白夜 55話 故郷の復活
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八雷神の継承者、そこに隠された真実、それは…
クロを人質に、ヴァイレン少佐の部隊は惑星内部の中心へ向かう。
クロは、特別製の力を抑える手枷と結界に、ディアも一緒に入っている。
ヴァイレン少佐がいる宇宙戦艦の艦橋にクロ達が入る結界装置もあり、その隣にレイセンがヴァイレン少佐の部下に押さえられ、ミレセンとアイセンがヴァイレン少佐の隣にいて俯いていた。
クロは艦橋の全方位モニターから見える惑星内部の風景に訝しい顔をしている。
「どうして、ヤライは…ここを選んだ? 人工惑星って…故郷?」
ヴァイレン少佐が
「八雷神様は、ここで生まれた超越存在だ。ここは、ユーティック機関という組織が作った人工惑星で、超越存在の研究が行われいた」
クロが驚きの顔で
「ユーティック機関? もしかして、ユニックインダストリーと…」
ヴァイレン少佐が首を傾げて
「それは、知らないが…とにかく、超越存在を研究をしていた」
クロが正面に広がる人工惑星の内部に
「そうか…だから、ここを…ヤライは選んだのか…」
ヴァイレン少佐がクロに近づき
「キサマ…いや、クロード様、何を知っているのですか? 我々は…上層部から八雷神の継承する力の回収と、この人工惑星の復活と制御を行いつつレイセン様を超越存在として…私が上層部の意向を伝えて補佐する機能になれ…としか命令を受けていない」
クロが鋭い顔で
「中心に、向かっている場所に行けば…分かる。ヤライは、こう言っていた。私を求めて苦しむ者がいたら…助けて欲しいってな」
ヴァイレン少佐が厳しい顔をして
「私を求めて苦しむ者がいたら…助けて欲しい…とは八雷神の継承者の事では?」
クロが鋭い顔のまま
「オレもそうだと…勘違いしていた」
宇宙戦艦が人工惑星の中心へ到達する。
そこは、全長が数千キロの巨大なピラミッドだ。上下のピラミッドが合体した人工惑星の中心、コアへ宇宙戦艦が向かう。
そして、辿り着いた場所、コアのコアに赤く鈍く脈打つ光を放つコアが見える。
それを見た全員の背筋に…冷たい何かを感じる。
ディアが同じ結界にクロに
「クロ、この感じ…憎しみ、怒り?」
クロが頷き
「さすが、同じ超越存在、感じるだろう。あそこにある禍々しい…アレを」
ディアがクロを見て
「もしかして、八雷神が超越存在になった方法って…」
ヴァイレン少佐が遮るように
「命令は、命令だ。実行するまで」
クロがヴァイレン少佐に
「ヴァイレン少佐、アンタが…色んな事に憤っているのは分かる。だが、聞いて欲しい。アンタの事を最後まで信じている連中の事を忘れないでくれ」
ヴァイレン少佐が訝しい顔で
「何を言っているのですか? 私は命令通りに実行するまで、レイセンお嬢様の…超越存在への道をお手伝いして、そして…ファイライ時空の上層部の…命令を実行するまで」
クロがヴァイレン少佐に
「いいか、ヴァイレン少佐、アンタはレイセン嬢ちゃんを超越存在にして、それが暴走しないようにするストッパー、リミッターになるって聞いているだろう。ヴァイレン少佐に命令した上もそうなると思っているだが。違う…」
ヴァイレン少佐が
「脅しですか?」
クロが首を横に振り
「脅しじゃあない。これは…最悪な事態の想定だ。そうならないかもしれない。でも、最悪な事態になった場合…トンデモナイ事が起こるぞ。そうなるかもしれないってもしもの話だ。確証はない。だが…そんな気がする経験則だ」
ヴァイレン少佐は「フン」と鼻で笑い
「くだらない」
◇◇◇◇◇
ヴァイレン少佐の宇宙戦艦が赤く鈍く脈打つ光のコアへ近づく。
その全長は五百キロと巨大なコアだ。
そのコアの前に宇宙戦艦が止まり、宇宙戦艦の甲板にレイセンを超越存在にする装置が置かれて、レイセンがその装置に座る。後ろには結晶化した八雷神がある装置。
ヴァイレン少佐は別の装置に座り、レイセンの装置とケーブルが繋がる。
装置の調整を部下達が始める。
その場景を閉じ込められる結界装置から見つめるクロとディア。
