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天元突破の超越達〜幽玄の王〜  作者: 赤地鎌
アニエス事変
101/1105

第100話 ロマリア帝国、七十年前の真実

次話を読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりと楽しんでいってください。

あらすじです。


ディオスはロマリア、先々代皇帝、上皇と会談。それによって七十年前に起こった悲劇の真相を聞かされた。


 ディオスは、ロマリアの皇帝城の大きな晩餐会を終えた夜、ライドルがディオスを連れて飛空艇に乗せて、とある場所へ向かう。

 皇帝城より数百キロ離れたとある領地の城にある飛空艇空港に着陸、そのままその城へ入った。


 飛空艇空港と繋がる城に入ったディオスは、目の前を行くライドルに

「皇帝陛下…その…自分にお会いしたいという人物は…?」


 ライドルはニヤリと笑みを横見させ

「来れば分かる」


 そうして、城の奥へ行く…大きな客間のホールに到着した。


 幾つもの柔らかく赤いソファーがあるそのホールの客間の真ん中のテーブルの席に一人の老人が座っている。


 白い綺麗な身なりに、魔族特有の曲がり角を持ったその老人は、ライドルとディオスを見て立ち上がり

「今か今かと待っていたぞライドル」

と、口ひげを蓄えた口元を笑みに曲げる。


 ライドルが微笑み

「申し訳ない、お爺様。今後の事を話し合っていたら、白熱してしまって…」

 

 ディオスはジーと青髪青目の魔族の老人を見つめ

 あれ? なんか…どことなくライドル皇帝に似ているぞ…。


 ライドルが老人に手を向け

「紹介する。ワシのお爺様、先々代ロマリア皇帝、上皇のイルドラ様だ」


「ああ…」とディオスは戸惑いつつ頭を下げ

「お初にお目に掛かります。ディオス・グレンテルです。その…先々代皇帝陛下」


 イルドラはニヤリと笑み

「そんな堅苦しい挨拶はいいから、こっちに来い!」

 二人を手招きして、自分の斜めにあるソファーに座らせる。


 そうすると、入口のドアが開き、ティーセットの乗った台車を運んでくるライドルより上の中高年の婦人が来た。

「やっと来たのでね。お父様…」


 婦人はトリーアというイルドラの息子の嫁である。そして…

「すまんのぉトリーア。こんな遅くまで」


 トリーアは微笑んで

「いいんですよ。お父様のお客をもてなすのは、わたしの紅茶と決まっているのですから」


 ディオスは魔族の金髪のトリーアを見つめ

「実の娘ですか? という事はライドル皇帝陛下の伯母様?」


 トリーアは微笑み

「お父様の養子でした。ですが…」


 イルドラが

「何と…血を分けた息子と結ばれて、名実ともに本当の娘になってしまったのだよ」


 ディオスは隣にいるライドルを見る。

「んん…まあ」とライドルは照れて「その…養子にした子供達や、血を分けた子供達は優秀な者達が多くてなぁ。恋という刺激より、傍にいて安心できる存在を欲する。実を言うと…ワシの養子や子達もそのようになった者がおる。お爺様の時も、前代の父上の時もまあぁ…あったのだよ」


 トリーアは紅茶をディオス達やイルドラに置いて

「どうぞ…」


「ああ…ありがとうございます」

 ディオスは紅茶の香りを嗅いで

「ああ…ロマリア産のストレートですね。この甘い香りが何とも…気持ちを落ち着ける」


「ええ…少量の黒糖を入れて、それがじっくりと溶けるのを味わうのが一番なんですよ」

 トリーアは嬉しそうに語る。


「じゃあ…」

と、ディオスは黒糖ポッドにあった黒糖の欠片を入れて、紅茶を楽しむ。

「うめぇ…」とディオスはつぶやく。


 ふふ…イルドラは笑みながら

「ライドル。どんな事を話しておった?」


 ライドルは得意げに

「ロマリア、アーリシア、アリストスとの巨大な交易網の構築、共同での国境防衛、その為のグランスヴァイン級魔法運用者をロマリアへ。さらに、次なるアーリシア、ロマリア、アリストス、そして…ユグラシア中央部の国々との合同会議等です」


