聖帝ディオスのプロローグ
様々な時空を渡り歩き、数奇な運命を巡りながら、救済を続ける聖帝ディオス
その物語のプロローグである。(壮大なネタバレ)
プロローグ ―聖帝ディオス―
「さて…始めるか、ナトゥムラさん」
と、一人の男が首を鳴らす。
長身で全身を黒いマントで覆う彼の名はディオス。
子供達がたくさんいる四十代のお父さんでもあり、魔導技術を使う魔道士であり無限の魔力を持つ魔法使いであり、ナノテクノロジーに精通して、物理法則を超越した超高次元の力を操作して無から有を生み出し、高次元…神域にいる神格達の力を行使する。
まさに、あらゆるチートの全てを持っている男、ディオス。
その隣、岩をイスにする青髪の男はナトゥムラ。
ナトゥムラの全身は、金属製の装甲鎧に身を包まれているが、その装甲鎧は生物のように関節が曲がり自在に動く。
その装甲鎧は、魔法と魔導工学、ナノテクノロジー、高次元の力である高次元解釈を融合させて出来た万能素材ゼウスインゴットによって作られた、アーマーゼウスリオンという一騎当億の超絶装備であり、それを使い熟すナトゥムラも超絶な剣技を持つ。
ナトゥムラが立ち上がって
「何人くらい…いや、何匹くらいだ?」
ディオスが魔法で遠方を見る光レンズを構築して
「ああ…見える前方は二千万かな…後方は…その倍程度かなぁ」
二人が目の前にする平原の向こうから、津波のように無限に湧き出る黒い怪物達がいた。
それは、この世界を、惑星を喰らい尽くして壊す為に存在している。
ナトゥムラが顎を摩り
「少ねぇなぁ…。オレ達なら一瞬じゃん」
ディオスが
「湧き出る雑魚は幾らでも壊していいけど。それを発生させる中核は、壊さないでよ」
ナトゥムラが訝しい顔で
「それ、お前の方だろう。面倒になって全部、潰してやり直せばいいや!って思うなよ」
ディオスは手を振って
「分かってる、分かってる」
ナトゥムラが両手にエネルギーで構築した刃を持つ剣を握り
「じゃあ、オレは何時も通りに先行するから、後衛からのサポートをよろしくな」
ディオスが困り顔で
「これ、何回目の偶発的な時空転移による世界の…惑星救済なんだろうね?」
ナトゥムラが
「ああ…七回目じゃあねぇ」
ディオスがあきれ顔で
「もう、慣れっこだよね」
ナトゥムラが笑み
「ああ…こんだけ回数を熟すとな。だから、迎えが来る前に終わらせようぜ」
ディオスが「ふぅ…」と息を吐き
「じゃあ、予定通りに」
ナトゥムラが「おう」と告げた後に流星となって、群がる何千万の魔物達へ向かった。
ディオスが
「さて、遠距離攻撃の用意…と」
と、ディオスの背中から全長が三メートルを超える存在が出現する。
それはディオスと繋がるデウスマギウスという魔導文明と機械文明の技術の融合体だ。
四対の装甲腕に、結晶の多翼を伸ばし、キャタピラーとスラスターが合体した巨大な装甲脚で大地を踏みしめ、ディオスを中核の胸部装甲へ入れると、ディオスが使うデウスマギウス・アミダライオウが、その四対の装甲腕を飛ばして先行するナトゥムラへ続く。
ディオスを乗せたデウスマギウス・アミダライオウが浮遊して、その背にある結晶の多翼から結晶が伸びて、その結晶の一つ一つに立体球体の魔方陣が宿る。
ディオスは、戦闘態勢へ移行した。
先行するナトゥムラは、魔物達の軍勢に突進する。
数メートル級の魔物達が、ナトゥムラの流星特攻で瞬時に蒸発する。
その規模、数キロ級だ。
ナトゥムラが両手に握るエネルギー剣で、残りの魔物達を殲滅する。
エネルギー剣の刃に触れた魔物は瞬間蒸発を繰り返す。
あっという間に一千万近い魔物達が蒸発して消える。
だが、それで終わりではない。
