白夜 70話 覚醒する者
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混迷する事態、それでも進む事態、その後に待つ者は…
レナ達は、全速力でクロが向かった場所へ。
クロの姿が消えた。
レナにクロの力が継承されている。
それでレナは全てを理解した。
クロは死ぬつもりだ。これから滅ぶ時空国家達に超越存在の種を残す礎になる為に…。
レナは一人、オメガデウス・ヴァルヤへ乗り込むと、今までクロがいなければ起動しなかったオメガデウス・ヴァルヤがレナだけで起動した。
レナは、オメガデウス・ヴァルヤ単騎でクロが向かった時空へ飛ぶ。
それに、他の仲間達が続く。
同時に、アルテイル時空共和国へ侵攻した時空国家達の制圧作戦が始まった。
◇◇◇◇◇
クロが入るケースを中心に、十二個の超越存在覚醒を待つ者達のケース達が円形に並ぶ場所、その上には五色の結晶と、それに繋がる脈動する液体円柱の装置、トリガー式の超越存在覚醒のシステムがクロが入るケース達と接続を開始する。
その周辺、システムの調節を端末の柱で行うミカボシ
ミカボシの後ろには、ネオシウス時空から追跡して来た双極であった超越存在の彼女アナスタシアと、アナスタシアの部下達が、超越存在覚醒を望む権力者の親衛隊と戦いを繰り広げていた。
エネルギー剣を交差させ、エネルギー剣の刃を飛ばしで銃器にしたり、エネルギー剣のエネルギーを広げて盾にしたり、絶え間ない近接と間合いのやり取りをする戦い。
アナスタシアがミカボシの元へ走る。
「オルス!」
だが、ミカボシの周囲に強力なエネルギーシールドが展開されて弾かれた。
アナスタシアが下がり、それを部下が支えて
「アナスタシア様、ここは!」
と、部下がエネルギーシールドを切断しようとしたが、弾かれる。
エネルギーシールドは、ミカボシとそのシステム達を守るように展開されている。
アナスタシアがミカボシの背中に叫ぶ
「もう、いいでしょう! こんな事をして何になるの? 私は…アナタが…悪者になるのが耐えられない。だから! 止めて!」
その声は全くミカボシに届いていない。
ミカボシは続ける。
目的を、作業を…
アナスタシアは再び立ち上がり、両手を合わせて自分の超越存在としての力を収束させる。
前面に黄金の粒子が集中して巨大な光の槍となり、それを握ってアナスタシアが前に進む。
弾こうとするエネルギーシールドを切り裂いていく光の槍。
ゆっくりとゆっくりとミカボシに近づく、アナスタシア。
そして、ミカボシの元まで来て、ミカボシの手を握った。
その瞬間、この場を収納する巨大なマシンタワーの外壁が破壊されて、そこからオメガデウス・ヴァルヤが出現する。
「クロぉぉぉぉぉぉぉ!」
レナが現れた。
レナが乗るオメガデウス・ヴァルヤが、巨大なミズアベハ、儀式が行われようとするそこへ突進した。
更に大荒れになる現場。
オメガデウス・ヴァルヤの突進で、その場が乱れるも、オメガデウス・ヴァルヤのコクピットからレナが飛び出して、両手にエネルギーソードを握ってクロがいるケースへ走る。
ミカボシの右手を握って固まるアナスタシア
ミカボシは、最後のキーを押した。
「これで…」
システムが起動した。
クロが入るケースとその周辺ケース達が光を放ち、巨大な光の柱となる。
それでもレナの走るのを止めない、ケースを破壊してクロを助けるまで。
だが、光の柱に弾かれて追い出されてしまう。
「クロぉぉぉぉぉぉぉ!」
と、レナは叫ぶ
嫌だ、クロがいなくなるなんて…だって私は、アナタが…大切だったから、生きて欲しかったから、あの時…
と、レナの記憶の彼方にいる彼女が叫んでいた。
ミカボシを掴むアナスタシアが
「止めて! オルス!」
ミカボシは光の柱を見つめて
「さあ、貴女様が目覚める時ですよ」
システムから起動した光の柱が光の速度を超えて、宇宙に突き立つ。
そして、光より早い速度で、宇宙へ光の根を広げる。
数秒で数百億光年、数千億光年と、指数的な速さで宇宙に広がる光の柱の根。
それを制圧作戦の為に突入したアルテイル時空共和国と他の宇宙王連合の部隊が見上げる。
その中にティリオもいた。
ティリオは、巨大な時空戦艦の中でその光景を見上げて
「なんだコレは…」
と、青ざめて驚愕していた。
