白夜 73話 ガージェストの遺言
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アルテイル時空共和国への侵略戦争が終わって、クロ達は…
アルテイル時空共和国への周辺の時空国家達の戦争から数日…。
クロは、とある場所へ呼ばれていた。
そこは、多くの豪華な調度品が置かれた部屋で、その中心にあるベッドにガージェストが横になり、隣にある装置から様々なナノマシンや魔導工学から作られた治療装置が繋がれていた。
ガージェストがクロが来た気配を感じて
「来たか…」
と、ガージェストは、自分の意識と繋がっているシステムがガージェストのベッドの半分を起こして、ガージェストの顔を上げさせる。
その目の前にクロがいて、クロは鋭い顔のままだ。
ガージェストが「ふふ…」と笑いながら
「やっと、終わりが来てくれたよ」
と、老齢となった顔のシワに嬉しそうな笑みを浮かべる。
クロは
「家族は…って」
ガージェストが
「皆、死んださ。オレだけが生き残って…このザマだ」
クロが苛立ち気味に
「で、何の用だ?」
ガージェストが
「お前に、アルテイル時空共和国の評議会議長の座を譲ろうと思っていたが…その必要はないな。なにせ…お前はアルテイル時空共和国の全体を支える超越存在のエネルギー増幅装置のコアなんだから、実質…アルテイル時空共和国の支配者だろうから」
と、告げるとガージェストが念じて、部屋の隅にあった台車のドローンが動き、クロの前に来る。
クロの前に来た台車ドローンのテーブルには、一枚の端末が置かれている。
ガージェストが
「その端末には、今まで…どうやって、我々が法律やルールを作ったかの歴史が、その足跡が記されている。更に、秘匿にしているデータにもアクセスする権限も備わっている」
クロが溜息を漏らして
「これを、オレに与えてどういうつもりだ?」
ガージェストが
「それを…どう、生かすかは…クロード…お前に託す。好きに使え、アルテイル時空共和国の様々な組織や権力を握っている連中を支配する為に使うもよし。秘匿されたデータを皆に公開して、審判を問うのも良し。歴史を…我々がどうやって歩んできたのか…を忘れ去ってはいけない」
クロが端末を手にすると、端末がクロの生体データを取得して
”権限の付与を開始します。これよりアナタがマスターに変更されました”
アルテイル時空共和国の超空間ネットワークに整備された記録システムの最上位権限をクロが取得した。
超空間ネットワークを通じて得られた、様々なデータの全てをクロが見られるようになった。
それは、つまりアルテイル時空共和国の歴史を管理する立場になった…という事だ。
クロが手にした端末が光となり、ナノマシンの粒子となってクロに入る。
アルテイル時空共和国の歴史の管理者、レガリアを継承した。
クロが鋭く
「ガージェスト、オレは…お前をボロクソに書いて、歴史に刻むぞ」
ガージェストが笑み
「いいね…そうしてくれると助かる。私のような…オレのような野心や、権力、愚かな権力の獣を二度と出さないようにしてくれるなら…オレが生きた価値はある」
クロがガージェストの隣、傍に来て
「だったら、長生きしろ。醜く、オレより長く生きて、足掻け」
ガージェストが微笑みながら咽せて
「残念だが、もう…終わりだよ。だから…後は…よろしくお願いするよ」
と、ガージェストはベッドを下げさせる。
ガージェストは横になってクロを見つめて
「今でもお前が…うらやましい。正しさを持って、それから外れた場所から立ち去る勇気、その正しさを一人になっても貫く心の強さ。それがあったら…オレは…妻や子供達、家族を失う事はなかったろう」
クロがフンと鼻息を荒げて
「そうなる前に…」
ガージェストが笑みながら
「それが出来なかったから、この結末だ。誰一人として…大切な者達が残っていない。富みも権力も権勢も、所詮は…正しい者が手にしないと、破滅を導くだけ。後は…頼む」
クロが俯き
「バカ野郎。昔のように、オレは凄い人間なんだって、傲慢を見せやがれ」
ガージェストが微笑んでいると、ドアが開いた。
そこには、聖帝ディオスがいた。
ディオスが
「ガージェスト評議会議長、お呼びいただき感謝します」
ガージェストがゆっくりと手を上げて
「こちらへ…」
と、聖帝ディオスを呼び寄せる。
ディオスがその場にいるクロを見て、クロの隣に来ると、別の台車のドローンが来て、ディオスの隣に止まる。
ガージェストが
「聖帝ディオス様、それを…お受け取りください」
ディオスが隣に来た台車のドローンのテーブルにある小型の端末を手にして
「これは…」
ガージェストが
「貴方様なら、分かって頂けると思います」
ディオスが手にした小型端末を見つめて肯き
「分かりました」
と、懐にしまった。
ガージェストが
「クロード、オレは成仏する。後は…頼む。未来達を守ってくれ…」
クロが苛立ち気味に
「バカが! それは評議会議長のお前の仕事だろう」
ガージェストが優しく微笑み
「そうだ。最後の仕事は、お前に…」
それから三日後にガージェストは…星となった。
ガージェストの葬儀は、一部の近しい者達によって静かに行われた。昨今のアルテイル時空共和国への戦争、アルテイル時空大戦の戦後処理を優先した判断だ。
その葬儀の場に、クロも来て花を添えて…。
クロは一人、帰りの宇宙戦艦の客室でチョコレートスティックを噛んで
「本当に、最後の最後まで、面倒を押し付けやがって」
その空いている席に
「隣、良いかね?」
と、ディオスが来る。
クロと同じくガージェストの葬儀に参加したのだ。
クロは肯き、ディオスが隣に座ると
「クロ殿、この後は…アルテイル時空共和国の未来は、どうなると思うかね?」
クロがディオスにチョコレートスティックを渡して、ディオスが受け取り口にすると、クロは
「決まっている。アルード達が戻ってくる」
ディオスがチョコレートスティックを噛み切って飲み込み
「つまり…とんでもない事が起こるって事だな」
クロが鋭い視線で
「アルードの裏には、巨大な力のバックがある」
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次回、白夜の始まり




