白夜 79話 SHADOWBORN
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ぶつかるクロとアルードの兄弟、その先に…
アルードとクロードの戦いは続く。
クロードの機神、グルファクシ・ギガンティスの両手から膨大な数の弾丸やミサイルが飛んでいく。
アルードの機神、グルファクシ・ギガンティスと同じ系統だが、背中にはエネルギーの翼を背負っている。そのエネルギーの翼から無数の光の槍と剣を取り出して攻撃する。
弾丸とミサイル達が飛んで来る、光の槍と剣に粉砕される。
アルードの機神はエネルギーで武器を構築している。故に手数は無限。
クロは、備わっている装備から発射している数は有限。
クロの方が弾丸が尽きると、機神の両手足に装備された追加武装を破棄して、両手に漆黒のエネルギー、重力の集中を起こして、それをアルードの機神へ投げつける。
光速で迫る漆黒の重力エネルギー。
それは空間を削って消滅させる。
だが、アルードの機神は両手に閃光のエネルギーを握る。
それは、クロの放ったエネルギーの逆だ。それを投擲された漆黒のエネルギーにぶつけて消す。
漆黒と閃光の戦いの拮抗が起こる。
アルードが
「兄さん。いい加減にしなよ。兄さんが幾ら…攻撃をしてもボクはそれを相殺できる」
クロはフッと笑み
「少しくらい、戦いを楽しめよ。せっかくの兄弟ゲンカなんだぞ」
と、クロは機神の両手に重力エネルギーの漆黒を握ってアルードの機神へ向かう。
アルードが笑み
「楽しめって、兄さん…分かっている? 事態が…どういう事かって」
と、アルードの機神は両手に閃光の剣を手にして、クロの機神へ向かう。
漆黒の機神と、黄金の機神が、漆黒の拳撃と、閃光の剣を衝突させて戦いが続く。
クロが
「なぁ…どうして、こんな事をした? アシェイラやメディーサの復活は、分かる。だが…ここを、こんな事にまでして…何の価値がある?」
アルードが
「そうしなければ、変わらない。ボクだって色々と変えようと頑張ったよ。でも、変わらない。どこもかしこも…最悪になって手が付けられないくらいの最低なってからでしか、動こうとしない。その手前で…対処しようともしない。だから…実力行使したまで」
クロが
「それも分かるさ。何も変わっていなかった。五百年しても、変わらない部分は多かった」
アルードが
「それが分かっているなら、どうして…ボクと戦うの? 兄さん」
クロが機神を下げて
「そうさなぁ…権力という愚かな場所は、変わらない。でも…それ以外の部分は、変わっていった」
クロが別の通信を見ていると、合図が点滅する。
それは、セイントセイバー号達からだ。
クロの機神の通信に、アーヴィングが出て
「やれる事はやった。後は…そちら次第だ」
クロがアーヴィングに微笑み
「感謝する」
と、告げて再び対峙するアルードを見つめる。
アルードが訝しい顔で
「何をしたの? 兄さん」
クロが微笑み
「オレは…ガージェストのヤツから…歴史の管理者を受け取った」
アルードが首を傾げて
「この宇宙、アルテイル時空共和国の超空間ネットワークに広がる様々な情報を蓄積するアカシックレコードの? それが何? 只の歴史の教科書、歴史の情報だろう」
クロが肯き
「そうさ、歴史の痕跡、影となって消えていった過去さ」
と、告げるとクロの機神が背負っているゾディファール・セフィールが光を灯す。
その光がクロと繋がる。
「アルード、お前が何とかして、新生させようとする気持ちは分かる。でも、よう…それじゃあダメだ。オレ達はオレ達の世界が紡いだ歴史があるから、自らを戒めて前に進める。それが生きているって事さ」
クロと繋がるゾディファール・セフィールが光を広げる。
それはアルテイル時空共和国の超空間ネットワークと繋がる。
アルードが青ざめて
「バカな! そんな事、不可能だ! アカシックレコードの力を借りて、ボクのニュービッグバンを防ぐつもりか!」
クロと繋がる光、ゾディファール・セフィールがクロをコアにしてアルテイル時空共和国の超空間ネットワークが記録し続けた歴史の影達にアクセスする。
クロに激痛が走る。