その映像は、別の時空、聖帝ディオス達、宇宙王達が見守る会議室にも投影されていた。
宇宙王達が並ぶ席で、ディオスが立ち上がり
「そんな、バカな!」
宇宙に広がる光の根の現象を知っている。
ディオスの隣にいるアヌビスと充人が驚愕で見つめて、アヌビスが
「ディオス、これは…お前がかつて…セレソウム時空で行った極地顕現と…」
ディオスは肯き
「はい、同種の現象です」
宇宙に広がる光の大樹。
それを別の場所から見つめる彼、アルードは老齢の顔に笑みを浮かべてソファーに座り、その隣にメディーサ・ディアが立ち見つめる。
アルードが
「お帰り…アシェイラ」
宇宙に根を張って広がる光の大樹。
宇宙と高次元領域との境が繋がる。
三次元、四次元である宇宙が平面になり、宇宙に広がる光の大樹の根の先にある高次元領域が姿を見せる。
宇宙が二元の世界となる。天と元、高次元と宇宙、それを繋ぐ光の大樹。
その膨大なエネルギーと存在の力が互いに交わる。
それに…権力者達十二名は耐えられる訳がない。
権力者達十二名が入ったケースは光を放って白く燃えて消失した。
当然の結果である。
彼らは権力を奪い、人を惑わす才能と性質は持っているが、超越存在としての性質は皆無だ。
力は平等である。その資質がない者には罰を与える。平等ゆえに罰がある。
親衛隊達は、燃えて消失した権力者達に呆然とする。
クロは、無事でクロを通じてトリガー式の超越存在覚醒のシステムに高次元領域の力と存在が流れ込む。
あの液体円柱にクロを通じて力と存在が流れ込む。
相応しい彼女の復活が始まる。
そして、液体円柱が破壊されて、光が出現する。
その光が胎児となり、人の形へ、そして、それは金色の髪をなびかせる麗しい女性へ変貌し、裸体となってクロがいるケースの隣に着地する。
彼女は、クロがいるケースに微笑み、コツコツとクロを起こすように叩く。
全員が唖然としている間に、極地顕現となった光の柱は消失して、宇宙と高次元領域が離れて元に戻る。
金髪の女性がレナを見つけると、レナに微笑み
「おはよう。さ・く・ら…」
レナは、最初に戸惑うも、どこか…懐かしさを感じている自分がいた。
呆然としているアナスタシアの手をミカボシが解き、金髪の女性へ向かうと空間収納から一枚の布を取り出して、金髪の女性に渡す。
「これを…」
「ありがとう」
と、金髪の女性は受け取り身体に纏わせると、瞬時に布が服となって金髪の女性の衣装、スーツになる。
その場の何もかもが止まっている。
そこへ、歩いてくる者達がいる。
ローブを纏った老齢のアルードと、メディーサ・ディアだ。
二人は全体を通り過ぎて、金髪の女性へ近づくと老齢のアルードが
「やあ、アシェイラ…待たせたね」
金髪の女性、アシェイラは微笑みアルードを抱き締めて
「良いのよ。約束を守ってくれたから、迎えに来てくれたから」
ケースの中にいたクロが目を覚ますと、ケースが開きクロは頭を振って、周囲を確認する。
そして、老齢のアルード、メディーサ・ディア、アシェイラの三人を見て、驚愕した。
「そんな…」
老齢のアルードがクロに微笑み
「おはよう。兄さん」
ケースからクロが降りて棒立ちとなり、そこへレナが抱き付く。
クロは、抱き付かれたレナと、アルード達を交互に見て
「何が、起こっているんだ?」
老齢のアルードがクロに微笑みながら
「何だと思う? 兄さん…」
そこへ親衛隊の一人が
「どういう事だ!」
と、声を荒げてアルード達に迫る。
その両手にはエネルギー剣が握られている。
怒りに狂い、我を忘れている。
アルードが冷徹な視線を向かってくる親衛隊の一人に向けた。
怒りに狂って向かっていた親衛隊の一人が身を引かせた。
桁違いな殺気に血の気が引いた。
アルードが右手を挙げて
「ゴミ掃除をしないと…ね」
と、指を鳴らした瞬間、この宇宙、この時空国家と連なる時空国家達達の宇宙に、漆黒の巨大な傘型のバケモノが出現する。
その大きさ数百億光年サイズだ。
漆黒の傘型のバケモノの全身から無限の数の触手が伸びている。
その触手は、手形で手の平の三つの目と三方向に裂けた口を持つ、喰手触手だ。
サタンヴァルデット、罪喰らいの大神だった。
アルードが封印を解除する。
「この世界の罪人共を喰らい尽くせ」
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次回、有罪殲滅の後