白夜 65話 真っ黒で真っ白な戦争 前編
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クロが攻撃されて、そして始まっていく事態、広がっていく悪意の波は…
アースガイヤにある、とある取調室
そこに例の者、獣人型装甲の中身の男が取り調べを受けていた。
獣人型装甲の男は両腕を拘束され、力を制御される魔法によって抑えられている。
取調室の中が見える部屋でクロが男を凝視している。
その隣にディオスが来て
「あの男、黙秘している」
クロが厳しい顔をして
「オレを殺して超越存在としての力を奪う争奪戦をしている…と」
ディオスもクロが見ている男を見つめて
「アースガイヤを包囲した時空戦艦の艦隊は、我々で取り押さえた」
クロが視線を取調室へ向けたまま
「どんな時空戦艦だった?」
ディオスが苦しそうな顔で
「時空戦艦には一人しか乗っていない。そして…時空戦艦のシステムと…融合していた」
クロが苦しむ顔で
「人体改造の産物かよ…」
ディオスが悲しい感じで
「嫌なモノだ。アースガイヤにも昔…似たような事件があって…何時、見ても…怒りと悲しみしか感じない」
クロが取調室から背を向けて
「命をモノにするクソ共がいるって事か…」
ディオスもそれに続きクロと共に取調室から出て
「君に聞きたい事がある。これだ」
と、通路に出たクロにデータプレートを差し向ける。
クロがそれを受け取りデータを見て
「これは…ミズアベハという装置だ」
獣人型装甲の男と、共に攻めてきた時空戦艦の動力源になっていた装置の解析データだ。
ディオスが
「これについて…君は知っているんだね?」
その問いかけにクロは無言で頷く。
ディオスが
「教えてくれ。これは、我々が持ってる技術、高次元領域との接続をするシステム、ゾディファールと似た系統だが、違う部分がある。ゾディファールは、神格側へ呼びかけて高次元領域へ接続する。これは…高次元領域とこの次元とを直接に繋げるような感じでアムザクの遺産に近い」
クロが通路の廊下に背も垂れて
「昔の話だ。凄く…そう、もの凄く昔の話で、とある青い大地の惑星の話だ」
と、クロが思い出すように天井を見上げて
「その惑星は、宇宙に出るレベルの文明ではなく、地表で機械を生み出して大地に囚われた。今の時空レベルの世界からしたら猿山レベルの時代の世界に朝日インダストリーという会社があった」
ディオスが眉間を寄せて
「アサヒ・インダストリー」
クロがディオスを見つめて
「どうした?」
険しい顔をしていたディオスが頭を振って
「いや、続けてくれ」
クロが頷き「じゃあ、続ける」として
「そのアサヒ・インダストリーが、ナンベイという大陸で…とある装置を発見した。それが…ミズアベハ、現地住民から神の祭壇という意味でミズアベハと呼ばれていた。それを回収した。まあ、本当の目的は、アサヒ・インダストリーが公開禁止の大量破壊兵器の設計図をテロリストに横流しをして、その受け渡しをさせた社員が、確実に口封じされたか?を確認する途中だったらしいが」
ディオスが俯き気味に
「もしかして、その受け渡しの口封じにされた社員の名は…杉田 優志郞…という」
クロが笑み
「なんだよ。調べていたのか…だったら話は早い。そのアサヒ・インダストリーはぶっ潰れたが、そのアサヒ・インダストリーが極秘裏に作った組織がある。それがユーティック機関、このミズアベハを解析して様々な技術を開発して、その地表に縛られる惑星の民を宇宙民に変えたのさ」
ディオスがクロを見つめて
「そうか、つまり、君達の…クロ達の時空は…枝分かれした時の…」
クロが首を傾げて
「どういう事だ?」
ディオスは頭を振って
「いや、いい。続けてくれ」
クロが少し悲しげに
「ユーティック機関は、表に現れず…様々な勢力の裏に隠れて、その研究を続けてきた。オレが生まれたユニックインダストリーも…そのユーティック機関から別れた組織だ」
ディオスが顎を摩り
「つまり、そのユーティック機関が…今回の事件の裏に…」
クロが頷き
「ああ…そうだろうな。ミズアベハを様々に使う技術は…ユーティック機関の十八番だからな」
ディオスが呆れるような溜息の後に
「つまり、そのユーティック機関を潰さない限り…」
クロが皮肉な笑みで
「どうだろうな…ユーティック機関は、権力的な事には関わらない。だた、その技術を与えて、どうなるかって見ている事が多い。もしかしたら、知らない間にユーティック機関に組み込まれていた…なんて方が多いのかもしれない」
ディオスとクロが話し合っているそこへ、アーヴィングが来て
「ディオスさん」
と、その顔は焦りだ。
ディオスがアーヴィングに
「どうしたんだ?」
アーヴィングが青ざめた顔で
「とんでもない事になっています」
◇◇◇◇◇
クロとディオスは、アーヴィングと共に、アースガイヤにある軌道エレベーターコロニーのミリオンの中央区へ来て、中央区のコロニーにある巨大ビル、ミリオンのコントロールホールの巨大画面に映る映像を見る。
コントロールホールには、レナ達も来ていて
「クロ」
と、レナを前にナイツの六人が続いてクロに近づく。
クロは厳しい顔で
「レナ…」
レナが
「クロ、アルテイル時空共和国の周辺の時空国家達が」
と、巨大画面を指さす。
その巨大画面には、高々と宣言する者がいた。
「我らは! 卑怯千万の超越存在達の連合に打ち勝つ!
この世には、絶対の悪がある!
それは、超越存在の力を独占する超越存在の連合、聖帝ディオスの一団だ。
我々は断固して、この巨悪に立ち向かう!
そして、超越存在の力を手に入れて! 我々の世界の幸福を取り戻す!!!!
ここに、有罪布告をする!
超越存在の力を独占して、世界を支配しようと企てる、超越存在の王達!
聖帝ディオス達に、神罰の聖戦を開始する!!!!!!!!」
その映像にディオスは額を抱えて絶望する。
クロは怒りと失望に似た感情で見つめる。
不安な顔でレナがクロの袖を掴み
「どうなるの? クロ…」
クロが怒りの顔を隠す為に手で覆って
「同じだ。オレが…戦った真っ黒で真っ白な戦争。最悪な五百年前と…」
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次回、真っ黒で真っ白な戦争 後編