「く…」とイルドラは嬉しそうに「羨ましいのぉ…」


 ライドルは紅茶を飲みながら

「ですから、お爺様や父上、叔父様達、伯母様達に外交の努力をして貰う必要性が高まったので、暢気に城にいてお茶をすするなんて出来ませんぞ」


 イルドラはパンパンと膝を叩き

「分かっとる。精々、気張るまでよ! こんなやりがいのある時代は初めてじゃわい」


 ライドルが

「秘密だった外交は無くなり、今やロマリアを代表として、堂々とトルキア、アーリシア、アリストス、アフーリア、その他、諸国への漫遊ですぞ」


 イルドラは腕を掲げ

「任せて置け!」

 楽しそうに答える。


 ディオスはそれを見て

「もしかして…ロマリアは、今までも水面下で色々と…」


 イルドラが肯き

「お主の言う通りじゃ。非公式だが…トルキアや、アーリシア、他の諸国へ訪れておった。ロマリアという巨大な国を支えるには、どうしても外との繋がりは必須じゃ。そのパイプをしているのが、ロマリア統治より離れた我ら老骨の役目」


 ライドルが

「本当に良い時代が来た。七十数年…長かった…」

 噛み締めるように告げる。


 ディオスは七十年前を思い浮かべると…

 ああ…そうだ、確かロマリアが曙光国の傍にあった半島を侵略した年だった。

 それ年以降、ロマリアは対外的に強硬な政策となって、色々と国境問題を起こしていた。

 強硬になったロマリアの外交的繋がりを請け負っていたのがロマリアの意向に近い

 四つに割れた華中国の一つ、北にある北華中国に

 ユグラシア中央のインドル共和王国から巨大な山脈を挟んで離れていた少数の国々、つまり、ユグラシア東部分だ。


 イルドラが懐から一枚の写真を取り出す。

「ディオス。この男に見覚えはあるか?」


 ディオスは、その写真を手に取る。

 多くの人が写る真ん中、丸印をされている男、口ひげにほっそりとした…。

「え!」

 そう、マッドハッターその者だ。


 ディオスが

「何時の写真ですか?」


 その反応にイルドラが知っていると確信して

「かれこれ七十年前のモノじゃ」


 ディオスは渋い顔で

「はぁ…七十年。全く今の現在でも同じという事は…」

 マッドハッターは、エルフのように長寿なのかもしれん。

 エビルの外法に通じている連中もいるんだ。禁忌の魔法によって不老という可能性も…。

「モルドスの事件の首魁で、金属の体を持つドラゴンの大軍勢を従えていた男です」


 ライドルとイルドラは視線を交わし、イルドラが

「左様か…全くコイツは…忌々しい」


 ディオスが

「何か因縁でも?」


 イルドラが腕を組み苦しそうに眉間を寄せて

「因縁も何も…ロマリアが世界から孤立するようになった切っ掛けを作った男でもある」


 ディオスは紅茶を飲んで

「そのお話を…」


 イルドラが

「その為にディオス、お主を呼んで貰った。少々、老人の昔話に付き合ってくれるか?」


「是非、お願いします」

 ディオスは頭を下げる。


 イルドラが語り出す。

「アレは…今から七十数年前、ワシが皇帝になって五年過ぎた頃じゃ」


 当時、ロマリアは色んな国と交易を通じていた普通の国だった。

 そんなある年、とんでもない事態が世界を震撼させる。

 

 ブラックウィーク


 世界中の鉱物や食料の先物取引をしている相場が、一気に大高騰して、殆どの銘柄が最高値を更新。

 先物取引が大いに儲かった。

 それで、長者になった者達が続出した。

 