それを発生させる暗黒の結晶が次の魔物を発生させる。
その全長は、百メートルだ。
百メートル級の異形の魔物達がナトゥムラへ向かう。
だが、ナトゥムラに追随したデウスマギウス・アミダライオウの装甲腕達が手を開くと、遠方にいるディオスが攻撃を発射する。
ディオスがデウスマギウス・アミダライオウを通じて発生させた数多の魔法攻撃、七色の流星群達が百メートル級の魔物に衝突して瞬間蒸発させる。
膨大な数のディオスの攻撃が平原にいる魔物達、全てを殲滅する。
それをナトゥムラは通り過ぎて、中核となっている暗黒の結晶へ。
その暗黒の結晶の大きさは、有に三百メートルを超える程だ。
魔物を発生させる暗黒の結晶は、更に膨大な数の魔物を発生させる。
百メートル級から数メートル級の魔物を大量発生させつつ、極小の病原体の魔物を発生させ、ナトゥムラとディオスを病的感染で殺そうとするが…
「無駄無駄」
と、ディオスはソレを予測していた。
暗黒の結晶の周囲に超重力のブラックホールが出現する。
それを発生させているのは、デウスマギウス・アミダライオウの装甲腕達だった。
暗黒の結晶の周囲でブラックホール化する装甲腕達。
放出された病原体の魔物達は、その超重力に呑み込まれて超重力の圧縮と光速に匹敵する遠心力分解によって、量子単位まで粉砕される。
ナトゥムラは、暗黒の結晶から発生した魔物達を殲滅しつつ、次の手を
「さて…これで…」
と、ナトゥムラがとあるミサイルのような剣を握る。
それは、ディオスと繋がるナノマシンで構築された剣だ。
ナトゥムラは光速で動き暗黒の結晶の元へ来ると、それを突き刺して後退する。
暗黒の結晶に打ち込まれたナノマシンは、瞬時に暗黒の結晶の内部を侵食する。
そのデータがディオスの元へ、デウスマギウス・アミダライオウへ届く。
ディオスが
「おお…なるほどね。こういう仕組みとプログラムが…」
ナトゥムラが通信で
「原因が分かったか?」
ディオスが
「本来は、この世界を維持するシステムだったが…何者かが、それを兵器に変えるようにプログラムしたようだ」
ナトゥムラが
「何とか出来そうか?」
ディオスが難しい顔で
「問題はないが…もう内部に残っているエネルギーが不足して再構築するしか…」
ナトゥムラが
「じゃあ、後は頼むぞ」
ディオスが
「ああ…任せろ」
暗黒の結晶が拒絶と最後の力を振り絞る。
暗黒の結晶が自らを巨大な怪物へ変形させる。
その全長は十キロにもなる巨大な異形の海竜だ。
ナトゥムラは魔物達を殲滅しつつ後退。
ディオスは
「では…ここはドッラークレスで…」
と、告げてディオスは閃光となって空へ昇る。
ディオスだった閃光は、巨大な一条の光として伸び、それが天の門、超高次元とのゲートなり、そのゲートを潜ったディオスが百キロを超える深紅の結晶龍、超龍となった。
暗黒の結晶は、自分の十倍近いディオスの超龍に驚愕して止まる。
その間に、百キロのディオスの超龍が結晶の翼で暗黒の結晶がいる大地を持ち上げて、その大地ごと、超龍から結晶の端子が伸びて再構築を開始する。
暗黒の結晶は、瞬時に結晶端子に包まれて、漂白されるように白くなる。
そして、十キロの海竜だった魔物は、白き世界樹となって、この惑星の環境を整える力を放出し始めた。
ディオスのドッラークレスは砕けて、その大地に降り注ぎ、白き世界樹の力と共に惑星の環境改善を促進するエネルギー結晶の大地となった。
ディオスは、平然とナトゥムラの所へ戻って来て
「まあ、六割くらいかなぁ…」
ナトゥムラがエネルギー剣を仕舞って
「上出来ってヤツだ」
ディオスが背伸びして
「後は、この惑星の生活改善の為に色々と工業施設を…」
ナトゥムラが
