白夜 68話 争いに美談は存在しない 後編
次話を読んでいただきありがとうございます。
ディオス達が会議した結果をクロに持ち込み、それにクロは…
ディオスは、アルテイル時空共和国に向かう。
その時空戦艦の席に座るディオスが
「全く…こんな事になるとは…」
自分の運命を恨む。
多くの出会い、幸せがディオスの元に来た。
それと同時に、とんでもない厄介事も舞い込む。
これも、聖帝ディオスの宿命なのか…とディオスは頭を痛めていると、クロがいる星艦に到着した。
三十億キロという星系サイズの存在へディオスを乗せた時空戦艦が入る。
ディオスは、時空戦艦から下りてクロを探す。
呼び出しではない、ディオスの超越存在としての知覚、サードアイでクロを探すと、クロがいる場所へ向かう。
クロは、一人…外が見える巨大な窓の縁に腰掛けていた。
ディオスが
「元気そうか?」
クロがディオスに視線を向ける。僅かな苛立ちが見える。
「そう見えるか?」
ディオスがフンと鼻息を荒げて
「その返答、聞いて良かったよ」
クロが戦いを望む戦闘狂だったら、あまり関わりたくないが、違う。
クロは、最も戦いから遠ざかりたい性質が強い。
「何の用だ?」
と、クロには苛立ちが見える。
連日の戦い、疲労ではない。精神的に参っているのだ。
向かってくる相手を一方的に嬲る。それがクロにとって苦痛なのだ。
どんなに相手へ拒絶を示しても、相手が止めない。
最悪な時空間戦争がここにある。
ディオスが
「我々が話し合った事を伝える」
防衛をし続けて相手が疲弊してしまうのを待つか…ディオス達の計算では、一年も持たないだろう…と
それか、相手に攻め入って…侵略してしまうか…。
その話の内容を聞いてクロが皮肉な笑みを零す。
「どっちも最低な結論じゃあないか…」
ディオスが厳しい顔で
「それが現実だ。全てが救われる結末なんて、夢か、ドラマのようなフィクションの中にしか存在しない」
クロが
「アンタは聖帝ディオスだろう。どんな事でも救ってきた存在だろう」
ディオスが冷たい視線で
「この事態は、救うに値する事か?」
クロが苛立った顔になり
「どうでもいい、狂気に走った連中の愚行だ」
ディオスが
「その通りだ。救いを求めて手を伸ばす者達なら、私も全力で救おうと出来る。だが、これは、愚かで狂った、最悪な大義名分というラッピングで覆った愚行だ」
クロが天井を見上げて
「愚行の結末は、滅びでしかない」
ディオスが
「緩やかに滅びさせるか、早めに滅ぼすか…結末は決まっている」
クロがディオスを見つめて
「アンタ達の支援は?」
ディオスが
「防衛でも侵攻でも、どちらでも物資の支援は継続する。選んでくれ」
「ハハハハハ!」とクロは乾いた笑い声の後で
「どっちも地獄しか残らねぇ! 現実だよ!」
ディオスが厳しい顔で
「そうだな。その通りだ。現実は、どちらを選んでも最悪な選択しかない」
クロが悲しい視線で
「アンタ達は、どっちを選んで欲しい」
ディオスが眉間を寄せて怒りを隠して
「早期決着だ」
クロが
「奪い取れってか…」
ディオスは無言で肯定した。
クロが窓の縁から離れて
「少し考えさせてくれ」
と、ディオスの横を通り過ぎて、ドアへ向かい
「オレは、よう…五百年前の過去の亡霊なんだぜ。それを再び、繰り返せって、なんだよ。それって、ごめん被りたいぜ」
と、愚痴をこぼして出て行った。
そして、クロは廊下を歩み…レナを探す。
レナは、他の仲間達と一緒に今後の対応を、マキナの格納庫で話し合っていた。
レナの隣には、ナイツの六人…クリニア、ナルファ、アークア、ガルダス、ジェイス、アヴァロ、そして彼ら彼女らの君主アークシアと付き騎士のロゼストがいる。
レナとナイツ達、そして、ベイルラム・インダストリーのミリアスもいる。
大人数がいるそこへ、クロが向かう。
アルテイル時空共和国の時空間図を前に話し合う大人数へクロが近づき、レナが気付いた。
「クロ」
と、レナが呼びかける。
クロが
「よう。どうだ?」
ロゼストが
「我々は、防衛を続ける事ができる。相手が疲弊して、停戦を申し込めるくらいの期間になるまで、余裕はある」
ミリアスが
「私達は、聖帝ディオスといった宇宙王達の連合の支援があるお陰で、停戦後に大変な事にはならないけど…」
アークシアが
「停戦した周辺の時空国家達は、完全に破綻するでしょうね。全ての資源、エネルギーを使い切り…どこかの支援か、支配下に入らなければ…」
クリニアがクロに近づき
「父上、もし…早期決着を望むなら…今、支援と戦力が十分な内に…」
アヴァロが
「親父が、聖帝ディオス側の繋がりや、アークシア様や、八雷神の力を何とかしてくれたお陰で、オレ達は…余裕を持って戦える」
そこへ「クロさん」とライアス達が来た。
ライアスがクロに苦しそうな顔を向けて
「ボク達、四大王家も…事態の解決の為に力を惜しみません」
全員の視線がクロに集中する。
ここでも結論は変わらない。早期決着の為の侵攻。
その決断をクロに…
クロは少し俯いた後、顔を上げて
「総力戦だ。早期決着させる。今、攻めてきている周辺の時空国家達を制圧する」
決断してくれた。
その決断を黙って全員が受け入れた。
直ぐに周辺の時空国家達への制圧を開始する軍団の編成が始まり、二日以内に終わる。
同時に聖帝ディオス側が、無距離無限無軌道砲台デウスバベルをクロ達に貸す事を許した。
もう、明日にはアルテイル時空共和国へ戦争を仕掛けた周辺の時空国家達への侵攻が開始する。
その前夜、クロはレナを連れて近くの惑星の都市を歩く。
クロは、レナと一緒に歩き、喫茶店に寄ったり散策したりと過ごす。
レナは唐突なクロとのデートの戸惑いはない。
何となくクロがツラそうなのを分かっていたからだ。
それでクロの気晴らしになれば…とレナは付き合う。
クロがとある公園、サクラの木といった四季折々の花の木が咲いている公園で
「レナ、ありがとうな。オレをこの世に戻してくれ。そして、オレの隣にいてくれ、ありがとうな。大好きだよ」
と、告げてレナの頭をなで額にキスをした。
レナは困惑していると、クロはそれに微笑みを向けた。
そして、侵攻の日になった。
そこには、クロがいなかった。
クロは、一人、エンジェリオンに乗って戦っている時空国家達へ向かった。
レナに自分の超越存在としての力の全てを受け渡した後で…だ。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、いびつな力