第9話 キングトロイヤル 王の選定 その一
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あらすじです。
オルディナイトとの交渉をソフィアに話したディオス、その事にソフィアは…
キングトロイヤル 王の選定
ソフィアはケットウィンの屋敷に帰り背伸びをする。今日の面会を無事に終えられた事にホッと安堵する。ここ最近、レディアンやゼリティアとブッキングする事が多かったので警戒はしていたが、今日は二人とも会わなかった。
「さて…シャワーでも浴びて…」
そう肩をほぐして、庭から玄関に歩くと、一台の魔導車が来た。
「ん?」とソフィアは見つめると、その魔導車からディオスとクリシュナの二人が降りた。
「あら、アンタ達!」
と、ソフィアは駆け付け
「何処に行っていたの?」
聞こうとした次に、助手席からセバスが現れ
「これはこれは、ソフィア様…。少々お邪魔しております」
と、お辞儀する。
「え…」とソフィアは固まる横をディオスが通り
「今から、ゼリティア・オルディナイトが来る。話を聞いて欲しい」
「えええ!」
驚くソフィアを後ろにディオスは通り過ぎ、クリシュナはセバスに
「お茶でもお出ししますから中へ」
「結構でございます。ここでお嬢様の到着を待ちます故」
セバスは断る。
ソフィアは、クリシュナに近付き
「何があったの?」
「んん…ちょっと驚くかもしれないわね」
その後、次々と魔導車が屋敷に入り、仲間のスーギィやナトゥムラ、ダグラス、ケットウィン、マフィーリアが帰宅すると、ナトゥムラが
「おい、ソフィア…なんで、ゼリティアの執事がここにいるんだ?」
「知らないわよ。アイツに、ディオスに聞いてよ」
と、ソフィアは戸惑い気味に答える。
そして、屋敷の門の前に一台の大型魔導車が到着する。そこの魔導車からゼリティアとディフィーレが姿を見せ
「準備は、いか程に?」
ゼリティアがセバスに尋ねると
「おそらくは、大丈夫かと…」
「よし」とゼリティアは先陣を切って入り、屋敷の玄関に集まるソフィア一行に
「これはこれは、ソフィア殿、ご機嫌麗しく」
「何の用なのゼリティア…」
ソフィアは訝しくゼリティアを見つめると、ゼリティアは扇子を広げ口元と隠し
「少々、込み入った商談がありましてな。その確認を…と」
クリシュナが玄関を開け
「お待ちしていましたゼリティア様。準備は整っておりますので…」
「うむ」とゼリティアはクリシュナに続き、屋敷の地下、魔導石研究施設に向かう。
そこにディオスが「では、どうぞ。ご観覧ください」と魔導石を生成する装置の魔力供給場所に立ち、両手を広げ魔力を放出させた。魔力が魔導回路を通じて生成装置に運ばれ装置にある、魔導石を結晶化させるガラスのシリンダーに魔力が溢れ泡立ち、結晶化を始める。
「おお…」と付いてきたディフィーレが驚愕しつつ、結晶を形成するシリンダーに近付き凝視する。
「どうかえ、ディフィーレ」とゼリティアが尋ねると、ディフィーレは装置を触りながら
「確かに凄い装置ですが…これならウチの財団で部品提供や製造が可能だと思います」
「では、この装置を真似れば同じ事が可能という事か」
「それはちょっと違います」
「ほう…どう違うとは?」
「確かにこの装置を複製して同じように魔力を送れば、魔導石の結晶は作れますが…。おそらく純度は人工的に高めた五十パーセントしか出来ないでしょう。驚きましたが、ディオスさん」
「なんですか?」とディオスは魔力を送ったまま答える。
「貴方の魔力は相当に強大で純粋なのでしょうね。その魔力だからこそ、純度九十四パーセントの魔導石が生成出来る」
ゼリティアは扇子を叩き握り
「成る程、楽は出来ないという事ですか」
ディフィーレは微笑み
「いいえ、ウチで製造すればもっと品質が良い生成装置が作れますから、魔力を無駄にする事も少なくなるだろうし、もっと純度を上げられるかもしれません」
ゼリティアが扇子を叩き持ちながら
「分かった。そちが必要なのはな…それと…」
後ろで事態を見ているソフィア達に
「ソフィア殿に話がある」
応接室にソフィア達、ゼリティア達が集まり、ソフィアとゼリティアは対面するソファーに座り合いながら、ゼリティアが
「ソフィア殿。妾は汝を王にする為に助力する事を誓う」
ソフィアは目を見開き
「どういう事…」
ゼリティアは余裕の笑みで
「感謝せよソフィア殿。ディオスはな、先程見た。生成される魔導石を妾の財団、オルディナイトに買い取って貰うという商談を交わしたのだ。だが、その商談にはとある条件があった。それは、ソフィア殿を王にするように協力する事」
ソフィアは自分の側にいるディオスを凝視する。
「そう、睨むな。このような条件を持ち出すなど、中々の孝行なヤツじゃぞ」
ゼリティアは窘めると
「ただし、こちらにも条件を付けた。ソフィア殿が王になった場合は、妾を経済参謀として向かい入れる事、当然の事だと思わんか。ソフィア殿を王にするに協力するのだから、それくらいは付け加えんとな」
「ごめんなさい。ちょっと…」とソフィアは立ち上がり、ディオスの側に来ると手を取り「ちょっと来て」とディオスを引っ張って行き別の部屋で二人きりになる。
別室でディオスの前にソフィアが立ち
「どういう事!」
声を荒げた。
ディオスは冷静に淡々と
「どうもこうもない。そういう事だ」
ドンと側にあった机をソフィアは叩き
「何時、アタシがそんな事をしろって命じたの!」
ソフィアの怒号に、ディオスは平静と
「命じてなどされていない。これはオレが勝手にやった事だ」
「何で、そんな余計な事をしたのーーーー」
ソフィアはディオスを引っぱたこうと右手を上げ振り下ろした。
ディオスはそれを左手で止め、ソフィアに詰め寄る。
ソフィアはディオスの鋭い眼光にたじろぎ後退すると、ディオスは更に詰め寄り、ソフィアは背を壁に当て、ディオスはドンとソフィアの左肩上の壁を叩き、その気迫にソフィアは萎縮、ディオスは鋭い視線を向けたまま
「お前の王に成りたいという気持ちは、その程度の事なのか! 正々堂々と真面目にやりたい。ああ…良いだろう。だが、敗れたらどうなる? それで諦められる程、お前の王としての覚悟は、その程度なのか! はっきり言う。
このままではお前は王になれない。
それ程までに不利な状況だ。それを打開する為にオレは、この方法を使った。
正道ではない違法でもないが、邪道であるかもしれん。
それを使ってまでもオレはお前を王にさせたい。
それ程までにお前が王として掲げる事がこの国には必要だと思ったからだ。その気持ちに偽りはない。これがオレの覚悟だ」
ソフィアはディオスの言葉を聞いて、ディオスの胸を押し
「分かった。分かったから…離れて…」
ディオスはソフィアから離れる。
ソフィアは俯き加減で
「分かった。今回だけはアンタの用意してくれた切符を受け取る。でも」
ソフィアはディオスの肩を持ち
「こういう、大それた動きする場合は、次回から相談する事!」
ディオスの腹にパンチをお見舞いする。
「う…」とディオスは屈み。
その両頬をソフィアは抓み、思いっきり引っ張り
「それと、師匠へ押し倒さんばかりに迫るんじゃないのーーー」
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