白夜 62話 後日談 後編
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クロ達がアースガイヤで過ごす日々、そして…
クロは、一人でノンビリと小川のほとりを歩いていた。
ディオスの屋敷の近くにあるフェニックス町の近くを流れる小川。
そこには落ち着いた田舎町の風景があった。
その小川のほとり、小さな橋がある岸辺に座り、クロは空を見上げて
「久しぶりだな…こんなにノンビリするのは…」
と、落ち着いた時間を楽しんでいると…
「あれ? クロさん?」
と、声を掛けるのはティリオだった。
ティリオの回りには、妻達のエアリナ、ジュリア、アリル、ナリルの四人がいて、各々の奥方が生んだティリオの子達、赤ちゃん四人を乗せた四人乗りベビーカーをティリオが押していた。
クロがティリオに
「おや、散歩かい?」
ティリオが頷き
「ええ…良い天気ですし…家族で」
クロはフッと笑ってしまう。
ティリオは十八になる二十代前の少年とは言えない、青年?みたいな若い子が四人の子を持つ父親に、若いお父さんだなぁ…と思いつつも、ティリオのようにドッシリと落ち着いているなら…問題もないか…と
ティリオが
「レナさんや他の方達は?」
クロが
「ディオスの子供達と連んで、遊び回っているよ」
ティリオが四人乗りのベビーカーを妻達に任せて
「一緒に行かなくて良いんですか?」
クロが微笑みながら
「良いんだよ。アイツらにはアイツらの世界がある」
ティリオが当然の如くクロの隣に座る。
クロが困惑して
「なんだよ。いきなり…」
ティリオは微笑んで
「いいじゃないですか。お互いに知らない仲じゃあないし」
と、ティリオが告げると、妻達はここで休憩という事になり、小川で大家族のティリオと、一人オッサンのクロの穏やかな休憩が始まる。
ティリオの妻のエアリナが
「はい、抱っこしてみる?」
と、男の子の赤子をクロに
クロが戸惑いつつも
「良いのかよ…」
ティリオが微笑み
「いいでしょう」
クロが赤子を抱っこして膝の上にのせる。
赤ん坊はジッとクロを見つめる。
純真で無垢だが、何かを訴えるようで、語りかける視線
それにクロは
「どっちを向きたい?」
赤ん坊はクロだけを見つめる。
クロが
「このままでいいか?」
赤ん坊は視線で答える。
クロは抱えて膝に座らせたままにする事にした。
ティリオが
「クロさんは、家族は?」
クロが空を見上げて
「いねぇよ。もう…昔に…いなくなったさ」
ティリオが
「レナさんは家族じゃあないんですか?」
クロは
「レナはオレの次だ」
ティリオが少し真剣な目で
「レナさんがクロさんの力を継承する次世代…」
クロが微笑み
「そうさ。五百年前の過去の亡霊の時代は終わったんだ。新しい世代、レナ達の時代だ。だから、オレは…近い内に…」
そう、終わりが…
ティリオが
「そうなると、レナさんは悲しむと思うので、きっと…」
クロが達観した顔で
「未来なんて分からない。でも、自分が死期だけは、感じられる。年を取るってのはそんなもんさ。生きる為に生きるんじゃなくて、死ぬために生きる。天命、我に有り。全ては…天命、運命のままにさ」
ティリオが少し悲しそうな顔で
「それでも、少しは足掻いてみませんか?」
クロがティリオを見つめて
「なんでだ?」
ティリオが少し悲しい笑みで
「ボクもクロさんがいなくなるのは…さみしいから」
クロがフッと笑み
「おいおい、将来は聖帝ディオスの後を継ぐ、次世代なんだろう。オレという亡霊の残滓に関わっていたら輝かしい未来が曇るぞ」
ティリオは真っ直ぐとした目で
「ボクは、そう思っていません。アナタだって苦しんで傷ついて、悲しんで、選んで、必死に泥臭く頑張って歩んだ人だ。それが分かる。父さんやオジさん達と同じ、誰かを守る為に、誰かを救う為に、必死に頑張ってきた人だ。そんな人を…失いたくない。それだけです」
クロが微笑みながら
「悪いが、そういうご期待には…添えない。ごめんな」
ティリオが真っ直ぐとクロを見つめて
「謝らないでください」
クロが呆れつつ
「じゃあ、どうしろって?」
ティリオが
「約束してください。運命に抵抗してみるって」
クロが抱えている赤子を優しくティリオに戻して
「できない。できない約束はしない」
ティリオが
「それでも、ウソでもいいですから。約束してください。そして、再び…ボクの子供達を抱っこしてください」
クロは困惑してしまう。
「オレは、ウソをついて生きたくない」
ティリオが
「じゃあ、近い内でいいです。また、アースガイヤに来て、ボク達の子供の相手をしてください。それなら約束してもいいですよね」
クロは強引に食い下がるティリオに呆れるも
「分かったよ。近い内に、また、アースガイヤにここに来る。約束するよ」
近い内、それは…期限がない。時間の束縛もない、あやふやで曖昧で、適当で
でも、それでも…
ティリオが頷き
「約束しましたよ」
クロとティリオは約束を交わした。
◇◇◇◇◇
老人のアルードの元へ、彼女が来る。
ディアだ。
老人のアルードがいる部屋、様々な宇宙を観測できるブック達が置かれた書斎。
そのテーブルには、矢印型の白い仮面アムザクが置かれている。
ディアが老人のアルードの元へ来て
「久しぶりね。アルード」
老人のアルードは微笑み
「ああ…復活、おめでとうメディーサ」
ディアだったメディーサが
「しかし、バレないモノね。クロードに…仕草を指摘された時は、焦ったけど」
老人のアルードが額を小突き
「ちょっと兄さんの認識力に介入していてね。認識の誤差を与えていたのさ。兄さんは確証がない事は、絶対に信じない。少しでも確証がないなら、白と判断する」
メディーサ・ディアが
「で、今後の事は? アシェイラは?」
老人のアルードが微笑み
「手筈は整っている。アシェイラも復活する。大丈夫だ」
メディーサ・ディアは微笑みながら
「クロードなら、絶対に大丈夫でしょうね」
老人のアルードが嬉しそうに手を叩き
「ああ…間違いない。兄さんは、英雄だ! 絶対に勝つ。だって…自分の次世代がいるんだ。命がけで、勝ち続ける」
メディーサ・ディアが
「しかし、アルードも趣味が悪いわね。レナ1112が…」
老人のアルードが嬉しそうに
「皮肉だろう。サクラの誕生日と同じ番号なんだから」
メディーサ・ディアが呆れ気味に
「クロードの花嫁…として…」
アルードが頷きながら
「11月の冬桜は美しい。純白で、花言葉は純潔、そして…桜の花言葉は…アナタだけ…」
メディーサ・ディアが
「サクラも…」
老人のアルードが
「アムザク」
テーブルに置かれたアムザクの仮面が浮かび上がり
「まかれた種は順調に開花している」
老人のアルードが嬉しそうに喉を鳴らして嗤い
「さあ、兄さんという最強の英雄の再誕だ」
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次回から新章、有罪布告 編が始まります。