「できる範囲でやって置け、後はオレ達アースガイヤと組んでいる時空連合とか、諸々の力を、この惑星の人達が借りてやる事だ」
ディオスが「だね」と頷いた。
そして、遙か遠方では、この惑星、世界の終わりに嘆いていた人達がディオスの所業を見て驚き呆然としていた。
この惑星、世界は…先程の暗黒の結晶、デルザリアの力によって異形の魔物が跋扈する地獄となり、世界の半分に分かれていた。
暗黒の結晶デルザリアの暗黒世界と、この惑星の人々が暮らす通常世界
その二分化された惑星がここだった。
だが、着実に確実に暗黒の結晶デルザリアの勢力が増して、人々が終わりに近づいていた。
なので、この世界に残っている僅かな魔法遺産を頼りに、救世主を求めた。
そして、現れたのがディオスとナトゥムラであった。
ディオスは、時空に関するエネルギーの研究をしていた時に、その時空エネルギーが暴走してナトゥムラと共に、この世界、惑星へ来た。
かれこれ、似たような事態に巻き込まれたのは七回目だった。
そう、ディオスは…こういう突然の時空転移に遭遇して、その度にこうして世界を惑星を救っている。
ディオス達、アースガイヤ魔導文明にとって時空間、別世界、別宇宙との移動は珍しい事ではない。
ディオスの惑星では、当たり前のように多時空との交流や別惑星、別宇宙との交流が行われ、時空間を移動する時空戦艦も当然のようにある。
そして、こんな事態に慣れてしまった自分にディオスは…辟易していた。
また、何処かに時空転移してしまい。
持っているデウスマギウス・アミダライオウで、その位置や惑星情報を入手後、時空間ネットワークを使ってアースガイヤへの連絡と迎えの要請。
そして、必ずと言って良い程に…来た惑星、世界では何かの問題があり。
それを解決する。
ディオスは、この現地で生産技術施設を建造していた。
現地では食料やエネルギーが不足しているので、現地の人が使うエネルギー、主に魔法と似た技術だ。そのエネルギー源の生産と、食料を量産する自動施設を作り。
更に、それを修理可能とする生産技術施設も建造する。
そんな事をしている間に、ディオスの本地であるアースガイヤのお迎えである機神型時空要塞戦艦エルディオンが到着する。
千メートルの機神型時空要塞戦艦エルディオンがディオス達を迎えに来て
「ディオス様、お迎えに来ました」
と、十代後半の少年少女達が来た。
ディオスが俯きながら
「すまんね。何時も…」
迎えに来た少年少女達は微笑み
「それが聖帝ディオス様のお仕事であると分かっていますから。問題ありません」
彼らは、ディオスの直属の部隊セイントセイバーの新たな隊員である。
その少年少女達の後ろから口ひげを蓄えた三十代の優男が来て
「ディオスさん、お疲れ様です」
と、ディオスを労う。
彼はアーヴィングというセイントセイバー、初代総長だ。
ディオスが溜息交じりに
「すまんねアーヴィング、いつもいつも…」
アーヴィングは微笑み
「気にしていませんよ。それに…」
と、ディオスが救ったこの世界の者達を見る。
ディオスが帰る頃に、大勢のこの世界の人達が見送りをしてくれる。
その誰しもが安堵した顔をしている。
「こうやって、誰かを救うのは正しい事なんですから」
そう、アーヴィングも納得している。
ディオスがそういう星の下で生きている。
なぜなら、ディオスは聖帝ディオスとして、アースガイヤや他時空の者達も敬っている。
ディオスは、行く先々で救済をもたらす聖帝。
時空、宇宙を統治する超越存在、宇宙王達の中でも飛び抜けている存在なのだ。
ディオス・グレンテル。
またの名を聖帝ディオス。
無から有を生み出し、運命や宿命さえも超越する超越存在であり。