「ツレぇぜ。だけどよ…やっぱり、続いていく未来達を止める訳には行かねぇんだよ」
◇◇◇◇◇
クロが歴史の痕跡達にアクセスする姿をゴッドレガリアシステムから見ているレナは、あのお茶会の場から飛び出す為に超越存在の力を発揮する。
レナの力に応えてオメガデウス・ヴァルヤが飛んで来る。
お茶会の場の天井を突き破ってレナの元へオメガデウス・ヴァルヤが来る。
レナがコクピットに駆けつけると、それを見守るメディーサ・ディアとアシェイラ。
レナが
「ごめんなさい。私…」
メディーサ・ディアとアシェイラは微笑み
「いいのよ」
「大切な人がね」
レナはオメガデウス・ヴァルヤに乗り込み、クロの元へ行く。
◇◇◇◇◇
クロは歴史の痕跡に力を与えようとする寸前だが、繋がらない。
足掻くクロにアルードが
「兄さん、ムダだよ。所詮、過ぎてしまった歴史の痕跡だ。過去を振り返る資料程度でしかない。どんなに兄さんの力を注ぎ込んでも、幻は幻だ」
アルードには結末が見えていた。
クロがアルテイル時空共和国の歴史の痕跡を使って戻そうとしているが、所詮は、何もない幻にエネルギーを与えるムダをした結果、力尽きて止まる…と。
その力尽きた後に、回収して…そのぐらいすれば…クロも諦めるだろう…と。
そこへ、レナが乗ったオメガデウス・ヴァルヤが現れて、クロの機神へ近づくと、何倍もあるクロの機神の頭部、クロが乗っている操縦室へオメガデウス・ヴァルヤが手を乗せて繋がり
「クロ!」
クロがレナの声に
「レナ…」
クロへレナが超越存在の力を伝える。
クロの神越存在の力と、レナの超越存在の力が混ざり合って光の螺旋を描く。
それがアルテイル時空共和国の超空間ネットワークに刻まれた歴史の痕跡達へ届く。
アルテイル時空共和国の超空間ネットワークから離れるセイントセイバー号と他の二艦達が背にする場所、超空間ネットワークが淡い光を明滅させる。
それをセイントセイバー号の司令室のホールから見ているアーヴィングが
「始まった…」
アルードが気付く
「な、まさか!」
ゴッドレガリアシステムが取り込んだアルテイル時空共和国の時空達が揺らぐ。
クロが瞳を輝かせて
「歴史の影達よ。起きろ」
アルテイル時空共和国のありとあらゆる場所、その全てから人型の影が立ち上がる。
クロの機神の周囲に同じ大きさの巨大な影達が現れる。
その影達にアルードが驚愕する。
「そんな、かつての…五百年前のマハーカーラの部隊の者達と、ガージェスト!」
歴史の痕跡達が影となって現れてクロに続く。
クロは、グルファクシ・ギガンティスの機神から飛び出して、レナがいるオメガデウス・ヴァルヤへ飛び乗って、レナと共にオメガデウス・ヴァルヤを操縦する。
クロが叫ぶ
「アルード! どんなに世界を書き換えようと…その歴史までは消せねぇ…。それがあるから未来がある」
オメガデウス・ヴァルヤが黄金の爆発を起こす。
そこから、無数の歴史の影達が飛び出して、その歴史の影達と共に二百億光年サイズのサルヴァード・シャヴァラスが立ち上がる。
鎧の不動明王の如きシャヴァラスが左手を掲げる。
その左手に九つの稲妻が降りて、龍の顎門となり、ゴッドレガリアシステムに改造された宇宙達へ伸びて巻き付く。
紫の蓮の花となった宇宙達を巻き付けた九つの龍達。
シャヴァラスが右手にある聖断の剣を掲げて突き上げる。
稲妻と炎のような力が放たれて、改造された宇宙達へ広がると、それに歴史の影達が続いて、改造された宇宙達を元に戻し始める。
白夜の如き世界が終焉する。白き世界が閉じて、宇宙があの深淵の紫へ戻っていく。
更にシャヴァラスが聖断の剣をゴッドレガリアシステムへ突き立てると、ゴッドレガリアシステムが弾かれて、接続していた宇宙達を切り離す。
アルテイル時空共和国の時空達が元の場所へ戻り、元の宇宙へ。
アルードは、信じられない…という顔だ。
そこへメディーサ・ディアとアシェイラも現れる。
アルードは二人を見て
「メディーサ、アシェイラ。このままでは終われない」
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次回……