 今では株取引は、直接投資する企業へ資金を出して株を貰い、その売買は禁止されているが、その当時は株の売買は許されていた。

 株は、先物取引の影響で高騰、連日ストップ高が続いた。


 それが、とんでもない底なしの落とし穴の入口だった。


 高騰する先物取引の価格によって、資源の値段が高騰、多くの企業が資材確保の困難に陥り、全く物を生産出来ない状態となってしまった。

 それでも、先物取引の価格は高騰、遂に…一切生産が出来ない状態へ世界が転じた。


 食料、物資が無くなった国々は…一気に絶望的状態へ転じる。


 資金があっても何も買えない状態は、紙幣社会を崩壊させ、一気に

 ハイパーインフレに突入、株も資産も紙くず同然となってしまった。


 ディオスが

「歴史で勉強しています。ディスペア・ワールド…」


 イルドラは語る。

 「アーリシアや、ロマリアは、個々の小さな地産地消のシステムに国内が移行していた。

 皮肉な事に、ヴァシロウスの所為で、分断された場合、個々に何とかするというシステムに変わり、小さな地産地消の都市が、ネットワークのように繋がって、余剰物資を交流させるという

 マスシステム社会「小規模群体機構」のお陰で、その煽りを受けるのが少なかった…。

 アリストス共和帝国は、この状態がおかしいと踏んでいて、セーブしていたお陰で、同じく影響も少なかった。

 だが…そうでない。社会は、大ダメージを受けた。

 アフーリア大陸、ユグラシア中央部と東に南部、アルスートリ大陸。

 国が崩壊する一歩手前の状態だった。

 毎日、食料を求める暴動が起こり、民や国は疲弊。

 そうした時に、人間はどのような事をすると思う?」


 ディオスは、地球での嫌な事を思い出した。

 そう、纏まる為に

「外に敵を作る」


 イルドラは肯き

「その通り、あろう事か、その影響が小さかったアーリシアやロマリアにアリストスが、このような事態を起こした張本人だとして、我らを敵だと名指しにした。

 無論、そのような事はないと、我らは反論して、このような事態を起こした存在を追跡した。

 そして…その先物取引に膨大な資金を送り込んだ人物を特定した。

 それが、先程見せた男だった。

 お金が紙くずになり、社会を混乱のドツボに落としいれる事に何の意味があると、我らは理解に苦しんだ」


 ディオスは「チィ」と舌打ちする。

「連中、その男が絡んでいる組織は、世界を混乱に陥れるのが目的です。そのようにする為に」


 イルドラは悔しそうな顔で

「それにもっと早く気付きたかった」

語りを続ける。

「そして、世界は争いの方向へ向かった。

 ユグラシア東のロマリアの次に大きな華中国と、その半島にあった星麗王国が、ロマリアに向けて強硬政策を始めた。

 事態を起こした賠償をしろ、資源を寄越せとなぁ…。

 国民の不満を外に向ける為のガス抜き…それが目的だ。

 そんな時、絶望の中にあった曙光国が復興した。

 その復興を見た星麗王国と、華中国は、余計に焦り、我がロマリアと一触即発の事態までになった。

 その賛同として、復興した曙光国に星麗王国が呼び掛けていた。

 我らロマリアは、それに賛同しないよう、曙光国と密約を交わした。

 資源や交易を優先的に行うという秘密の外交だ。

 曙光国も、面倒な事に巻き込まれたくないとして、その密約を呑んだ。

 それによって星麗王国も華中国も動けない。二つの国は完全に疲弊して、後押しがなければ戦いが出来ない状態だったからじゃ。

 復興した曙光国の後押しも無く、睨み合いが続いた時、唐突に曙光国は星麗王国との間にあった領土問題の解決に乗り出した。

 それに焦った星麗王国は、その対処に力を向けた瞬間、信じられない事が起こった。

 ロマリア内部に、外国からの圧力に屈してはならないとする、強硬派が民意私兵団という武装組織を動かして星麗王国を攻めたのじゃ。

 一気に戦争の火蓋が切られ、星麗王国、華中国、ロマリアの大戦が勃発した。

 疲弊していた星麗王国はあっと言う間に陥落。

 華中国を巡ってインドル共和王国まで参戦、ロマリアの次に大きかった華中国は、北部をロマリアが呑み込み、北華中国と、南華王国、ルイグル共和国、央華共和国の四つに分裂した。

