幽玄の王 第2話 神殿
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レイ達が辿り着いた場所、そこは?
レイ達は、巨大な神殿のような空間を歩く。
内部は天井に突き立つ柱達が並び、それに小宮が触れて
「なんだ…これは?」
ソンも隣に来て柱に触れて
「体温が吸われない。金属で作られていないのか…」
小宮が軽く小突いて
「セラミック…いや、金属と様々な素材の合金か…複合素材?」
別の柱に触れているミンが
「いいえ、これは…エネルギーで構築されています」
小宮とソンは、お互いに顔を見合わせた後
「ソン!」
「ああ!」
小宮が「撤収!」と叫ぶ。
全員が困惑した瞬間、周囲にある巨大な柱が変化する。
三十メートルはあろう柱の一つが姿を変容させる。
それは巨大な…人型だ。
ソンが
「やられた! これはリキッドゴーレムだ!」
リキッドゴーレム、鉱物に見せかけたエネルギー生命体の巨人で、エネルギー生命体が故に形状を自在に変化させて擬態できる。
周囲の柱達が人型に変貌する。
その数百メートルサイズの空間にある柱達の全てがリキッドゴーレムなのだ。
全長が十五メートルの巨大なリキッドゴーレムの集団に囲まれるレイ達。
リキッドゴーレムが討伐できるランクはBだ。
小宮とソンだけが対応できるが、後のソルジャーはCランクばかり、レイは絶望的なEランク。
リキッドゴーレム達がレイ達を襲う。
幾つもの巨大な手がレイ達を捕まえようとする。
それに小宮とソンが攻撃する。小宮は近接のハンマーを使うギア、ソンはエネルギー剣を伸ばすギアだ。
他のソルジャー達もギアを展開して、迎撃する。
火炎のガトリング、近接の攻撃。
だが、それは無意味、多勢に無勢。
大質量のリキッドゴーレムには致命傷どころかキズも付かない。
これが無情、無慈悲な現実。自分のランク以上のモンスターには、ランク以下のソルジャーは勝てない。
ミンがリキッドゴーレムに捕まる。
「いやあああああ!」
レイが
「ミンさん!」
と、無限収納に格納された機動兵器を取り出す。
機動兵器…マキナ、人型をした巨大なロボット兵器で、様々な質量武装を持っている。
全長はリキッドゴーレムと同じ十五メートル。
それにレイが乗り込んで、ミンを掴んだリキッドゴーレムを攻撃して、リキッドゴーレムはミンを離す。
ミンは着地して
「ありがとう、レイくん!」
レイが
「ここは、ボクが持っているマキナで応戦しますから、みんなは逃げて!」
レイはEランクがゆえに、ランクに作用されない機動兵器を持つ事を許されている。もし、戦闘をするソルジャーのパーティーが崩壊した場合の非常策として…。
ギア以外の武装で強化できるのはEランクだけが許された特権ではあるが、それは…ソルジャーとして最底辺であるという証明でもある。
レイのマキナによる砲撃で怯むリキッドゴーレム達。
それに小宮が
「レイ! お前も下がれ!」
マキナに乗るレイが
「ボクは最後で構いません。マキナには非常用の脱出システムがあります。だから」
ソンが
「それでも、この数のリキッドゴーレムを相手に!」
マキナにいるレイが
「大丈夫です。だから」
リキッドゴーレムに追撃されるパーティー達。
判断に猶予はない。
小宮が
「後で、必ず来いよ!」
「はい」とマキナに乗るレイは答えて、小宮が
「全員撤収! ここはレイに任せるぞ!」
ミンが「レイくん…」と立ち止まるも、ソンが
「行くぞ、今は…我々が優先だ。彼なら大丈夫だ。マキナを使っている。後で合流できる」
ミンは引き難そうにしつつ、ソンと共に撤収する。
レイを残して小宮達が入口から出て行った後
「よし、ボクも!」
と、レイがマキナを操縦して入口へ向かうが、入口が唐突に閉じた。
「え…」
と、レイはマキナの操縦席で青ざめてしまい動きが止まった瞬間、リキッドゴーレムがマキナを押さえて押し倒した。
レイが絶望していると、リキッドゴーレム達はレイが乗る操縦席のドアを引き剥がして、レイを握り揚げる。
そして、地面に叩きつけた。
「がぁあは!」
レイはギアを装備しているお陰で身体は砕けてはいないが、その威力がギア内部にいるレイを襲って、レイは吐血した。
