出て、小宮を貫いていた。
それが小宮を持ち上げて投げ捨てた。
悲鳴が響き渡る。
小宮がいた場所から黒い何かが現れる。
黒い装甲の人型、背中から小宮を刺した触手の槍を無数に伸ばしている。
「小宮さん!」と、レイは小宮に駆けつけて急いでアイテムで傷口を修復させるポーションを取り出して傷口にかけるが…キズが塞がらない。
レイは、止血の為にナノマシンの大型絆創膏を取り出して、そこに貼り付けて止血する。
その止血したキズから毒のような青筋が広がる。
その毒を中和するナノマシンの銃型注射器と自動点滴装置をレイは取り出して、小宮に処方する。
ソンと他のソルジャー達は、ギアに武器を構築して黒い装甲の人型を囲む。
ソンが
「キサマ…何者だ!」
黒い装甲の人型が頭部を開いて
「よう…」
ラジャスの顔があった。
ソンが鋭い目で
「ラジャス、どういうつもりだ!」
ラジャスは嘲笑を浮かべて
「どういうつもりだ? オレを辱めた連中に復讐して何が悪い?」
ソンが「はぁ?」と訝しい顔で
「辱めた? どうして…そうなる…あ!」
と、ソンはルリのエネルギー反応を使って調べた。そして…一致した。
ソンは青ざめて
「お前…まさか…他のパーティーをやったのも!」
ラジャスは黒い装甲の人型の両手を広げて
「そうさ! オレを貶めた連中に正統な報復をした。正しい事をしたんだよ」
と、酔いしれていた。
ラジャスが黒い装甲の人型の両手をソンに向けて
「このロアデウスの力を使って、オレはオレを辱めた連中に。最高だったぜ」
完全なる逆恨み、自分の愚かさを指摘されて注意されたのに、それを辱めと勘違いした最悪な思考、オレは間違っていない!という間違った被害者意識に取り憑かれて暴走している。
加害者によって被害者が生まれ、被害者が復讐で加害者になるではない。
加害者が自分は正しいとして加害して被害を広げた。
ラジャスが手に入れたロアデウスという力が放たれる。
背中にある、鋭い槍先を持った触手が広がって周辺にいるソルジャー達を襲う。
ソルジャーの防壁でもあるギアを突き抜けて、ダメージが入る。
ソンもそれに襲われて肩をケガする。そのケガから触手にある毒が入り、ソンは膝を付くと、それをラジャスが蹴る。
ラジャスが飛翔して、小宮の治療を続けるレイに近づく。
レイはギアを展開するが、ラジャスの蹴りが入る。
上に突き上がるレイ、それをラジャスが掴み地面に叩き付ける。
「があ!」とギアに包まれるレイにダメージが入る。
ラジャスは喜悦の笑みを浮かべて、何度何度もレイを地面に叩き付ける。
「はははははは! 最弱が! オレをバカにした罰だ!」
レイの動きが鈍ると、ラジャスは触手でレイを貫こうとするが、そこへ攻撃が入る。
「レイくん!」
と、ミンがギアを装備して攻撃する。
ラジャスが苛立った顔をミンに向ける。
ラジャスに掴まれるレイが
「ミン…さん、逃げて…」
ラジャスが笑みを浮かべて
「うぜぇ女だ」
触手をミンに走らせて、ミンを貫いた。
ミンが倒れながら
「レイ…くん、逃げ…て…」
と、倒れる。
レイは目を見開く。
ラジャスは喜悦の笑みで
「そうだ。お前はあの女より…もっと痛めつけて」
と、続きを言おうとした瞬間、レイを掴み揚げている左腕が切れた。
「うぎゃあああああ!」
無様に叫ぶラジャス。
レイの右腕がギアではない装甲の腕に変わっている。
色は赤金のナイトレイドだ。
レイは地面に降り立つと全身が赤金のナイトレイドになる。
ラジャスは急いで切断された左腕を修復して接続して
「テメェ…お前も同じ力を!」
と、触手の槍先を発射する。
それをナイトレイドとなったレイが全て切り落とすと、ラジャスの正面に瞬間移動して、ラジャスの顔面を掴み地面に叩き付けた。
「ぐあdっぎいあふぁfだ」
と、ラジャスは無様な声を放って地面に頭を埋める。
そこへディオスとナトゥムラが戻って来て、ディオスが
「これは?」
と、周囲を見渡すと額にある第三の目を開いて全員がロアデウスの侵食毒に犯されていると知って
「ナトゥムラさん、これでロアデウスの侵食毒を消せる!」
と、解毒回復のポーションのアイテムを投げる。
ナトゥムラは
「おう、急いで対処する」