その超越存在が統治する数多の宇宙の宇宙王達の中でも飛び抜けている。
しかし、ディオスにとっては、そんな凄い事も迷惑でしかない。
なぜなら、ディオスは普通に友人や家族を大事にする父親なのだから。
親バカが過ぎるのが玉にキズだが…。
ディオスは、アースガイヤへ帰ってきた。
アースガイヤの惑星の北極に近い宇宙域には、ディオスの持ち物がある。
全長五万キロの宇宙サイズの生産施設でありディオスが理事長である産業宇宙大学がある。
全長五万キロ、その先端には五百キロのコアがあり、その四方八方へ全長千キロのコロニーが伸びる。軌道エレベーター型コロニー・ミリオンに、ディオスが乗ったエルディオンが着陸して、ディオスはミリオン内にある自分専用の空間ゲートを通じて自宅である屋敷に戻る。
「お帰りダーリン」
と、微笑む長身で金髪のイタズラ笑みの麗しいディオスの妻の一人クレティア。
そして、エキゾチック系の長身美女、ディオスの妻の一人クリシュナが
「おかえりなさいアナタ」
ディオスは微笑み
「ああ…ただいま」
広めのディオスの屋敷の二階から、銀髪でエルフ耳の乙女が降りて来る。
「お帰り」
と、声を掛ける彼女もディオスの妻の一人ソフィア。
そして、別の空間を繋げるゲートから燃えるような紅い髪と、同じ色のドレスを纏った艶やかな女性が現れて
「夫殿、おかえりな」
彼女もディオスの妻の一人ゼリティアだ。
ディオスには四人の妻がいる。
ディオスが妻達に微笑み
「ああ…ただいま。疲れたよ」
ゼリティアが腕を組み真剣な顔で
「じゃが…早々にゆっくりはできんぞ」
ソフィアが
「アンタが助けた惑星への色んな支援や開発の報告をみんな、待っているんだから」
ディオスは手を振って
「分かっている。今から纏めてくるよ」
と、書斎へ向かう。
クレティアとクリシュナは、ディオスの屋敷で子供達を教育を主にしている。
二人は、達人級の武術の使い手で、子供達は二人の武術指南を受けている。
ディオスも、武術の基礎をクレティアとクリシュナから習った。
ソフィアは、ディオスが暮らす国の元国王で、今はディオスの持ち物である軌道エレベーター型コロニー・ミリオンの宇宙産業大学の総長をやっている。
ゼリティアは、ソフィアから次代の国王を受け継ぎ、政治的な事や経済的な分野を動かしている。
ディオスは、書斎に来るとそのテーブルに置かれた水晶の装置に触れると立体映像が出てくる。
それは、家族全員が映っている立体映像だ。
ディオスと妻達、多くの子供達。そして…一番上の子供達の何人かは、結婚して孫を連れてきた。
四十代後半でおじいさんにもなってしまった、ディオス。
それを見てディオスは微笑み、書類がある引き出しを開けて、記載する報告書を出していると…不意にとあるモノが落ちた。
「ああ…まだ、こんなモノが…」
と、ディオスが手にした一枚のカード、日本語で杉田 優志郞と書かれた古い社員証だ。
それは、もう…昔に捨ててしまったと思っていた。
このカードだけが、自分がアースガイヤの遙か昔から来た証拠だ。
それを見てディオスは思い返す。
数多の時空を渡り歩き、聖帝となって、様々な苦難や困難を乗り越えた日々。
異世界転移ではない、時空同士が繋がった、時空単位の…宇宙サイズの世界を渡り歩く超越存在という人生。
それを思い返して、悪くない…と今でも思う。
時を超えて、このアースガイヤに来て、家族と仲間を、そして…。
今も守る為に、救う為に戦い続ける。
聖帝という人生に後悔はない。
その始まりを…思い返して…。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、始まりへ