 後々に、曙光国へ来た時に、何故…そんな事を起こしたと聞いたのじゃ。

 曙光国は、復興する為の資源を提供してくれた人物が、その返却を求めてに来た。

 そんな事をすれば曙光国は崩壊する。

 その人物が、それが出来ないなら、星麗王国と国境問題を起こしている事態の解決をせよと迫り、やむなくそうする事となったらしい。

 その人物は、写真にあった世界をどん底にした男だった。

 後の祭りだが…全ては大きな大戦を生み出す為に仕組まれていだ」


 イルドラの歴史語りは終わった。

「これによってロマリアは、世界で侵攻覇道を行った国として、国々と国境問題を起こす事になったのじゃ」


 ディオスは眉間を寄せ、そこへ右手を当て

「その…民意私兵団というのを潰せなかったのですか?」


 イルドラは頭を振り

「ロマリアを敵として認定していた国を倒した功績を、民が認めてしまい。どうする事も出来なかった。その所為で外には強く迫り、内には甘いという、何とも都合がいい皇帝を演じるしかなかった」


 ディオスは、エニグマのいた民意私兵団という組織に

 おそらく、ロマリア内部で色々と操作をしていたのだろうなぁ…

 そんな事を過ぎらせた。


 ライドルが

「お爺様が父上に、代を譲る時に、お爺様は父上に頭を下げていた。

”こんな国にして申し訳ない。自分の力不足だった”

と…」

 ライドルは天井を見上げ

「父上は、謝るお爺様の手を取って、必ず何とかしてみせると言った。だが…やはり、力及ばす。ワシの代になる時に、お爺様と同じくワシに謝っていた。

”覇道の皇帝を演じなければならない”

 そんな業をワシは背負ってしまった」


 イルドラが

「だが…その業が終わる時が来た。それをもたらしてくれたのは、お主じゃ。ディオス」

と微笑む。


 ディオスは頭を振って

「正直に言います。オレにはそんな大きな力なんてない。だから…色んな人を頼って、それで巻き込んでしまう。はた迷惑ではないかと…自身では思っています」


 イルドラがディオスの肩に手を置いて

「それでいい。お主は自分の限界を知っている。故に、人に頼り、人に尽くす。そんなお主だからこそ。世界が動くのだ。お主は、まさに世界を動かす光明の風だ。現に、ロマリアの覇王という業を吹き飛ばしてくれた。

 今まで秘匿外交として国々を回っていたが、今や正式な外交特使として、世界を回れる。こんな幸せな事はない。感謝するアーリシアの大英雄よ」

 

 ディオスは照れくさそうに

「良いですよ。それよりも、もっと頼る事になるかもしれませんから…」


 イルドラとライドルは肯き微笑み。


「それでじゃ」とイルドラが

「お主…子供が三人いるのじゃろう。だったら…一人くらいのぉ…。家の一族と許嫁というのは?」


 ディオスの右眉間がピクッと動き

 またそれかい!

 内心でツッコむ。


 ライドルが

「ディオス、お前は家族思いだ。故に…どうだ? ロマリアでもう一つ家庭を持つというのは? いい嫁を見繕ってやるぞ」

 楽しげに笑む。


 ディオスは内心で

 クソ! 娘と一緒じゃねぇか!

 ツッコみ

「まあ…色々とあるので…それは問題が…」

 やんわりお断りする。


 イルドラが「チィ」と舌打ちして

「堅いのぉ…。もう少し、そこを柔らかくせんか」


 ライドルが

「ねぇ、こうでしょう。お爺様。本当に…」


 ディオスは

「ははははは」

と、堅く笑った。




 同時刻、アーリシアとアリストスがあるアンメリカ大陸の間にある西大洋の深海で、一隻の深海探査魔導艇が、光さえ届かない深海でとある存在を発見する。

 その魔導艇に乗っているのは、エニグマのアズナブル達である。


 操縦桿を握るレイドが

「アズナブル様…。おそらく、これが例の試験機だと思われます」


 アズナブルがそれを見つめ

「ほぅ…真っ二つだなぁ…」


 その脇にいるララーナが

「動力炉が何らの為に爆発して、このような状態なのでしょうか?」


 アズナブルは肯き

「おそらくな…」


 レイドが

「回収の為の作業に入ります」


 アズナブル達が回収しようとしている物は、白銀に輝く人型の機体。

 その意匠はエルギアと酷似していた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次話があります。よろしくお願いします。

ありがとうございました。

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