ディオス達は、ロアデウスに刺されて侵食毒に犯される者達に解毒と回復のポーションを、飲ませられない者にはデウスマギウスを出してナノマシン浸透で回復を促す。
小宮がナトゥムラに回復と解毒のポーションを飲ませて意識が戻り
「う、やろう…ラジャスが犯人だったとは…」
倒れていたが色々と耳には届いていた
ディオスはミンのそばに来て、治療のナノマシンと解毒のポーションのナノマシン付加をする。
レイは…
「テメェ!!!!!!!」
と、ラジャスが地面から突き出て、レイに襲いかかる。
その切っ先の全てをレイはナイトレイドで切り裂く。
許せない! 怒りを通り越して冷徹になった。
人は激高を通り越すと怒りではない。冷徹になる。
「もう…お前…死ねよ」
ラジャスの両手足、触手の槍先を全て切り落とした。
「ああああああ!」
ラジャスが胴体と首以外を失って叫ぶ。
だが、ロアデウスで何度も再生させて
「オレは! 無敵になったんだ! お前のようなゴミに」
レイはその頭を掴んで何度も何度も地面に叩き付ける。
まるでゴミ虫を潰すように容赦なく何度も何度も。
ラジャスは頑丈だ。
ロアデウスという力を取り込んでいる影響だ。
レイは怒りを通り越していた。
コイツを殺すには…どうすれば?
ナイトレイドの探知力がラジャスの弱点、ロアデウスの急所を知らせる。
それは、胸部に埋め込まれたコアだ。
胸部は分厚い装甲で守られているが、ナイトレイドのレイには紙と同じだ。
レイはラジャスを叩き付けるのを止めて、右の片手で顔を持ち上げる。
ラジャスがダメージで
「や、やめて…」
レイは空いているナイトレイドの左腕に切り裂く力を充満させる。
トドメを刺すつもりだ。
それをディオスは静かに見つめる。
レイが…どういう結果をもたらすのか…それによって
ディオスの治療でミンの意識が戻ると、ミンは消えそうな声でトドメを刺そうとするレイに
「レイくん…ダメ…」
ナイトレイドのレイの動きが止まる。
小宮が
「レイ、止めろ。人殺しなんてやるな…それ以上は、もういい。人殺しになっちゃあダメだ。そうなれば、お前は…元に戻れなくなる」
ミンが
「レイくん…お願い、やめて…遠くに行かないで…」
レイは…ラジャスを掴んでいる右手を離し、刃だった左腕をハンマーに変えて、ラジャスの胸部を打ち付けた。
その激震がラジャスを襲って、ラジャスは意識を飛ばす。気絶した。
レイは踏み止まった。
ラジャスを殺して、人の命を奪う事を解決手段として身につける事を拒否した。
人の命を奪う事を解決の手段とした場合、永遠に日常に戻れない。
人を殺して解決するという最悪な解決手段を得る事をしない。
真っ当な人である事を選んだ。
レイはナイトレイドを解除すると、急いで他の人達の治療へ回った。
ディオスとレイによって、回復したミンや小宮達。
ラジャスを拘束して
「さて…コイツを…」
と、小宮はルリに突き出す算段を始める。
気絶して拘束されるラジャス。
それを見下ろすレイ。
だが、唐突にラジャスが飛び起きて
「あああがわががわがっわがわtが!」
と、苦痛にのたうち回る。
ソンが焦り
「何が起こったんだ!」
ラジャスの身体が歪に膨れてモンスター化する。
ディオスが
「まさか、自爆装置的なモノが!」
「あががががわさがわ」
と、ラジャスはロアデウスに呑み込まれてバケモノ、モンスターと化そうとしたそこへ一閃が入る。
歪なバケモノになろうとしていたラジャスの身体が真っ二つに裂ける。
それを裂いたのは、小宮と同じ四十代くらいの男性だ。
ラジャスはコアを真っ二つにされ、首が地面に落ちると、その首を切り裂いた男がアイテム収納から、生体液に満たされた保管ケースを取り出して、落ちたラジャスの首を入れた。
まるで、淡々と作業するように死んだラジャスの首を回収する男性。
その男性がレイと視線を合わせた。
男性の名はジン
レイとジンが視線を合わせた瞬間、二人は感じる。
同じ…だと。
そこへ黒髪の黒光りする鎧の女性が現れて
「ジン、回収した?」
小宮がその女性を見て
「ウソだろう。シンラ国の…テイア・リー・アース…」
テイア・リー・アースはルリと同じXXクラスのソルジャーだ。
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次回、事情聴取




