魔法少女、会心の一撃!
漫画で、指パッチンと共に炎が放たれるのを読んだことがある。
……まさかそれが実在して、しかも自分に向かって連打されるとは思わなかったが。
「負けるか!」
気合いを入れるように声を上げ、俺は緑の呪縛――魔法の蔦で、骸骨野郎の手足を拘束した。
「爆ぜろっ」
操られた晴香さんに対してのように、風でではないが炎で骸骨野郎が蔦を焼き払って拘束を解こうとする。しかし一瞬、だが確かに動きが止まっただけで俺には十分だった。
「遅い!」
傘で殴ろうかとも思ったが、加減を間違えると危ないんで――代わりに俺は骸骨野郎の横っ面を蹴り飛ばし、意識を飛ばすことで超能力を封じた。
※
日本の二月は、上旬は節分とバレンタインというイベントで。その後は三月に向けて、慌ただしいイメージがある。
けれど、俺達が通う木犀館学園高等部にはもう一つイベントがあって。
「修学旅行? お前ら、まだ一年だろ?」
すっかり恒例となった能力バトル(骸骨野郎は、俺に蹴られた顔をハンカチで冷やしている)の後、しばらく留守にすることを伝えるとそう言われた。
その言い分は、もっともだ。大抵は、高校二年生になってからなのだが――私立の進学校である木犀館学園では、二年生から早くも受験対策が始まる(クラスも成績順に分かれるくらいだ)のでこの時期らしい。
「なるほどねぇ……学生ってのも、大変だな」
「一応、左衛にも連絡しているが。人づてだと、馬鹿な貴様に伝わらん可能性があるからな」
「酷っ!」
しみじみと言う骸骨野郎だったが、椿の容赦の無い言葉には即座に突っ込みを入れた。ちなに長袖+ダウンでこそあるが、中のTシャツの絵は相変わらずの骸骨で。
(こだわりなのか? そして、俺が知らないだけでああいうブランドなのか?)
そうは思うが、別に骸骨野郎とファッショントークを繰り広げるつもりはないので口には出さない。すると、当の骸骨野郎が俺に話を振ってきた。
「ところで、修学旅行ってどこ行くんだ?」
「フィリピン」
「えっ!?」
質問に答えると、途端に骸骨野郎がキラキラと目を輝かせた。それから満面の笑顔で、戸惑う俺に身を乗り出してくる。
「お土産、楽しみにしてるな!」
「……えっ?」
「貴様、高校生にたかるつもりか?」
「人聞きの悪いこと言うなよー。オレらの仲じゃん?」
「だからこそだ。悪の怪人が、魔法少女にたかるな」
「だって、あんただと絶対駄目だろうし……お嬢ちゃんなら、なぁ?」
「ドリアンキャンデーとかか?」
「チョイスが酷い!?」
いや、前に親父の編集者さんから「飲み込むことは出来なかったけど、話のネタにはなる」って勧められたんだよな。
一転して唇を尖らせ、不満を訴える骸骨野郎に――まあ、永遠や明珠もいるので何か、お菓子でも買うかと思った。
「チョロイな。いっそ、呪われそうなお面や人形でも買え」
「心を読むな、椿」