衝撃で内臓をやられた。
「う、ごは、がは!」
と、レイは吐血して立ち上がろうとしても立ち上がれない。
リキッドゴーレムがレイの足を狙う。
強烈な一撃がギアを粉砕してレイの足を砕いた。
「あ! があ!」
レイは両足を失った激痛を受ける。
更に仰向けになった両手を狙って粉砕する。
両手足を失ったレイ。
それでも、レイは諦めず逃げようと動く身体を動かす。その姿は地面を這いずる虫だった。
醜く生に執着する姿。何としても生きたい…とレイは足掻く。
それをリキッドゴーレム達は見下ろす。
まるで、嘲笑うかのように瞳を細めて…。
必死に生きようとするレイの脳裏に様々な事が過る。
もし、あの時…引き返そうと言っていたら。
もし、あの時…あの時…
色んな過去の後悔や記憶が過る。
そして、家族の事が過る。
Eランクの自分の為に武器を作る仕事を選んだ姉。
まだ、高校生で、帰ると何時も明るく迎えてくれる妹。
五年前に最悪のZ級ダンジョン災厄で、結晶に閉じ込められた母親。
五年前のそのダンジョン災厄で死んでしまった父親。
脳裏に死んでいく父親から託された言葉が過る。
”母さんを、アスカとスイを…頼んだぞ…”
と、息を引き取った父親。
「いや…だ。まだ、ボクは…オレは…死にたく…ない」
と、レイは気付くと数百メートルサイズの空間の中心にいて、その中心である白磁器の円形の場にいた。
意識が薄れるレイ
「死に…たく…」
レイの意識が途切れて、レイは自分を外から見ている視点になった。
死んだ。死んでしまった。
あああああああああ!
死んでしまったレイは叫ぶ。
いやだ! 死にたくなかった! 母さんや、アスカや、スイを!
ボクは! オレは! 母さんを助けたかった!
アスカやスイに幸せになって欲しかった!
こんな所で終わるなんて! いやだ!
嫌か?
死んでしまったレイの後ろに、あの黒き影が現れる。
騎士のような鎧をまとい笑う黒き影。
死人のレイは、唖然とする。
黒き亡霊の騎士が手を伸ばして
”生き返りたいか? 蘇りたいか?”
レイは呆然としている。
黒き亡霊の騎士は笑み
”我と融合すれば…復活できるぞ。だが、それは…今までの己の喪失となり、新たに生まれ直す、神生するという事だ。このまま、死んでしまった方が楽かもしれんぞ”
レイは、選択肢がなかった。
その手を握った。
まだ、死ぬわけにはいかない!
レイの死んだ場所、白磁器の円形の場は、高次元領域と接続する装置だった。
そこから黄金の光が吹き出して、レイの身体に浸透する。
レイの身体から閃光が吹き出して、失ったレイの両足、両手、損傷した内臓とキズを急速に回復して再構築する。
そして、レイの全身に赤金の鎧のギアを構築して装備させる。
ヴォオオオオオオ!
再復活したレイ、赤金のギアを装備するレイ。復活したレイに赤金のギアの装備名が浮かぶ、ナイトレイド。
ナイトレイドとなったレイは、光の速さでリキッドゴーレムへ突貫し破壊する。
破壊されたリキッドゴーレムはエネルギーとなり、それのエネルギーはナイトレイドに回収されて、更なる力の強化へ、数十体もいるリキッドゴーレムが怯むが、ナイトレイドは光の速度で縦横無尽に駆け巡り、リキッドゴーレムを一撃で粉砕してそのエネルギーを喰らう。
そう、リキッドゴーレムは…ナイトレイドが復活した場合に用意されたエサなのだ。
数百メートルサイズの空間を埋め尽くしていたリキッドゴーレム達が全て破壊されて、ナイトレイドに吸収された。
そして、地面から別の柱が昇る。五つの柱が昇り、ナイトレイドへ更なるエネルギーとシステムのインストールを行う。
膨大なエネルギーと共にシステムのインストールを行ったナイトレイドは、その機能を停止して、レイに戻り…レイはその場に倒れる。
そこへ、ディオスとナトゥムラが現れた。
ディオスとナトゥムラは、鋭い顔でうつ伏せに倒れるレイを見つめていた。
ディオスが
「そうか…これが…ゴースト・トリガー・プロジェクト」
と、告げる。
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