レイセンが静かに俯いていると、ヴァイレン少佐が
「レイセン様、何も心配する事はありません。レイセン様は、超越存在となり…私は、レイセン様が道を間違わない為の後見役になります。それが…ファイライ時空の為であり、レイセン様の輝かしい将来の為なのですから」
レイセンが右の装置に座るヴァイレンに
「私は、輝かしい未来や、将来なんて…必要ありません。ただ、アナタが…」
ヴァイレンが視線をレイセンから逸らして
「レイセン様、貴女には、貴女の未来に繋がる素晴らしい別の伴侶がいます。その方を愛してください。装置を起動させろ」
「はい」と部下達は装置を起動させる。
ファイライ時空の上層部の考えは、レイセンを超越存在として、その超越存在が自分達の思惑から外れた場合のリミッターとしてヴァイレン少佐が機能する算段を付けた。
レイセンは超越存在として、絶大な権能を誇るだろう。
だが、ヴァイレン少佐は、レイセンの暴走を止めるだけの、レイセンの超越存在の力だけを止める存在として覚醒する。全能というレイセンの暴走を止める為の不能がヴァイレンの役目になるのだ。
片方は全能、もう片方は不能。
その儀式が始まる。
八雷神の結晶が砕けて溶けて光になり、レイセンとヴァイレンがいる装置へ降り注ぐ。
レイセンが超越存在へ覚醒していく。
トリガー型の超越存在の覚醒システムを使って、八雷神の結晶をトリガーとして超越存在へ、そして…その超対称としてヴァイレンが覚醒する。
八雷神の継承者が誕生すると同時に、人工惑星が息吹を上げる。
ヴォオオオオオオオ
まるで、生き物の雄叫びのようだ。
人工惑星が亀裂を入れて変化していく。
惑星の表面が伸びる。開き変化して行く。
クロ達がいるコアが動き出す。
同時にコアの周辺に巨大な頭部を形成する。
クロ達がいるコアを頭頂部に龍の頭部が形成される。
紫に輝く龍の頭部、その後ろに全長四十万キロと、惑星を一周する程の長さを誇る胴体が形成される。
龍の頭部、その周辺に四対の触手のような翼、胴体にも巨大な四対の翼。
紫に輝く凶暴な龍の頭部。
人工惑星は、八雷神の力の権化だった。
八雷神の権能の姿のドラグラーリヴォルリアサン。
ヴォオオオオオオ
ドラグラーリヴォルリアサンが宇宙に咆哮を轟かせる。
レイセンが自分の手を見つめて
「え?」
と、困惑を浮かべる。
確かに超越存在の覚醒はしたが、リヴォルリアサンと繋がっている感覚がない。
ヴァイレンが
「ああああああああ!!」
と、悲鳴を上げて頭を抱える。
レイセンが「ヴァイレン」と走り出すが、ヴァイレンが
「レイセン…様、ダメで…」
と、次にヴァイレンが立ったまま項垂れた後に仰け反り
「はははははは、あはははははははははは!!!!!!!!」
と、狂気のように嗤い声を響かせて
「滅ぼしてやる。全てを滅ぼしてやる!」
ヴァイレンが両手を伸ばして赤い波動を放つ。
それは、コアが放っていた鈍く脈打つ光と同じ色だ。
ヴォオオオオオオ
リヴォルリアサンが雄叫びを放ち、宇宙空間に赤い波動を広げる。
レイセンが唖然としていると、ミレセンとアイセンがレイセンに駆けつけレイセンを回収して下げる。
クロとディアは、クロとディアを閉じ込める結界装置が壊れて
「遅れて、ごめん」
と、ステルスシステムに身を包んでいたレナが現れて、クロとレナの手枷を破壊した。
クロが
「待っていたぜ!」
ディアが呆然としていると、クロがディアの手を取り
「今は、非難だ!」
ディアはクロとレナに連れられて、隠れていたミリアス達の宇宙戦艦へ入る。
レイセンは、アイセンとミレセンによってヴァイレン少佐の宇宙戦艦へ入る。
ヴァイレン少佐は、狂気のような嗤い声と共にリヴォルリアサンのコアへ消えた。
逃走するミリアス達の宇宙戦艦と、レイセンの宇宙戦艦。
ミリアスとジースが操縦する宇宙戦艦で、操縦桿を握るジースが
「一体、何が起こったんですか?」
クロがその隣にいて
「八雷神の復活には、問題があったのさ!」
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次回、兄の怒り