白夜 57話 繋ぐ絆
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超龍帝リヴォルリアサン、それに囚われるヴァイレンを…
レイセンの叫びが響く
「お願いです! ヴァイレンを助けてください!」
ヴァイレンが取り込まれたリヴォルリアサンを殲滅できるのはクロだけ、そして…
「ダメだ」
と、クロはレイセンを否定した。
レイセンがその場に伏して頭を床に付けて
「お願いです! どんな対価でも支払います! ヴァイレンを…」
クロは、リヴォルリアサンの事を説明したアマガラを見て
「ヴァイレン少佐は、重要な存在か?」
アマガラがハッとする。
レイセンが大爺様であるアマガラを見つめる。
アマガラが苦しそうな顔をする。
ヴァイレンは、所詮…パーツでしかない。
超龍帝リヴォルリアサンを制御する為に作られたデザイナーズだ。
それが失敗て、作られた価値が喪失した。
人権はある。だが…目的を持って存在する命だ。
その目的を遂げられないで…。
クロはアマガラを鋭く凝視する。
責任から逃げるな!
そう、訴える視線だ。
あやふやな答えは、全て…即答でヴァイレンの終わりを意味する。
生かすか? 殺すか? その二択しか許されない。
「はは…」とアマガラは悲しい声を漏らす。
その甘さが、リヴォルリアサンの復活という最悪な事態を招いた。
ならば…
「ヴァイレン少佐を…いえ、ヴァイレンを兄の憎しみと諸共…終わらせてください」
レイセンがボロボロと涙を零す。
そこへ、クロが跪き
「聞け、コレは決定だ。ヴァイレンの事は無視して、復活した八雷神の力、超龍帝リヴォルリアサンを…始末する」
レイセンが「あああああああ!」とその場に泣き伏した。
ディアが駆けつけて、レイセンを抱き締めて悲しみを受け止める。
世の中には、どうしようない現実がある。非情な決断を出さなければならない時がある。
世界には救世主も、救ってくれる神もいない。
それが現実だ。
クロが泣き崩れるレイセンを背に進もうとするが
「待ってください」
と、ティリオが止める。
クロが「ああああ!」と苛立った顔を向ける。
ティリオが堂々と
「まだ、やれる事はあります」
と、自分の魔力で作った収納を開けて何かを取り出す。
「これを使えば…可能性があります」
レイセンがディアから離れて
「本当ですか?」
ティリオが右手の平に見せたモノ、それは二つの指輪だ。
クロはそれを見て
「まさか、双極の指輪か!」
ティリオが頷き
「これをレイセンさん、ヴァイレンさんの二人に填めて、精神をリンクさせて繋げます。そうすれば、コアとして乗っ取られたヴァイレンを救い出して」
クロが
「それは、可能性論であって、現実的な話じゃあねぇ!」
ティリオが空いている左手を掲げると同じ指輪の一つが薬指にハマっていて
「ボクも、聖帝ディオスである父さんも、妻達と繋がって莫大な力をもたらす超越存在の権能を制御している。可能性論じゃあなくて、現実にやっている事ですよ」
クロがイラつき
「だとしてもだ! それをヴァイレン少佐のいるコアまで…」
と、言葉の次に青ざめて
「まさか…」
ティリオが
「ええ…届ければ良いんです。本人に」
クロが頭を抱えて
「レイセンのお嬢さんを連れて、バケモノ達が跋扈する領域を突き抜けて、本丸のバケモノをあの領域から引っ張り出せってか! 自殺志願者のやる事だ!」
ティリオが堂々と
「でも、クロさんと、クロさんの改修されたオメガデウス・ヴァルヤを使えば…可能です。オメガデウス・ヴァルヤには、それ程の性能がある」
クロは顔を引きつらせる。
コイツ…大丈夫か? マジで言っているのか!
ティリオの思考回路が疑わしくなってきた。
レイセンがティリオへ駆けつけて、右手にある二つの指輪、チェインリングの一つを自分に填めて、ヴァイレンに填める指輪を握り締めて、クロに向かって
「お願いします。どうか…」
と、頭を下げる。
そこにディアも並んで
「お願いします」
クロは顔を引きつらせて
「嫌だね」
その足に蹴りが入る。
「ええ…」
と、クロは後ろを向いて、唯一ダメージを与えられるレナを見る。
レナがクロにお怒りの顔を向けて
「やるよね、クロ…」
クロが
「れ、レナ、だから…それは」
レナがクロの腹にパンチして、クロが屈む。
レナが
「クロが決められないなら、アタシが決める。レイセンさんやりましょう」
勝手に全てを決められてクロは膝を崩した。
ムチャクチャな作戦が…決行される事になった。
◇◇◇◇◇
それは小さな恋の物語。
一人は神様のような力を覚醒させる将来が決まっていたお姫様
もう一人は、そのお姫様を守る為に生まれた騎士。
お姫様と騎士は、小さい頃から一緒で、ずっと過ごしてきた。
お姫様は、騎士と結ばれる未来を信じていた。
騎士は、お姫様に仕えつつ自分に刻まれた運命を恨んでいた。
お姫様の事が嫌いではない。むしろ…大切で愛しているからこそ、その身に刻まれた運命を恨み呪っていた。
騎士は思った。
この呪いさえなければ、自分と姫は、もっと…お互いに…
騎士の未来は、お姫様が神様のような力を目覚めさせる時に下支えする装置になる事。
それをお姫様は知らない。
お姫様は純粋に、ただ、ただ、愛している騎士がずっとずっと隣にいてくれると…。
騎士は、お姫様の隣にいられない…と分かっている。
お姫様は、それを知らない。
お姫様は、両親に将来の話をして…騎士との未来を願うと、両親がそれを拒否した。
お姫様の両親は、知っていたのだ。騎士の宿命を…。
お姫様は、それが騎士と自分の生まれの違いだ…と思い違いして、早くに自分が持つべき神様のような力を求めた。
その知恵を貸してくれる魔法使いの友もいる。
その未来は…叶わない。
お姫様が神様のような力を目覚めさせるには、騎士の運命が必要だから。
この恋は、始めから実らなかった。
その…はず…
そこには、一冊のブックを投影する書物があり、それを両手にする老人のアルードは、ソファーに座って…その結末が決まった悲恋を見守っていたが…
ブックに刻まれる物語に大きな変化が生まれる。
老人のアルードは、嬉しそうに微笑んでいる。
「兄さん。アナタは…英雄になるべきだ」
老人のアルードが告げる隣に浮かぶ矢尻型の仮面アムザクが
「未来が大きく動くぞ」
老人のアルードが隣にいる仮面アムザクに
「兄さんは英雄だからね。絶対に結末を変えるさ」
と、告げてブックをなぞり
「そうだろう。メディーサよ」
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次話を出すがんばりになります。
次回、魔弾 〜Der Freischutz〜